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鎮守の森

作者: kami10enpitu

百人一首にも歌われているけれど

そんな面影を感じることはもう無くて

けれどそんな昔に思いをはせながら

その川沿いの道を歩いて行く

氏神様のお社へと続く道だ


山から吹き付ける強い向かい風に

吹き飛ばされそうになる帽子を

手で押さえながら

川向こうに見えるこんもりとした森を目指す


人気の無い社殿の前で手を合わせた

つつがなく過ごせますようにと

ほんの少しだけ

私の祈りを聞き届けて貰えなかった愚痴を心の片隅にやって


帰路は鳥居をくぐって本殿に向かう参道ではなくて

境内を横へとそれるゆるやかな坂道

いつものルートなのにふと気が付いた

さっきまでの冷たい強風を忘れてしまうくらい

境内は静かで穏やかなことに


坂道の両脇にまっすぐ空へと伸びる木々の幹をたどり見上げた

はるか上空で木々の枝葉は激しく揺れている

やはり風はおさまってはいない


なのに自分のいる境内は

まるで透明のカプセルに包まれているように

どこまでも静かなのだ

ああ 守られている

だから鎮守の森なのだ


そして坂道を覆う木々は

互いに思いやり遠慮し合うように

頂上の枝葉は決して重なることなく

互いの輪郭に沿って微妙な隙間をあけ

雲に覆われた灰色の空を背景に不思議な模様を描いている

そうか鎮守の森なのだ


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