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「好きにして良い」と言われ喜んで家を出た妻は、美容でスローライフを満喫します~関係修復しろと追い出された旦那様お気の毒に~  作者: 松平 ちこ


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15/21

第15話 その再会は突然で意味不明です、旦那様

 リアクション、ブクマ等々、いつもありがとうございます。

 今作のリアクション傾向から、今日、明日わりと好まれる展開だといいなぁと思いながら、改稿重ねていきました。

 すれ違い、まだ始まってすらない夫婦の再会回です( *´艸`)

 ホウホウと、ふくろうのような鳴き声が辺りに木霊する。月明かりもなく辺りは真っ暗だった。

 ざあざあと風が木々を揺らし、まるでフルールを嘲笑うかのようだ。


「やっぱりちょっと、寒いなぁ」


 一昨日は確かに、帰ろうと思っていた。でも、やはりどこかで躊躇してしまった。

 家にいた男たちと、はち会わせたらどうしようと思うと、フルールは意味もなく右往左往していた。


 山は日が落ちるのが早い。麓の森で悩むうちに、辺りは暗くなった。

 見通しの悪くなった視界で、フルールは小さな崖へと足を滑らせ落ちてしまった。


 ――本当に間が悪いんだから。


 採取用の装備ではなかったこともあり、落ちた際に足を挫いて腫れてしまった。

 我ながら、何をしているのだと呆れたくもなる。


 幸い手元には買ったばかりの干し肉や果物があり、飲み水は魔法で出せる。

 急いで帰ることもないかと、フルールは都合のいい言い訳を見つけてしまった。


 崖を背もたれに座り込んで、ただぼうっとしていた。マイナスイオンというのか、森林浴というのか、不思議ととても穏やかに過ごしていた。

 雨が降るなら引きずってでも移動をと思うけれど、幸いなことに晴れていて動く必要が全くなかった。


 日中は過ごしやすくて良いのだけど、夜になると少し肌寒く感じることが難点だった。

 一昨日は、疲れていて案外すぐに寝れたから、まだいい。昨日は、普段は気に留めない星を、眺め数えている間に寝ていた。今日はもう、することがない。


 ――ほとぼりが、冷めるまで……。


 いつかは飽きて無人になるだろう。男が住み着いていたら、それこそ新居を探そうとこの二日で考えることが出来た。


 ――怖くない、怖くない。


 夜はダメだ。一度滅入ると、どうしようもなく人を弱くする。膝を抱えて、フルールは背中を丸めた。

 前世を思い出したフルールが目が覚ますと、今世の両親はすでに居なかった。対面した弟には恨み言を言われた。


「うぅ……」


 家から出るために、療養が終わってから実は夜会にも数回行った。

 マナーは身体が覚えていたが、噂好きの貴族の相手に辟易して、フルールは次第に行かなくなった。


「ばかぁ」


 誰とも知れず、フルールはそう弱音を吐いていた。ずるずるとした考えが、芋づる式に浮かんでは消えていく。


 ルゼルヴェとの結婚が決まって、心機一転と思ったのにうまくいかなかった。

 飛び出した先、気まずいことも多かった。


 やっと新生活を手にして、フルールとして笑えるようになった。

 町民からも受け入れられて、カームとガルドを手放す決意を、ようやく固めたというのに……。


 ――何も噂を聞いて、すぐに物盗りに遭遇しなくても良いじゃないの!


 グリグリと膝に目元を擦りつけ、フルールはきゅっと唇を引き結ぶ。

 こんなところで泣いてしまっては、きっともっとダメになる。


「――っ!」


 バサバサと物音がして、びくりと身体を硬直させる。心臓が、バクバクと嫌な音をたて始めた。


 身を固くしたフルールは、じっとりと汗をかき孤独を耐えた。

 今さら慌てて逃げたところで、もうどうしようもないのだと言い聞かせる。


 ――チカチカする?


 ふと、明かりを感じてフルールは顔を上げた。

 真っ暗な空に、ヒラヒラと飛ぶ輝く鳥を見つけた。


「え、と……?」


 音もなくフルールの元へと降り立った鳥たちは、体を休め寛いでいる。

 フルールはとっさのことに目を丸くして、別の意味で固まった。


 ――これは、なに?


 再びガサガサと音がして、フルールがビクッと身を竦ませる。今度の音は、かなり近かった。


「フルール!」


「……がるどぉ」


 崖の上から、ガルドが飛び降りてきた。

 そのまま、フルールの側に膝を折って屈む。

 久しぶりに会う見知った顔に、安堵からフルールは涙声になっていた。


「探した。こんなところで何を……足、怪我してるのか?」


「……ちょっと、捻っちゃって」


 輝く鳥に照らされて、腫れた足首が露になっている。

 バツが悪そうに、フルールは力なく笑う。

 転んで汚れて、みっともない姿を晒しているが、許してほしい。


「無茶をする。じっとしてて」


「ガルド、それは私の妻だ」


 フルールを抱えようと手を伸ばしたガルドに、固い制止の声がかかる。


「……あれ。旦那様、ですか?」


 ガルドの後ろを見ると、いつからいたのか渋面のルゼルヴェが、上着を脱ぎながらこちらへと歩いてきた。


 ――今、妻って言った?


 フルールに集まっていた鳥が、ルゼルヴェの近くに集まっては消えていく。それを見て、彼の魔法だとフルールは気づいた。


「……君の、夫ルゼルヴェだ。忘れたとは言わせないぞ」


「忘れてはいませんけど……?」


 ルゼルヴェは、フルールの肩へと上着を掛けた。そのまま背中とひざ裏に手を入れ、造作なく抱え上げる。

 その彼の行動に、フルールは戸惑うばかりだ。


「あの、汚れてますから。私はガルドの手を借りますので……。

 旦那様のお手を、煩わせるつもりはありませんわ」


「動くな。落としたらどうする」


 抵抗するフルールに、ルゼルヴェはキッパリと言い放つ。その声はいささか不機嫌そうだ。


 ――突然出てきて、なに?


 フルールは訝しげに眉を寄せる。夫とは言え、ほぼ見ず知らずの男に抱かれても、こちらは落ち着けない。


 フルールとルゼルヴェの間に、戸籍上の接点以外何もなかった。

 そう考えて、ガルドとルゼルヴェが二人で現れたことに、フルールは答えを見いだした。


「ああ! わざわざ、アレの使用感について感想でも言いに来られたのですか? 

 それとも、まとまった数の追加がほしいと言うことでしょうか?」


 ドライシャンプーや簡易リンスは簡単なので、カームが作り方を知っている。

 けれど、石鹸は少し特殊だ。欲しがるのであれば直接来てもなんら不思議ではない。


「はぁ?」


 意外なほど素だろう声を、ルゼルヴェが上げた。その表情は初対面のキツいものではなく、年相応の青年だった。


 ――旦那様もそんな顔をするのね。


 フルールは予想が外れたと、ルゼルヴェを見て首を傾げる。

 何しに来たのだろう、そう思いながら。

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