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89.暴走8

俺達が戦っている時、後ろのギャラリー(自衛隊員と探索者達)は、唖然としていた。いち早く復帰したのは鳳と長谷部である。


「おいっ、何だあれは?」


「何だと言われても敵のモンスターを蹂躙しているな。」


「おまっ、何冷静に解説してるんだよ!」


「冷静では無いけどな。内心ではとても驚愕しているよ。我々が全くダメージを与えることも出来なかった相手を、ああも簡単に倒されてはな。こちらの立つ瀬がない。」


「そうだな。」


「それにしても、皆さん異常ですが特に異常なのは神月さんという人でしょうね。」


と、二階堂さんも正気に戻る。


「そうだな。雷を全身に纏ってるみたいで、何だ?あれは?」


「確かに意味が分からんな!まぁ、それは、後で本人に聞いてみるのが手っ取り早いだろうな。話すかどうかはわからんが!」


「はぁ~、何を言ってるんだ鳳!あんなの話してもらわなければ脅威以外の無いものでもないぞ!」


「そうだな。だが、今はとりあえず見守るしかない。」


「そうですね。………それにしても朔夜さんと遙さんは、先程とは戦い方が全く違いますね。何というか、先程は、堅実に、確実に対処していたイメージですけど、今は、自由に戦っている感じですね。」


「何で、さっきまで今の戦いかたをしなかったんだ?そうすれば、もっと多くのモンスターを倒せていたんじゃないのか?」


長谷部は、全くわからんと腕組みをして首を左右に振る。


「じゃあ、もし、あの2人が先程、2人だけの時に今のように自由に戦っていたとしたらこちら側はどうなる?」


鳳の質問に、長谷部は腕組みをしたまま考える。


「それは、俺達がダメージを与えられない奴を簡単に倒すんだから俺達は要らないと判断して、全て嬢ちゃん達に任せてしまえばいいと思ってしまうな。………はっ、そうか、あまりに強い所を見せつけるとこちらのヤル気を失わせてしまう。そうなると嬢ちゃん達だと量を捌ききれないからある程度のヘイトを稼がないといけないということか!」


「そうだ!そして、自分達のMPの無くなってしまうと、いざという時の対応が出来なくなってしまうし、回復するのに後退しなければならない。そうなると、誰もあのモンスターを倒すことが出来なくなる。そうなるとこちらの士気は必然的に下がってしまう。」


「そうだな。まぁ、あの嬢ちゃん達がそこまで考えてやったのかは分からないけどな。」


「ああ。十中八九考えていなかっただろうな。だが、助かったのは事実だからな。」


「いいじゃないですか。それよりも今はこの状況が無事に終わることを見守りましょう。私達にはそれしかできないんですから。」


「はぁ~、そうだよな。俺達は無力だよな………。」


「そんなに悲観するな。ただ、今は黙って見守るとしよう。」


「あぁ、分かってるよ。」


3人が見守るなか、他の自衛隊員や探索者達も自分の思っていることを言い合っていた。その後、10分程度でダンジョンから出てくるブラックゴブリンを全て倒すことが出来た。だが、俺は、もう1匹の大きなモンスターの反応を察知していた。


「はぁ~、やっと終わったの!」


「思った異常にレベルが上がったぞ!」


「ウハウハなのです!」


「わん!」


従魔の連中は、上加減であるが、遙は、


「う~!もうちょっと欲しかったっす!………、朔夜はどうだったっすか?」


「私ですか?私は、お爺様を囮に、へっえん、援護をして沢山仕留めましたから満足です。」


「朔夜。何か儂を囮にしたとか不穏なことが聞こえたのじゃが?」


「そんなこと、言ってませんよ!」


「そうかの~。」


「そうです。それで、お爺様はどうだったんですか?」


「儂か?儂は楽しかったぞ!だがな、朔夜達や神月達を見ているとな。儂が倒した奴なんて微々たるものだからな。複雑としか言いようがないな。」


「そっ、そうですか!ところで師匠はどうでしたか?」


「思ったよりも面白かったぞ。………それよりも、いつものやつ頼むな。もう1匹大物が控えているみたいだからな。」


俺の言葉にグラム達が反応を示す。


「いつもの?」


「クジだよ!」


「ああ、なるほど。分かりました。すぐに準備しますね!」


朔夜はさっさと準備を始める。


「さて、参加者は?」


「グラムやるの!」


「オレもやるぞ!」


「勿論、ウルもなのです!」


「わん!」


「じゃあ、クジの参加者は、俺、グラム、スノウ、ウル、哮天犬でいいな!」


「神月、儂もやるぞ!」


「朔夜のじいさんはダメっすよ!さっきのブラックゴブリンでも朔夜の援護がなかったら危なかったらしいっす。なのに、それよりも、強そうなやつに挑むなんて、ただの馬鹿っすよ!」


「遙ぁ!朔夜の友達と思って甘く見ておれば………。」


ぱしっと朔夜が玄羅の肩を叩く。


「残念ですけど遙の言う通りですよ。悔しかったら早く強くなってくださいね。それと、師匠。できましたよ!」


「朔夜までそんなことを言うのか!」


と、孫にも突き放されている玄羅である。そして、俺は朔夜からアミダくじを預かる。


「さて、お前達選んでいいぞ!」


「じゃあ、グラムはここがいいの!」


グラムは、一番右を選ぶ。


「俺はここだぞ!」


スノウは、左から2番目を選ぶ。


「ウルはここなのです!」


ウルは、1番左を選ぶ。


「わんわん!」


そして、哮天犬は、右から2番目を選ぶ。ということで、俺は残った真ん中を選び朔夜に返す。朔夜が横の線を書き入れ、当たりからなぞっていく。


「当たりは、師匠ですね。」


「よしっ!」


「外れたの!」


「はぁ~。」


「悔しいのです!」


「く~ん。」


4人は、ダンジョンの入り口とは逆方向に向かって行く。そして、各々寛ぎモードに入る。4人が向かう方向に居た自衛隊員や探索者は道を開ける。俺は、まだ、モンスターが来るまではもう少し時間がかかるのでダンジョンの入り口に腕組みをして仁王立ちして待つことにする。そういえば、結構な敵を倒したのに魔石やドロップ品が落ちていない。よく見るとグラムが8人に分裂してドロップ品を回収していた。


「モンスターが落とした物が沢山あったら邪魔だと思って全員に分裂体を付けていたの。そして、倒したはしから回収していったの。それに、モンスターが落とした物は倒した人の物らしいから1人づつに分裂体を付けておいたの。でも、グラム達のはご主人が好きにしていいの!」


「そっか。偉いな。俺も、そこまで、考えてなかったぞ!でも、倒したモンスターの中で必要な物は持っていっていいぞ!」


「了解なの!だけど、必要な物って言ってもご主人に渡した方が有効利用してくれそうなの。あっ、でも、スキルの書とかグラム達が使えそうな装備品なんかがあったら欲しいの!」


「了解!」


グラムの分裂体と話を終えるとグラムの分裂体はさっさとドロップ品を回収してグラムの元に戻っていく。



さて、こちらは少し時間が遡って、俺達がアミダくじを選んでいる頃、遙は自分の仕事は終わったと思い何処からか椅子を拝借してきて座り込んでいた。


「はぁ~!疲れたっす!」


と、1人もう既に全て終わったと言わんばかりに寛ぎ始めた。そこに、長谷部と鳳、二ノ宮の3人が遙の元にやって来た。


「おい、嬢ちゃん。そんなに寛いでもう全て終わったのか?」


と、長谷部が質問をする。


「いや、まだみたいっすよ!」


「じゃあ、何でそんなに寛いでるんだよ。」


「ああっ、私の仕事はもう終わったのでゆっくりしてるっす!」


「終わっただと?それは、どういう意味だ?」


「言葉通りの意味っすよ。私はもう今日は働かないっすよ!あとは、師匠達がやるみたいっす!」


「それで、その師匠達は何してるんだ?」


「ああっ、あれっすね。師匠が言うには、ダンジョンの出口にもう1匹出てくるみたいっす。そいつは、今までの奴よりも強いやつみたいっすよ。多分、ボスモンスターじゃないっすか?師匠達は、誰が戦うかでアミダくじをしてるっす!」


「アミダくじですか?」


「そうっす!いつものことっす!」


「そっそうなのか!それよりも、ボスモンスターだと?何故そんなことが分かる?」


「さぁ?多分、今から来るモンスターがさっきまでのよりも強いと言うことと、1匹であると言うことっすかね。」


「何故、1匹だと分かるんですか?」


「それは、師匠のスキルっすよ!あと、あそこでアミダくじをしてるってことは1人しか戦えないから公平をきすためにやってるんだと思うっす!」


「そうなのか」


「ほらっ、そんなこと言ってる間に来たっすよ!」



ドシン、ドシンと恐らく歩く音が近づいて来る。そして、遂にソイツはダンジョンの入り口から出てきた。身長は5メートル位あり肌は黒く、身の丈にあった直剣を持っており、頭の上には黒い王冠が乗っていた。


種族 ブラックゴブリンキング

レベル 57

HP 7000

MP 5000

スキル 剣聖術3 身体強化9 咆哮6 威圧7


と、なったいた。


「何だ、見たまんまか。」


と思ってしまう。ダンジョンの入り口から出てきたブラックゴブリンキングは、大声で


「ぐぎゃゃゃゃーゃゃゃや!!!!」


叫ぶ。恐らく、ここにスキルの咆哮と威圧を使って相手を萎縮させるつもりなんだろうが、俺には全くと言っていい程効いていない。むしろ、それをやることにより隙だらけであったので俺は、雷神の剣の柄を握り瞬煌を発動する。


「ギャ?」


俺が残心をし雷神の剣を納刀すると、ブラックゴブリンキングは消滅していった。残ったのは、大きめの魔石とブラックゴブリンキングが握っていた直剣とスキルの書が1つ落ちていた。それらは、さっさとグラムに回収されていった。俺は一応気配を探ってみるが、もうダンジョンの入り口に向かってきているモンスターはいない状態であった。恐らく、これで終わりなのだろう。


「さーて、終わった、終わった!」


俺は、そう言いながら朔夜達の所に戻っていく。


「師匠、終わったって事は、もう、モンスターは地上には現れないんですか?」


「ん~、多分そうだと思うぞ。確信があるわけではないけど、とりあえずは、もう、こちらに迫っているモンスターはいないし、さっきのが今回の原因の騒動はボスモンスターだと思うぞ。」


「それは、本当なんですか?」


俺達が話をしていると支部長の二階堂が聞いてきた。


「絶対とは言えないですよ。今の現状を考えればですけどね。ただ、時間を置いてから、また、モンスターが迫ってくるという可能性がゼロではないですよ。」     

 

「そっ、そうですよね。」


「はい!」


「おいっ、神月っ!その武器は何だ?」


長谷部が迫ってきて、顔が至近距離まで迫ってくる。


「ちょ、顔がちかいですって!!」


「おい!長谷部。ちょっとは落ち着け!」


鳳が長谷部の肩を掴み落ち着かせる。


「でも、私も気になるので教えて欲しいものだな。」


「はぁ~!分かりました。特に隠すような事ではないですけど、ダンジョンの中で拾ったんですよ!」


「「「拾った?」」」


「ええ。確か、6から9階層のどれかの階層に刺さってたんですよ。それを回収しただけですよ。なぁ?」


俺は朔夜に同意を求める。


「そうですね。厳密には師匠がではなくて、グラムさんが持ってきましたけど。」


「そうなんですか。」


「それよりも、本当に大丈夫なんだよな?」


「さぁ?それは、俺にも分かりませんよ。何せ始めての事なんで!皆さんもそうでしょう?」


「まぁな!」


「うむ!」


「そうですね。」


と、長谷部、鳳、二階堂の3人はそれぞれ肯定をしめす。


「ただ、さっきも言いましたが、もうこちらに迫っているモンスターはいないんで大丈夫だと思いますが、確実とは言えませんよ。」


「神月が大丈夫と言っているんだ。もし、何かあれば神月に責任を取られればいいだけの話だ。」


と、玄羅は俺に責任を押し付けてくる。


「いやっ、俺は思うって言っただけで」


「なら、ここにずっといるか?あの黒いゴブリンどもは儂らでしか今のところ倒せないのだろう。因みに、儂はずっとここに居るのは御免だぞ。それに、最後の奴は、今の儂ではちと厳しいからの。」


「私達は、明日も学校があるっすからここに居るのはイヤっすよ!」


「そうですね。」


遙と朔夜も玄羅の意見に同意する。


「だからって、俺も嫌だぞ。折角、人生で始めての東京に来たんだから東京を満喫したいぞ!」


「そうか、なら、ここで1つ儂から提案がある。」


「何だ?」


「鳳、今回のダンジョンの探索は中止なんだろ?」


「あっ、ああ、そうなるな。私達がダメージを与えられなかった黒いゴブリンがまだ居るかもしれないダンジョンに入ろうとは思わん。入るのはただの自殺行為でしかないからな。」


「じゃあ、このまま帰るのか?」


「いや、暫くは監視が必要と思う。だが、万が一があった場合足止めは出きるが撃退は難しいだろう。なので、その場合は手伝ってはもらえないだろうか?」


と、鳳は俺の方を見るので


「はぁ~、わかりました。何かあったら電話ください!すぐに駆けつけますから!」


俺は、自分の携帯の番号を鳳に教えるのであった。

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