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プロローグ

プロローグ


空は薄暗く、一面暗い闇が拡がっている。

十月も既に折り返しに辺り、肌寒さが一向に強くなって、暖房を本格的に入れる時期に入った。

「暗い空がまるで僕の心を現してるようだな」

黒いコートに身を包み、空を見上げながらひとりごちた男は暗い夜道を小走りに歩いていた。

男は徐に黒いパンツのポケットに手を入れ、ニヤリと一度笑みを崩しながら『ある物』を引き出した。

それには赤いボタンが一つ付いているだけの簡易な代物だった。

「ふふ。 後ろからこそこそ尾行してるネズミさんにプレゼントを!」

赤いボタンを二度押し、真後ろに向かって投げた。


そして、突如ー

辺りに広がる闇を振るい裂かんばかりの轟音がここら一帯に響いた。

「んー火力が弱かったのかな? 生きてるや」

男は暗い夜道の一点を指差しながら呟いた。

「止まれっ! ここまでだ豊永亮」

すると、一点の場所からわらわらと人影が出てきた。

その中から一際、威圧しながら前に一歩進んだ男が黒衣の男《豊永》に警告した。

「おりゃりゃ、お久しぶりです。 川端さんではありませんか? 先日ばどうもー」

黒衣の男は旧知の中ですと言わんばかりの屈託ない笑みを浮かべた。

「何がどうもだ。 お前が起こす数々の爆発テロのせいで俺たちがどれだけ被害被ったと思ってるんだ!」

怒気を辺りに撒き散らしながら川端は豊永を睨みつけた。

「まぁまぁ、そう怒るなって! カルシウム足りてるか? って冗談は置いといてテロって物騒な事言わんといてや。 これでも、僕の中では聖戦だからね」

「何が聖戦だ! 周りを考えず自己意識によって単独による爆発……。 テロ以外に当て嵌める言葉はない」

豊永を真っ向否定した川端は怒りにより目が血走っていた。

それもその筈、豊永から五年前に起こした大規模な爆発テロにより、娘と娘婿と孫がその際に亡くなっていた。

恨むなって言うのが無理な話である。


「僕は聖戦、川端さん達はテロ、二つ以上の意見がある場合必ずしもどちらか一方に寄りかかる必要はない。 答えは自分自身で決めてこその意思や!」

曖昧な表現を呈した豊永はコートの袖に手を入れ、黒い丸玉を取り出した。

「……っ! かかれ、あれを使わせるな!」

川端はコートから出した物を認識した途端、部下に確保の命令を下した。

「あ〜あ。 もう、数少ないのに……。 仕方ないか、これを使わないと逃げられなさそうだからな」

豊永は黒い丸玉を投げた。

玉が重力に引かれ落下し、地面に接触した瞬間。

辺りが眩い光を包んだと思ったら、今度は黒い煙が一帯を支配した。

黒い煙が晴れた頃には豊永はどこにもいなかった。

「くっそぉぉぉおおおおお」

川端は咆哮をあげながら拳を地面に向かって振り下ろした。





◆◇◆◇◆◇


「ふぅ、やれやれ川端おっちゃんはしつこいのなんのってな」

豊永はモニターが何十台も繋がっている広い部屋にいた。

そこに、豊永ともう一人の人陰があった。

「亮くんさー、いつまでこんな事続けるの? もう、希ガスんじゃないの?」

黒い髪をぼさぼさ跳ね回っている小柄な女が口を開いた。

「お前に関係ない。 やり遂げるまで捕まる気はない。 それに、もし捕まりそうなら自ら終わりを迎えるさ」

豊永は目に黒い炎を燃やしていた。

「亮くん、本当にそれでミーちゃんが喜ぶと思ってるの?」

「……っ。 う、うるさい!僕は美咲を見殺しにした世界を犯すと決めんたんだ! 例えそれが美咲の実の姉である貴方であってもこの道は遮らさせたない」

狂気を宿してると思われる顔で断じた。


豊永は部屋を出て、自室に入った。


「こんな壊れてしまった君でも、私は貴方を愛してる。 例え、貴方が全てを憎んでいても……。 美咲、お姉ちゃんは貴方の代わりになろうとしたけど、駄目だったよ」

静けさの中で涙を流しながら呟いた。






◆◇◆◇◆◇


爆発テロ事件対策本部と書かれた部屋に川端剛馬が向かっていた。

白髪が所々髪に入り混じり顔には深い皺が疲れを象徴しているかの如く達し、歳をとった貫禄を滲み出でいる。

やがて、部屋の前に到着し、待機しているボディーガードに中まで案内された。

川端を待ち受けていたのは対策本部の本部長と重役の五人だった。


「報告は書面で分かっているが、君から直接聞こう」

真ん中に座っている本部長が口を開き促した。

「昨夜、爆発テロ容疑者豊永亮を◯◯町の小道で発見。 尾行を開始し、現行犯逮捕しようとした結果、尾行に気付かれ爆発物を投げつけられ、逃れた私と一部の部下で身柄を確保しようと近寄ると袖から黒い球体物をこちらに放り投げ、閃光と黒煙が辺りを覆った隙に容疑者は逃走され、私達は怪我人を搬送してから帰宅しました」


「ふむ。 仕方が無い、これより世界指名手配として豊永亮を登録しよう。 今後は生死は問わないのでそのように頼むよ川端君」



川端は力一杯頷き頭を下げてその場を辞した。








「待っていろよ豊永亮! 絶対にこの手で葬ってやる!」

廊下にでた川端は未来を予想して笑みをこぼしながら呟いた。



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