悲劇
「それで?終わったら教えてくれるのだろ?」
戦いが終わった後。私の家の近くの公園のベンチで座っていた。
「うん。教えるよ。でも雨に当たったばかりだし、寒いでしょ?」
近くの自動販売機から温かいコーヒーを押し、私に投げてくるのをキャッチした。
「まあ。飲みながら。」
「むー。私はココアの方が良かったぞ。」
「随分自由な姫だね…。」
「姫?」
「まあ、話聞けばわかるから。」
また缶を投げてきた。今度はしっかりココアだった。
私は蓋を開け一口飲む。
「それで教えてくれるのだろう?」
「そうだよ。じゃあ話を始めよう。」
彼も一口飲んでから語りだす。
「十一月十一日。なんの日だと思う?」
「ポ⚪︎キーの日だろ?」
「…。いやそういうのじゃなくて。なにかが生まれた日だとか。」
「そうだな。カール・ツンベ⚪︎クの生まれた日だ。」
「…ちなみになにやった人なのかな?」
「植物学者だ。」
「なんでそんなことしってるの!女子高生の知ってる事じゃないよね!」
「うるさいぞ。近所迷惑だ。それと本で読んだんだ。」
「まあ。確かに人が生まれた日だけどね…。」
「違うのか?ならアルフ⚪︎ート・フリートの生まれたーー」
「いやもうこのノリいいから。」
なにが違うのだろうか?
十一月十一日。うーん。あ!
「やっと気がついたみたいだね。そう君の誕生日だ。」
「ああ。確かに私の誕生日だが…。なんでそんなことしっている?やっぱりストーカー?」
「いや。違うから。だから携帯しまって。」
私は渋々携帯をしまう。
「それで私の誕生日と命が狙われる事。関係あるのか?」
「ああ。今から話すのは本当の話だ。現実では考えられないと思うが。」
氷綺が真剣な顔になったため私も話を聞くことにする。
「昔ね。この日本に封印されていた女の子がいたんだ。その女の子は生まれつき俺のような魔法のようなものが使えた。とても強力な。」
女の子?氷綺は言葉を続ける。
「だから当時の人達は化け物やら物の怪の類だと決めつけ幽閉してしまったんだ。」
幽閉。この日本ではあまり使われない言葉だ。
「幽閉された少女は全身に鎖を繋がれ毎日毎日苦しかった。だけど人々もこのまま一人にしておけば何をするか分かったものじゃない。だから人々は一人。監視役としてある少年を毎日少女と対面させた。」
その少女は一体どんな気持ちだったろうか?生まれつき人とは違うだけで閉じ込められていたのだから。
「最初は少年も化け物だと聞かされていたため、怖かった。だけど本人を見たときから彼は恋をしてしまったんだ。今でいう一目惚れってやつだよ。」
「少女の方も最初は少年が怖かった。なにか乱暴されるんじゃないか。殺されるんじゃないか。とね。だけど少年は優しかったんだ。毎日少年の話す事だけが楽しみとなり、徐々に少年に惹かれていった。」
「だけどそれが引き金となってしまったんだね。」
彼は冷たそうな顔をした。
「人々は少女と仲良くする少年を同じ化け物と見るようになって少年を殺そうとした。」
それはあんまりじゃないだろうか?
仲良くしてなにが悪い。
私は許せなかった。
「少年は逃げる末最後に少女の顔を見ようと幽閉された部屋へと向かった。少女は驚き少年に事情を問いた。事情をしった少女は始めて自分が好きになった人が自分のせいで死ぬ。そのことに深く絶望した。自分が生まれなければ少年の命は助かっていたのだからね。」
私は黙って続きを聞いた。
「少女はただ少年を救うためだけに魔法を使った。どうやら鎖にも魔法がかけられていたようで完全に壊すことは出来なかったようだが。そして少女は少年を連れて走って逃げた。途中で村人などに襲われたが魔法で燃やしたり水の中に閉じ込めたりとしてみんな殺していった。そしてなんとか少年を救うことができた。」
「少年はありがとう。と言ってこれからも一緒にいてくれる?と聞いてみたが。少女は私が生きてるとみんな不幸になってしまう。私のような人は生きていてはいけないんだ。そういって自らの魔法で死のうとした。」
「少年は慌てて止めようとしたが止める前に少女に火がつき燃えだしたんだ。そのときに少女は。私は幸せだった。あなたと出会えたのだから。涙を流しながら笑顔で笑ったんだ。少年は何も出来ないことに怒りを覚えた。だが少女はこう言ったんだ。」
『私はあなたに覚えていてくれるそれだけで私の人生の、生きた意味があったよ。」
「少年は泣いた。燃え尽きてしまった少女の灰を集めて縋りつくように。神様。どうかあの子を助けてくださいってね。どうやら神様はその願いを間違えて聞いてしまったようで次の時代にも魔法使いが生まれてしまった。それが僕の存在だ。」
あまりにも現実離れしてしまっている話に私はよく理解が出来ない筈だった。
だがなぜだろうか?私はこの話を知っている。
そう思ったのだ。
「それでなんで私の命が狙われるのだ?その話とは無関係じゃないか。」
首を傾げて聞くが氷綺ため息を吐いた。
「話は最後まで聞くものだよ。」
「でもまあいいか。残念ながら無関係じゃないんだよ。」
「どういうことだ?」
「少年の願い事が間違えて叶ってしまったてとこだよ。その間違いはただ魔法使いが生まれた事ではなくてその少女も生まれてしまったんだ。」
「っ!!」
少女も生まれてしまった。それじゃあ!
「 そう。また悲劇の連鎖が始まるんだ。まあ違う人に変わるんだけどね。」
悲劇の連鎖。
「そこで僕達魔法使いはその少女を今度こそ救うべく結束した。だけどそこで邪魔が入った。それがーー」
「ファントム…。」
「正解。っていっても出現理由は不明だけどね。」
「そして少女の死んだ日が十一月十一日だったんだ。」
私の誕生日。
「まて。なぜ私なのだ。十一月十一日に生まれて人なんていくらでもいるだろう?」
「そればっかりは運なのかな?」
「運って…。」
なんて適当な理由だろう。
「まあファントムの出現理由はわからないけど目的は分かった。それは少女を飲み込むことだったんだ。」
「飲み込む…。」
そうだ。っと頷く。
「その、ファントムに飲まれた人はどうなるんだ?」
「それがわからないんだ。」
「わからないって。」
「いままで飲み込まれた人をみてきたが行方不明だ。帰ってきた人はいない。これは仮説だけど。」
『何ものでもなくなる。』
「 酷い話だけど飲み込まれた人の記憶は本当んどないんだよ。日々記憶がかすれていく。今では顔すら思い出せない。」
そんな。ファントムは一体なにが目的で…。
「まあもう分かってると思うけど君が悲劇の九代目だ。」
やはりか。知りたくなかった…。
「それで僕達魔法使いは悲劇を終わらすためにいろんなことをしてきた。また幽閉したり。殺してみたりね。」
「こ、殺ーー」
「大丈夫。殺さないから。」
その笑顔は逆に怖い。
「幽閉とかもしないよ。いままで全て失敗してきたから出来る限り歴史とまったく違うことをさせようってね。だから普段通りで構わないよ。」
それは安心だ。
「だから俺が君の騎士になる。君を一生守ってみせるよ。我が姫。」
不意に言われたセリフに顔が赤くなることが自分でも分かる。
「だから俺に惚れるなよ?」
人差し指を私の唇に触れウィンクして見せた。
・・・
・・・
・・・
「ただいまー…。」
とても疲れた。急にとんでもない話を聞かされて守るとかいわれて、完全に参ってしまっている。
「おい。おせーぞ。いつまでほっつき歩いてるんだよ?」
「すまん。母上。」
ヤンキーのような言葉使いに美しすぎる容姿。
これだと本当に四十代かと疑わしい。
「飯出来てんぞ。」
「すまんな。疲れてるんだ。もう寝る。」
「お、おい。」
そう言い残し階段を登り部屋の扉を開ける。
カーテンを閉めようとすると隣の家の屋根に彼はいた。
「寒くないのか。あいつ…。」
しっかりこちらを監視してくれているようだが、やはりストーカーにしか思えない…おっと守ってもらってそれは酷いか。
私はベッドに倒れすぐに眠りについてしまったのだった。




