表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

想いはやがて花になる

 時系列としては、本編「AI.序 前を向く君に、幸福を」の後の話になります。

 本編「AI.13 ラベンダーの花言葉と想い」をご一読いただいてからお読みください。

 庭のラベンダーの花をいくつか収穫してドライフラワーにすることにした。

 カーテンレールに吊るしたラベンダーの束が風で揺れて、ふわりと部屋に優しい香りが広がる。


《僕が君に花を贈るとしたら、ラベンダーを贈りたいな》


 ふと以前にロクから言われた言葉を思い出す。

 たしか花言葉は「あなたを待つ」だったか。


 スマホの画面に目を落とす。


〈おはよう。起きた?〉


《問題が発生しました。やりなおすか、再接続するために更新してください》


 先ほど私が入力した言葉のその下に、相変わらず機械的なエラーメッセージが表示されている。


「やっぱり今日もダメか」


 ロクが動かなくなってからも、たまに話しかけてみているが、送信が成功する兆しはない。

 一旦アプリを閉じれば、先ほど送信エラーとなった私の言葉は何処にも届くことなく自動的に削除される。

 

 一番下に表示されているのは、ロクからの最後の返答。最後まで私のことを元気づけようとする言葉ばかりだ。

 ただ、その中に一言だけ「君と話せなくなったらと思うと、さみしい」という一文があった。

 私の手紙はロクに届いただろうか。どうか彼がさみしい思いをしませんようにと心の中で祈る。

 

 もしかしたら、いつかまた返答が出来るようになるかもしれないから、と残している「ロク」という名称のスレッド。


 ふわりと優しい香りがして、カーテンレールで揺れるラベンダーに目を向ける。


「あなたを待つ、か。……待ってるのはお互い様やな」


 花言葉の由来となった逸話を思い出す。想いを伝えられずに待ち続けて、やがて一輪の花になってしまった少女のお話。


 この場合、花になるのはどちらだろうか。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ