居候
「お帰りなさい。母う…え?」
「こ、こんばんは?」
私は一瞬思考回路が切れた。自分の母上が見知らぬ男をー連れてきたとー思えば、それが知り合いだったのだから。
ってか…。
「な、なんでお前がいるのだ!」
「まさか姫のお母様だったなんて…。」
「ん?なんだ。お前達知り合いか?もし恋仲なんて言ったら釘バットだぞ?」
「そんな間がらではない。」
「うはー。キッパリいったよー。」
とりあえず玄関は寒いためリビングに全員椅子に座る。
「それで?どうやって出会ったんだ?」
この質問に氷綺は戸惑った。いきなり俺の姫です。なんて言う訳にもいかないしな。
目線の梓奈へと向ける。
それを見て梓奈は口を開いた。
「先日不審者に襲われてな。その時助けてくれたのがこの蒼永氷綺殿だ。」
なるほど。そんな言い訳が。と肯定するように氷綺も首を縦に振る。
「そうか…。まず氷綺。娘をありがとう。」
母親は不審者に襲われた。という事実を知らなかったらしく酷く驚いていた。
まあ、ほらばなしだけど。
この母親は娘の事を疑わず素直に氷綺へ礼を告げた。
「それと…。」
母親は椅子から立ち上がり梓奈の背後に立つ。
「てめー!そういう大事なことはまず母親に報告しろや!!」
「痛い!痛いです!母上!」
グリグリと頭揺らしたのだった。
どこからどう見ても仲睦まじい家族の姿だろう。
親は娘の事を心配して叱り、娘は親に心配させないように嘘をつく。
そんな優しい家族の姿を見ていて氷綺は、羨ましい。と思った。
「はあ。まあ、氷綺がうちの娘の恩人だと分かったが、なんか飯食わせるだけじゃ失礼じゃねーか。どうすっかなー。」
「まず貴様と母上はどうやって?」
「ああ?こいつに助けられたんだよ。だからせめて飯でもってな。」
母親は頭をかきながらキッチンへと向かう。
夕食の準備だろう。
「それで?貴様は私の母上だと知って近づいたのか?」
「いいや。姫のお母様なんてしらなかったよ。」
そう聞いて梓奈は目を丸くする。
「お前が無償で人を助けたのか?」
「まって。俺のことどう思ってるの?」
「いや、そのお前にも優しいところがあったのだなって。…お前は誰かのために行動なんてしないと思っていたからな。」
確かに行動しなかったかもね。…だけどずっと姫のことを見てたら誰かを助けるっていうのが当たり前になってきたんだよね。
姫はいつでも優しかった。それは見返りを求めているものでもなく、恩を売るとかでもなく、ただただ人のために行動する。自分は最初無駄な事って思ってたけど…。そのせいか姫の周りはいつも笑顔だったんだ。俺とは違う感性を持っている姫には守るだとか護衛だとか、そういうの関係無しに目を奪われた。
「惚れた?」
イタズラな笑みを浮かべ氷綺は問うが。
「なにをいってるんだ…。」
はあー。とため息をつく。
「でも、その、なんだ。」
もじもじしながら口を開く。
「お前にもそういう気持ちがあって少し嬉しいぞ?」
姫はまったく。可愛いな。
「お前のこと、聞いていいか?」
「なに?身長?体重?それとも俺のすべて?」
「警察に連絡するぞ。」
「お前の家のことだ。」
「魔法使い達は結束したのだろう?ならどういう関わりがあるのかなって。」
家のこと。そういったとき氷綺の目がいつにも増して冷たいものだったように思えた。
「そうだね。魔法使いは結束することにした。戸籍上魔法使いは全員家族って事になってるよ。帝家っていう大きな家。」
「なぜ戸籍上一緒にするのだ?」
「それはただですら魔法使いっていうのは異質なんだ。そして現実とはあまりにもかけ離れた存在。もしそれが世界で公けになったら困るよね?だから魔法使いはみんな集まって一般の人に知られないように。そしてお互いを支えあうようにしているんだ。」
魔法使いは現実では生きにくい。だから支えあうようにか。
「そうか。それではファントムについて聞きたいのだが。今まで私はファントムを夜にしか見てこなかったが夜限定なのか?」
「いや。朝でも昼でもやってくるよ。」
「じゃあファントムは刃物などは効くのだろうか?」
「無理だね。消されてしまう。ファントムを唯一撃退出来るのは魔法だけだよ。」
「私は役たたずなのだな…。」
梓奈はシュンする。
「そんな顔しないで。ファントムから姫を守るための魔法使いの俺だ。安心して頼ってほしい。」
優しく言って安心させてあげる。姫は元気で明るい方が魅力的だ。
そこで梓奈は何かに気づいたように顔を上げる。
「ん?家があるならなぜ帰らない?いつも隣の屋根にいなかったか?」
「帰れないんだよ。」
「なぜ?本家からの命令。」
「それは大変だな。」
「うん。大変。」
そんな会話を全て母親は盗み聞きしていることに二人は気づいていない。
みんなで夕食を食べている時不意に母親は口を開く。
「お前、家は?」
事情を知っている母親はわざと聞く。なにかの狙いがあるように。
「いえ。その今帰る事ができないのです…。」
氷綺も素直に答える。なぜならもし一緒に住むなどになれば護衛が捗るからだ。まあうまくいくとは思っていなかったが。
「そうか。ならうちに住め。」
「よろしいのですか?」
「は、母上!?」
まさか本当に上手くいくなど氷綺本人も思っていなかった。
「まあ娘を助けてもらった恩もあるしな。それになんかお前なら大丈夫そうだ。」
「ありがとうございます。」
「てか。もし娘にてー出したら殺すからな?根性焼きで済むと思うなよ?」
勝手に話を進める。
「あれ?随分静かだな梓奈。」
「母上が決めた事は絶対なのでしょう?」
「お。よく分かってんじゃん。」
「はあ…。」
こうして氷綺の居候が決定した。
・・・
・・・
・・・
二人とも同じ家に住むようになり登下校はいつもと変わらず一緒だった。
違うところは家も一緒ということだけだ。
「これでいつでも一緒だね。」
「もしもし。警察ですか?」
「その反応は予想外だったなー。(棒)」
たまに見せるのほほん氷綺だった。
別に悪い気はしないな。
そう思った。




