第8話 魂の共鳴
大規模討伐の中層。
魔物の残骸が散らばる通路。
薄暗い光が壁を淡く照らしている。
忠臣は剣を握り、
警戒しながら進んでいた。
隣では、
八雲しずくが杖を胸に抱え、
慎重に歩く。
(……不思議だ)
前世の記憶。
異世界の戦場。
勇者カイトと、聖女フィオナ。
その二人の関係が、
今の自分と彼女に
重なって見える。
しかし、それを確かめるすべはない。
突然、通路の先から、
低くうなり声。
「来るぞ!」
斥候の真壁恒一が叫ぶ。
暗闇から現れたのは、
魔力の高い異形のゴブリン。
四本の腕が、
こちらを振りかざす。
「攻撃パターンは複雑!」
颯真が魔法陣を描き、
雷光を帯びた剣で斬りかかる。
忠臣も踏み込み、
剣を交錯させる。
だが、
敵の速度は想像以上に速い。
一瞬、
しずくの後ろに、
魔物の影が迫る。
「危ない!」
忠臣は反射的に、
杖の光が漏れる前に
自分の手で彼女を守った。
その瞬間、
胸の奥で何かが響く。
(……魂の共鳴?)
赤い光と白い光が、
互いに震え、融合するような感覚。
忠臣は足を止め、
目を閉じた。
しずくも同じように、
杖を握りしめ、光を強める。
互いの魔力が、
無言のうちに共鳴している。
その時、忠臣の意識に、
微かな声が届く。
(フィオナ……)
しずくも同様に、
頭の中で聞いたことのある声に
胸を締め付けられる。
(カイト……)
二人の意識は重なり合い、
戦闘の喧騒の中で
互いを無意識に理解する。
「行け!」
忠臣は、再び剣を振るう。
炎迅撃は封じたまま、
通常の剣技で魔物を一掃する。
しずくはその背後で、
光の魔法を広げ、
仲間を癒す。
戦いが終わり、
静寂が訪れる。
二人は互いに顔を見合わせる。
目が合った瞬間、
言葉にならない感情が流れる。
(……この人は、
本当に……)
しかし、
それ以上は分からない。
魂の共鳴は、
異世界の記憶を呼び覚ます力。
だが、現代の二人は、
まだその意味を理解できない。
しずくは口元を押さえ、
忠臣もまた息を整える。
戦場の余波の中で、
心に残ったのは、
確かな違和感と、
どうしようもない懐かしさ。
その感覚は、
二人を引き寄せる運命の前触れだった。




