83.暴走2
17時30分。俺は、風呂に入っていた。すると、風呂の外から携帯の着信音が聞こえてくるので、グラムに携帯を取って貰い携帯に出る。
「もしもし。」
『師匠っすか。遙っす!』
「おう、どうした?」
『今、時間大丈夫っすか?』
「風呂に入ってるだけだから、時間なら幾らでもあるぞ。ただ、俺が逆上せるまでにはして欲しいけどな!」
『呑気っすね。それにしても随分早い風呂っすね!』
何か逆鱗にでも振れたのだろうか?遙が怖い気がする!
「何か、感にでも触ったか?それなら、悪かった。」
『いえあるにはあるんすけど、師匠が知らなくても仕方ないっす!』
それから、遙に粗方説明を受ける。
「それで、元凶のモンスターが居た場合、被害が甚大になるから俺に来て欲しいと言うわけだな!」
『そうっす!』
「俺は、構わないが1つ問題がある。」
『何すか?』
「最低でも4、5時間はかかる!」
『それは仕方ないっす!』
「そうか!わかった。今から全速力でそっちに向かう!」
『ありがとうっす!待ってるっす!』
俺は電話を切ると風呂から飛び出す。取りあえず、衣類を何着分かをアイテムボックスに放り込む。
「ご主人、どうしたの?」
母親に抱き抱えられたグラムがそこに居た。
「母さん。親父を連れてきてくれる?………それと、グラム。スノウとウル、哮天犬。あと、猫と犬を1匹ずつ連れてきてくれるか?」
「わかったわ!」
「わかったの!」
俺が頼み事をするとグラムは、直ぐに行動を移す。その間に俺はある男に電話をかける。
プルルルルプルルルル………ガチャ!
『はい。もしもし。』
出たのは飛鳥さんである。
「もしもし、神月ですけど、爺さんいます?」
『ええ、いますよ。代わりますね。』
「お願いします。」
すると、玄羅は、直ぐに電話に出た。
『どうした?』
「実は、今すぐに東京に行きたい。どうやったら1番早く行ける?」
『切羽詰まっているんだな!』
「ああ!」
『わかった。10分後にまた電話しろ!』
「了解!」
そう言うと俺は電話を切る。すると、居間には全員が集まっていたので話を始める。
「サイガ。どうした?何か用か?」
「実は、今から東京に行こうと思う!」
「えっ?どうして?」
「急だな!何かあるのか?」
「実は………。」
俺は、遙に説明を受けたものをそのまま報告する。
「そうか!わかった気をつけて行くんだぞ!そして、必ず帰ってこい!」
「怪我しないようにね!」
「大丈夫なの!グラム達が付いてるの!」
「だぞ!」
「任せろなのです!」
「わん!」
グラム、スノウ、ウル、哮天犬は、自分達が付いていると言う。
『ご主人、私達を呼んだ理由はなんにゃ?』
「それは、俺が居ない間に目が赤くなっているモンスターが居たら徹底的に排除すること!但し、無理は禁物だ!直ぐに俺に知らせる事!恐らく、念話を送れば大丈夫だ」
『『了解だ(わん)(にゃ)!』』
後の事を両親と猫、犬に任せる事が出来たので、玄羅に連絡することにする。
プルルルル………ガチャ!
『もしもし!』
「爺さん。どうしたらいい?」
『取りあえず、儂の家まで来い!話はそれからだ!』
「わかった!」
そこで、電話を切る。
「さて、親父、母さん。行ってくる!」
「気をつけてな!」
「スタン何とかが終わったら連絡しなさいよ!」
「わかった。じゃあ!」
グラムとスノウ、ウルに指輪に入ってもらい。哮天犬と車に乗り込み爺さんの家まで車をとばす。
そして、玄羅の家に到着し玄羅に会う。
「神月。随分切羽詰まって居るようだが、まずは話を聞かせてもらおうか?」
「わかった!」
そして、遙との電話の内容をそのまま伝える。
「そうか!………では、行くぞ!」
「なぁ、爺さんも行くのか?」
「当然じゃ!そんな楽しそうな所に1人で行かせるわけ無いじゃろう!」
「あっ、そうですか!………ところでどうやって東京まで行くんだ?」
「まずは、ヘリを用意しておる。そのヘリで宇部空港に向かう。そこで、丁度いい時間の飛行機があったんで、飛行機で東京に行くぞ。飛行機は、大体1時間40分位で東京に着く。………神月の話だと東京駅周辺まで公共の交通機関を利用するのは難しそうだから、空港にもヘリを用意しておく。空から行った方が1番早くて済むからな。」
「了解だ。爺さん、何から何まで悪いな!」
「な~に、この位気にするな。いつも面倒かけとるし、また、孫のピンチじゃ!それに、今回は儂も参戦させてもらえそうだからな。」
「何か、最後のやつが1番の目的のような気が………。」
「何か行ったか?」
「何も言ってないぞ!」
「そうか!では、早く行くぞ!」
「了解!」
こうして、俺と哮天犬と玄羅は、玄羅の自宅に用意されていたヘリにて空港に向かう。空港には20分位で到着した。速いものである。ヘリは、思ったよりも乗り心地はよかった。ただ、俺は、空を飛ぶ乗り物に乗るのは人生の中でも初めての経験である。よく、飛行機が苦手な人が言う台詞に、「あんな鉄の塊が空を飛ぶなんて信じられない。」っと、いったものがあるが、俺も同じ意見である。確かに飛ぶ原理は分かってはいるが、どうしても納得はいかない。だが、乗るのが嫌と言うわけではない。飛行機に関しては、山口から東京まで2時間とかからずに移動出来る事にむしろ感動すらしている。そう言えば、乗る飛行機だが、哮天犬の事を何も聞いていなかったが、まぁ、玄羅がどうにかしてくれるだろう。そして、手続きの全てを玄羅に任せると、快く引き受けてくれ全部やってくれた。それと、哮天犬も一応許可を貰った。まぁ、普段なら絶対にあり得ないことだと思う。玄羅に感謝である。定刻に、無事に宇部空港を飛び立つ事が出来た。ただ、ヘリの時もそうたが、最初に地面から離れる瞬間はちょっと独特であり、足元が少し寂しい感じがする。とりあえず、東京に着くまでフライトを楽しむことにする。
時間は少し遡って、遙が俺との連絡を終えた頃。
「遙どうだった?」
「来てくれるらしいっす。………ただ………。」
「ただ、………何です?」
「少し時間がかかるらしいっす!」
「それは、仕方ないでしょ。どれだけ離れてると思ってるんです?」
「そうっすね!悩んでても仕方ないっす。今やるべき事をやるしかないっす!」
朔夜と遙が、東京駅ダンジョン支部に向かおうとしていると、
「朔夜ちゃん、遙ちゃん、どこに行くの?」
「愛理、ごめんなさいね。私達、黙ってたけど探索者になったんです。なので、私達は今から東京駅ダンジョンの支部まで行こうと思います!」
「ダメだよ。そんなことしたら危ないよ!」
「大丈夫っす!私達、こうみえても結構レベルアップしてるっす!」
「でも、今回起こっていることは相当ヤバイことなんじゃないのか?」
「確かに、霞が言うようにヤバイ状況ですけど、もう既に手は打ちましたから、後は間に合えさせすれば大丈夫です!」
「手を打ったって、さっきの遙の電話か?」
「そうっす!私達がお世話になっている人に救援を求めたっす。あの人が来れば鬼に綿棒っす!」
「遙ちゃん。それを言うなら、鬼に金棒ね!」
「そうっす!金棒っす!」
「そうか、でも間に合わなかったら………。」
「大丈夫ですよ!」
「そうっす!」
「ただ、モンスターを外に出すと被害が広がるだけですから、私達もモンスターを倒しに行きます。」
「でも、その前に、愛理と霞を駅の外に避難させるのが最優先っす!」
「「私達っ?」」
「そうっす!2人は一般人っす。」
「そうですね。では、一旦外に出ましょうか?ほら、藤原君達も行きますよ!」
朔夜達は、無事に何事もなく外に出ることが出来た。男子達は、外にっられた事により安心して座り込んでいる。
「じゃあ、私達は行くっすよ!」
「えっ?遙ちゃん。本当に行っちゃうの?」
「勿論っす!そうじゃないと折角強くなったのに宝の持ち腐れっす!」
「そう言うわけで藤原君達、案内宜しくお願いしますね!」
朔夜がニコッと藤原達3人に笑いかける。
「なっ、なんで、ぼっ、僕達が行かないと行けないんだ?」
「えっ?だって、一応探索者だし、私と遙は、ここのダンジョンに来たこと無いから場所が分からないんですよ。東京駅って凄く広いじゃないですか!だから、行ったことのある人に案内して貰えればスムーズにダンジョン支部まで行くことが出来るでしょ?」
「いっ、嫌だ。それでも危険なところには行きたくない!」
それを、聞いた遙が、怖い顔している。
「危険な事をしたくないんなら何故、探索者になったんすか?探索者が、危険なことは初めから分かってた筈っす!もう、お前達に案内して貰わなくてもいいっす。一緒に行って足手まといになられたら洒落にならないっす。私達に場所を教えてさっさと家にでも帰るっす!」
「「「なっ、何だと!!」」」
遙の言い方に流石にプライドに触れたのか藤原達は怒りはじめるが、遙が、思いっきり地面を踏む。それに対して藤原達はビビったようで直ぐにダンジョン支部の場所と行き方を教えてくれた。
「じゃあ、遙。行きますよ!」
「わかったっす!じゃあ、愛理、霞、行って来るっす!」
「ねぇ、私達も付いていっちゃダメかな?」
「ダメです!」
「ダメっす!」
「そうだぞ、愛理!私達が行っても足手まといになるだけだ。」
「でも、ついこの間まで私達には差なんて殆ど無かったのよ。たった、数日ダンジョンに行ってたからってそんなに強くはなれないんじゃない?」
「たっ確かに、そう言われればそうだな。」
と、愛理と霞は、朔夜と遙、2人を見る。
「大丈夫ですよ。その辺の探索者よりは強い自信はあります。」
「任せるっす!」
「そうなの。じゃあ、2人とも無事に帰ってきてね!」
「必ず帰ってこいよ!」
「わかりました。」
「了解っす!私達は何時になるか分からないっすから、愛理と霞は先に帰ってるっす!」
「えっ~!待ってようと思ったのに!」
「愛理、我が儘言うんじゃない!………、私達は先に帰らせて貰うが、終わったら無事かどうかだけ連絡をくれ!何時でもいいぞ!」
「わかりました。必ず、連絡します。」
「じゃあ、行ってくるっす!」
そう言うと朔夜と遙は、東京駅に入っていく。愛理と霞は、そんな2人の背中を見つめることしか出来なかった。
「行っちゃったね!」
「そうだな。」
「私達はどうする?」
「帰るしかないだろう。ここに、いつまでも居ても埒があかないし他の人の迷惑にもなる!」
「ううっ、わかったよ。………でも、1人で居るのは不安しかないから霞ちゃん、一緒に居てよ!」
「わかったよ。とりあえず、何処かのファミレスにでも入って時間を潰すぞ。私の家はそんなに五月蝿くないから9時位までに帰れば問題ないから、それまでなら付き合ってやる。」
「わかったよ。私の家もそんなに五月蝿くないから大丈夫だよ!」
そして、愛理と霞の2人は東京駅を後にしてファミレスに向かうのであった。
そして、こちらは、さっき別れた朔夜と遙である。丁度、東京駅に入ろうとして自衛隊の人に止められたのである。
「ちょっと君たち待ちなさい。ここは、ここは危険だから避難しなさい。」
「私達、探索者なんです!」
2人とも自衛隊の隊員に探索者カードを見せる。
「事情は、クエストを受けなかった人から聞いてるっす!」
「事情を知った上で行くと?」
「はい!」
「勿論っす!」
「そうですか。その意思を止めることは出来ませんが、くれぐれも無理はしないようにお願いしますね。」
「わかりました。」
「努力するっす!」
「では、お気をつけて。ご協力感謝します!!」
朔夜と遙は、自衛隊の隊員を納得させて、支部へ向かう。自衛隊の隊員は、朔夜と遙の背中を見ながら敬礼をして見送った。