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不安②

「何怒ってるんだよ?」


 部屋の隅々まで掃除機をかけて女の痕跡を消した。ゆうくんが愛美を思い出さないように。


「別に、怒ってない」


 同僚と部屋で飲んでいた。本当だろう。分かってる。こんな近くに住んでいて浮気するなんて考えられない。するならホテルにでも行くはずだ。


 問題はそこじゃない。ていうか、これは浮気なのか。(いびつ)な私たちの関係に浮気など存在しないような気もする。


「可愛い子だね?」


 掃除機の電源を切ってゆうくんに尋ねた。なんの意味もない質問。


「ん、ああ、そうだな」


「あの子、ゆうくんのこと狙ってるんじゃない?」


 だから何だというのか。どんな答えが聞きたいのか自分でも分からない。


「え、ああ。前に告られたけど」


「は?」


「ちゃんと断ったよ、彼女がいるって。だからバーベキューにも呼んだんだよ」


「ふーん」


 まんまと敵におびき寄せられて、こちらの戦力を計られた。その末に導き出された答えは強行突破。強奪。


「あんまり思わせぶりな態度取らない方が良いよ……」


 あーあ。


 ウザイ女一一。


「は? だからとってないって。紹介しただろ? お前のこと」


 やめて、お前とか言うの。


「でも家とか呼んだら勘違いするよ」


「だーかーらー。みんなで飲んでて、終電なくなったから家に来たんだよ。愛美だけじゃないしさあ」


 やめてよ、呼び捨てにするの。


「タクシーで帰ればいいじゃん」


「あのさぁ、分からないかも知れないけど社会人には付き合いがあるんだよ。チームワークが大切なの」


 なに、それ? 


「だからって、知らない女が寝たベッドなんて気持ち悪い」


「知るかよ、お前だって毎日旦那と寝てるんだろ? そっちのが気持ち悪いよ」


「それは……」


「セックスもしてるんだろ? そんなやつにぶつぶつ言われたくねえよ」


 それは、そうだ。でも。


「ゆうくんがそうしようって……」


「はぁ、俺のせい?」


「そうじゃないけど」


「とにかく俺は浮気なんてしてないし、これからもしない。余計なこと勘繰るな」


「はい……」


 私がわがままなの?


 父親としての自覚ある?


 こんな事になるなら行かなければ良かった。バーベキューなんて。

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