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【三章開始】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
一章 嬉々として出ていきますね!

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第6話 泥洗顔と石鹸作り

 ぐつぐつ。


 ごりごりごり。


「それは、なんですか?」


 水に浸けてふやかした乾燥とうもろこしを湯煎にかけた後、フルールはひたすらすり鉢で潰していく。

 カームが訝しげに眉根を寄せ、頬がひきつっている。それでも気になるのだろう、すり鉢を覗き込んでいた。


 ――なにもそんな、怪しいことはしてないのに。


 乾燥とうもろこしを購入した時もそうだ。食用ではなく、ここでは飼料としての用途が多いらしい。

 安価に買えていいのだが、周囲の目が残念な子を見るような眼差しだった。


「とうもろこしの、スクラブを、作ってみようと思って」


 そう説明するも、やはり意図は伝わらない。反対はされないが、それは主従からだろうと察せられる。

 こういう時は、実際に出来てから試させる方が早い。


 ――分からないものはね。サンプルやデモンストレーションが早いのよ。


 ちなみに帰宅したら、カームが宣言通り、すでにおかずを作ってくれていた。

 スープがまだだったので、とうもろこしの煮汁をそのまま出汁として使い、夕飯に追加した。

 これまた味は好評だったものの、大層驚かれたのだった。


『フルール様は飲食店が営めますよ!』


 フルールは、二人の意気込みを思い出して笑う。食後、後片付けを二人に任せて、フルールは作業に戻った。


 ――とうもろこしの前、採取した土と水を入れて混ぜておいたやつは、っと……。


 ジャマにならないよう部屋の角に置いていた瓶を手に取る。

 食事前に浮いてきたごみを取った後、もう一度混ぜて、食事中にさらにしばらく置いていた物だ。


「うんうん。分離してるわね」


 瓶の中で水と泥とに分かれていて、その上澄みの水だけを捨てる。

 次は、残った泥を少量とって目の細かい布で濾した。残りはまた、水を入れて振り瓶の蓋を閉めた。


 潰したとうもろこしのすり鉢に絞った泥を加えて混ぜ、オリーブ油を様子を見ながら入れてさらに練る。


「カーム、ちょっと腕を貸してくれる?」


「腕、ですか?」


「そう、パッチテストをするの。腕の内側に少しつけて肌に問題がなければ、今日から試してみようかなぁって。ガルドもどう?」


 そういって、フルールは自身の腕の内側に塗って見せた。

 カームとガルドは互いに顔を見合わせて、腕を出してくれた。


「痛いとか、ヒリヒリするとかあったら、遠慮なく教えてね。すぐに流すわ」


 床に落ちてしまわないように、ハンカチを泥を塗った腕に巻いた。


「さてと、次は石鹸ね」


 採取リュックから、散策で燃やしてきた灰と水を混ぜ、布を使ってろ過する。

 その間にオリーブ油を鍋に入れて、弱火にした。


 ――前世を思い出した今なら、計りが無くても……。


 比率がある場合は、適当に合わせることも出来るだろう。今は計りがないので、材料は全て目分量、前世の勘だより。

 さらに適量を探るために、何パターンか用意するつもりだ。


 ――キットとかあって、便利だったなぁ。


「カームが色々と器具を買っていてくれて助かったわ、ありがとう」


 出掛ける前に、調理用と分けたくて幾つか器具の購入を口頭で伝えていた。

 数があったのだが、カームはキチンと揃えていくれていた。


 「いえ、夕飯の支度だけでは時間も余るので」


 ろ過して出来た灰汁を、少しずつ鍋に入れて木ベラで混ぜる。

 液体がいい感じに固まったところで、乾燥ハーブを砕いて入れた。

 浅めの木箱に流し入れて、あとは乾かすだけだ。


「固まったら、完成ね」


「フルール様は、何でも手際が良すぎに思うのですが、いったいどちらで?」


「ああ。怪我が治ってから、屋敷に籠ってて色々ね」


 カームの疑問に、フルールは茶を濁す。

 貴族の女性が表舞台から下りた先は、修道女が定番だが、フルールは性に合わないと思っていた。


 ――厳しい寮生活が延々……とか、無理ね、私。


 それに手際が良く見えても、何事も完成するまでは分からないものだ。


「さて、二人とも泥を流しましょう。大丈夫だった?」


 ハンカチを取って、洗い流せば二人とも赤くもなく綺麗なままだった。フルールはホッと胸を撫で下ろす。


「いきなり顔は抵抗があると思うから、今日は手にしてみましょうか」


 カームを椅子に座らせ、向かい合わせになる。彼女の片手に泥石鹸をのせて、塗り伸ばし、日頃のお礼をかねてハンドマッサージも行った。

 フルールに付く前は、雑用も多かったのだろう、手荒れが少しだけ目についた。


「フ、フルール様、くすぐったい」


「ふふ。手のひらには、ツボが幾つかあってね。せっかくだから――」


 親指と人差し指の間にある骨の付け根と、小指と薬指の間の骨の付け根はそれぞれツボだ。

 そうして、木桶を膝にのせて水受けにする。水を出してカームの手を洗うと、綺麗に水滴をタオルで拭き取った。

 まずは片手だけ、違いを見比べて欲しかったからだ。


「次はガルドもするわよ」


「手を洗う要領でいいんだよな、自分でやるからいい」


 泥石鹸を手にのせると、スッと洗い場の方へと行ってしまった。


 ――気にしなくていいのに。


 ガルドの見た目はキツい。長身で目つきが鋭く、全体的にシャープな印象が強いからだ。

 反対にその性根は真面目だと、フルールはこの短い付き合いで分かった。


「フルール様! これ良いですね。手がもちもちしてます。もう片手も、お願いします!」


 カームは気に入ったようで、ずっと手を撫でている。その目はキラキラと輝いて、フルールへとねだっていた。

 親しみやすい彼女は、好感が持てて可愛いのだった。

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