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⭐️色褪せることのない絆⭐️ ✨️EMPATHY 大隅綾音と魚住隆也✨️  作者: 詩野忍


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32/61

✨️第028季 春の影法師✨️

 挿絵(By みてみん)

 影の形

 心の形

 石畳を歩く

 必ず足元に

  「もう一つの私達」

 が現れ

 伸びたり

 縮んだり

 重なったり

 少しだけ

 離れたりする

 私、大隅綾音と魚住隆也

 二つの影

 ✨️第027季 曖昧な距離✨️

 私は隆也と

 一緒に

  “ちょっとだけ嫉妬できて

   ちょっとだけ安心できて

   ちょっとだけ踏み出せる距離”

 を青いノートの上に

 言葉として

 描きました

 あのページは

 今も私の心の中で

 うっすらとした

 鉛筆の

 下書きみたいに

 残って

 でも

 言葉に

 したからといって

 それで

 安心できるほど

 私の心は

 単純ではなくて

 むしろ

  「じゃあ

  実際の私と隆也

  どんな姿で

  並んでいるの?」

 という

 新しい問いが

 生まれてしまい

 教室に向かう朝

 駅から大学までの道

 図書館へ続く

 緩やかな坂道

 私と隆也の

  「影」

 はいつも

 そこにいます

 少し

 前を歩くとき

 ぴったり

 横並びの時

 なんとなく

 一歩分だけ

 後ろに

 退いてしまう時

 影の距離を

 見ていると

 私と隆也の

 心の距離まで

 透かし

 見られて

 しまうような

 気がして

 つい

 足もとから

 目を逸らしたくなる

 瞬間もあり

 だけど

 移りゆく

 太陽の光は

 とても正直で

  「今の私と隆也

   二人は

   こう並んでいるよ」

 と

 光と影で

 ありのままを

 教えてくる

 この

 ✨第028季 春の影法師✨

 では

 私、大隅綾音が魚住隆也

 と並んで歩く

  「影」

 の形を通して

  “私たちの現在地”

 をもう一度

 ゆっくり確かめて

  恋人

 と呼ぶには

 目の前

 なのだけれども

 まだ

 どこか照れくさくて

 友

 と呼ぶには

 もう

 胸が大騒ぎする

 そんな

 私と隆也の

  「中間地点」

 に季節の光が

 どんな輪郭線を

 引いてくれるのか?

 足元に

 揺れる影法師を

 見つめながら

 私は

 今日もそっと

 心のペンを執る……

 挿絵(By みてみん)

 午前の講義が

 終わるころ

 教室の窓から

 射す光が、

 少しだけ

 角度を

 変え始め

 机の上の

 ノートの端に

 細長い影が

 生まれる


 私はふと

 私自身の

 手の影を見つめ

 ペンを

 握る指先の

 黒い形が

 わずかに

 震えている

 それは

 なぜって?

 このあと

 廊下で

 待ち合わせしている

  「誰か」

 を意識しているから……

 私自身が一番

 よく知っている


   今日も

   一緒にお昼

   どう?


 朝

 蒲郡から

 豊橋駅に向かう

 列車の中で

 隆也から

 届いたメッセ

 私の心拍の

 リズムを

 変える

 ……いつも……


 私はわざと

 ノートを

 ゆっくり閉じる


   急がなくても

   大丈夫!

   隆也は

   ちゃんと

   いつもの場所で

   待っていて

   くれるから


 そう思うと

 ほんの少しだけ

 胸の奥の

 緊張がほどける

 教室を出て

 光の差し込む

 廊下に出ると

 床に真っ直ぐ伸び

 窓枠の影が

 等間隔に並び

 その先

 いつもの場所……

 隆也が

 私に気づいて

 顔を上げる

 挿絵(By みてみん)

   「綾音!

    お疲れ様!」

   「……お待たせ!」


 その瞬間

 私と隆也の影が

 床で交差する

 言葉よりも先に

 足もとが

  「会えたね!」

 と言っている

 みたいで

 私は

 少しだけ

 視線を

 落としてしまう


   「学食

    混んでそう……」

   「うん……

    外でサンドイッチどう?

    あのベンチ行く?」


 そんな

 他愛もない

 相談をしながら

 私と隆也は

 少しずつ

 歩幅を

 合わせていく


 最初の数歩は

 私の影が

 半歩分ほど

 前に出ていて

 次の数歩では

 隆也の影が

 さりげなく

 追い越す


 やがて

 どちらから

 ともなく

 速度を調整して

 二つの影は

 ほとんど

 ぴったり!と

 並び始める


   影って

   正直だなぁ……


 思わず

 心の中でつぶやく

 私と隆也が

 話題を

 迷っている時は

 影も

 どこか

 落ち着きなく

 揺れていて

 些細なことで

 笑い合って

 いる時は

 影の肩と

 肩の距離が

 不思議なくらい

 すっと

 近づいている


 外へ出る

 ドアを

 押し開けると

 季節の光が

 一気に

 まぶしくなり

 雨上がりの

 空気は

 ほんのりと

 湿っていて

 芝生の

 緑の香りと

 アスファルトの

 残り香が

 混ざり合い

  “新しい午後”

 の香りがした

 挿絵(By みてみん)

 キャンパスの

 中央の道を

 私と隆也は

 並んで歩く

 足もとには

 薄い金色の

 光をまとった

 二つの影


   「ねえ隆也!」

   「ん?」

   「影って

    なんか

    “正直なログ”

    みたいだよね」

   「ログ?」

   「そう

    今日

    私と隆也   

    どれくらい近く

    歩いてたかとか

    どのタイミングで

    離れたかとか

    本当は全部

    影に

    記録されてる

    気がするの」


 隆也は

 少し微笑み

 足もとの

 影を見た


   「じゃあさ

    “影ログ解析”

    したら

    今日の

    綾音の気持ち

    全部バレちゃう?」

   「あ!

    それは困る……かも」

   「どうして?」

   「だって

    “ちょっとだけ”

    の嫉妬とか

    “ちょっとだけ”

    の勇気とか

    そういうの

    まだ

    うまく言葉に

    できないから……」


 私がそう言うと

 隆也は

 ほんの少しだけ

 自分の歩幅を狭めた

 私と隆也

 二人の影の肩が

 さっきよりも近づく

 それは

 言葉に

 しないまま

 交わされた

 ささやかな

  「了解!」

 みたいで

 胸の奥が

 静かに

 暖かくなる


 サンドイッチを

 片手に

 図書館の横の

 小さなベンチに

 腰を下ろす

 大樹の下

 ベンチの前の

 地面に

 私と隆也の

 影が少しだけ

 斜めに並ぶ

 座っている

 影は短く

 そのぶん

 肩と肩の距離が

 はっきりと見え

 挿絵(By みてみん)

   「ねえ綾音!」

   「うん?」

   「昨日

    “曖昧な距離の定義”

    書いたノート

    家で読み返してて……」

   「……え!

    読んだの?」

   「うん

    あのページだけ

    他のノートと

    紙質が違うみたい

    に感じた」


 私は

 膝の上で

 手を組む

 あの青いノートの

 一ページが

 隆也の中でも

 何かを

 変え始めて

 いるのだと

 知って

 嬉しいような

 恥ずかしいような

 気持ちになる


   「“ちょっとだけ”

    って言葉

    綾音っぽくって思った」

   「どういう意味?」

   「一気に

    ゼロか

    百じゃなくて

    ちゃんと

    “途中のグラデーション”

    を残して

    くれてる感じ」


 私は

 足もとの

 影を見つめる


   「……影も

    グラデーション

    だね!」


 ポツリと

 そう言う私

 隆也が

 不思議そうに

 首を傾げる


   「ほら

    真昼は

    くっきり

    輪郭が出るけど

    夕方になると

    少しぼやけて

    地面に溶けそうに

    なるでしょ?

    “くっきり”

    と

    “溶け合う”

    の間に

    たくさんの

    段階がある!

    っていうか……」

   「……なるほど……」


 隆也は

 少しだけ

 真面目な

 顔になる

 そういう時の

 横顔を見ると

 私はいつも

 胸の奥で

 何かの

 スイッチが入る


  やっぱり

  この人

  隆也の考え方が

  好きだな

  この人

  隆也と一緒に

  影の話や

  距離の話を

  飽きるまで

  していたいな


 そんなことを

 思いながら

 私は

 サンドイッチ

 を隆也と

 ほおばる


 帰路の時間

 太陽は

 さらに傾いて

 影はいっそう

 長く伸び始めた


 帰り道

 私と隆也は

 少しゆっくりめの

 速度で歩く

 アスファルトの

 上に伸びる

 ふたりの影。

 さっきまで

 ベンチで見ていた

 影よりも

 ずっと細長く

 形も少し

 ゆがんでいる

 挿絵(By みてみん)

   「綾音……」

   「なに?」

   「もし

    影だけ

    見ていたら

    綾音と僕が

    “友達”

    なのか

    “恋人”

    なのか

    どっちに

    見えるんだろう?ね!」


 突然の

 問いに

 私は

 思わず

 微笑む


   「うーん?

    ……どっち?

    だろうね!」


 少しだけ

 考えてから

 私は

 足もとの

 影を見た

 今の

 私と隆也

 の影は

 完全には

 重ならない

 けれど

 はっきりと

 平行に

 並んでいる


   「“まだ

    決めつけられないけど

    一緒に

    歩き続ける

    約束はしてます”

    って感じ!」

   「影が?」

   「うん

    影が!」


 私自身で

 言って

 おきながら

 私は

 顔が

 熱くなるのを

 感じて

 つい

 前髪を

 耳にかけ直す


 その時

 ふいに

 風が吹いて

 私の髪と

 隆也の

 パーカーの裾が

 同じ方向に

 揺れた

 足もとの影も

 一瞬だけ揺れ

 肩と肩が

 重なった

 ように見えた


   「……さっきの……」

 隆也が

 小さな声で言う

   「“決めつけない優しさ”

    って話」

   「あ!

    ✨️第027季✨️

    の時の?」

   「そう

    あの事

    多分

    ずっと

    忘れないと思う」


 私は

 心の中で

 そっと深呼吸をする


   「ありがとう!」


 それだけ

 言うので

 精一杯で

  “本当は

  私も忘れたくない”

 という言葉は

 まだ胸の奥に

 しまったままに

 しておく


 駅前の

 横断歩道に

 差しかかると

 信号待ちの

 人たちの影が

 アスファルトの

 上で複雑に

 重なり合っていた

 知らない

 誰かの影と

 私と隆也の影が

 一瞬だけ交差し

 すぐに離れていく

 挿絵(By みてみん)

   「ねえ隆也……」

   「うん?」

   「もし

    いつか……

    私と隆也が

    “恋人です”

    って言える日が

    来たとしても……

    ……ね?」


 私は

 赤信号の

 向こうに

 見える季節の

 空を見上げる


   「影の距離を

    “きっちり一定”

    にしようとは

    あんまり

    思わないかも……」

   「どういうこと?」

   「近づきたい日も

    あれば

    自身のことを

    考えるために

    ほんの少しだけ

    離れたい日も

    あると思うの

    でも

    そのたびに

    “今どのくらいが

    お互いに

    一番呼吸しやすい

    距離かな?”

    って

    測り直して

    いけたら

    いいな!って」


 信号が

 青に変わる

 人々が一斉に

 歩き出す中

 私と隆也の影は

 再び並んで

 進み始める


   「……ねえ綾音!」

   「なに?」

   「その

    “測り直す作業”

    一生

    付き合ってもいい?」


 その言葉は

  告白

 という言葉には

 きっと

 まだ届かない

 でも

 私は

 それを

  「約束の前奏曲」

 のように感じた


 足もとの影が

 一瞬だけ

 重なって

 また

 少しだけ離れる


  これが

  今の私と隆也の

  「春の影法師」


 はっきりとも

 あいまいとも

 ひとことで

 言えない形

 をした

 私と隆也

 二人だけの

  “関係の輪郭線”


 これから先

 夏の強い

 日差しの下でも

 秋の斜めの

 光の中でも

 冬の低い

 太陽の季節でも

 その輪郭が

 どう変わって

 いくのかを

 私は

 楽しみにしている

 私と隆也

 二人の影が

 地面に

 並んで伸びていく

 手を伸ばせば

 触れられそうで

 まだ

 触れない距離

 その微妙な

 間に流れる

 空気を

 私は

  「不安」

 ではなく

  「これから形を変えていく予感」

 として

 静かに

 受け止める……

 挿絵(By みてみん)

 つぼみの願いへ

 ✨第028季 春の影法師✨

 は足もとに並ぶ

  「影」

 という

 ささやかな存在を

 通して

 私と隆也が

 歩いている

  “現在地”

 を見つめ直す季に

 等間隔に並んだ机

 並んで歩く帰り道

 そして

 アスファルトに

 伸びるふたつの影

 私と隆也

 はまだ

 すぐ目の前の

  「恋人です」

 と宣言する

 勇気は

 持てないけれど

 青いノートの

 片隅に

 書きつけた

  〈曖昧な距離の定義〉

 と足元に

 映る影の形が

 そっと

 リンクし始めた事を

 私は

 確かに感じ

  “ちょっとだけ嫉妬できて

   ちょっとだけ安心できて

   ちょっとだけ踏み出せる”

 その

   「ちょっとだけ」

 の積み重ねが

 いつか

 心のつぼみが

 ふくらむ願いを

 静かに

 支えてくれるのかも……


 次の季

 ✨第029季 つぼみの願い✨

 では

 まだ

 声にならない

 小さな願いが

 私の胸の奥で

 少しずつ形を

 持ちはじめ

  もう少しだけ長く

   一緒に帰りたい

  あと一駅ぶんだけ

   隣に座っていたい。

  隆也

   あなたの未来の話を

   もっと聞かせてほしい


 そんな

 ささやかな

 願いの

 一つひとつが

 つぼみの中に

 眠っている

 花弁のように

 折り重なり

 やがて

  「決意」

 に近い

 何かへと

 変わっていく

 のかもしれまない

 季節の光の中で

 揺れる

 まだ

 開ききらない

 小さなつぼみ達

 その

 一つひとつに

 私と隆也

 二人だけの

 「これから」

 がそっと

 封じられているのだと

 信じながら

 私は

 また

 青いノートを開き

 次のページの

 余白に

 静かに

 こう記し


 ✨第029季 つぼみの願い✨


 私の願いと

 隆也の願いが

 どんな

 距離で寄り

 添うのかを

 確かめるために

 春の影法師

 に見守られながら

 私は今日も

 心のペンを

 そっと

 走らせていく……

 挿絵(By みてみん)

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