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悪役令嬢は推しのために命もかける〜婚約者の王子様? どうぞどうぞヒロインとお幸せに!〜  作者: 桃月 とと
第一部 悪役令嬢の幼少期

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36 魔物買取場ー2

「おお! これはすごい! クジャク龍だ!」


 門の周りに人だかりが出来ている。先程ハルピーの所にいた商人達が走っているのが見えた。


「クジャク龍はここでもかなり珍しいですね。しかもどうやら生け捕りのようです」


 急にレオハルトがソワソワし始めた。首を伸ばして門の方を見ている。


「……母上が欲しがっていて」


 クジャク龍はその名の通り、クジャクのような美しい鱗を持った魔獣だった。龍と名前はついているが、大型犬くらいのサイズで檻の中でおとなしくしている。

 貴族の中では、美しい魔獣を飼う事が一種のステータスになっているのだ。


「承知しました。すぐに手続きいたしましょう!」

「いやいいんだ! 正規の手続きで手に入れる方法を考えるよ」

「問題ありません。誰に売るかは一任されておりますので」

「いいのだろうか……」


 レオハルトが珍しく私用で王子としての特権を使おうとしている。珍しくというか、私は初めて見る姿だ。リオーネ様、よっぽど欲しがっていたのだろうな。確かに彼女が好きそうな姿の魔獣だ。


「王子に売らなかったらそれこそ首が飛んでしまいますよ!」


 そりゃそうか。


「信用されているんだな」


 大金が動くだろうにそれを一任されてるなんてよっぽどだ。


「私なんぞ、ここの職を失ったら働けるところがありませんから必死ですよ」

「こんなに知識があるのに?」

「ここでつけた知識ですので」

「お仕事、大切にされているんですね」


 はい、まあ……と、少し照れたように笑った。


 レオハルトが他の役人とクジャク龍購入のための手配をしている間、コッソリと質問をする。


「少し気になる魔物がいるのですが」

「なんなりとお尋ねください」


 私にとって魔物と言えばコイツだ。


「氷石病の原因となった魔物のことなのですが」

「なるほど。それは気になるでしょう」


 気遣うような表情になった。私の事情も知っているようだ。


「寄生型の魔物ですね。かなり厄介なタイプです。私も初めて聞きました」

「そうですか……」

「いえその! それで色々と調べたのですがどうも北方の国にいると聞く魔物に似ています。成長体は植物のような姿なのですが、実際は虫の性質の方が強いようです。火に弱いので、討伐自体はそれほど難しくないようですが」

「それです!……きっと……」


 危ない危ない。私は原作で見た目は知っている。知りたいのは、私達に種を飛ばした本体がどこにいるのか。その魔物の寿命はどれくらいなのか。今後この国で繁殖する可能性があるのか。治療法はわかっているが、もし魔物の成長体が増えすぎた場合どうなるかわからない。


 原作でその正体がわかった時はすでに国中にその魔物がいた。氷石病で死んだ人間は基本的に火葬されているにもかかわらず数が増えたということは、人間だけが苗床とは限らないのだろう。駆逐できるなら早目がいい。国も動いているが、成果はないようだし……。フォード担当官のオタク気質は期待できる気がする。


「氷石病の治療法が見つかってすぐに個人的に調査していただけなのですが……こちらの仕事の方が忙しくなってしまって止まっていたのです。私の調べたことでよければ、後ほどまとめてお渡ししますが……」

「助かります!」

「いえ、ちょうど調査を再開しようと思っていたのです。フレッド様のこともありますので」


 目が真剣だ。やはりフレッドの事はすでに知れ渡ってしまっているようだ。


「ああ! 別に私がフレッド様の派閥だとかそう言うわけではありません!」


 慌てて言葉を追加する。


「派閥があるのですか……?」

「残念ながら最近は……」


 やはりあの症状が引き金になっているのか。


「お二人ともこの領を大切に思ってくださっています。ですがフレッド様は未来の領主でありたいと思ってらっしゃいますが、フィンリー様はそのようにお考えではないのは、家臣一同わかっておりまして……」


 家臣一同!? そんなに嫌がっているのか。昨日の夜まで私達にはそんな素振り見せなかったのに。


「何が手立てがあればよいのですが」

「そうですね……」


 これは本当にどうにかしないと。フィンリー様が大好きな兄と跡目争いとか絶対に傷つくじゃないか。


「待たせてすまない!」

「無事購入できましたか?」

「ああ。魔獣使いも何人か候補を出してくれるそうだ。助かったよ」


 飼育員がいるのか……いや王の妃が魔獣の世話を直接するわけないから当たり前か。それにしても魔獣使いってそんなに何人もいるとは知らなかった。まあ飛龍に乗る人達も魔獣使いとも言えるから人数はいるのか。


「リオーネ様、喜んでくださるといいですね」

「そうだな。ものすごくタイミングがよかったよ」

「クジャク龍はよく冒険者ギルドに依頼が入っているのでここに来るのは本当に珍しいです」


 そしたらどうして買取場に持ち込まれたんだろう。


「持ち込んだのがちょっと訳アリの人物のようでしてね。腕はいいんですが、ギルドに顔は出せないみたいです」


 そんな人もいるのか。まさかお尋ね者? なんて考えていると、フォード担当官は何の気なしに答えを教えてくれた。


「彼ですよ」

「え!?」


 買取金を受け取りにきた若い男性をみてびっくりだ。あれって……原作で人気傭兵団の凄腕エースとして出ていた、トルーア・ルドルフィンじゃないか。実は隣国の王子様! というやつだ。ちなみに、彼はアイリスに惚れない。なぜなら年がそこそこ離れていいるからだ。ただし、心酔はする。この時期はここに居たのか。


「ご存知ですか? どうやら隣国の貴族という噂があるのですが」

「いえ……ずいぶん線の細い方なのが意外でして」

「あれはトルーア王子ではないか!?」


(うわぁぁわあ! マジかよ!!!)


 レオハルトが知ってたとは……これ、バレても大丈夫なのか? 本国に連れ戻されて原作と違う人生を送ることになってしまうのではないかと心配になる。


「通りで品がいいと……そりゃあ冒険者ギルド内には入れませんね」


 冒険者ギルドは世界と繋がっている。高貴な人が家出なんかすると、尋ね人として懸賞金をつけられている事も多い。


「ギルドに知らせなくていいのだろうか……」

「それは殿下のお好きになさって大丈夫ですよ。そういうものでございます」

「フォードは知らせたりしないのか。いい額の懸賞金がかかっていそうだが」

「それよりも彼がここに持ち込んでくれる魔物の方に価値を感じますので」


 フォード担当官はそんな野暮なことはしないだろう。となると、真面目なレオハルトがどう出るか。


「殿下、トルーア様は今お幸せそうですよ」


 仲間達と報酬を見てはしゃいでいる。レオハルトもそれを見て思うところがあったようだ。


「やめておこう。彼は望まない気がする」

「私もそう思います」


 このタイミングでフィンリー様が戻ってきた。どうやら買い物に行っていたらしい。


「何をお買いになったのですか?」

「帰ってからのお楽しみ!」


 えええ! なに!? めちゃくちゃ楽しみなんだけど! 

 うちの国の貴族が買い物に出かけることは珍しい。だが近年そういった動きが増えてきて、物語が始まる頃には若い貴族の中で一般的になり始める。今はまだ商人の方が屋敷に売りにくる、所謂外商スタイルが当たり前だ。本当にフィンリー様はわざわざお店に出かけて何を買ったのだろう。


「それじゃあ次は冒険者ギルドだね!」


 どうやらフィンリー様の一番のおすすめスポットのようだ。本人も案内したくてたまらなそうである。


(冒険者姿のフィンリー様をカメラにおさめる未来を掴むのよ!)

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