表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「好きにしていい」と言われた妻が家を出たら、夫は夫で仕事を追い出されてました。美容と商売で悠々自適に暮らしますけど、なにか?  作者: 松平 ちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/33

第20話 二人は気心が知れた身内です。旦那様とは違います

ブクマ、リアクション、感想、励みになります。

いつも、ありがとうございます。

今日から三話ほど、フルール視点でのルゼルヴェの低評価をお楽しみください。


 ガルドに肩を借りて、一階のダイニングテーブルの椅子へとフルールは座る。

 見渡した一室は、どこもおかしなところが無かった。


 ――ええと、見知らぬヤバそうな男が押し入ってたはずよね?


 額に手を当てて、フルールは状況を整理しようと考える。少しぼんやりとするものの、思考はハッキリしていた。

 目の前にカームがコトリと、ハーブティーを置いてくれた。また、クラッカーやチーズなども添えてくれる。


「……ガルドでも、カームでも良いのだけど、状況を教えてくれない?

 どうして、旦那様がここにいるの?」


 寝室に、とはあえてフルールは言わなかった。思い出すだけで苛立ちが込み上げてくる。

 目の前では、どちらがどう話そうか、椅子にも座らず二人が顔を見合わせていた。


「……旦那様がまだですが、待たないのですか?」


「呼びに行きたいなら、任せるわ。子どもではないのだから、放っておいても、一人で降りてこられるでしょう。

 それよりその前に、私は状況把握をしたいのだけど?」


 言いづらそうにしつつカームが確認をしてきたので、フルールも事務的に返す。

 ガルドとカームには、もう白い結婚も三年後の離縁も含め事情を全て話してあるのだ。


 ――関係性なんて、最初から無いもの。


 最初は冷たいし、酷い人だと思った。それは今も変わらない。淑女の部屋に、無断で入るなど何を考えているのか。

 けれど、ガルドやカームを付けてくれたことだけは感謝している。

 それも気を配ってくれてのことだと、後から二人に聞いてフルールは知っていた。


「私には、旦那様のことを何も知らないから、どうすることも出来ないわ」


 そういって、フルールはハーブティーに口をつける。

 ミントに似た物を集め紅茶をベースにブレンドしたハーブティーだ。

 目が覚めるような爽やかさと、深みのある緑を感じる味が身体に沁みた。

 どろどろとした感情も、押し流されるようだ。


「フルールに言われた通り、本邸に行った。報告を色々としてきた」


「旦那様、元々フルールに会うつもりだったみたいで、一度領地の別邸にも向かったようです。本邸の使用人から聞きました。

 旦那様が戻られて少し経った時に、ちょうど私たちがお会い出来た形ですね」


「……え、なんで?」


 ガルドが短く切り出し、カームが補足をした。


 ――旦那様が、あの別邸に?


 フルールは、それに疑問を抱く。あのルゼルヴェの母を見れば、誰だってそう思うだろう。

 恐らくだが息子にさえ、気を配ることが無いと、あの様子では言いきれる。

 用もなく母に会いに行くような血の通った人間には見えない。むしろルゼルヴェは行くことを避けていそうにも感じた。


 それに移動時間を考慮すれば、仕事人間の彼が職場である城から離れている。

 話を聞く限りでは、かなりの期間に渡って仕事をしていないと思う。


「旦那様の事情は分からないですが、とりあえず一緒に来ることになったんですよねぇ」


「……悪い、フルール。白粉の話をした。それには興味を持たれたようだった」


 カームの確信を得ない言葉に、思い出したと決まりが悪そうにガルドが口を開いた。


「ああ、私から話したことだから、気にしなくて良いわよ」


 一方的に話したのはフルールだ。それにガルドの雇用主はルゼルヴェだ。報告をするなという方が無理だろう。


「あ、そうそう。旦那様が王都の白粉を買い集めてました!」


 カームがガサガサと、どこからか大きな紙袋を持ってくると中身をテーブルに広げていく。


「……集めたって。見た目じゃ、粗悪品なんて分からないわよ、バカなの?」


 その白粉の量に、フルールはちょっと呆れた。

 手近な一つを取ってその蓋を開け、中身を見る。真っ白な粉は、パッと見たところではフルールにも分からない。


 ――旦那様ならば、原材料を調べる方が早いだろうに。


 王太子の側近で、侯爵家当主なのだ。調べるくらい容易だろう。

 その的外れっぷりの行動力に、フルールは思わずくすりと笑った。

 物を確かめるために、白粉を指に取ろうと手を伸ばし――。


「――何をしてる!」


 いつの間に降りてきたのか、ルゼルヴェがフルールの手を取り、白粉から遠ざけた。

 フルールは不快感を隠しもせず睨み返す。不快だとルゼルヴェの手を払った。


「旦那様こそ、なんですの? 粗悪品かどうか、本当に健康を害するのか、私に聞きたくて来たのでしょう?

 鉛は、見た目ではまず判別出来ませんわ。塗ってみれば、簡単に分かりますから」


 正確には判別出来ないこともない。でも、誰にでも見える形で説明が可能なことでもない。


 フルールは人よりもおそらく敏感肌だ。前世の記憶を思い出してから、肌荒れを起こしやすい肌質だと気がついた。

 市場のものはどれも刺激が強すぎて、肌に合わなかった。

 自然派の化粧品を、フルールが作ろうとした理由の一つでもある。


 ――だから鉛入りかどうか、私で試せば早いのに。


 侯爵家当主からの指示であれば、フルールはそもそも断れない。


「身体に悪いんだろうがっ」


 眉間に皺を寄せ険しい顔をするルゼルヴェに、フルールも意固地に返す。


「判別の為の少量でしたら、命に別状はありませんわ」


「……誰も、そんなことをしろとは言っていない」


 怒りたいのだろう、ぐっと堪えるように声を抑えルゼルヴェは、フルールの前から白粉を遠ざけた。


「他に何か方法はないのか、君が試す以外で」


 普段カームが座る椅子。そのフルールの隣にルゼルヴェは腰掛け、まっすぐに見つめて問いかけた。

ルゼルヴェの屑っぷりにイライラが溜まるかと思います。

明日は、鉛に関する雑学回をいれてますので、気分転換になれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ