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86.暴走5

自衛隊の援護を受けながら黒いゴブリンを倒していっていた遙であったが妙な違和感があった。


「朔夜。ちょっと少し時間が欲しいっす!」


「どうしたんですこんな時に??私達しか倒せないんですよ?」


「わかってるっす!少しだけっす!」


「早くしてくださいね。」


「了解っす!………あっ、やっぱりっす!」


その声は、とても大きくそこに居た皆に聞こえていた。


「どうしたんですか?急に大きな声を出して!」


朔夜は、弓を放ちながら遙に聞く。


「アイツらとても美味しいっす!」


と、訳のわからないことを言い意気揚々と黒いゴブリンに向かっていこうとするが、朔夜の頭の中では頭の中にクエスチョンがたくさん浮かんでいたので、取りあえず遙を引き留める。


「遙、あなたなに言ってるの?」


朔夜は遙の額を触り自分の額と比べてみる。


「別に熱はないっす!」


と、朔夜の手を払いのける。


「熱があるのかと思って、つい!」


「熱はないっす!ってか、朔夜は何も感じないっすか?」


「感じる?」


「そうっす!」


「そう言われれば、普通に弓を射っているだけなのに最初の頃より威力が上がっているような感じがしますね。」


「そう、それっすよ。」


「それがどうしたんですか?」


「私達、結構な勢いでレベルが上がってるっす!」


「えっ?そんな馬鹿なこと………。」


朔夜は自分のステータスを確認する。


名前 天上院朔夜

レベル 22→27

HP 600→1000

MP 710→1050


名前 桜庭遙

レベル 22→28

HP 700→1200

MP 600→1000


「ねっ!すごいっすよね!」



「確かに、ゴブリンだけを倒していたにしては上がってますね。」


朔夜の声も何だか機嫌が良くなってきたような声を出している。


「じゃあ、行くっすよ!師匠が来るまでまだ時間が有りそうっすからそれまでにレベルをいっぱい上げるっす!!」


そう言い遙は、意気揚々と黒いゴブリンを倒しに向かう。それを見送る朔夜の弓も少しばかり力が込もっていた。すると、鳳が話かけてくる。


「おい。とうしたんだ?」


「ええ!ちょっと良いことを聞いたんですよ!」


「良いこと?」


「ええ!………、どうやらあの黒いゴブリンは相当な経験値を持っているようですよ!」


「経験値??」


「あら?ご存じないんですか?………経験値というのはゲームとかで次のレベルになるまでの必要な物なんですよ。例えば、次のレベルに必要な経験値を10とします。そして、スライムを倒したら経験値が2貰えます。要は、次のレベルになるまでにスライムを5匹倒したらレベルが上がる。というのが経験値なんですよ!」


「くっ、詳しい説明をありがとう!!」


「いえいえ、どういたしまして!」


「っと言うことは、奴らから得られる経験値がそこら辺の魔物を倒すより多い量の経験値を持っていると言うことなのか?」


「ええ、そうでしょうね。私と遙のレベルはドンドン上昇していってますから!」


「そんなにか?………それに対してうちの隊員は全くレベルが上がった様子が無いようだが………。」


「それは、恐らく2つの可能性があると思いますよ!」


「2つの可能性??」


「1つ目は、今回のモンスターが倒した人にしか経験値が貰えないパターン。2つ目が、自衛隊員の攻撃が全く効いていないので、倒すのに貢献していないと判断されて経験値が入らないですかね。」


「そうか。」


「すみません。あくまでも私の予想なので確かなことは言えませんけど………。」


「いや、それでも構わんよ。私には仮説すら思いつかなかったからね。」


「では、討伐に集中させてもらいますよ。」


と、朔夜が、鳳に言った瞬間、


「さっ、朔夜!!!ヤバイっす!!!」


声のした遙の方を見ると、前に突出しすぎて周りを囲まれている。どうやら経験値が美味しすぎてついつい我を忘れて突撃していった結果である。だが、朔夜はそんな遙を放置出来ない。何しろ親友なのだ。朔夜は、必死に矢を射るが遙を包囲する黒いゴブリンからは抜け出せないでいた。遙も、必死に包囲を突破しようとするが上手くいかない。


「おい!槍の嬢ちゃんヤバイんじゃないか?」


そう、長谷部は鳳に問う。


「確かにヤバそうだが、私達では彼女を助けに行ったとしても彼女を救えずにこちらが全滅するのが落ちだ!」


「そうは言うがな。このまま何もしないのは寝覚めが悪いぞ!」


「わかっている。だが、私達にはその方法がない!!」


「くっ、こんな時にもっと力があればな………。」


遙は、自分が調子に乗って突っ込み過ぎたと反省をしているが、今はそんなことを言っていられない。前方だけなら問題はないが四方八方を囲まれたら後ろからの攻撃は捌けない。遙の前方の黒いゴブリン達が一斉に遙に攻撃を仕掛ける。遙は、その攻撃を受け止めるが、そこで背後ががら空きとなり、その隙を見逃す奴らではない。朔夜も遙の背後から飛びかかる黒いゴブリン達を倒していたが、数が多くとても全てを倒しきることは出来ない。遂に黒いゴブリンの刃が遙に迫る。


「やっ、ヤバイっす!!!」


遙は、黒いゴブリンの攻撃が当たるのを覚悟した。その時………、ダンジョン支部の入り口から目にも止まらぬ速さで白い物体が突入してきた。その白い影は、誰にも当たらずむしろ人の合間を縫って風の如く駆け抜け、遙に襲いかかっていた黒いゴブリンを体当たりでぶっ飛ばしていた。ぶっ飛ばされた黒いゴブリンは、建物の壁にめり込み、帰らぬ者となっていた。そして、遙の前方から襲いかかっていた奴らも吹き飛ばし、遙の前に立ち、黒いゴブリン達に一吠えする。


「ワオーーーーーン!!!」


威圧を込めて吠えた為に、黒いゴブリン達は、一歩後退る。


「こっ 哮天犬さんっすか?」


哮天犬は、遙に振り返り


「わん!」


と、答える。


「あっありがとうっす。助かったっす!!」


と、哮天犬に抱きつき、撫でてやる。


「はぁっ!良かった。それにしてもグッドタイミングでしたね。」


朔夜は、遙が無事であったのでホッとしている。っが、その他の人達はそうもいかない。



その前に時は少し遡る。俺とじいさんは飛行機で無事に羽田空港に到着する。俺は、初めての飛行機でとても新鮮であった。あと、飛行機の窓から富士山が見えた。最初、富士山を見た時は「何だ。大したことないな。」と思っていたが、どうやらそのどうやら富士山ではなかったらしい。俺が富士山と勘違いをした後に、本物の富士山が姿を表した。そこにはいつもテレビ等で見ている実物大の富士山があり、一種の感動を覚えた。そこから、少しすると飛行機は着陸体勢をとり始め無事に羽田空港に着陸した。山口から東京までこんなに速く来れるとは思っていなかったのですごく感動した。そして、俺達は飛行機を降りる。


「それで、神月。これからどうするつもりなんだ?」


「どうするって、朔夜達は、東京駅にいるんだから行くしかないだろ?」


「だから、どうやってそこまで行くのか聞いてるんだ!」


「さぁ?」


「さぁって、お前な!!」


「仕方ないだろ!東京なんて生まれて始めて来たんだから!それと、電車の乗り方も今一ピンと来てないぞ!何たって電車なんて子供の頃にし乗ったことないからな。東京は、色々な路線があるらしいし、どの電車をどう乗り継いだら東京駅に着けるのかさっぱりだしな。っと、言うわけで、じいさん、案内してくれ!」


「はぁ~!仕方ないの。取りあえず、電車の乗り方は朔夜にでも聞いてくれ。」


「何だ?電車では行かないのか?」


「っと言うよりも、行けないだろう。恐らく、東京駅では騒ぎが起こっているだろうから電車は止まっている筈だ。」


「じゃあ、どうするんだよ?」


「別の方法で行く!」


「別の方法?バスとかタクシーか?」


「いや、恐らく、地上も混雑しているから時間がかかるだろう。」


「陸がダメとなると………空か?」


「正解だ!」


「でも、空からどうやっていくんだ?」


「今日もうすでに体験してると思うが………!」


「ヘリか?」


「正解だ!」


「やっぱ、金持ちは違うな!」


「それほどでもない。それよりも行くぞ!」


「おっおう。」


俺は、先に歩くじいさんの後を着いて歩く。勿論、哮天犬も一緒である。人生初の羽田空港の感想はとにかくデカイの一言である。俺は、歩

きながら周りをキョロキョロしていると、


「まるで、お上りさんだな!」


「仕方ないだろ!本当にお上りさんなんだから!」


「ハッハッハ。では、明日から東京観光でもすればいい。」


「元気だったらそうするさ!」


そんな会話をしながらじいさんが用意してくれたヘリに到着し、乗り込む。離陸するがあっという間に東京駅の上空に到着した。東京駅の周辺は人、人、人で溢れ帰っていた。


「それで、ここまで来ましたけどこれからどうするんですか?」


「すみません、操縦士さん。この辺りに着陸させられそうなところはないんですか?」


「すみせん。生憎とないんですよ。有ったとしても使用許可を得ていないので勝手に着陸することは出来ません。」


「そうですか!」


「神月。それで、どうするよ?」


「そうだな。………あっ、操縦士さん。どのくらいまでなら高度は下げられますか?」


「そうですね。20メートルが限界ですかね。それがどうしました?」


「おっ、おい。まさか、神月、お前!」


「そのまさかですよ。飛び降ります。」


「「はぁ~??」」


「そんな変な声出さないでくださいよ。」


「おっ、お前分かってるのか?20メートルだぞ!20メートル!普通なら死んでる距離だぞ!」


操縦士さんも首を縦に振っている。


「普通ならでしょ?俺達は、普通じゃなくて探索者ですよ。ダンジョンで、レベルアップして、体も丈夫になってるから大丈夫だよ!………多分 !」


「その、多分が怖いんだよ!」


「まぁ、怪我しても回復方法はあるから大丈夫だよ。哮天犬、お前も大丈夫だよな!!」


「わん!」


と、元気な返事が帰ってきた。


「では、操縦士さん。お願いします。」


「ええっ?良いんですか?」


「うううっ、えーい、構わん。儂も覚悟を決めた。やってくれ。」


「わっ、分かりました。」


そうして、東京駅の上空20メートルに到着し、ヘリのドアを開ける。


「じゃあ、行きますよ!」


「わん!」


「遂にこの時が来てしまった!!」


「誰から行きますか?」


すると、哮天犬が前に出てきた。


「わんわん!」


「お前が一番に行くのか?」


「わん!」


「よしっ!じゃあ、行ってこい!」


すると、哮天犬は、勢い良くヘリを飛び出して行く。着地は《スタッ》と、余裕で決めていた。


「じゃあ、次は俺だな。じいさん、先に行くぞ!」


「あっ、ああ!」


俺も、ヘリを飛び出す。俺も着地はスムーズで、特に外傷は見られない。動きにも違和感はないが、一応回復魔法をかけておくことにする。そして、最後の玄羅である。


「はぁ~、フゥー!」


「あっあの大丈夫ですか?」


「大丈夫に見えるか?」


「いえっ、その!」


流石に、操縦士さんも「見える。」とは言えなかった。


「いやいい。………儂も覚悟を決めるか!」


玄羅も覚悟を決めヘリから飛び出す。何とか着地を決めたが足には激痛が走った。


「っう、痛っ!!!!」


「ほら、じいさん。これ、飲みな!」


俺は、ハイポーションを玄羅に手渡す。


「お前の言うことを信じるんじゃなかった。」


そう言いながらハイポーションを飲む。


「まぁまぁ、無事に降りられたんだからいいじゃん!」


「いや、儂、無事ではないんだがな!」


「えっ?まだどこか悪いところあるか?」


「うん?………そういえば、痛みはなくなったな。」


玄羅は、さっきまで痛みがあったが、ハイポーションを飲んでからは痛みがなくなっていた。そして、体を動かしてみると全く痛みはなくなっていた。


「じゃあ、行こうか。」


「はぁ~仕方ないの。お主と居ると寿命が縮まるぞ!」


「まぁ、いいじゃん!」


俺達は東京駅に入ろうとすると、前から自衛隊の隊員が近づいてくる。その理由としては、俺達は目立ちすぎたのである夜のヘリコプター、しかも、野次馬が沢山いる中でヘリコプターから降りるために飛び降りたのである。見ていたのは1人2人ではなかった。そして、見ていた人達は、驚愕の声や悲鳴等が聞こえれば、人はそっちに注目がいくのは必然である。結果、俺達は目立ってしまった。それは、自衛隊員も例外ではなかった。


「君たち、怪我はありませんか?」


「ええ、大丈夫ですよ。」


「そうですか。ですが、あんな自殺行為みたいなことは止めてくださいね。」


「すみませんでした!」


「悪かったのう!」


「それで、どうしてあんな真似をしたんですか?」


「実は、俺達は探索者なんですよ。」


俺と玄羅は探索者カードを自衛隊員に見せる。


「ああ、成る程。では、ダンジョン庁から連絡があったから来ていただけたんですね!」


「???何の事ですか???」


「何の事って、都内や近県の探索者に協力の要請を出しているですよ。」


「そうなんですね。でも、俺達は都内に住んでいる探索者じゃないのでそもそも連絡なんて来てませんよ。」


「えっ?では、どうしてここに?」


「実は、そこに居るじいさんの孫が探索者をやってまして、東京駅ダンジョンでモンスターが溢れ出したことを知り、自分は、友達と東京駅ダンジョンに行くと連絡してきたんですよ。なので、慌てて山口からやってきたんですよ。」


「そうですか。えっと、では、あなたはどうしてここに?」


「俺ですか?俺は、興味半分とじいさんの付き添いですよ!」


「そうなんですか。では、どうぞ!」


俺達は、駅の中へと案内される。


「って、デカっ!!」


「何を言っておる!」


「いや、羽田空港の時も思ったけど、東京の建物は思ってたよりもバカデカイよな。」


「そうか?」


「ああ、まぁ、俺が単なる田舎者なんだけどな。」


「えっーと、ダンジョン支部の場所は分かりますか?」


「いいえ、全く!」


「儂も知らんな!」


「では、どうしますか?案内しましょうか?」


「いいんですか?是非お願いします。こんなに広いところ探すと時間がかかるし、絶対に迷う。」


「ハハハハハハ、では、案内しますね!」


「その前にちょっと待ってください!」


「ええ??分かりました。」


「よしっ、哮天犬。朔夜と遙の臭いは分かるな。」


「わん!」


と、首を縦に振る。


「じゃあ、お前は臭いを辿って先に朔夜と遙の所に行け。2人がピンチだったら助けてやれ。2人に余裕があるようなら俺達が来たことを知らせるだけでいいからな。」


「わん!」


「よしっ!じゃあ、行け!」


すると、哮天犬は、クンクンと臭いを嗅ぐと一目散に駆けていく。


「えっと、いいんですか?」


自衛隊員は不思議そうに俺に問う。


「いいんですよ。アイツは犬だけど頭は滅茶苦茶いいですから。」


「確かにな。」


「そっ、そうですか。分かりました。では、行きましょうか。」


俺達は、自衛隊員に案内されて東京駅のダンジョン支部に向かうのである。そして、哮天犬が遙のピンチに颯爽と登場したのである。





「おっ、おい!あれは何だ??」


長谷部は、震える指を指しながら問うさ

「見た感じは只の白い犬に見えますけど………………まさかっ!!」


「二階堂さんは、どうやら心当たりが有るようだな。」


「はい、鳳大佐。実は、ダンジョンであるものが宝箱から出現したらしいんです。」


「「あるもの?」」


長谷部と鳳は、今は白い犬の話をしているのに、二階堂が放った「もの」という言葉に引っ掛かりを覚えたが、取りあえずは最後まで話を聞くことにした。


「はい。それが、どうやら白い犬みたいなんです。」


「まさか?あの白い犬が100歩譲って魔物だと言うのなら話は分かるが、あれはどう見ても生きているぞ。………っと言うことは、宝箱から生きた犬が出現したと言うのか?」


「いえ、そうではないらしいです。聞いた話によると、カテゴリー的にはアイテムの部類に入るみたいです。てすが、担当した者からは、まるで生きている犬そのものだったそうですよ。恐らくですが、人工知能的な物があるのだと思いますよ。あくまでも推測ですけど。まぁ、この辺は、ダンジョンの不思議とでも思っておけばいいんじゃないですかね。」

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