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⭐️色褪せることのない絆⭐️ ✨️EMPATHY 大隅綾音と魚住隆也✨️  作者: 詩野忍


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44/60

✨️第040季 指輪の候補✨️

 挿絵(By みてみん)

 隆也が

  「結婚しよう!」

 と言う前に

 私はもう

 その言葉の影を

 何度も見ていた

 何気ない日常の

 私、大隅綾音と魚住隆也

 の空間の中で

 私の指先が

 少しづつほつれた時

 隆也は微笑み穏やかな目で

 私を見つめ手を取り

 お互いの

 直すべきところを

 これから先

 同じ場所で

 一緒に直していく

 優しい目

 私への

 プロポーズの日

 隆也の声は

 驚くほど静かで

 私の心の音だけが

 はっきり聞こえ

 返事をした時

 世界は祝福で

 騒がしくなるのではなく

 むしろ反対に

 余計な音が消え

 大切なものに近づくと

 雑音は静かに

 音もなく消え去る……

 そして今日

 JR名古屋高島屋の中にある

  「AHKAH」

 へ向かい

 ヴィヴィアンブリリアンのエンゲージメントリングと

 ティナリング ハーフエタニティー1.9mm

 のサイズ調整へ

 その言葉には

 私には儀式の

 名に聞こへ

 私の左手薬指に

 未来への

 愛情と

 私と隆也の絆のために

 ほんのわずかな

 誤差を整える

 指輪 : リングは

 決意を飾るものではなく

 日々の

 ともに触れていく事に

 リングは私に問いかけるだろう

  「今日も

  同じ方向を見てる?」

 と

 隆也は

 私の横で急がない

 選ばせてくれる

 というより

 私が選ぶ速度を守り

 隆也

 の優しさは

 甘さではなく

 庇護

 私は思う

 二人の結婚は

 人生に新しい頁を

 挿むのではなく

 今ある頁のページに

 二人の筆跡が

 自然に重なっていくこと

 その1ページに

 今日は

 左手薬指手に

 光とリング

 連なりの線

 そして隆也はきっと

 改めてさりげなく

 私の心が

 息を整えた瞬間を

 見計らって

 言ってくれる


  「あや様

   結婚しよう!」

 挿絵(By みてみん)

 輪は

 誓いの形ではなく

 呼吸の形

 ひと粒の光は


  「はい!」


 と言った日の

 心の残響を

 閉じ込める

 連なる小さな石は

 何度も何度も繰り返す

  「今日」

 を飾る

 私は指を差し出し

 りゅう君

 あなたは

 時間を差し出す

 その交換だけで

 未来は静かに整う

 のです

 挿絵(By みてみん)

 私、大隅綾音は

 地方公務員上級に合格

 任地がNatural Science Museum . GAMAGŌRI

 に採用決定

 魚住隆也

 りゅう君は

 愛知県教員採用試験に合格

 任地が愛知県立蒲郡西高等学校

 に採用決定

 挿絵(By みてみん) 

 お約束の

 りゅう君より

 プロポーズを頂き

 私は

 もちろん


   「はい!」


 今日は

 エンゲージ&マリッジリング

 のサイズ直し

 JR名古屋高島屋に到着

 名古屋駅コンコース

 通路は相変わらずの雑踏

 でも

 いつもより

 少し柔らかく感じた

 私達の歩幅は

 一つのリズムで

 落ち着いている

 りゅう君は

 私の半歩右にいる

 並んで歩くと

 りゅう君の存在は

 二人のFigure - Eight Knot

 掴まらなくてもいい  

 けれど

 必要ならいつでも

 触れられる距離

 私はその距離に

 何度も救われてきた


   「あや様

    緊張してる?」


 りゅう君が尋ねる


   「少し……

    ……でも

    変な緊張じゃない!」

   「うん

    分かる!」


 分かる…… 

 という言葉が

 今日ほど頼もしく

 響く日はない

 説明しなくていい

 言い換えなくていい

 りゅう君は

 私の心の輪郭を

 丁寧に撫でてくれる

 挿絵(By みてみん)

 『AHKAH』

 の前に立つと

 ガラスの向こうの

 光がこちらへ

 手を振るように揺れた

 白い照明

 鏡の反射

 そして

 まばゆい

 きらめき

 美しさは

 しばしば

 強さを伴う

 目を

 逸らしたくなるほどの

 正しさのような輝き

 けれど

 輝きに飲まれない

 りゅう君は

 光を

  「見る」

 より先に

 私の横顔を

  「確かめる」

 私が

 どこへ視線を置き

 どの瞬間に

 息が浅くなるか

 それを

 知って

 いてくれている

 だから私は

 なぜか

 安心してしまう

 

 ヴィヴィアンブリリアン

 名前の響きに

 少しだけ物語が混じる

 ブリリアントカットの鋭さと

 ヴィヴィアンという柔らかな輪郭

 左手薬指に通した瞬間

 リングは

  「ここだよ」

 と言った気がした

 違和感はない

 ただ

 私の指が

 少しだけ

 慎重になる

 大事なものを

 持ったときの

 自然な重心の移動

 りゅう君が

 私の手元を見て

 短く息を


   「似合う!」


 その言葉に

 私は自身の心が

 ふっと軽くなるのを感じる

 挿絵(By みてみん)

 次に

 ティナリング

 ハーフエタニティー1.9mm

 連なる小さな石たちは

 派手に主張しない

 むしろ

 朝のおはよう!

 一緒にいたたきます!

 二人で行ってきます

 二人で行ってらっしゃい!

 二人でおかえり!ただいま!

 生活の粒のよう

 小さな確かさ

 私はこのリングに

 未来の

  “普通の二人”

 を見

 特別な日だけではなく

 何でもない日が

 愛おしい日になる

 私の胸の奥で

 何かが静かにほどけていく

 未来のために

 今の心を丁寧に扱う

 来る式まで

 リングは

 一度私の指から離れ

 しばしの間

 私の左手薬指は

 少しだけ寂しい

 先程まであった

 左手薬指の周りに

 残像を置いていく

 りゅう君は

 私の手を取り

 指輪のない薬指を

 りゅう君の手が包む


   「このままでも

    似合うよ」


 私が微笑みむ

 りゅう君は

 一瞬目を伏せた


   「……それ

    ずるい」

   「何が?」

   「言いたくなる」


 心臓が跳ねた。


   「何を?」


 分かっているのに

 私は聞き返す

 聞き返すことが

 怖さの形を整える

 りゅう君は

 少しだけ

 声を落とし


   「結婚しよう!

    って!」

 挿絵(By みてみん)

  “ほのめかし”

 は光より温かい

 私は

 その温かさに

 耐えきれなくて

 微笑み

 涙の手前の


   「りゅう君

    もうしてくれたじゃない!」

   「うん

    でも……」


 彼は言い淀む


   「でも何?」

   「何度でも言いたい!」


 その瞬間

 私は理解した

 りゅう君にとって言葉は

 1回のみの宣言ではなく

 日々の

 確認であり

 更新であり

 誓約書の署名ではなく

 毎朝の捺印なの


 リングの

 僅かな調整

 数値の小さな差

 それは

 私とりゅう君にとっての

 一生に寄り添うことになる

 私は思う

 私達のこれからの道も

 すれ違いの原因は

 たいてい小さな差

 言い方

 タイミング

 疲れの度合い

 等々

 けれど

 その小ささを放置すると

 いつか痛みになる

 だから

 気が付いたら

 直ぐに整える

 小さな差を

 見逃さず

 誠実に手入れする

 挿絵(By みてみん)

 結婚とは

 きっと

 そういう作業の連続だ

 指輪のサイズ調整のように

 気づいた時に直す

 黙って放置しない

 相手を責めない

 合う形を

 一緒に探す


 もう一回

 サイズ合わせ

 リングが戻り

 私は息を整える

 左手薬指に通す

  ぴったり!

 数字が合ったというより

 物語が合った

 私は指を

 軽く曲げ伸ばしして

 確かめる

 違和感がない

 生活が想像できる

 私とりゅう君の

 共同生活が始まれば

 これをつけたまま

 買い物も

 仕事も

 雨の日も

 眠る前の歯磨きも

 全部できる

 それが一番嬉しい

 日々に馴染む美しさほど

 強いものはない


 りゅう君が

 私の手を見て

 まるで誓文を

 読むような目をし


   「……ねえ

    あや様?」

   「なーに?」

   「帰ったら……」


 りゅう君は

 少しだけ息を吸い

 言葉を選び


   「新築の

    あや様と私の

    棲家のプランの話をしよう」

 挿絵(By みてみん)

 新築の二人の棲家

 私は胸の奥が

 静かに鳴るのを感じ

 家という言葉は

 場所ではない

 呼吸の仕組み

 誰と

 どんな音を

 どんな温度で

 繰り返す事


   「うん!」


 私は頷いて

 りゅう君は目を細め


   「じゃあ

    ……結婚しよう!」


 今度は

 ほのめかしではなく

 叫びでもなく

 普段の声量での一言は

 私の全身にゆっくり染み

 私は微笑み

 そして

 落涙


   「はい!」


 返事は

 たった二音

 けれどその二音で

 私達の未来は

 名古屋の夕方の

 光の中に

 静かに形を持つ

 名古屋駅コンコースの

 人の波は変わらず流れ

 けれど私はもう

 流されない

 隆也の手が

 私の手を

 引くのではなく

 支えている。

 帰り道

 映る私たちの影が

 短く揺れ

 また重なる

 私は思う

 指輪は

 誓いの証拠ではなく

 誓いは

 毎日行い

 指輪はその

  “毎日”

 を忘れないための

 静かな合図

 そして

 りゅう君は

 合図を軽く扱わない

 だから

 私、綾音は

 安心して

 未来を

 預けられる……

 挿絵(By みてみん)

 候補

 という言葉は

 まだ決まっていない

 曖昧さを含む

 けれど私は今日

 曖昧さが

 必ずしも弱さではないと

 知った

 むしろ

 選択の前に

 立ち止まる事こそ

 本当に大切なものを

 壊さずに守れる

 リングのサイズの

 修正は

 私、綾音とりゅう君

 私達が

 これから

 重ねていく日々の

 姿に似ていて

 ほんの僅かな

 違和感に気づいた時

 お互いに直すことを怖れず

 お互いに相手を責めず

 お互いにより良い形を一緒に探す

 愛は

 感情の奔流ではなく

 お互いの手入れの技術でもある


 りゅう君が

  「結婚しよう!」

 と言った声は

 光よりも確か

 大声ではなく

 逃げない声で

 これからの二人

 暮らしの中で

 繰り返し言える声

 私はその声を受け取って

 ようやく分かった

 結婚とは

 未来を

  “決める”

 ことではなく

 二人でともに

 未来を

  “育てる”

 ことなのだと

 次回

 ✨️第041季 木造の家の息づかい✨️

 二人の夢が詰まった棲家を建ち上げ

 木の香り

 床のきしみと

 柱の力強さ

 家は

 設計図だけでは夢物語

 暮らしの呼吸が入り

 笑顔が満ち

 たくさんの言葉が宿り

 季節の風が通り抜け

 ようやく家になる

 私達は

 どんな朝の光を迎え

 どんな日々をすごし

 どんな夜の静けさを

 守るのだろう

 リング

 が指に馴染むように

 家もまた

 私達の名前を覚えていく

 その第一歩を

 次の季節で紡ぐ……

 挿絵(By みてみん)

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