第16話 戦闘後の安堵
最深部の戦いが終わり、
迷宮に静寂が戻った。
三パーティの仲間たちは、
汗をぬぐい、傷を確認する。
忠臣は剣を鞘に収め、
肩の力を抜く。
視線の端に、しずくがいる。
杖を抱え、仲間に微笑みながら回復を続けていた。
(……やっぱり、頼もしい)
しずくも、
忠臣の動きを自然に意識している。
胸の奥がざわつき、
不思議な懐かしさに包まれる。
「皆、大丈夫か?」
忠臣が声をかける。
八神剛が盾を下ろし、
仲間の無事を確認しながら頷く。
天城竜司も、神崎剣悟も、
互いに笑みを交わす。
戦闘の疲れが残るが、
全員が安堵の表情を浮かべていた。
「ふぅ……
やっと一息つけるな」
颯真が肩の汗を拭きながら、
笑みを浮かべる。
忠臣は少し離れた場所で、
しずくを見つめる。
言葉は交わさない。
だが、互いの存在を
無意識に確認し合っている。
(……この距離感、
不思議だな)
しずくもまた、
杖を抱えたまま忠臣を見ていた。
(……やっぱり、懐かしい)
心の奥で、
何かが静かに動き出す。
戦闘で共に戦った信頼感。
互いを守り合った経験。
それが、
自然に二人を近づけていた。
「忠臣、少し休もうか」
しずくがそっと声をかける。
忠臣は軽く頷き、
隣に並ぶように歩き出す。
通路の奥には、
戦いで倒れた魔物の残骸が散らばる。
だが、二人の間には
もう戦場の緊張はない。
胸の奥で芽生えた感覚。
それは、
異世界での記憶の名残かもしれない。
静かな歩みの中で、
互いの距離は、
少しずつ縮まっていく。
迷宮最深部の暗闇の中、
光も炎も消えた後、
静かに心が通じ合う瞬間があった。
忠臣は心の奥で、
無言の決意を抱く。
(……守る。
必ず、しずくを)
しずくもまた、
無意識に同じ気持ちを抱いていた。
戦闘後の安堵が、
二人の距離を少しずつ変えていく。




