第11話 うたた寝をした後は、また仕込みです
ブクマ、評価、リアクション、ありがとうございます!
とても嬉しくて感謝感激です( *´艸`)
励みになりますので、これからもいただけると悶えながら頑張ります!
「あー。変なところで寝ちゃった」
フルールは伸びをして身体をほぐす。壁を背に、床に座ったまま寝てしまったらしい。
関節のいたるところが、バキバキと音を鳴らしていた。
液体を加熱して蒸気にし、気化させた後に冷却、再び液体に変化させる工程を踏んで、蒸留をしようと思ったのだ。
結果は失敗。素人のこんな感じだっけ、で作った蒸留装置は空気が漏れ放題だった。
炎が変質した時は思わず、部屋が燃えるかとフルールは焦った。
そしてなんとか鎮火させたと思えば、気づけば爆睡である。数時間は寝ていただろう。
――緊張感が無さすぎだわ。
「でも、魔法って便利なのね。どういう仕組みかしら?」
失敗した装置を片付けながら、フルールは考えた。
空気中の水分を集めてと考えた場合。水素と酸素が結びついてという科学的な要素も、魔法の原理に入ってくるのだろうか。
それでも、質量が合わない摩訶不思議な部分はどうするのだろうか。
それこそ血液と一緒に流れているという魔力で、補われているのかも知れない。
――さっき寝ちゃったのは、魔力の使いすぎ、かしらね。
「……」
フルールは、気持ちがそわそわと浮き足立つのを感じる。顔のにやけが止まらない。
生活に便利な、ちょっとした魔法という固定概念が邪魔をしていた。
違うかもしれないとなれば、試さずにはいられないだろう。
片付けもそこそこに、乾燥予定のみずみずしいハーブを手に取った。
「……」
ハーブを握りしめ、じいっと見つめること数秒――なにも、起こらなかった。
――乾燥、蒸発、イメージが足りないのかしら?
スプリンクラーは、出来た。
濡れた服や部屋から、水分を集めれた。
ハーブから水分を取るのはどう違うのか、と葉っぱをくるくると回しながらフルールは考える。
――植物にも、細胞はあるわね。
表皮があって、養分や水分を貯める役割などを担う基本組織がある。
他にも、人でいう血管の役割の維管束がある植物は多い。
水や養分を運ぶ維管束を利用して切り花などを色水に浸けると、一時的に色を変えることも出来る。
挿し木などでは、この切り口を潰してしまうと、発根がしなかったり根腐れしたり、とうまくいかなくなる。
「水道管って、覚えたわね。懐かしい」
空気中の水分を集めたり、服の表面についた水分を集めたりとは違うのだろう。
下から上に、水分を吸い上げて巡る。逆に反対に巡らせて下から出すのはどうだろうか。
――生理現象として、蒸散を促す?
葉の気孔から水分が出ていけば、と考え唸る。
フルールが、イメージを試行錯誤してふと乾いた音に目を向けると――。
「あれ? いつの間にか出来てた!」
手に持っていたハーブが、カサカサの乾いた状態へと変化していた。手触りだけなら、かなり理想的だ。
「揮発しすぎたのかな」
感動と共に香りを嗅げば残念ながら、なにも香らなかった。
乾いたハーブを手にもったまま、虚しく脱力する。
ハーブはやはり、自然乾燥の方が良いだろう。
――前世でもそういうのあったわね、手間を惜しむと質が落ちるっていう。
テーブルにそのまま上半身を投げ出すと、お腹がきゅうと空腹を訴えた。
窓の外を見れば、日が傾き始めていた。道理でお腹が空くわけである。
――でも、石鹸なら早く作れるかも。
ドライハーブへの時短が出来なくとも、固形石鹸はどうだと考える。
材料を全て混ぜ入れた後の半液状から、水分を飛ばすだけなら、香りを損なうことなく時短になるのでは、と構想を練る。
もちろん試すのは、また後日だ。
夜になると魔法以外の光源がないため、作業に不向きなのだ。
「夕飯ついでに、アレ作ろう」
取り出したのは、ガラス板。汚れを拭き取った後、そこに卵を割り乗せる。
卵をガラス板にまんべんなく滑らせて、ボールに移した。
卵白塗りガラス板は、そのまま乾燥で一晩放置だ。
――明日の楽しみね。
物々交換でもらった野菜を刻み、残った卵と一緒にスープにする。
スライスしたベーコンを炒め、パンに乗せると、そこにチーズをトッピングする。
一人分ということで、かなりの手抜きである。
「ガルドとカームは、ちゃんと旦那様に会えたかしら?」
もそもそと食べながら、二人がいつも座る椅子を何とはなしに見て、フルールは呟くのだった。




