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悪役令嬢は推しのために命もかける〜婚約者の王子様? どうぞどうぞヒロインとお幸せに!〜  作者: 桃月 とと
第一部 悪役令嬢の幼少期

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15 レクリエーションは突然に

 ジェフリーと別れ、早速レオハルトのところへ向かう。この時間なら剣術の訓練中のはずだ。


(キャーーー! フィンリー様いる〜〜〜! なんて美しい動き〜〜〜!)


 今日はラッキーな日だ。フィンリー様をこの目に映すことができた。この世界全てに感謝である。


 レオハルトはちょうど休憩中。私とフィンリー様を交互に見つめて、苦々しい顔をした後こちらに来てくれた。


「君も本当に好きだな」

「はい! それはもう!」


 フィンリー様は集中していてこちらには気付いていない。自分より大きな相手に怯むことなく向かっていくのが見える。やばいやばい、ついついずっと目で追っちゃう。全てをそっちのけで彼を見ちゃう。


(はぁ……なんて空気が美味しいんだろ……)


 いかんいかん。本題に入らなきゃ。


「ジェフリー様にお会いしました」

「どうせそんなことだろうと思ったよ」


 バレてたか。しかし呆れた顔はされるが怒られなくてよかった。


「それで……何かあったのか」


 話もちゃんと聞いてくれるようだ。流石本作のヒーロー。器がでかい。その調子でアイリスを幸せにしてくれ。

 私はジェフリーの事情を切々と話して聞かせた。だが反応はイマイチだ。


「それじゃあ今のままでいいんだな」


 これは予想外。彼の実家を救おう! とか何とか言って、積極的に絡んでいくと思っていた。


「これはジェフリーの問題だ。同じ問題を抱えている貴族達も多いだろう。父に進言しておこう」


 祖父にもだな、とちょっと小さな声でもつぶやいた。


(あれぇ!? なんか現実的な解決策になっちゃってるな)


「一時しのぎの解決法じゃ意味がないと言ったのは君だろう」


 そういえばこの間の貧困地域の話になった時にそんなこと言ったような気がするな。ちょっとカッコつけて言っただけなんだけど……変なところで私の影響受けないでよ!!! 今じゃないんだよ今じゃ!


「一時しのぎでも助かる人もいるんです!」

「それはわかるが、ジェフリーはすぐに金が必要ということではないんだろう? 治療費の支払いの期限はかなりの猶予があるはずだ」


 ぐっ……しっかり把握してるな。まだ十歳なのにしっかり勉強している証拠……ええい! 勉強ばかりしてないで子供らしくもっと外で遊びなさい! なんて十歳児に言い負かされて滅茶苦茶な注文をつけたくなる。


 これでもダメなら仕方ない……やりたくなかったが、背に腹はかえられん。


「殿下、レクリエーションしましょう」

「レ……なんだって?」


 学生の頃は良かったな……授業潰れた上に遊ぶだけって。だけど社会人になってのソレは苦痛でしかなかった。なんだ社内レクって! なんで仕事以外で職場の人間に会わないといかんのじゃ!


「どうした……?」

「はっ! 大丈夫です。失礼しました」


 ついつい昔のことを思い出してしまった。


「皆で息抜きしましょう。リフレッシュです!」


 レクリエーションの目的の大半がコミュニケーションの促進だ。これでダメだったらまた別の手を考えることにする。


 二日後、我が家に集まったのはレオハルト、ジェフリー、フィンリー様とそのお付き達、そして私、ルカ、ソフィア、アリバラ先生である。


「えー……お集まりいただきました皆様に残念なお知らせです。雪が積もってまいりました!」


 全員が到着してすぐに雪がどんどんと降り始め、あっという間に地面がうっすら白くなってきたのだ。

 おにごっこにカン蹴り(缶はないけど)、大縄跳びあたりを予定していたがこれでは無理だ。事前にルール説明の紙を配っていたのに。残念だが、今日はもうお開き……とはいかない。こういうのは勢いが大切だ。ダメなら室内遊びに変更するしかない。


「とは言えせっかくなので室内レクリエーションに変更いたします!」

「カードゲームでもするのか?」


 この世界、当たり前かもしれないが娯楽が少ない。室内遊びといえばカードゲームかチェスのようなボードゲームだ。とは言えそれじゃあ芸がない。せっかく転生者がいるというのに!


「せっかくなので、何か新しい遊びをいたしましょう」


 エリザに紙とペンを持ってきてもらう。


「さあ第一回! ジェスチャーゲームスタートです」


 これは二人一組でチームを組み、一人がお題の書いた紙をオデコに貼り、もう一人がそれを見て体の動き、ジェスチャーだけで伝えるのだ。オデコに貼った方が正解できたらまた次のお題にいく。最後に回答数が多いチームの勝ちだ。

 お題はアリバラ先生にお願いする。判定はお付き達。チーム分けは勿論不正をした。だってレオハルトとジェフリーの親睦を深めないと意味ないからね!


(どうかどうかうまくいってくれぇ〜!)


 チーム分けは、レオハルトとジェフリー、ルカとフィンリー様、私とソフィアになった。

 もちろん私はフィンリー様と同じチームがよかったが、そうなると私はもう主催者として使いものにならないことは明白なのでグッと我慢した。誰か褒めてくれ。


「では、お題はこちらです」


 ジェフリー、フィンリー様、ソフィアがお題を受け取る。


「開始!」

 

 アリバラ先生の号令と共に各チーム、ジェスチャー組が動き始める。


(え〜っと、お題は……ベロス火山!?)


 ちょっと! お題が難しすぎない? 火山って……他二人のオデコに貼られたお題を見ても歴史の授業のような単語が並んでいた。大コケ、という単語が脳内によぎる……。盛り上がらないのが一番キツい。とりあえず急いで頭の上に腕で三角を作るとソフィアは瞬き一つせずに私を見ていた。


(ソフィア〜ごめんね!)


「アーチボルト初代国王!」

「正解です!」


 ジェフリーの声が響いた。まだ始まって一分も経ってないのに!? ていうかどんなジェスチャーしたんだ!?


「パラケロス!」

「あたり!」


 フィンリー様とルカの声も聞こえてくる。こちらはまだマグマを表現してるっていうのに。


「サラマンダー!」


「ヴィンザー帝国!」


「アルカナ!」


 ジェフリーがどんどん答えていく。結局、勝負はレオハルトとジェフリーの圧勝だった。

 私の祈りが天に通じたのか、二人でわいわい騒いでいる。


「凄いな! ジェフリー!」


 フィンリー様も褒めている。私も褒めちぎってあげたい。よくやった!


「お姉さま……ごめんなさい」

「ゲームで負けたからって謝らなくていいのよ! ただのゲームなのだから!」


 ソフィアは少しションボリしている。だけど彼女の賢さには驚いた。この年であのお題が答えられるなんて。


「殿下の表現がわかりやすかったのです」

「いやいや! 横目で見たけど全然わかんなかったよ?」

「そうですか? アーチボルト初代国王の時は、大広間にある肖像画と同じポーズをされたのですぐにわかりました」


 嬉しそうに答える。レオハルトも得意気だ。どうやら全員このゲームが気に入ってくれた。

 結局何度かチームを変えておこなっても、ジェフリーのいるチームが勝った。それはジェスチャーする側になっても同じで、あらゆる方向から答えを連想させるのがうまかった。


「鋭い観察眼を持っているのでしょう。知識量もすでにその辺の学者に引けを取らないように思います」


 アリバラ先生すら驚かせていた。


 その後は意思疎通ゲームをしたり、百と言ったら負けゲームをしたり。どれも頭脳戦が得意なジェフリーは大活躍をした。


(これ、外遊びじゃなくて正解だったな)


 雪よありがとう!


 フィンリー様も、ルカも、ソフィアも私も、そしてレオハルトもジェフリーの凄さを知る良い機会となった。


「君が褒めていた理由がわかったよ。確かにジェフリーはすごい。それに……」

「優しいですよね」


 今回、年下のソフィアも一緒だったが、チームになるたびにジェフリーは上手くソフィアに花を持たせてくれた。

 

「リディアナ様、機会をお与えくださりありがとうございます」


 深々と頭を下げられた。ジェフリーにはこちらの真意が伝わっていたようだ。


「こちらこそ、ジェフリー様のおかげで思っていたよりずっと楽しいものになりました。皆いい息抜きになったと思います」


 実際かなり盛り上がって予定時刻を三時間以上オーバーしている。夕日が綺麗だ。結局雪はあの後やんで、積もっていたものも溶けてしまった。ああ、企画が滑らなくて本当によかった……。


「ジェフリー! 帰ったらチェスをやろう!」


 レオハルトが嬉しそうにジェフリーを呼ぶ声がする。


 ということで、私は肩の荷を一つ下ろすことができたのだった。

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