✨️第026季 瞬きの合間の真実✨️
まぶたの裏に
ひらく頁
花曇りの午後から
まだ一日しか
経っていないのに
胸の奥で時の密度は
何倍にも
ふくらんでいる
気がする
昨日の
中庭のベンチで
交わした
私、大隅綾音と魚住隆也の
言葉たちは
私と隆也の間に
「恋人」
という名前を付与する
のではなく
もっと繊細で
もっと壊れやすくて
それでいて確かな
「呼吸の共有」
という
新しい形の約束を残して……
はっきりさせることを
急がない!
曖昧なままでも
守りたいものがあるから!
私と隆也との
そのお約束は
心を少しだけ
軽くしたはずなのに
夜になると
スマホの小さな画面の
光の前で
私はまた
「瞬きが怖くなる自分」
と向き合うことになる
ほんの僅かな
通知が来ない時間
既読がついたのに
返事が止まる
僅かなタイムラグ
たったそれだけの
「沈黙の隙間」
に私自身でも
驚くほど
多くの意味を
書き込み
不安になって……
瞬きとは
世界を一瞬だけ
閉じる行為
けれど
その合間にこそ
目には映らない
「本当の気持ち」
がふっと姿を
現れることがある
たとえば
思わず漏れた
隆也の息
読み返してから
間をおいての
お返しのメッセ
私の
送られずに
下書きフォルダで
眠る言葉たち
この
✨️第0026季✨️は
「深夜の告白」
「読み違えたメッセ」
「返事を待つ時間に
降る目に見えない雨」
そんな
目には見えない
わずかな揺らぎの中で
私・大隅綾音と魚住隆也の絆が
どのように
「試され」
そしてどのように
ともに
「確かめ直されていくのか」
を瞬きのリズムに
合わせて
まぶたの裏にだけ現れる
私と隆也
二人だけの景色
そこに
浮かんでは消える
小さな真実の光を
私は今日も
青いノートの上に
そっと書き記す……
深夜の私の自室
私の心は
今日の出来事の
ざわめきを
どこかにしまい
込み
静かな呼吸を
残して
吹き抜ける夜風が
まだ冷たい
春の混じり気を
かすかに運んでくる
私は机に
青いノートとスマホを
並べて置き
どちらを先に
触れるべきか
わからなく
さっきまで
一緒にいたのにね!
花曇りの午後
ベンチで向かい合い
「どっちつかずのままでも
大事にしたい関係」
という
不思議な約束を
交わしてから
まだ数時間しか
経っていない
それなのに
画面の向こう側の
隆也は
さっきよりもずっと
遠くに
感じられてしまう
メッセを開く
履歴の一番上には
今日のやりとりが
並んでいる
【綾音 今日はありがとう!】
【こっちこそ 隆也!】
【ちゃんと話せてよかった!】
【うん!】
互いに交換した
短い言葉の後に
どれも
「言いすぎないための
安全装置」
のように見える
もっと長く
話してみたいのに
そんな欲張りな気持ちが
指先に疼くけれど
私はあえて
スマホを伏せて
青いノートをひらく
“瞬きの合間の真実”
ページの一番上に
今日の季の題名を
書き込むと
胸の鼓動が
さっきより少し
落ち着きを取り戻す
瞬きのあいだに
見逃してしまう
ものがある
けれど
瞬きのあいだにしか
見えないものもある
ペン先が
自然とそんな言葉を
つづり始めたとき
スマホが
小さく震えた
【綾音 まだ起きてる?】
短い問いかけ
それだけで
部屋の空気が
少し春めく
【うん!
ノート書いてた……】
送信すると
“送信中……”
の表示が
しばらくぐるぐる周り
消える
じっと
見つめているうちに
私の胸の内側にも
見えない
「送信中」
のぐるぐるが
回りやがて
消える
言いたいこと
言えないこと
言葉として
言わず
胸にしまって
いくべき?
それらの境界線は
瞳の表面よりも
ずっと奥深い場所
に引かれていて
瞬きのたび
少しずつ
形を変えていく
やがて
隆也からの
お返しメッセ
【今日の綾音
本当に
普段より
大人の香りが
漂ってた!】
たったそれだけなのに
心の中で
小さな花火が上がる
【花曇りフィルタの効果かな】
冗談めかして返すと
すぐに
既読がつく
既読
でも
返信なし
その沈黙に
少しばかり
不安の色が
差しかけた時
ふいに
隆也からの
お返しメッセが
連続して届く
【ごめん】
今の
変だった?
“大人っぽい”って
上から目線で失礼?】
私は思わず
声にならない
うふ!
そこ?
さっきまで
私の中で
勝手に
ふくらみかけていた
「不安」
という名の影は
拍子抜けするほど
あっけなく
霧散していく
【全然変じゃないよ 隆也!
むしろ
ちょっと
ドキッとした!】
送信したあと
しまった!
と言葉を飲み込む
“ドキッとした”
それは
「好き」
という言葉への
迂回路であり
ほとんど
正面玄関のようでもある
瞬きひとつ分の勇気が
指先からこぼれ落ちて
画面の向こうへ
飛んでいってしまった……
しばらくの沈黙
今度は
私の方が
息を詰める番になる
外では
見えない雨が
降っているような
気配がする
窓ガラスに
音はしないけれど
心のどこかが
じんわりと
濡れていくような
そんな感じ
やがて届いた
隆也からの
お返しメッセの
一行
【僕も
実は今日の
綾音見て
素敵すぎて
何回も瞬きした!】
意味が
すぐにはわからない
でも
その分からなさが
なんだか
愛おしい
【隆也 どういう意味?】
問い返すと
少し間をおいて
【今日は
綾音の事
真っ直ぐに
見ようとして
焦ってた……
見逃したくないのに
瞬きって
勝手に来るからさ】
その言葉を
読んだ瞬間
昼間の中庭で感じた
「曖昧なままでも
守りたいものがある」
という感覚が
胸の中で
別の輪郭を取り始める
私もまた
隆也の中の
小さな変化を
見逃したくない!
と思っている
けれど
人の心を
完璧に見つめ
続けることなんて
きっと難しい
だからこそ
瞬きの合間に
こぼれ落ちそうに
なる真実を
信頼
という名の両手で
そっと
受け止め合う
しかないのかな?
ノートのページに
新しい言葉が
降りてくる
〈瞬きの合間に
こぼれる本音を
互いに責めず
互いに微笑み合えるなら
それはきっと
恋人の前段階ではなく
ひょっとして
それ以上の
一つの
完成された
私、大隅綾音と魚住隆也の
関係の形なのだ〉
書き終えた文字を
見つめていると
画面の向こうから
隆也からの
お返しメッセが届く
【ねえ綾音……
もしさ
いつか綾音と僕が
“ちゃんとお付き合いしよ!”
って
言えた日が来ても
今日みたいに
どっちつかずで
不安で……
でも一緒にいたいって
思いながら
瞬きしてる
この感じを
忘れずにいる!】
胸の奥で
何かが
静かにほどけ
同時に
新しく結び直される
これが
“瞬きの合間の真実”!
私は
ノートではなく
スマホの方に
指を伸ばし
ゆっくりと
言葉を打ち込む
【うん!
その時はきっと
今日のことを
私と隆也
“はじまりのひとつ”
って
二人向き合って
思い出せるように
ちゃんと
一緒に瞬きしよ!】
送信ボタンを
押した瞬間
胸のざわめきは
完全に
消えたわけではない
それでも
どこかで
「私と隆也の
行く先は見失わない」
という確信が
細い糸のように
でも
確かな
絶対に切れない
私の中に
伸びているのを感じる
部屋の灯りを落とし
ベッドに横たわる
まぶたを閉じる直前
窓の外の夜空は
花曇りでも
快晴でもなく
ただ静かな
春の闇だった
けれど
その見えない
空の向こうで
次の季を告げる
新しい
私と隆也の
気圧配置が
ゆっくりと
組み替えられ
つつあることを
私は
鼓動のテンポで
確かに感じ取っていた
深夜の告白
読み違えたメッセ
返事を待つあいだに降る
目に見えない雨
そのすべてを
私と隆也は
恐れとともに
それでも
どこか楽しみながら
未だ見ぬ未来へ
行く準備を
すでに始めている
瞬きをひとつ
ゆっくりと落とす
まぶたの裏側で
青いノートの
ページがひらき
そこにはすでに
次の季のタイトルが
薄く刻まれている気がした……
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へ
✨️第026季 瞬きの合間の真実✨️は
私と隆也の
メッセージの
ほんの数行と
夜更けの
小さなやりとりが
積み重なった宵
けれど
私、大隅綾音に
とっては
「恋」
という言葉が
目の前にしてに広がる
まだ名前のない領域に
そっと心に灯りをともすための
大切な一夜だったのだ
と思う
瞬きの合間に
見逃してきた不安
瞬きの合間だからこそ
見えてきた優しさ
その両方を
「なかったこと」
にしないで
隆也と分かち合えたこと
私なりに
やったね!
でも
お空と同じように
心の気圧配置もまた
穏やかなままではいられない
花曇りの午後の約束と
瞬きの合間に交わした
本音はきっと
私と隆也の絆を
また新しい角度から
試してくる
けれど同時に
今日の
私と隆也は
知っている
どれほど曇っても
どれほど見えにくくなっても
“鼓動が落ち着く場所”
に
私と隆也
二人で手を取り合えば
行く先を見失うことはない!
ということを……
「瞬きの合間」
で見つけた真実は
✨️第027季 曖昧な距離✨️
静寂と沈黙の中
雨上がりの
朝の光のなかで
どんなかたちに
変化していくのか?
青いノートの
次のページを
ひらきながら
次の未来に
思いを馳せ
私は静かに
ペンを構える……




