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⭐️色褪せることのない絆⭐️ ✨️EMPATHY 大隅綾音と魚住隆也✨️  作者: 詩野忍


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33/63

✨第029季 つぼみの願い✨

 挿絵(By みてみん)

 移りゆく季節は

 まだ

 咲いていない

 草木花へ

 やさしく

 光を分けて

 くれる

 私と隆也

 二人歩む坂道の

 両側で

 固い蕾を

 抱えたままの草木花

 風に揺れて

 蕾の一つ一つが

 自身からの色を選び

 自身の形を

 決めていくように

 私と隆也の

 人生もまた

 まだ

  「決定」

 ではなく

  「予感」

 にすぎない

 のかもしれない


 大学卒業後の

 進路の話を

 隆也と

 真面目にするように

 なったのは

 三年生

 彼は

 愛知県の教員採用試験に合格し

 東三河の県立高校で

 日本史を教えたいと

 その隆也の姿を

 想像すると

 胸の奥で

 祝福の小さな鐘が

 鳴ります

 がんばって!

 私は

 地元の蒲郡市の

 職員上級採用試験に挑戦!

 それが

 私と隆也の

  「つぼみ」

 の形

 そして

 二人の目標が

 かなったら

 その先をどうする?

 それは

 図書館帰りの

 坂の途中で

 隆也が

 声を震わせながら

   「綾音の住む

    蒲郡市の栄町に

    土地を購入し

    二人の夢を

    全部詰め込んだ家を建て

    生涯ともに

    一緒にがんばろう!」


 その言葉は

 まだ花になりきれない

 つぼみの奥で

 そっと灯りを

 点けたようで

 現実的には

 勉強も試験も

 達成するための

 課題は山ほど

 残っています

 合格は約束されていないし

 人生は

 予定通りにはいかない

 ことはわかっている……

 それでも

 私は

 この

 私と隆也の二人の

  「つぼみの願い」

 を信じたいのです


 いつか必ず

 咲かせる!と

 二人で誓う

 移りゆく季節の記憶を……

 挿絵(By みてみん)

 蕾はまだ

 どんな

 草木花になるのか

 知らない

 ただ

 季節という名の光に

 そっと肩を

 押されているだけ

 私、大隅綾音は 

 朝

 並木道が

 季節にあわせて

 うっすらと

 色づき始めている

 草木花をみつめる


  「若葉色って

   五感で言うと

   何色?」


 そんな

 意味のわからないことを

 朝から口にした私

 隣を歩いていた

 魚住隆也は

 微笑み

 私に振り向く


   「綾音の

    比喩方法はいつも

    大切ことを習ってる

    気がする

     ありがとう!」


 二人にっての

 こんな何気ない 

 会話こそが

 本当は

 一番大切な事

 それは

  「私と隆也が一緒に見た景色」

 をどう胸の中に

 しまっておくとか

 挿絵(By みてみん) 

 私と隆也の 

 日課の図書館での

 勉強会

 隣り合って合って

 参考文献や資料と

 一緒に綴られる

 進路という名の

 未来地図


   「綾音!

    聞いて!

    もし私が

    愛知県教員採用試験に合格して

    東三河の県立高校に

    採用が決定したら……」


 いつもより

 ページをめくる指が

 ゆっくりになる


   「高校で日本史を

    教えたいんだ 

    生徒諸君には

    “あ、世界の見え方が一個増え変わった!”

    って 思ってもらえる

    授業をしたい」


 隆也の横顔の輪郭を

 やわらかく縁取る

 私はシャーペンを置いて

 胸の奥で

 ひとつ深呼吸をした


   「私は

    蒲郡市職員上級採用試験を

    チャレンジする!

    地元に残らなければならない

    理由があるの」


   「蒲郡で?」


 隆也の瞳の中で

 海の色を思わせる

 光が揺れた。


   「そう……

    先日私の自宅に来てくれた時

    私の姉に会ってくれたじゃない

    本当は姉が

    今の家を継ぐはずだったの……

    でも

    籍が抜け苗字が変わっちゃって

    私が

    家を継がなきゃいけない 

    が地元に残る理由……

    姉がいたのは

    父が不在を知って」


 つぶやきながら

 私自身自分

 でも気づいて

 いなかった

 本心が

 すっと

 言葉に

 なっていくのを感じた


 それを聞いた

 隆也は

 しばらく

 何も言わずに

 私を見つめていた


 やがて

 ゆっくりと

 私の青いノートに

 文字を書き始める


  「私と隆也の   

   つぼみの願い」


 私の名前と

 隆也の名前と

 小さなつぼみのように

 そっとくっつけて


 夕方

 図書館を出ると

 季節の変わり目の

 少し冷えた風が

 私と隆也の

 頬を撫でていく

 私と隆也

 肩を寄せ

 いつものベンチに

 並んで座る

 沈みかけた

 陽射しが

 窓ガラスに

 小さな炎を

 乱反射しながら

 点していた


   「さっきの話の続き

    してもいい?」

 挿絵(By みてみん)

 隆也の声は

 さっきより

 少しだけ低くて

 どこか

 決心の温度を

 帯びていた


   「もし

    私が東三河の県立高校で

    教壇に立てるようになって

    綾音が

    蒲郡市の職員として

    街を支える側に立てたら……」


 隆也は

 ゆっくりと

 息をのみこみ

 それから

 真正面から

 私の名を呼び


   「綾音!

    その時は

    御父様を

    私が説得するから

    綾音の地元の

    蒲郡市栄町に

    土地を取得し

    二人の

    夢を全部詰め込んだ

    家を建てて

    生涯ともに

    一緒になって

    がんばっていこう!」


 隆也の言葉という水が

 私の胸の土の上に、

 静かに注がれていく


 現実的な

 条件を数え上げれば

 不安材料は

 いくらでもある


 父の大反対

 試験に

 不合格になる

 かもしれないこと

 お金のこと

 仕事のこと

 健康のこと

 未来の将来のこと


 だけど

 今はただ

  「一緒にがんばろう」

 と隆也が言ってくれた

 その事実だけが

 私の中の

 小さなつぼみを

 静かに震わせていた


   「そんな

    大事なプランを

    さらっと言わないで」


 微笑もうとも

 でも

 上手に微笑む事が……


 頬が熱くなり

 視界の端に

 夕焼けの

 茜色が広がる


   「隆也……本気で

    言ってる?」


   「本気じゃなかったら

    こんなに手

    震えてないってば!」

 挿絵(By みてみん)

 隆也は

 膝の上で

 握った

 手のひらを見せて

 照れ隠しみたいに

 その震え方が

 なぜか

 私の心の震え方と

 同じリズムだと気づく

 そのとき

 私は

 やっと

 ゆっくりと頷いた


   「じゃあ

    約束しよう」


 私の青いノートに

 私と隆也

 走り書きのように

 小さな条文を書いた


   ⭐️第一条⭐️ 

    ✨️それぞれの目標に全力で向かうこと✨️


 

   ⭐️第二条⭐️

    ✨️途中で不安になったら

     きちんと言葉にして何度でも相談すること✨️


   ⭐️第三条⭐️

    ✨️二人も合格したら

     蒲郡市栄町に

     二人の夢を詰め込んだ

     家を建てる計画を

     本気で具体化すること✨️


   ⭐️第四条⭐️

    ✨️たとえ計画が

     少し遅れたり

     違う形になったとしても

     「生涯ともに一緒になってがんばろう」

     という

     この約束だけは

     決して手放さないこと✨️


 署名欄に

 

  「大隅綾音」と「魚住隆也」


 幼いころ憧れた

  「大人の契約書」

 みたいに

 少し背伸びをした字体で


 つぼみは

 まだ咲かなくていい

 咲く前の季節を

 体感しよう!

 風の向きを覚え

 雨粒の重みを知り

 陽射しの温度を

 測りながら

 私自身自がどんな色で

 隆也ののために

 どう咲きたいのかを

 ゆっくりと

 ともに選択すれば

 いい


 私の

  「つぼみの願い」

 はたとえ

 乗り越えられない

 かもしれない

 困難に遭遇しても

 決して諦めない!

 隆也彼と並んで歩き

 一緒に克服する

 未来は

 一つ一つ少しづつ

 思い浮かべ

 実現していく……


 夢見る

 蒲郡の栄町で

  「私と隆也の二人の家」

 玄関を開けたら

 海の香りが

 ほんの少し入り込む

 位置に

 小さなテラスをつくる

 キッチンは

 隆也、未来のこども達の

 お顔をいつも見てれて

 朝の光が

 まっすぐに

 いっぱい

 入ってくる窓

 リビングには

 大きな

 ダイニングテーブルを

 隆也、未来のこども達と 

 わいわいがやがや 

 笑顔が絶え間ない空間

 そんな夢を

 青いノートに

 描きながら


   「2階は4部屋にしない?

    1部屋は私達

    3部屋は子ども達用!」


   「父を説得してもいないのに!

    手強いわよ!」


 隆也をおどかす!


 そのすべてが

 まだ現実には

 存在しない

 だけど

 確かにここにある

 胸の内側

 まだ

 形になりきれない

  「つぼみ」

 の部分に


 私と隆也は今

 そっと指先で

 触れている


   「ねえ隆也」

   「ん?」

   「この約束

    もし

    どちらかが

    途中で

    挫けそうになったら

    そのときは

    “二人で”

    やり直そう!」


 一人で抱え込まないこと

 夢は

 二人で支えあうものだと

 この春

 やっと学びはじめたから

 挿絵(By みてみん)

 隆也は

 真面目な顔で頷いたあと

 いつもの、

 すこし不器用な笑顔を見せ


   「大隅綾音!

    これは

    魚住隆也

    の人生で

    一番大切な

    “未提出の願書”です!」

   「え?」

   「締切は一生

    提出先は

    君、大隅綾音だけ」


 そんな青い言葉に

 私、綾音は

 どう返事をしていいか

 分からなくて

 ただ

 胸の奥で

 小さなつぼみが

 ひとつ

 静かに

 ほどけていく

 音を聴いていた


  この音を

  私、綾音は忘れない!


 いつか

 仕事で

 くじけそうになった夜も

 疲れて帰ってくる彼を

 うまく励ませなかった夕暮れも


 この

  「つぼみの願い」

 の音だけは

 きっと

 私のどこかで鳴り続ける


 つぼみは

 願う

 まだ見ぬ

 花の形で

 まだ知らない

 季節の光を


 私は

 願う

 未来や将来がどうなろうとも

 それでも

 手を離さない

 二人でいることを

 そして

 いつの日か

 必ず

 蒲郡市栄町の

 庭の片隅で

 季節の風に

 揺れる木々の蕾たちと

 私と隆也ともに

 並び

 感じよう!

 そして

  「やっと咲けたね!」

 私と隆也

 と二人

 微笑み合える日が

 来ることを……

 挿絵(By みてみん)

 私自身に

 問いかけ

 私は

 この願いに

  「責任」

 を持てる?

 約束は

 簡単に

 口にする

 けれど

 私と隆也の

 人生の約束は

 ロマンティックな

 言葉として

 ではなく

 大切な

 日々の選択と

 努力の総和として

 背負っていく

 私、綾音の

 蒲郡市職員上級採用試験も

 隆也の

 愛知県教員採用試験も

 決してたやすい

 門ではなく

 どちらか

 が先に合格し

 どちらか

 が何度も受験を

 重ねること

 になるかもしれない

 それでも

 私と隆也は

 この

  「つぼみの願い」

 を一つ心深いところに

 静かに置く


 どんな

 結果になろうとも

 私と隆也

 二人で支え合って

 生きていく!

 と決めた!


 季節の変わり目

 私の青いノートに

 私と隆也が書いた

 約束は

 よわいを重ね

 振り返れば

 拙くて

 青くて

 私と隆也

 くすくす!

 って微笑むかも

 それでも

 今の私、綾音は

 何より

 もまぶしい

  「原点」

 の一つ……


 次の

 ✨️第030季 紙片に閉じた秘密✨️

 では

 この約束を

 書きつけた

 青いノート

 私と隆也

 の時間の中で

 どのように修正され

 どのように清書され

 そして

 どのように製本され


 ✨️紙片に閉じた秘密✨️

 として

 静かに

 私と隆也

 二人の心を

 紡いでいきたい

 現実という名の

 疾風に

 揺さぶられる日々も

 すべては、

 この小さなつぼみが

 確かな花になるための

 通過儀礼

 どうか

 移りめく次の季を

 隆也、あなたの指先にも

 大切な二人の約束の

 かすかな温度が

 伝わりますように

 大隅綾音としての

 私の

  「つぼみの願い」

 をここにそっと

 綴りおき……

 挿絵(By みてみん)

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