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第3話 大規模討伐の招集


 探索者ギルド本部、

 地下五階・作戦会議室。


 円形の広い部屋に、

 複数のパーティが集まっていた。


 雷光衆。

 白銀の誓い。

 蒼天の翼。


 それぞれの代表者が、

 円卓を囲んで座っている。


 佐倉忠臣は、

 雷光衆の後方席に腰を下ろしていた。


 視線の先に、

 白銀の誓いのメンバーが見える。


 ――その中に、

 一人の少女がいた。


 黒髪で、

 落ち着いた雰囲気。


 回復師の制服を着た少女。


(……あの人が)


 名前も知らないのに、

 胸がざわつく。


 向こうも、

 一瞬こちらを見た。


 目が合う。


 ほんの一秒。


 それだけなのに、

 心臓が強く跳ねた。


(何なんだ……)


 忠臣は視線を逸らす。


 少女――八雲しずくも、

 同じように目を伏せていた。


 会議室前方のスクリーンが点灯する。


「これより、

 合同大規模討伐作戦の説明を行う」


 ギルド職員の声が響く。


「対象は、

 湾岸第三区地下に出現した

 迷宮型ダンジョン」


 地図が表示される。


「内部で繁殖している魔物の数は、

 推定六百体以上」


 ざわめきが広がる。


「最深部に、

 高位魔物の反応あり。

 討伐目標は、

 それの殲滅だ」


 忠臣は無意識に、

 腰の剣に手を添えた。


 胸の奥が、

 静かに熱を帯びる。


(久しぶりだな……

 この感じ)


 勇者だった頃の、

 戦場前の感覚。


「作戦は三段階」


 スクリーンに図が映る。


「第一段階、

 蒼天の翼が先行し、

 通路の安全確保」


「第二段階、

 雷光衆と白銀の誓いが合流し、

 中層を殲滅」


「第三段階、

 全パーティで最深部へ突入」


 合理的な配置だった。


 蒼天の翼は機動力が高い。

 先行役に向いている。


 雷光衆と白銀の誓いは、

 火力と耐久のバランスがいい。


「質問は?」


 沈黙。


 全員、

 覚悟はできている。


 会議が終わり、

 パーティごとに解散となった。


 通路を歩いていると、

 前方に白銀の誓いの一行が見える。


 その後ろ姿の中に、

 あの少女がいた。


 忠臣は、

 なぜか足を止めていた。


(声をかける理由なんて、

 ないだろ)


 そう思うのに、

 体が動かない。


 すると、

 向こうが振り返った。


「あ……」


 小さな声。


 一瞬の沈黙。


 気まずい空気。


「……えっと」


 忠臣が口を開く。


「佐倉忠臣です。

 雷光衆の剣士」


「八雲しずくです。

 白銀の誓いの回復師」


 互いに名乗る。


 それだけなのに、

 胸が温かくなる。


「討伐、

 一緒になりますね」


「……はい。

 よろしくお願いします」


 ぎこちない会話。


 それでも、

 不思議と心地いい。


「それじゃ」


 忠臣が頭を下げ、

 歩き出す。


 背後で、

 小さな声が聞こえた。


「……カイト」


 聞き間違いかと思った。


 振り返るが、

 しずくは仲間と歩いている。


(今、

 何て言った……?)


 胸がざわつく。


 一方のしずくも、

 歩きながら自分の口元を押さえていた。


(どうして……

 その名前が)


 無意識に漏れた言葉。


 説明できない感情。


 二人はまだ知らない。


 その違和感こそが、

 運命の証だということを。


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