プロローグ
吟遊詩人は歌う
何もない世界より、最初に生まれしものは光と闇
光より聖霊
闇より魔
相容れぬ二つのものは永き争いを始める
その中で二つの存在は交わる
聖と魔の力は相殺され、新たに生まれるは脆弱な存在
人間と呼ばれるもの
なんの力も持たず、命短き弱きもの
彼らにあるは、強気意思のみ
しかしその意思は、時に聖魔さえも凌ぐ
更に永き時は、新たな人を生む
聖霊と人
魔と人
そこより新たに生まれるは、両の力を受け継ぎし人間
人を護りし王たる血族……
◆
歌は更に続く。
聖魔族と呼ばれるようになった新たな人間たちは、荒廃した大地を前に聖霊族・魔族に働きかける。
人間という弱気存在を前にいつまで争い続けるつもりなのか、と。
争うのが当たり前になっていた彼らに、その言葉はなかなか届かなかっただろう。だが最終的に聖魔族の言葉に従い、彼らは己の世界に帰って行った。
僅かに留まるものを残して。
残った者は人の助けとなった。
聖霊は人の清き心を糧に、光を作り出す。
魔は、人の作りだした闇を浄化する。
永い時を隔てた今もそれは変わらない。
聖霊王と呼ばれる存在は聖気を放ち、気象を安定させる。
魔王は人の慢心が生み出す闇を抑え、浄化し、争いを鎮める。
そして聖魔族は人の守護者である。
しかし、安定は乱される。あまりに驕り高ぶった人間のせいで。
数十年前の話である。
魔王さえ抑えきれなくなった闇が人間世界に溢れ出し、争いを呼んだ。それが更に闇を増幅させ新たな争いを生み、聖霊王の聖気さえ届かなくなった。
それを抑えたのは、魔王の子供たち。
長男が人柱となり、一時の封印となった。
その後、長男の一人息子が父より譲り受けた剣を手に、闇を払い世界を救った。
神剣・ラリストールの使い手 フィード・ディア
世界創世から始まった歌は彼の戦いへと移り、そしてその後の行方は誰も知らないというところで終わる。