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⭐️色褪せることのない絆⭐️ ✨️EMPATHY 大隅綾音と魚住隆也✨️  作者: 詩野忍


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31/60

✨️第027季 曖昧な距離✨️

 挿絵(By みてみん)

 雨上がりの 

 等間隔

 花曇りの午後と

 深夜の交換メッセ

 二つの時空が

 私と隆也に

 長い余韻を

 心の中に

 残すなんて

 昨日までの私は

 きっと

 想像もしていなかった

  「どっちつかずのままでも

   大事にしたい関係」

 そう言い合えたことで

 私、大隅綾音と魚住隆也の

 間にある空白は

 少しだけ

 やさしい時間をもらった


 けれど

 時間を

 付与された

 からといって

 その距離の

 測り方が

 急に上手く

 なるわけでもなく

 朝

 目を覚ました

 瞬間から

 スマホの小さな画面

 講義の教室の席

 私と隆也が

 並んで歩く

 廊下の幅

 そのどれもが

   「今

    私たちはどれくらい近い?」

 という問いを

 静かに突きつけてくる

 友達

 と言い切るには

 もう少し深くて

 恋人

 と呼ぶには

 目の前なのだけれども

 まだ少し怖くて

 その中間にある

 やわらかい

 けれど不安定な領域

 その場所に

 私、大隅綾音と魚住隆也は

 確かに立っている

 この

 ✨️第027季「曖昧な距離」✨️

 では

 雨上がりのキャンパス

 朝の列車の窓ガラス

 あふれる数、文字列

 そして

 ふとした

 瞬間の沈黙の中で

 私の心が

 隆也との

  “距離”

 をどう測り

 どう見失い

 そして

 もう一度

 私自身なりの

 ものさしを

 取り戻していくのか?

 まぶたの

 裏にひらくページと

 青いノートの余白

 その間に揺れる

  「近づきたい」

 と

  「離れたくない」

 の

 二つの願いを

 私は今日も

 言葉の形にして

 そっと

 並べていく……

 挿絵(By みてみん)

 雨上がりの朝

 列車の窓に映る

 自分の横顔が

 いつもより

 少しだけ

 大人びて

 見えた?

 かな……


 昨夜

 お布団の中で

 何度も

 開いては

 閉じた

 私と隆也の

 交換メッセ画面

  「ドキッとした!」

 と送ってしまった

 私の指先の記憶が

 まだ内側に

 くすぐったく

 残っている


 列車の

 電光掲示板の時刻や

 画面に並ぶトークの履歴

 などの

 どちらも

 数字や文字の 

 何気ない羅列

 なのに

 私と隆也のメッセの

 その中に

 詰まっている

  “意味の重さ”

 はまるで違ってい


   【今日は

    一緒の席でどう?】

   【いいね!

    もちろん!】

 

 その

 朝のやりとりが

 私の心拍のテンポを

 少しだけ早める


 列車が豊橋駅

 に滑り込み、

 ドアが開く

 流れる

 人波の中で

 私は何度目かの

  “深呼吸の練習”

 をする


  隆也に会えば

  きっと大丈夫!

  隆也の顔を見れば

  ね!

 挿絵(By みてみん)

 そう

 言い聞かせながらも

 改札を抜ける

 足取りは

 ほんの少しだけ

 慎重になる

 なぜか……


 教室の

 後ろの列

 いつもの

 窓際の席

 そこに

 先に座っていたのは

 他でもない

 魚住隆也だった


 視線が

 出席カードと

 隆也の横顔の間で

 忙しく行き来する


   「おはよ!隆也!」


 気づけば

 声は私自身

 でも驚くほど

 普通に出ていた


   「お、おはよ!

    綾音!」


 昨日とは少し違う

 照れの混じった

 隆也の声

 その

  “少し”

 の変化が

 胸の奥に

 静かな波紋を広げる


 お約束

 したけれど

 席は斜め前

 肩が触れない、

 でも

 視界の端には

 ずっと

 隆也がいる距離


  これくらいが

  今の私達にとって

  ちょうど

  いいのかな……


 そう

 思うとする私と


  もう

  一歩だけ

  近づいてみたい!

 挿絵(By みてみん)

 そう囁く私が

 心の中で

 並んで座り

 別の意味で

  「写し取れないもの」

 を意識していた

 たとえば

 隆也が

 難しい話題の時に

 ほんの少しだけ

 眉根を寄せる癖

 たとえば

 理解できた瞬間に

 視線がふっと

 窓の外に跳ねる

 その動き

 そうした

 些細なことが

 私にとっての

  “心の座標軸”

 になりつつ

 あることを

 私は知っている

 でもそれを

 そのまま

 言葉にするには

 まだ少しだけ、

 勇気が足りない

 かな……


 休み時間

 女友達に呼ばれて

 私は

 一度席を立つ

 廊下の端で

 他愛もない

 会話が弾む

 ふと

 教室の中へ

 視線を移すと

 隆也が

 同じゼミの女子と

 何か

 真剣な表情で

 話している……


 女子の

 満面の笑顔

 隆也の手に触れそうな

 ノートを差し出す

 女子の手

 女子の身体が少し

 隆也に傾ける

 その微妙な角度


  あっ……説明してるだけ……

   たぶん……

   きっと……

 挿絵(By みてみん)

 そう

 わかっているのに

 胸のあたりで

 目に見えない

  “微熱”

 がじわりと

 広がる


   「綾音

    聞いてる?」


 女友達の声に

 慌てて

 振り向きながら

 私は

 心の中で

 新しい言葉を

 見つける


  これが

   「少しの嫉妬」

  って……?

  こと


 目の前に

 ある

 私と隆也の

  恋心

 が季節の風に

 揺れる枝先で

 小さく

 震えている


 昼休み

 いつもの

 中庭ではなく

 今日は

 図書館近くの

 静かな一角で

 お弁当を広げた


  隆也に会えば

  安心するのに

  でも

  見てしまうと

  何かとざわつく


 そんな

 矛盾を

 抱えたまま

 私は

 青いノートを

 開いて

 ページの端に

 小さく書く


  「曖昧な距離」


 その文字の横に

 細い線を

 一本引いてみる


  私 ──────── 隆也


 そこには

 数値も

 目盛りもない

 たった一本の線

 でも

 確かに繋がって

 いる!

 今の

 私と隆也が

 どこかで

 ちゃんと

 つながって

 いるのだ!と

 妙に実感できる

 挿絵(By みてみん)

 その時

 テーブルの上の

 スマホが

 小さく震えた


   【さっき廊下で

    綾音見えた気がした】

   【私見てたよ

    教室の中……】


 送ってから

 しまった!

 と思う


  「見てた」


 それは

  「気にしてた」

 と

 ほとんど同義で

 少しだけ

 踏み込みすぎたかも

 しれない言葉


 しばらくして

 返事が返ってくる。


   【もしかして

    説明してた女子のこと

    気になった?】


 図星すぎて

 思わず

 ペン先が止まる


   【……ちょっとだけ……】


 数秒間

 画面に浮かぶ

 ぐるぐるの

  「送信中」

 が

 私の心拍を

 また一つ

 知らないテンポへと

 連れ出していく


   【ごめん……

    綾音を

    安心させる言葉

    うまく出てこない……】


 謝られたくて

 送ったわけじゃない


 でも私を

  「安心させたい」

 というその意図だけは

 まっすぐに

 伝わってくる


   【大丈夫!

    ちゃんと

    “ちょっとだけ”

    しか

    嫉妬してないから】


 そう返すと

 しばらくの

 沈黙のあと


   【ごめんね

    心配かけた……

    でも

    “ちょっとだけ”

    嫉妬してくれる

    曖昧な距離

    もっと

    綾音の事

    好きになる!】


 という言葉が

 ページの上に

 ゆっくりと

 降りてきた

 挿絵(By みてみん)

 帰路

 雨上がりの

 アスファルトに

 小さな水たまりが

 いくつもできている

 帰り道

 隆也と

  「おつかれ」

 と手を振った後

 本当はすぐに

 別方向に

 歩き出すつもりだった

 でも

 私の背中越しに

 聞こえた

 隆也の声が

 私を

 呼び止める


  「綾音!」

  「なに?」


 振り返ると

 夕方の光が

 隆也の後ろから

 差し込み

 アスファルトの上に

 私と隆也

 二人分の影が

 細く伸びていた


   「さっきの

    嫉妬の話」


 道路脇の

 ガードレールに

 寄りかかり

 隆也が言う


   「綾音が

    “ちょっとだけ”

    って

    言ってくれたこと

    ほっ!として」

   「どうして?」

   「完全に

    “平気”

    って言われたら

    それはそれで

    距離ある

    感じするし

    “全部嫌”

    って言われたら

    きっと

    綾音の呼吸

    苦しく

    ならない?」


 隆也の言葉が

 静かに胸に

 沁みていく


   「“ちょっとだけ”

     って言える場所が

     今の綾音と僕の

     ちょうどいい距離……」


 私は

 思わず

 くすっ!て微笑む


   「隆也

    そういうときだけ

    距離の理論家

    みたいになる」

   「ごめん」

   「ううん

    でもね綾音……」


 私は

 足もとの

 二つの影を

 見つめながら

 ゆっくりと

 言葉を探す


   「曖昧な距離って

    “決められない”

    弱さじゃなくて

    “決めつけない”

    やさしさ

    みたいな気もしてるの私は」

   「決めつけない?」

   「うん

    今日の私と隆也が

    明日の私たちにも

    同じ距離でいられるとは

    限らないでしょ?

    ちょっと近づきたい日もあれば

    少しだけ離れたい夜

    もあって

    その都度

     “今どのくらいが

      お互いに呼吸しやすいかな?”

    って

    測り直していける

    関係でいたい」


 言葉にしてから、

 少しだけ顔が熱くなる

 こんなふうに

 真面目なことを

 言う私自身も

 やっぱり

 まだどこか

 照れくさい


 隆也は

 しばらく黙って

 私の言葉を

 かみしめるように

 空を見上げていた


 そして

 ぽつりと言う


   「……ねえ綾音」

   「なに?」

   「僕さ

    今の話全部

    ちゃんとメモしたい……」

   「メモ?」

   「うん

    “曖昧な距離の定義”

    として」


 そう言って

 照れる隆也が

 可笑しくて

 でもどこか

 愛おしくて

 挿絵(By みてみん)

 私は

 手に持っていた

 青いノートを

 少しだけ

 隆也の方に

 預ける


   「だったら

    一緒に書こ?」


 ノートの

 新しいページに

 私はペンを走らせる


   〈曖昧な距離の定義〉

    1.“ちょっとだけ”嫉妬できる

    2.“ちょっとだけ”安心できる

    3.“ちょっとだけ”踏み出せる


 書き終えた

 文字を見て

 私も

 隆也も

 同時に

 ふっと微笑む


 きっと

 この三つの

 「ちょっとだけ」

 は明日には

 四つに

 なっているかもしれないし

 別の言葉に

 置き換えられているかもしれない

 でも

 この瞬間の

 ページに刻まれた

  “曖昧な距離”

 は確かに

 私と隆也

 二人だけの

 現在地点


 夕暮れの光が

 街路樹の葉を

 透かし

 私と隆也

 二人の影が

 並んで伸びる

 手を伸ばせば

 指先が

 触れられそうで

 まだ触れない

 その間に流れる

 やわらかな

 空気こそが

 今の

 私と隆也の

  “呼吸のための領域”

 なのだと

 私は思う

 恋人になる前か?

 その少し後か?

 あるいは

 どちらにも

 当てはまらない

 第三の

 空間なのかな?


 答えはまだ

 決めなくていい


 ただ一つだけ

 確かなのは

 この曖昧な距離を

 怖がるばかりではなく

 時々

 ともに微笑みながら

 時々

 ともに嫉妬しながら

 私と隆也

 二人で

 測り直していく

 それが

 今の

 私、大隅綾音にとって

 魚住隆也との

  「絆」

 という言葉に

 一番近い気がしている……

 挿絵(By みてみん)

 春の影法師へ

 ✨️第027季「曖昧な距離」✨️

 は

 私と隆也の

 間に流れる

 目には見えない

 空気の濃度を

 そっと

 測り直すような季

 嫉妬

 という名の

 小さなざわめき

 安心

 という名の

 静かなぬくもり

 その両方を

  「なかったこと」

 にせず

 ちゃんと

 言葉として

 共有できたこと

 それは

  “恋人未満”

 という曖昧さに

 甘えるためではなく

  “恋人以上”

 の責任を

 少しだけ

 先取りするための

 私と隆也の

 ささやかな

 練習だったのかもしれない

 距離とは

 センチメートルやメートルで

 区切られるものではなく

 呼吸のしやすさや

 相手の影の濃さで

 測られることもある

 今日の

 私と隆也は

 等間隔に並んだ

 教室の机の間で

 雨上がりの路地で

 そして青いノートの

 ページの上で

  「今の私たちにとって

   一番やさしい距離」

 をたどたどしく

 でも

 確かに選び取る


 次の季

 ✨️第028 季春の影法師✨️ 

 では並んで歩く

 私と隆也の影が

 どんな形で

 地面に

 落ちていくのか

 晴れた日の

 くっきりとした

 二本の影

 花曇りの日

 輪郭が

 溶け合うような影

 そして

 すれ違う瞬間に

 一瞬だけ

 重なっては離れる

 細長いシルエット

 私、大隅綾音は

 そのどれもが

 私と隆也

  “私達の関係の一つの答え”

 なのだと信じ

 曖昧な距離を

 ただの

  “中途半端”

 で終わらせるのか?

 それとも

  “二人だけのバランス”

 として

 大切に育てていくのか?

 日差しは

 私と隆也

 二人の

  “影法師”

 にもう少しだけ

 はっきりした輪郭を

 付与する……

 青いノートの

 ページに

 私はそっと

 書き込む

 ✨️第028季 春の影法師✨️

 その文字の

 すぐ横で

 私の影と

 隆也の影が

 どんな距離で

 並ぶのか

 それを確かめに

 行くために

 私は今日も

 心の中で、

 静かに

 小さく

 心穏やかに

 ペンを執る……

 挿絵(By みてみん)

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