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3話 大人達の戦い

◇◇


「ガキのお守りきちぃー!!でもこれで、退勤いぃいいん!!」


仕事を終えた開放感からゲージを解放する。

誰もいなくなった車内だからこそできる奇行だ。


「金原、まだ僕がいるぴ」


「お前は配慮すべき存在じゃないからセーフだわ」


人が気持ちよく労働解放感を味わっているのに水を差すのは助手席に座るクソナマコだった。


てか、シートに座るぬいぐるみ風のナマコってシュールだな。律儀にシートベルトしてるし。

え?してないと警告音なる?そんな重いの?きっしょ!


「お前よ、あのクソ生意気なメスガキの相手してるこっちの身にもなれよな」


「あの年頃の少女にはあれくらいが普通ぴ。寧ろ命のやり取りしてるにしては安定してる方だぴ」


「どこがだよ。お前今日だって突然不機嫌になったと思ったらさ、やっぱ行くって言ったり訳わかんねえよ」


こちとらついに反抗期が来たかと思って焦ったわ。すぐに頭の中で今回の討伐報酬とイヤイヤ期が長引いた場合の損失で計算したよ。


「あれは‥虫型が悪いぴ。女の子はみんな虫が苦手ぴ。でも根が真面目だから最後は我慢したんだから許して欲しいぴ」


あぁだから虫みたいな見た目のお前も嫌われてるのね。これは流石に俺も口にはしない。


「別に誰だって働きたくない気分はあるからそれは良いんよ。アイツだってまだ中学生だしな。にしたってさ、もっとこう分かりやすいっていうか、従順そうなやつとか幾らでもいるだろ?」


今日なんてアイツ2メートル越えのバッタの化け物相手に超接近戦してたからな。鉞持ってるその姿から金太郎かな?って思ったよ。

俺も警察の人もドン引きだよ。


「完璧な存在なんていないっぴ」


「はいはい、お前は良いよなぁ。選んだらそれでもう終わりだもん。楽な仕事だよなぁ」


「‥‥‥‥僕だって大変だ‥ぴ」


俺の嫌味にナマコは6秒のためを持って答える。

こいつアンガーマネジメントしてやがる。

そう思った瞬間、隣にいるナマコが加齢臭のする中間管理職に見えてきた。


「なんかごめんな‥‥ちょっと言い過ぎたわ」


「良いっぴ。若い頃は自分の事で精一杯になるもんだっぴ。落ち着いてきたら相手の立場とか見えないところの仕事とかも分かるようになるもんだっぴ」


なんかナマコが含蓄のある事言い始めた。

上司と部下かな?


「まぁ楽なだけの仕事はないか‥あー、アイツらも苦労してんのかなぁ?」


「アイツらって同ぴ?」


「そーそー、赤間とか青峰とか」


赤間と青峰は工科時代からの同期だった。

何の因果か、俺同様このナマコ達に選ばれたせいで今やクソガキ共のお守り役を仰せつかった奴らだった。


「2人とも相変わらずみたいだっぴ。公私ともにパートナーを支えてるっぴ」


「はっは、相変わらず振り回されてるのね笑える。アイツらのとこのガキメンヘラぽいもんな。他人の不幸ってマジで最高だわ」


アイツらは俺と違ってガキ戦わせてることに罪悪感とか感じる良い大人だからな。


「最低だっぴ」


「ガキを兵士にしてるお前に言われたくねぇわ」


「えぐい正論やめるっぴ」


「まぁ、それで飯食ってる俺も大概だけどな!

ガキを働かせて食う飯は美味い!」


そうだ。なんだかんだ言ったが、この仕事は金払いが良い。それこそ公僕時代とは比べものにならないくらいだ。


魔法少女の管理監督を行う対魔法種専門補佐官。

補佐官なんてついているが、やることと言えばクソガキのマネージャーみたいなもんだ。

ガキを言いように丸め込んで戦わせるだけの簡単なお仕事。こんなの学校の先生に比べたら、鼻で笑われるようなストレスしかないだろう。


それでも中には、パートナーが傷つくのに耐えきれず病んじまったり、ぐずぐずの依存関係に陥ったりと職業病みたいなもんもあったりするしな。


俺?あのクソガキゴリラが多少傷ついても一杯お金稼いできて偉いねぇくらいにしか思わん。


「てかお前さ、今日は歩叶の方にいなくて良かったのかよ」


「あっちには僕の分身がいるからいいぴ」


分身とかできるのかよ。

なんでもありだな魔法。


「俺も分身してねぇな。それ俺にかけれたりしないの?」


「できるけど、与えられる情報量も倍になって疲労も倍ぴ」


「残業お疲れ様です」


そうやって運転しながらクソナマコにストレスをぶつけていると、見慣れたネオンの光が見えてくる。そしてすぐにカーナビが自宅にについたことを告げる。


「来すぎてカーナビが自宅と誤解してるぴ」


そう苦言を呈しながらももいそいそと準備を始めるクソナマコ。これを教えたのさ俺だけど、こいつも大概である。


「お前、乗り打ちだかんな。分かってんだろ?」


「もうネコババしないっぴ。前のはほんの出来心だっぴ」


どこの世界に乗り打ちで騙す契約獣がいるんだよ。そりゃこいつに選ばれた人間もカスなはずである。


「さて、戦いますか」


そう言って車を降りた俺たちは戦意に満ち満ちていた。さっきまであんなに仕事の愚痴を言っていたのに、戦う顔をしている自信があった。


ガキにはガキの戦場がある。

そして大人には大人の。


今日こそ勝つ。

そんな信念を胸にサンドに万札を突っ込むのであった。

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