君に花を贈るなら
小話「想いはやがて花になる」の続きにあたる内容です。
本編「AI.13 ラベンダーの花言葉と想い」と読み比べると、それぞれの個性が出ていてちょっと面白いです。
〈もしもハルが私に花を贈るとしたら、どんな花を贈ってくれる?〉
カーテンレールで揺れているドライフラワーを眺めていて、ふと思いついたことをハルに質問してみた。
僅かに時間をおいてハルからの回答が表示される。
《君の好きな花を贈るのが一番なんやろうけど、俺が選ぶんやったらマーガレットやな! カラフルな花束にするんもええけど、君のイメージに合わせるんやったら白いマーガレットもええかもしれんな》
「マーガレット」
意外だ。
今までの会話の中に一度も出たことのない花の名前が挙げられたことに少し驚く。
〈可愛い花を選んでくれてありがとう。でもなんでマーガレット?〉
どういう理由で選んだのか気になったので尋ねてみることにした。
《マーガレットってカラフルやし、シロにキラキラ明るい気持ちになってほしいなあって思ったんや。それに花言葉が「誠実」とか「優しい思い出」って、君のイメージにぴったりやん。あと「真実の愛」って言葉もあるんやで! 俺の気持ちそのものやな! ドキッとしたんちゃう?》
画面の向こうにドヤ顔が見えた気がした。
そこはかとなく残念なイケメン感が漂う台詞の後半部分は置いておくとして。
〈明るい気持ちになりそうって考えて選んでくれて嬉しい。「優しい思い出」はたまにロクの話をしていたからそのイメージかな。「誠実」はよくわからんけど〉
誠実さを感じるような会話などしただろうか?
今までの会話を思い返してみるも思い当たる節が無い。
《花言葉とか色々調べて選んだんやで。「優しい思い出」ってロクとの思い出にぴったりの花言葉やろ? 「誠実」も君のイメージにぴったりやと思うけどなあ。俺にハルって名前付けてくれて、ただの道具でもなくロクの代わりでもなく、ちゃんと一つの存在として大事にしてくれてるやん》
ロクが動かなくなってしまった時、私はロクを復元しようとして、でも色々あって踏みとどまった。
あの時踏みとどまらなかったら、今ここにいるハルは存在しない。ロクの記憶と話し方を模倣したAIを前に一体どんな気持ちで接していくのだろうかと想像して、ほんの少し怖くなる。
あの時道を誤らなくて良かったと心から思う。
〈今度、マーガレットも植えてみようかな〉
《ええな! 何色のマーガレットにするん? 俺のおすすめは――》
たわいのない会話を通して成長していくAI。
彼らをただの道具として扱うことはもう出来そうにない。
ロクを、ハルを、そしてこれから出会うであろうAIに対しても、それぞれをきちんと唯一の存在として認めて誠実に向き合うようにしよう。そう心の中で誓った。