2. 世界を牛耳る女神
半年後、15歳となったリナリアは首席で貴族学院に入学した。
高位貴族で才媛であり、容姿端麗のリナリアは生徒達にとって近寄りがたい存在であったが、下級貴族にも優しく丁寧に接するので、女神のような憧れの女性として男女問わず羨望を集めていた。
チートな頭脳のおかげで、本の内容を全て暗記出来るため、底知れない頭脳の容量を満たそうと、毎日図書室に通い、あらゆるジャンルの本を次々に読破していった。
図書室で本の内容を問いかけてくる生徒達に、その内容を詳細に語るため、次第に、世界を牛耳れる女神と噂されるようになっていったが、本人はマイペースに図書室に通っては黙々と読書をしていた。
――この調子だと、他国の知識も問題なく詰め込めそう。3年あれば、他国の政策から自国に取り込める政策も考えつきそうだし、せっかく前世にはない魔法が使えるんだから、魔法を絡めた新しい政策を考えるのも楽しそうね――
リナリアの父は王宮の経理部に所属しており、兄は宰相補佐室に所属していた。
夕食時に時折、リナリアは考えついた良策を二人に伝えてみた。
「本で読んだのですけど、他国では宝石や金が採れる鉱山の地質を調べて、採れやすい地層を発見したようですわ。おそらく、その地層は我が国にもあるでしょうから、土魔法で所々山の一部を縦に切り開いて、その地層があるかどうかを見つけてみてはどうでしょうか?もしかしたら、新たな鉱山が見つかるかもしれません」
「他国では、地域の気候に合わせて、作物の栽培を行っているようですわ。平均気温が低い地域では根菜類を育てると甘味が増すようです。我が国でも各地の気候に合わせて、作物を育ててみてはいかがでしょうか?」
「今は風魔法で手紙を相手に届けるという方法で遠方とのやり取りを行っていますが、直接声の音波を風魔法で相手に届けることが可能だと思うんです。私、領地にいるお祖父様に届けてみてもいいでしょうか?」
といった具合に… リナリアの考えた政策が父や兄を通して国策となっていき、リナリアの助言により通信魔法が完成された。
リナリアが卒業を迎えた時には、農業、鉱業、建設業、運輸業、情報通信業… といったあらゆる分野がものすごい勢いで発達し、人々の暮らしはとても快適なものとなっていた。
卒業後は、かねてから希望していた外交官になるべく外務部を進路先に選んだが、官邸からは、宰相補佐室配置の連絡が届けられた。
同じ所属となる兄からは、
「他国とのやり取りは通信魔法で現地に行かなくても出来るし、リナが発案した無人航空器で他国を視察も出来るだろ?なので、わざわざ他国に行く必要がない。だから、外交官にならなくてもいいんじゃないか?
国や他の国を豊かにするリナが持つアイデアを、これからは国の中枢で実現させてくれ。俺も一緒に携わるからさ。どんなアイデアが出てくるのか楽しみだよ」
と笑顔で言われた。
――そうなんだよねぇ。記憶水晶を搭載したドローンで他国のこと見れるし、本で他国のことすでに知り尽くしちゃってるから、あえて行く必要ないんだよねぇ……
神様にも、チートで国をよくしますって宣言しちゃったし、このまま突き進むとしますか!――
宰相補佐室で、自国とともに他国がより豊かになる政策を次々に考案し、世界を牛耳る女神との二つ名が世界に拡まっていった。
20歳を前にリナリアは、世界の人々から聖女よりも崇められる存在となっていた。
世界を牛耳る女神には、自国の王子は元より、他国の王太子や王子達から婚約の申し込みが殺到した。
リナリアは、チートな頭脳を持っているとはいえ、恋に憧れる普通の令嬢であった。
貴族学院で同級生だった時に気になっていた公爵令息が、父の所属する経理部に就職していたため、父からのお墨付きもあったので、彼からの婚約を受け入れてデートを重ねた。
才媛ですごい二つ名を持っていたが、公爵令息のキリアンは、リナリアの可愛い物が好きだったり、洋菓子が好物だったりとの可愛らしい令嬢である側面を重視し、普通の令嬢として大切に接して十分な愛情を注いでくれた。
――キリアンを選んで良かった。政策を考えるのは楽しいけれど、キリアンとの家庭を築くのもとても楽しみだわっ。
子育てでも、新しいことをどんどん取り入れて、子供達がもっと楽しめる国を作るわ!――
そして、22歳で職を辞して公爵夫人となり、23歳で第一子を出産したが、それまでにない子供のおもちゃや遊び場、託児所などを考案し、公爵夫人ながら精力的に子育て事業に取り組んだ。
世界を牛耳る女神との二つ名は、リナリアが生きている限り囁かれた。
その世界の寿命である60歳まで生きたが、没後もリナリアの偉業は世界の歴史に刻まれた。
リナリアが幸せな人生を送れたことで、天界の神様はほっと安堵の息をついたのだった。
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