平成の火消し屋1-2
「ここが平成の火消し屋に依頼するカフェ、アンテか・・・」
1日の営業が終わり急いで噂の火消し屋に依頼を頼みに来た寿司屋店長「馬場」。
いてもたってもいられず、メモ紙を見ながら焦ってきたようだ。
ドアを開くとカランコロンというベルが鳴り中から透き通った女性の声が聞こえた。
店内には帽子を深くかぶったお客が1名と美しい女性のバーテンダーがいるだけであった。
店長はカウンターの隅っこにキョロキョロしながら座り、メモ紙を見ながらバーテンダーにこういった。
「え、えでーもあというお茶はありますか、あ、あと今日は暑いですね。」
するとバーテンダーはにっこりと微笑み、奥の方から透き通った紅茶を出してきた。
店長は戸惑いながらもその紅茶の香りに誘惑され、一口口に含んだ。
その紅茶を飲んだ店長は今まで焦っていたのが嘘のように落ち着いた。
「それでは依頼の方を教えていただいてもよろしかったでしょうか?」
美しいバーテンダーの口から透き通った声が出てきてにこっと微笑んだ。
店長はあったことをすべて話した。その顔は娘を思う一人の父親の顔だった。
バーテンダーはいくつかの質問をした。そのお客さんが何時ごろクレームをつけて帰っていったか。あとお客さんと特徴や座っていた席の特徴などを。なぜそんなことを聞くのかと店長の口が開きそうになったとき、美しいバーテンダーは人差し指を立て赤い口紅の上にそっと添えた。
店長はすまないと言わんばかりにペコッと頭を下げ、顔を真っ赤にしながらてれていた。
そのあと出された紅茶を飲み干し、代金を払い店から出ていった。まるで仕事のことを忘れたかのように。
「聞いていたわよね?てるちゃん」
美しいバーテンダーは深くかぶった帽子を深くかぶった男に声をかけた
「その呼び方はやめてくれよ。こはるねーちゃん。しっかり聞いていたし、今回は幸運にも目の前でその事件があった。だからバッチリなんだけど・・・。」
輝はとてもやる気がなさそーな顔でブツブツ言っていた。
確かに腕はピカイチなのだが依頼人が男になるとモチベーションが上がらないだとかでとてもやる気がない。
この美しいバーテンダーは輝の姉の如月小春だ。
ルックスもいいし性格も良くここに来る客はほとんどバーテンダー目的なんだが、実は相当のブラコンである。
だから年齢=彼氏いない歴なんだとか。
いつもてるちゃんてるちゃんと呼んでくるものだから恥ずかしいったらありゃしない。
「仕方ないじゃない。あなたもバイトするところがなくなったら嫌でしょ。」
そうなんだけどさぁーとかまだ文句をブツブツ言っている。
輝はいやいやな顔をしながら砂糖たっぷりのコーヒーを飲み干しアンテから出て行った。