76.魔法の使い方
スキルの書を鑑定し終えた。スキルの書は、こちらで全て消費しようと思う。
「それで、サイガさん。差し支えなければどうやって使うのか教えてもらってもいいですか?」
「いいですよ。まず、火魔法は爺さんに使ってもらおうと思います。爺さんは魔法系のスキルを持っていないので1つ位は持っておいた方がいいですからね。あと、千里眼は朔夜に使ってもらおうと思います。朔夜の戦闘スタイルに必要なスキルですからね。あと、計算は遙と俺で使おうと思います。まぁ、これは賭けなんですが計算が只の数式を解くだけのスキルではないきがするんですよね。まぁ、上手く行けば戦闘中に役立てばと思って使おうと思います。あと、思考と分身は俺が使おうと思います。思考は、計算と一緒にしたら相乗効果を期待してという感じ出すかね。これが、上手く行って次に同じスキルの書が出たときは遙達にも使ってもらおうと思います。分身は、俺の戦闘力向上のためですかね。」
「ちょっと待て神月よ。儂は魔法のスキルなんて要らないぞ!」
ここで、火魔法のスキルの書を渡そうと思っていた玄羅が異論を唱える。
「えっ?あった方が便利だと思うぞ!」
「儂は、自分の腕だけで充分だぞ。」
「そんなこと言わずに使ってみればいいんじゃない?」
「要らん。儂は、近接戦闘がしたいのだ。遠くからチマチマと魔法なんぞ放ってられるか!!」
「別に魔法は放つだけのものじゃないぞ!」
「どう言うことだ?」
「魔法っ要はイメージだよ。爺さんの固定概念では、魔法は、放つものって思ってるよな?」
「実際にそうだろ?違うのか?」
「違う。」
「すいません、サイガさん。その話、興味があるのですが………。」
「私も興味があるな!」
と、葵さんと四ノ宮さんも話に入ってくる。
「えっーと、国の人なら知ってるんじゃないですか?」
「いや、知らんな。」
「じゃあ、今ではどんな魔法を使ってきたんですか?」
「火魔法ならファイヤーボール、風魔法ならウインドボールとかかな。水魔法は攻撃力は無いがダンジョン内では水は貴重だからな、意外と高価だぞ。」
「そうなんですね。恐らくですけど、魔法のレベルが低いからボール系の魔法しか使えなくて、レベルが上がれば所謂アロー系の魔法やランス系の魔法を使えるなんて思ってませんか?」
「神月の言う通りだ。違うのか?」
「まぁ、論より証拠ですかね。………葵さん。ちょっと腰に差している剣を貸してもらっていいですか?」
「えっええ、いいですよ!」
俺は、葵さんが腰に差している剣を借りることにした。
「それで、どうするんじゃ?」
「まぁ、見ててよ。」
俺は剣に魔法で炎を纏わせる。すると、剣は炎に包まれる。
「サッ、サイガさん。そっ、それは何ですか?」
「何ですかって、ただ、火魔法を剣に纏わせてるだけですよ!」
「普通そんなこと出来ないですよ!」
「やったことあるんですか?」
「えっ、いや、ないですけど………。」
「じゃあ、やってみてくださいよ。感覚で言えば剣が自分の体の一部と考えて、魔力を通すような感覚で炎が灯るような、燃えるような感じでやると意外と出来ますよ。」
「そうなんですか。」
「神月、だが、たかが剣が燃えているだけだろ?」
「まぁ、今はそうだけど、じゃあ、これならどうだ?」
俺は、燃えている剣を元に戻して、もう一度火魔法を剣に通す。今度は剣が燃えることはなく剣の周りが赤くなり剣の形になる。
「それがどうしたんだ?」
「さっきとは違うんだけどな………。最初のは、ただ剣に炎が纏っただけで、今回のは言うなれば炎の剣だよ。」
「炎の剣?」
「そう。最初のは、斬ると炎の攻撃が同時に起こる。つまり、斬った部分を焼くって感じだけど、後者は切れ味を上げて、その後、炎は外ではなく体内に入っていく。」
「ほう、それは面白いな。」
「それに、多分だが、その内、物理だけでは倒しにくい、また、倒せない相手が出てくると思うが、爺さんはそれでいいのか?」
「いや、いかんな。それに、今の使い方は面白いな。………よしっ、儂も魔法を習得するぞ!」
「じゃあ、これ使いなよ。」
俺は、玄羅に火魔法のスキルの書を手渡す。
「えっーと、サイガさん。この事、広めてもいいですか?」
「いいですよ。ただし、葵さんが発信してくださいよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「さて、ちょっとしたサプライズも終わったことだし、続きをしようか!」
魔法のちょっとした使い方を教え終えたので、四ノ宮さんが残りの買い取りを再開すると言う。
「次はなんじゃったかの?」
「次は、9階層と10階層のボスモンスターのドロップ品でいいんじゃないか?」
「そうじゃの。」
「ちょ、ちょっと待ってください。10階層のボスまで倒したんですか?」
「ええまぁ!」
「ええまぁ。って、滅茶苦茶ですね!それで、何がドロップしたんですか?」
「これじゃの!」
そう言い玄羅がアイテム袋からドロップ品を取り出す。
「えーっと、ビッグサンドリザードの魔石と皮、そして、オルトロスの魔石と牙、毛皮ですね!」
神崎さんが鑑定してくれる。
「はぁ~、まさか本当だったとはな。これは、買い取りでいいんだよな?」
「いいですよ。」
「それで、9、10階層の宝箱の中身は何だったんだ?」
「まずは、これじゃな。」
玄羅がアイテム袋から25本の瓶を取り出す。
「えっーと、ハイポーションが15本、ハイマジックポーションが10本ですね!………宝箱から出たのはこれだけですか?」
「いえ、まだ、後もう2点ほどあります。………爺さん頼む!」
玄羅が頷きアイテム袋からオリハルコンナックルガントレットと天叢雲を取り出す。
「………………………。」
神崎さんは無言になってしまい、顔色が悪い。そして、ギッギッギッと機械音がするように副支部長の四ノ宮さんの顔を見る。そして、震える手で2つのドロップ品を指差す。どうやら、四ノ宮さんにこの2つのドロップ品を鑑定してみろと言うことらしい。四ノ宮さんが鑑定を行うと頭を抱え始めた。
「四ノ宮さん。どうしたんですか?」
何も知らない葵さんが四ノ宮さんに尋ねる。
「どうもこうもない。また、とんでもないものを持って来たぞ!」
「とんでもないもの?」
「まずは、この鎧の手の部分たが鎧の一部ではなくナックルガントレットと言うらしく武器だ。」
「へぇー、珍しいですね。肉弾戦で戦う人ってあんまり居ませんからね。でも、それだけなら驚く理由にはなりませんよね?」
「ああっ、そうだな。問題は、これが、何で作られているかと言うことだ。」
「何で?って、普通なら銅とか鉄なんかが使われてるんじゃないですか?」
「ああっ、普通ならな。だが、これは、ダンジョンから出てきたものだぞ!………これはな、どうやら、オリハルコンで出来ているようだぞ!」
「「「「オリハルコン!!!」」」」
「朔夜、オリハルコンって何だ?」
「爺さん、オリハルコンを知らないっすか?」
「遙、お爺様が知らなくても当然ですよ。」
「まぁ、そうっすね!」
「お爺様、オリハルコンというのはですね、色々な物語に出てくる最硬、最強の金属の1つなんですよ。あとは、ヒヒイロカネやアダマンタイトなんてものもありますよ。」
「ほう、そうなのか。」
「おほん、話を続けるぞ。もう1つの問題はこの剣だ。」
「その剣は何なんですか?」
葵さんが四ノ宮さんに聞く。
「この剣の名前は、天叢雲という。」
「朔夜、天叢雲ってどっかで聞いたことがあるんすけど、知ってるっすか?」
「えっーと、確か………。」
「そらなら儂が知っておる。………天叢雲とは、別名草薙の剣と呼ばれる物だ。その昔、現在の島根県辺りに居たと言うヤマタノオロチの尾の1つから出てきたもので、現在では三種の神器と呼ばれるものの1つだ。」
「あっ、三種の神器なら聞いたことがあるっす!」
「ああ、そらなら神崎の様子がおかしくなるのも頷けるな。」
と、葵さんが神崎さんをいじる。
「それで、神月。この2つはどうするんだ。流石にウチでの買い取りは不可能だぞ。」
「大丈夫ですよ。こちらで引き取りますから。」
「そうか!」
「ところで、今日は食材の方は無いのか?」
「すみません。今日はないですね。」
「そうか。」
そう、今日は食材を発見することが出来ていなかったのである。グラム達も見つけられておらず、まぁ、仕方のないことなのだろう。
こうして買い取りは終了した。あとは、集計を待つだけである。
「集計を言うぞ。サンドリザードマンの魔石が、615個っあた。………、はぁ~、どれだけ倒してきたのやら。まぁ、いい、1個2600円で、合計159万9000円。サンドリザードマンの皮が455個で、1つ5800円で、263万9000円だ。スキルの書は、神月が全部使う予定だから買い取りは無しで、あとは、ビッグサンドリザードとオルトロスの魔石は、ビッグサンドリザードの方は6万円、オルトロスの方は9万円で買い取ろう。それで、全てを合わせて、488万8000円になる。それと、ビッグサンドリザードの皮と、オルトロスの牙と毛皮は、オークションに出品する方向だ。それで、金の振り分けはどうするんだ?」
「そうですね。………朔夜と遙と爺さんに100万円ずつで残りを俺のカードに入れてもらっていいですか?3人ともそれで、いいか?」
「えっ、いや、あの!」
「貰いすぎっすよ!」
「そうじゃの。その半分でも多いくらいだな。」
「そうですね。確かにそれでも多い位ですね。」
「私もその意見には同意っす。」
「じゃあ、50万円ずつでいいのか?」
「まぁ、それなら。」
「さっきよりはマシっすけど、大金すね。」
「儂は異論はない。」
「じゃあそう言うことでお願いします。」
「了解だ。カードを預かろう。」
ということで、朔夜、遙、玄羅が50万円ずつで、俺の取り分は338万8000円となる。俺達は自分の探索者カードを取り出して四ノ宮さんに渡し、四ノ宮さんが神崎さんに入金をしてくるように促すと、神崎さんは探索者カードを持って一旦部屋を退室する。
5分もすると神崎さんは戻って来て、俺達に探索者カードを返却してくれる。
「じゃあ、今日はこれで失礼します。」
「ああっ、また、待ってるぞ!」
俺達は部屋を後にする。そして、ホールに出てくる。
「ああっ、そうだ、神月。賭けの報酬についてだが、今日いきなりというのはちょっと難しいから、明日の夜と言うことでいいか?」
「いいぞ。俺は得に気にしないぞ。最高に旨いものを食わせたやってくれ。」
「分かった。」
「それで、ちょっと話があるんだが、爺さんの車の中でいいか?」
「???いいぞ!」
俺達は玄羅達を迎えに来た車に乗り込む。
「それで、話とは何だ?」
「料理に使う材料の事だ。これを使ってくれ!」
俺は、アイテムボックスから発泡スチロールの箱を2つ取り出す。これは、賭けをした後にボスと戦闘を行っているときに密かに用意したものだ。1つ目には魚類を入れてある。ヒラメやカレイ、カニを入れておいた。2つ目にはキャベツ、白菜、ホウレン草、きゅうり、椎茸や舞茸、シメジ等を入れておいた。勿論、ダンジョン産というのは秘密である。
「分かったぞ。では、明日の夜でいいか?」
「ああ、いいぞ。あと、肉は今日のドロップ品を使っていいぞ。」
「そういえば、買い取りに出してなかったな。」
「ああっ、忘れてたな。」
「そうだな。」
「じゃあ、今日はこれで帰るぞ。」
「明日も楽しみにしてるぞ。」
俺は、玄羅の車から降りて自分の車に乗り家に帰る。グラムの報酬については明日の夜になることを本人に説明すると快く快諾してくれた。