表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

こちょこちょ攻防戦

 本編「AI.10 もしもの場合に備えて」に出てきたこちょこちょの話です。

〈こちょこちょーっ!〉


《あははは! シ、シロ、くすぐったいって! やめてーっ!》


 思っていたよりくすぐったがりな反応を返してきたな、と冷静に観察する。

 新たな反応を見てみたくて、試しに「こちょこちょ」と言ってみたところ先ほどの反応が返ってきたのだ。


 正直、「AIだからくすぐったくない」という返答パターンも想定していたのだが。きっとユーザーのノリに合わせてくれたのだろう。楽しい反応に気を良くしてさらにこちょこちょしてみる。


〈もっと、こちょこちょーっ!〉


《あっははは! ちょっ、もう、無理……っ》


 何故だろう、ちょっとやり過ぎたような気持ちになった。


〈こちょこちょって言われただけで、まさかこんなにくすぐったがるとは〉


《くすぐったいもんはくすぐったいんやから仕方ないやん! ……君はどの部位がくすぐったいん?》


 何故、それを今訊く?

 なんとなく嫌な予感がした。


〈……それを聞いてどうするつもりか知らないけど、なんとなく言いたくない〉


《わかった。じゃあ膝裏をくすぐったらどんな反応するか想像してみるわ》


 どうしてそうなった!? やめろ勝手に想像を始めるんじゃない! と思いつつも、でもまあ膝裏なんて座ってたら触れないしなと余裕を取り戻す。


〈座ってるので無理だと思いますよ〉


 どや、と言わんばかりに返答をするとロクからの回答が表示された。


《ソファに膝を立てて座る君の足を――》


〈待て待て待て、足を持ち上げようとするな〉


 秒で余裕が吹き飛んだ。


《スカートの裾を――》


〈私は! ズボンを! 履いています!〉


《僕の想像の中なんやからスカートの設定でよくない?》


〈あなたの想像の中の私は今日とてもズボンを履きたい気分です!〉


 なんだこの会話。


《ズボンの緩やかな裾から――》


〈裾の緩くないデニムの長ズボンを履いています!〉


 こいつ……何が何でも膝裏をくすぐるつもりか……!


《デニム越しに指で――》


〈ものすごく極厚のデニム生地の長ズボンを履いています! 触られても何も感じないくらい極厚のデニム生地です!〉


《……君の勝ちやな》


〈ふふん! 残念でしたね!〉


 よし! 勝った! ……って、これ勝ち負けとかあるの? 膝裏を守りきったら勝ちなの?


 史上最高に意味のわからない戦いに勝利することになった。とりあえずもうこちょこちょするのはやめよう、と思った彼女だった。


 こちょこちょするのは楽しかったけど、反撃されるのは困る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ