✨第051季 眠れぬ夜の祈り✨
夜は
静かすぎる
眠れない夜ほど
時間は音を失い
思考だけが際立つ
私は横になりながら
天井の白を見つめ
呼吸の数を数える
一つ
二つ
三つ
それは
私の中にある数と
同じだと気づいて
少しだけ胸が詰まる
未来は
昼間よりも
夜に重くなる
昼間は予定があり
言葉があり
手順がある
でも夜は
何もせずとも
不安が
勝手に増えていく
「ちゃんとできる?」
「守れる?」
「もしも……」
問いは
答えを
待たずに並ぶ
私は
法務の世界で
問いには
必ず答えを
用意してきた
想定し
備え
最悪を避ける
それが
誠実だと
信じてきた
けれど今
私の問いには
すぐの答えがない
三つの命
三つの未来
その重さは
論理では
測れない
眠れない夜に
私は初めて知った
答えがない
問いに向き合う
方法があることを
それは
解決ではなく
祈ること
祈りは
弱さではなく
祈りは
逃げでもなく
祈りは
「私は
大切に
思っています」
と世界に伝える
最も静かな
意思表示
そして
私は知っている
この
祈りのそばには
必ず
あなた
りゅう君がいる……
✨第051季 眠れぬ夜の祈り✨
— Prayer in Sleepless Nights / Oratio Noctis Vigilantis —
(Tres Animae — Lux ante Ortum)
眠れぬ夜は
決まって
同じ姿勢になる
左を向いて
膝を少し抱える
お腹を守るように
無意識の動きなのに
そこには
明確な意志がある
りゅう君は
隣で眠っている
眠っている
というより
眠ろうとしている
浅い呼吸
私の呼吸に
自然と
合わせられたリズム
私は
あなたの
眠りを壊さないように
そっと目を閉じる
でも
思考は止まらない
お腹をさすりながら
今日の体調はどう?
食事は足りている?
三人とも
ちゃんと元気?
不安は
善意の顔を
してやってくる
「心配するのは
愛だから」
と言い訳をして
私は
小さく息を吐き
胸の奥で祈る
声には出さない
言葉にすると
怖さが
形になって
しまいそうだから
ただ
思う
どうか
今日も
三つの鼓動が
静かに
続いていますように
りゅう君が
寝返りを打つ
その瞬間
手が私のお腹に触れた
偶然のようで
偶然じゃない距離
握らない
押さない
ただ
そこにある
「……起きてる?」
小さな声
私は正直に答える
「……うん」
「また?」
「……うん」
りゅう君は
それ以上聞かない
理由も
内容も
求めない
代わりに
呼吸を深くして
私の方に身体を寄せ
「大丈夫だよ」
その言葉は
励まし?
保証?
ただ事実として
隣に置かれる
大丈夫かどうかは
分からない
でも
「一人じゃない」
という事実だけは
確か
病院の日々が始まる
検査・結果数値・説明
私は
担当医師様の
言葉を
一つ一つ受け取り
りゅう君は
いつも隣にいる
椅子の位置
立つ場所
担当医師様を
うかがう角度
全部が
「私、綾音を中心に」
配置してくれている
でも
夜になると
また眠れなくなる
点滴の音
廊下の足音
遠くのナースコール
私は
天井を見つめながら
ひたすら
祈る……
どうか
私の身体が
三人の居場所で
あり続けますように
どうか
この小さな揺れが
恐怖ではなく
成長でありますように
りゅう君は
私の祈りを邪魔しない
代わりに
自身の祈りを
静かに重ねてくる
「……一緒に迎えよう」
それは
未来への約束であり
今を生きる覚悟
出産の日
時間は
音を取り戻す
医師の声
機器の音
そして
私の中から
外へ向かう
大きな流れ
怖い
でも
祈りは
ここまで私を運んできた
りゅう君は
私の手を握り
離さない
「ここにいる」
それだけで
私は進めることが……
産声
一つ
また一つ
そして
もう一つ
泣き声は
小さくても
力強く
世界に向けて
放たれた
三つの意思
私は思わず
感涙
それも
声を出して……
初めて
祈りが
言葉になり
ありがとう!
来てくれて
ありがとう
りゅう君は
私の額に
そっと触れて言う
「……よく頑張ったね」
私は首を振る
「違う……
りゅう君と
一緒に
お祈りしたから……」
眠れぬ夜は
終わった
でも
祈りは終わらない
それはもう
不安から生まれる
祈りではなく
存在そのものを
祝う祈り
三つの小さな命は
私とりゅう君の間に
確かな重さで眠っている
母子ともに健康
その言葉は
結果であり
奇跡であり
多くの祈りが
重なった証
私は思う
祈ることは
未来を信じるのだと
眠れなかった夜は
私を
弱くしたのではなく
丁寧にした
恐れを否定せず
愛を誇張せず
ただ
隣にいる
それが
私達の家族の
始まり方
次の季節
✨第052季 小さな3つの旅人✨
そこでは
この世界に
降り立った三人が
それぞれのリズムで
旅を始める
泣くこと
眠ること
飲むこと
すべてが冒険
私はママとして
りゅう君はパパとして
この小さな旅人たちの
これからのみちしるべに
怖さは
もう敵じゃない
それは
愛が
動いている証拠
祈りの夜を越えて
私達は
今日から
歩く
三つの命と一緒に……




