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第2話 白銀の誓いの回復師


 ギルド本部、地下四階。

 そこには回復師専用の治療区画がある。


 淡い白色の光が満ちる室内で、

 一人の少女が膝をついていた。


「ヒール」


 小さく唱えると、

 少女の掌から柔らかな光が溢れ出す。


 床に横たわる重傷者の胸元へと注がれ、

 裂けていた皮膚と筋肉が、

 ゆっくりと塞がっていく。


「……よし」


 八雲しずくは、

 ほっと息をついた。


 年齢は十九歳。

 Aランクパーティ《白銀の誓い》所属の回復師だ。


 肩までの黒髪。

 落ち着いた物腰と、

 優しげな雰囲気を持つ少女。


「助かりました、八雲さん」


 治療を受けていた探索者が、

 深々と頭を下げる。


「いえ。

 無理はなさらないでくださいね」


 微笑みながら答える。


 しずくは自分が

 優秀な回復師だという自覚はある。


 だが、

 なぜそうなったのかは分からない。


 気づいた時には、

 魔法が使えた。


 小学生の頃、

 転んで膝を擦りむいた友達に、

 無意識で手を当てた。


 すると、

 傷が消えた。


 それが始まりだった。


(……普通じゃない)


 ずっと、そう思っている。


 だが怖くはない。


 なぜなら――


(この力は、

 誰かを守るためのもの)


 そう、心のどこかで知っているから。


「しずく、少し休め」


 声をかけてきたのは、

 パーティリーダーの八神剛。


 屈強な体格の盾戦士だ。


「今日は回復量が多すぎる」


「大丈夫です」


 そう答いながらも、

 軽いめまいを感じていた。


 しずくはベンチに腰を下ろす。


 目を閉じると、

 また、あの夢の残像が浮かぶ。


 白い神殿。

 ステンドグラス。

 祈りを捧げる自分。


 そして――


 剣を持った、

 黒髪の青年。


(……カイト)


 なぜその名前を知っているのか、

 分からない。


 会ったこともない。

 現実に存在する人物でもない。


 それなのに、

 胸が切なくなる。


「また、その顔か」


 隣に座ったのは、

 同じ回復師の八雲しずく――ではない。

 八雲しずく自身だ。


 ※修正

 隣に座ったのは、

 同じパーティの回復師――ではなく、

 弓使いの望月さくらだった。


「変な顔?」


「うん。

 遠くを見るような顔」


 しずくは小さく笑う。


「少し、昔の夢を思い出して」


「昔って言っても、

 まだ十九じゃん」


「そうなんだけど……」


 言葉を濁す。


 どう説明していいか、

 分からない。


「ところでさ」


 さくらが声のトーンを下げる。


「三日後の大規模討伐、

 雷光衆も来るらしいよ」


 しずくの胸が、

 とくん、と鳴った。


「雷光衆……」


「Aランクの有名パーティ。

 剣士の佐倉忠臣、

 めちゃくちゃ強いって」


 その名前を聞いた瞬間、

 心臓が大きく跳ねる。


 理由は分からない。


 けれど――


(会ったら、

 いけない気がする)


 そんな予感がした。


 夜。


 寮の自室。


 ベッドに横たわったしずくは、

 天井を見つめる。


「カイト……」


 無意識に、

 その名を口にしていた。


 誰なのかも分からないのに。


 ただ、

 会いたい。


 そんな感情だけが、

 確かに存在していた。


 運命の糸が、

 静かに絡み合い始めていることを、

 彼女はまだ知らない。


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