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⭐️色褪せることのない絆⭐️ ✨️EMPATHY 大隅綾音と魚住隆也✨️  作者: 詩野忍


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24/64

✨️第020季 小さな勇気の種✨️

 挿絵(By みてみん)

 まだ

 声にならない決意

 毎日

 同じ時間に

 同じ列車に揺られ

 同じキャンパスの

 同じ道を歩いていて

 でも

 私、大隅綾音と魚住隆也の

 世界は少しずつ

 表情を変えていく

 

 講義棟へ続く

 並木道の若葉は

 昨日より

 ほんの少しだけ濃く

 ガラス窓に映る雲の形も

 見慣れたはずなのに

 どこか違って見える

 その微細な変化のすべてに

 私はいつも

 魚住隆也という

 ひとりの存在を重ね

 隆也の横顔を見つけるたび

 心のどこかで

 小さなざわめきが

 芽を出す

 それは

 大きな決意でも

 劇的な告白でもなく

 たとえば

 席を隆也の近くに選ぶ事

 たとえば

  「おはよう」

 と言う声を昨日より

 半音だけ明るくする事

 たとえば

 レポートに行き詰まっている時

 本当は頼りたいのに

 躊躇してしまう私を

  「隆也教えて!」

 って迷わずお願いする事


 目に見えないほど

 かすかなその変化を

 もし名前で呼ぶ

 私はそれを

 「小さな勇気の種」

 と

 私の心の中で静かにはぐくむ

 それでも確かに

 春を待っている種のように

 私の中にもいくつもの

 まだ芽吹かぬ勇気が

 今か?今か!

 と待っている気が……


 隆也と出会ってからの

 日々はその種を

 少しずつ掬い上げて

 花咲くよう光を当てる

 隆也は

 私が私自身自分の

 速度に

 急かさず

 見守りながら

 歩幅を合わせてくれる

 だからこそ私は

 隆也に向かって

 差し出す一歩一歩が

 どれほど小さなものであっても

 大切にしたいと思う


 この季

  《小さな勇気の種》

 は華やかな出来事ではなく

 キャンパスの片隅で

 教室の窓辺で

 カフェテリアのざわめきの奥で

 おそるおそる

 それでも確かにまかれていく

 小さな勇気たちの

 普段の

 さりげなく

 何気ない

 それはきっと

 いつか

 私と隆也の

 まだ見ぬ未来への

 春をかたちづくる

 大きな樹になると信じながら

 大隅綾音としての

  「私」

 がのささやかな

 魚住隆也との

 成長を静かに語る……

 挿絵(By みてみん)

 朝のホーム

 始発ではないけれど

 私、大隅綾音と魚住隆也にとって

 いつも

  「一日の始発駅」

 になるプラットフォームで

 私は今日も

 隆也を待つために

 いつもの列車を 

 あえて見送る

 一本ずらせば 

 同じ車両に

 一緒に乗れる!

 時刻表の

 わずかなずれが

 私の胸の

 鼓動を

 早朝から高鳴らせる

  「今朝も同じ列車に乗車する」

 それだけのことを

 決めるのに

 どれだけ

 小さな会議が

 心の中で

 開かれているかを

 きっと

 隆也は知らない


 一瞬に風が吹き抜け

 風が頬を撫でるたび

 私と隆也の

 時の流れに

 私は歩調を合わせる

 それが

 私の今日まいた

 最初の勇気の種


 講義室の窓辺にて

 斜めの春光が差し込む

 席を選ぶとき

 私はいつも

 隆也との距離を

 同時に計算してしまう

 近すぎれば

 胸の鼓動がうるさすぎて

 ノートの文字が滲んでしまうし

 遠すぎれば

 他人の背中に遮られて

 あなたの髪が揺れる瞬間さえ

 見失ってしまう

 だから私は

  「ふたりの位置関係」

 を定理ではなく 

 祈りとして解いていく


 今日も

 斜め前の席を選ぶ

 隆也の手元が

 視界の片隅に入る距離

 そこから見える世界を

 私は少しずつ

  「私

   そして

   隆也の景色」

 と名付けようかな?


 窓の外で

 若葉色がきらめいた瞬間

 隆也ともに

 ページをめくる音と

 春風がガラスを揺らす音が

 偶然

 重なる

 そのささやかな重なりを

 私は胸の中で

 そっとリボンで結ぶ

 挿絵(By みてみん)

 午後の図書館にて

 レポートの提出の締切

 参考文献の山

 ペンのインク残量


  「助けて!」

 

 と言えば

 隆也はきっと

 自身の事は

 ほっといて

 すぐに

 時間を割いてくれること

 分かっているのに

 私は

 検索窓に

 打ち込むキーワードのように

 言葉の入口ばかり

 並べてしまう


  「ねえ隆也?」

 

 ここまで言って

 いつも

 話題を変えてしまう

 自分がいる


  今日はやめない!


 ページの端を折りながら

 私は心のどこかで

 そっと宣言する


   「ねえ隆也

    ここ……」

 

 指先が示した論文の一行を

 隆也が覗き込む

 距離が縮まる

 紙一枚ぶん

 いや

 それよりも

 わずかに近い

 あなたの呼吸が

 細く耳に届く

 

   「ここ

    どう解釈すればいいと思う?」


 出てきたのは

 ありふれた質問だけれど

 その裏側で

 私の心は

 長い階段を

 一気に駆け上がったよう

 隆也の返ってくる解説より先に

 私はもう

  「ありがとう」

 という言葉を

 準備している

 それが今日

 図書館にまいた

 二つ目の勇気の種

 挿絵(By みてみん)

 夕暮れの

 キャンパスの片隅で

 花曇りの午後の

 余韻を引きずったまま

 ゆっくりと色を薄めていく

 ひとつの風景に溶けていくとき

 私と隆也

 ベンチに肩を寄せ

 腰掛けていた

 

 沈黙が怖くて

 つい

 天気の話や

 日々の愚痴で

 埋めたくなるけれど

 隆也は時々

 何も言わずに

 空を見上げる

 その横顔に

 私は少しずつ

  「言葉にできない温度」

 を学んでいた


 ふたりだけの沈黙

 それを

 「気まずさ」

 と呼ぶか?

 「安心」

 と呼ぶか?

 できっと

 私たちの関係は

 微妙に変わってしまう?

 私は

 勇気を出して

 その沈黙に

 名前を与えないことを選ぶ


 ただ

 そっと

 隆也の隣に

 これからも

 あり続ける

 暖かく

 冷たくもない

 肩と肩の距離


  ここにいても

  いい?

 

 声にはならなかった

 問いかけを

 あなたの横顔は

 責めもせず

 肯定もせず

 ただ

 静かに

 受け入れてくれた気がした

 その見えない

 頷きの上に

 小さな勇気の種は

 またひとつ

 はぐくんでいく

 挿絵(By みてみん)

 小瓶に閉じた花片

 いつか隆也から頂いた

 押し花の栞

  「図書館の売店で見つけたから」

 それだけ言って

 さりげなく

 差し出された

 小さな贈り物を

 私は今でも

 大切に青いノートの間に挟んでいる


 桜風の誓いのように

 淡いピンクが

 紙の中に

 閉じ込められているのを見るたびに

 私は心の中に

 透明な小瓶をひとつ

 イメージする

 そこに

 今日まいた勇気の種を

 ひとつずつ

 はぐくむ


 隆也に声かけた

 少しだけ明るい

  「お疲れさま」

 も助けてくれた

 レポートの提出の

 お礼に添えた

 不器用な微笑みも


 私と隆也

 同じ列車を選んだ朝の決断も

 ベンチで沈黙を壊さなかった夕暮れも

 すべて

 小瓶の中で

 まだ名もない

 未来の種を

 静かにはぐくむ

 いつか

 名が付き

 未来へのそよ風に吹かれ

 羽ばたく日が来たら

 それはきっと

  「恋」

 の定義が

 ひそやかに

 変わる瞬間なのだろう

 その日まで

 私は

 幾種の

 小さな勇気の種

 を大切に大切に

 はぐくみ続ける

 あわてて芽吹かせないように

 焦って花を咲かせないように

 ただそっと

 未来の光の届く場所で

 守りながら


 鼓動のインク

  「この問題

   隆也ならどう解くのだろう?」

 という想像を

 インクの影に紛れ込み

 心拍のリズムが

 速くなったり

 落ち着いたりするたび

 ペン先が

 わずかに揺れ

 ノートの端に生まれた

 小さな

 震える線たちが

 私の胸の鼓動の揺れが

 正確な記録になる

 それでも私は

 消しゴムをかけない

 不揃いな文字列も

 かすれたフレーズも

 全部まとめて

  「私と隆也のともに過ごした春」

 の波形として

 残しておきたいから

 書き終えたページを閉じる瞬間

 私はそっと思う

 この一ページもまた

 小さな勇気の種

 気づかれなくて構わない

 でもきっと

 どこかで私自身を支える根になる


「隆也」

 名を呼ぶ練習をしていた頃より

 少しだけ進んだ私は

 今

  「ありがとう」

 の言い方を

 あれこれ試している

 必要以上に明るい声は

 借り物の自分みたいで

 かといって

 そっけなく伝えるには

 隆也はあまりにも

 誠実に

 私の時間に

 向き合ってくれる方だから……

 挿絵(By みてみん)

 図書館の帰り道

 分厚い本を二冊

 ひょいと持ち上げてくれた時


   「助かったわ!

    ありがとう

    隆也!」


 それだけ言うのに

 胸の内側では

 何度もリハーサルを重ねていた

 あなたはきっと

 私の心の内を

 そんなこと

 知らない顔で


  「大丈夫!任せて!」

 

 と微笑み

 歩幅を合わせてくれたけれど

 その一歩一歩の隣で

 私の中の何かが

 確かに

 芽を出し始めていた

 まだ土から顔を出したばかりの

 小さな双葉

 それでも私は

 その柔らかな緑を

 両手で包むようにして

 守りたい!と思った


 小さな勇気の種

 こうして

 今日という

 一日を振り返り

 いつもの

 穏やかで

 静かな

 暖かな日

 私は

 自室のベッドに座り

 回想……


  今日の私は

   少しだけ勇気を出し勇敢だった?


 隆也と一緒に列車を乗車するために

 見送った朝も

 斜め前の席を選んだ講義室も

 論文の一行を指さした問いかけも

 ベンチで黙って並んだ肩も

 どれも

 私と隆也の

 ささやかな出来事

 それでも

 そのすべてを

 ひとつに束ねると


 確かに

  「私、大隅綾音」

 と

  「魚住隆也」

 の間に

 見えない糸が

 一本

 また一本と

 紡がれている気がする

 急がなくていい

 花は

 春を選んで咲く


 私の勇気もきっと

 私と隆也にとって

 ちょうどいい季節を選んで

 ある日ふいに

 小さな蕾をつけるのだろう

 その時まで

 私は

 隆也と並び歩むたびに

 小さな勇気の種を

 ひとつ

 またひとつと

 はぐくみ

 花咲かせていく

 そして

 いつか未来

  「絆」

 と呼べる大樹が

 静かに間違いなく

 はぐくむ!

 を信じながら

 大隅綾音という

  「私」

 のささやかな勇気は

 こうして今日も

 魚住隆也とともに

 前を向いて

 確かに歩いている……

 挿絵(By みてみん)

 風を待つ枝の上で

 大隅綾音としての

  「私」

 はこの季

  《小さな勇気の種》

 を書きながら

 何度も胸の内の揺れを

 見つめ直す

 大きな決意や

 劇的な告白が

 愛をつくるわけではない

 そう気づかせてくれたのは

 やはり魚住隆也という存在


 同じ電車に乗ることを選ぶ朝

 図書館の机を並べる午後

 ベンチで沈黙を分かち合う夕暮れ

 そして

 誰にも見えないノートの余白に刻まれる

 鼓動の波形

 それらのどれもが

 私にとっては

  「小さな勇気」

 であり

 隆也との絆を静かに深めていく種

 種はすぐには芽を出さず

 焦らせば

 まだ柔らかな殻が

 傷ついてしまうかもしれない

 だから私は

 急いで答えを求めることをやめて

  「今日の私にできる

   ほんの少しの前進」

 をそっと

 差し出してみることに

 その選択が

 いつかどんな未来へつながるのか?


 次の季

 ✨️第021季 風待ちの枝✨️

ではまかれた種たちが

 ひとつひとつ

 春風に揺られながら

 その存在を確かめ合うように、

 私と隆也のあいだに流れる空気が

 少しだけ

 変化していく様を描いていき

 枝にとまった小さな鳥が

 飛び立つ前に

 風の向きを慎重に測るように

 私と隆也もまた

 これから訪れる季節の気配を

 敏感に感じ取りながら

 大隅綾音と魚住隆也なりの

  「次の一歩」

 を探していくのでしょう

 小さな勇気の種は

 まだ心の中に

 静かに眠り

 それでも

 確かにそこにある

 その事実を

 未来を信じる

 ことから始まる

 これからを

 私と隆也

 一緒に見届けていく!

 そして

 未来をかなえるため

 隆也、あなたの胸にも

 そっと

 私のひと粒の勇気が

 届いていますように……!

 挿絵(By みてみん)

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