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73.クレーター

4月6日。今日は、待ち合わせの9時5分前にダンジョン支部に到着する。そこにはもう既に朔夜達は待っていた。


「さて、行こうか!」


「はい。」


「了解っす!」


「早く行くぞ!」


俺達は、ダンジョンに入り人気の無いのを確認し、9階層に転移をする。昨日と同じくグラム達を出してやる。


「よしっ、今日も頑張るの!」


「やるぞ!」


「楽しむのです!」


「じゃあ、ボスの前で待ち合わせな。」


「「「わかった(の)(ぞ)(なのです)!!」」」


そう言うと、グラムとウルはスノウに乗せてもらいあっという間に行ってしまった。


「じゃあ、俺達も行きましょうか!」


「はい。」


「了解っす!」


「早く行こう。」


俺達も、探索を開始する。開始すると直ぐにモンスターと遭遇する。


「おい、神月。儂にやらせてくれんか?」


「いいけど、大丈夫ですか?」


「大丈夫だ!」


「じゃあ、朔夜達と一緒にやってもらいますよ。危なかったら助けに入りますからね。」


「それでいい。」


「じやあ、朔夜、遙、任せた。」


朔夜と遙には既に無弓とトライデささントを手渡している。モンスターの内訳はサンドリザードマンが4匹だった。朔夜は、弓で射る。サンドリザードマンを1匹倒し、1匹に命中し2匹が無傷である。


「遙は負傷してる奴を、哮天犬は、無傷の奴1匹を、そして、爺さんも無傷のもう1匹頼むな。」


「了解っす!」


「わん!」


「無傷の奴1匹か。」


「爺さん、不満なのか?」


「うむ。」


「取りあえずやってみなよ。8階層よりもレベルが上がってるからさ。」


「そうか、わかった。」


あんまり納得はしてくれていないようだが、まぁいいか。まず、哮天犬は飛び出してあっという間に無傷のサンドリザードマンを倒している。そして、もう1匹の無傷のサンドリザードマンが突っ込んで、その後ろから負傷したサンドリザードマンが近寄ってきている。まず、玄羅が無傷のサンドリザードマンに斬りかかり鍔迫り合いを始める。その横を遙が通りすぎる。遙は、手傷を負っているサンドリザードマンに襲いかかる。トライデントで、水を生成し水弾として使いサンドリザードマンを牽制して隙を作りトライデントで止めを指していた。そして、最後は玄羅であるが、こちらは意外といい戦いをしていた。


「手を貸そうか?」


「要らん!」


そう言うと鍔是っていた相手を体を使い後退させるとそのままの勢いで間合いを詰めて相手の心臓部分を貫いていた。サンドリザードマンは、そのまま仰向けに倒れ、消えていった。玄羅の勝ちである。


「ふうっ、思ったより苦戦したわい。」


「だから、と言ったろ?」


「そうだな。だが、楽しかったぞ。」


「じゃあ、慣れるまで暫くこの作戦で行こうか!」


「わかった!」


「了解っす!」


「頑張ります!」


それからは、この作戦で午前中戦い抜いた。まぁ、朔夜の射撃次第で2匹倒せたりしていたが、そう言う場合は哮天犬が外れて遙と玄羅で、残りの2匹わ相手にしてもらったりしていた。そして、昼休憩のためにテントを出し休憩を行う。昼食後に、


「あっ、そう言えば昨日手に入った回復魔法だが朔夜達に渡すから好きに使っていいぞ!」


「えっ?いいんですか?」


「いいよ。俺が持ってても仕方ないし、朔夜達が有効利用してくれたらそれでいいよ。売るなり自分達で使うなりしてくれたらいいよ。」


「そんな、売るなんて!」


「そうっす!売るなんて勿体ないことはしないっす!使うなら私が使うっす!」


「でも、遙は前衛だろ?前衛が回復魔法って何か合わない気がするんだけど、俺だけか?」


「そうですね。私もそれには賛成です。」


「そうっすか。」


少し遙は肩を落としている。


「っと言うことは、朔夜になるわけなんだが、どうする?自分で使ってみるか?」


「やめておきます。」


「理由を聞いても?」


「はい。正直に言うと自信がないです。まだ、弓をもっと当てられるようにするのに精一杯で他の事をする余裕が無いって言うのが理由です。だから、回復魔法は師匠が預かっておいてください。」


「わかった。じゃあ、預かっておくから何時でも言ってくれよ。」


「わかりました。」


「了解っす!」


そして、休憩を終えて昼からの探索を開始する。開始早々に大豆畑を発見したので収穫をするが、さやから取り出すのが一苦労である。ここで、1つ思い付いたことある。それは、大豆をさやが付いた状態で入れたらどうなるかと言うことである。取りあえず試しにやってみると、見事に大豆とさやに分かれていた。アイテムボックス様々である。この事を3人に話すと、


「チートっすね!」


「チートですね!」


玄羅は、チートの意味がよく分かっていなかったが、俺がおかしいとは思っているようである。

気を取り直して、探索を開始する。午後も午前中と変わらず同じ作戦でいく。


「ふうっ、やっと楽に倒せるようになってきたわい。」


「見てるこっちはハラハラもんだけどな!」


そんな話をしていると、近くグラム達の気配があったので、そちらに向かってみる。すると、グラム達が3人並んで居た。


「どうしたんだ?」


「あっ、ご主人!丁度よかったの!」


「あれを見るんだぞ!」


「モンスターが一杯なのです!」


見るとそこは何故かクレーターのようになっており、真ん中に宝箱が置いてある。だが、その周りにサンドリザードマンが沢山居て、中にサンドリザードマン位の大きさの蠍や蛇なんかも混ざっていた。まぁ、デススコーピオンやサーペントほどの大きさはないが、ある程度の脅威だと思う。


「なる程な。」


俺は現状を見て納得する。


「それで、どうしようか迷ってたの。」


「そうだぞ。」


「なのです。」


「お前らが悩むなんて珍しいな。」


「酷いの!グラム達だって悩むときはあるの!」


「そうだぞ!」


「なのです!」


「悪かったよ。でも、この場合は、殲滅の一択じゃないのか?」


「普通ならそうなの。」


スノウとウルもウンウンと頷いている。


「じゃあ、どうして?」


「アイツら、弱いからあんまり楽しくないの!」


「「「えっ?弱い??」」」


「そうなのか。まぁ、分からなくはないな。」


「おいっ、神月。お前と言うかお前達は………儂が愉しくしていると言うのに水を差しおって!」


と、怒りだした。どうやら、俺達がサンドリザードマンの事を雑魚扱いしたことに対しておかんむりになったのであろう。何しろ玄羅は今が愉しいのである。自分と同じ位の奴と自分の業を全力で使って戦いが出来る事に対して満足していた。それに、敵を倒せばレベルが上がり、自分が又一段と強くなっていることを実感していた。そんな、自分と同じ位の実力を秘めたモンスターに対し、俺達は雑魚と言ったのだ。これは、遠回しに玄羅に対しても雑魚と言っているのと同義である。


「まぁまぁ、師匠達なら仕方ないっすよ!」


「お爺様。考えても無駄ですよ。」


何か3人が酷いことを言ってるようであるが無視をする。


「よしっ、じゃあ、勝負するか?」


「「「「「「勝負(なの)(かだぞ)(なのです)??」」」」」」


「そう勝負。丁度クレーターになってて、真ん中あたりに宝箱があるから、希望者全員でスタートして最初に宝箱に辿り着いた奴の勝ち。なんてのはどうだ?」


「面白そうなの!」


「いいぞ!」


「楽しそうなのです!」


「わん!」


「じゃあ、決まりだな。じゃあ参加者は?」


「グラムはやるの!」


「やるぞ!」


「勿論なのです!」


「わん!」


「じゃあ、俺とグラム、スノウ、ウル、哮天犬だな。爺さんはどうするんだ?」


「ばっバカモン。儂を殺す気か?儂も戦闘狂という認識はあるが、流石にあそこに飛び込む気にはなれんぞ。あれは、戦闘というよりも儂が行ったらなぶり殺されるのがオチだ。」


「そうか。それは残念だ。朔夜達はどうするんだ?」


「何、言ってるんですか見学に決まってます。」


「当たり前っす!」


「そうだよね。じゃあ、始めようか?」


「ご主人、ちょっと待つの!」


「グラム、どうした?」


「これは、勝負なの。」


「そうだな。」


「勝ったら何が貰えるの?」


「そう言えばそんなこと考えてなかったな。………どうしよう?」


確かにグラムの言うことに一理ある。勝負するんだから勝ったら何かご褒美があってもいいけど、何を用意したらいいものか………と、悩んでいると玄羅が、


「よしっ、その商品は儂が用意してやろう。」


「えっ、爺さん。いいのか?」


「これから面白いものが見れるのだろう?それを思えば安いものだ。」


「それで、何が商品なの?」


「中途半端な物は要らないぞ!」


「そうなのです!」


「そうだな。………神月がダンジョンの物で作ってくれたものは普通の料理に比べて格段に旨かったが、所詮は素人が作った物だ。だが、それを超一流のシェフが作ったらどうなると思う?」


「どうなるの!」


「興味あるぞ!」


「あるのです!」


「そりゃあ、儂にも分からん!」


「「「「「「「へっ?」」」」」」」


全員が期待していた言葉とは違うものだったのでビックリした。


「それは当然だろう。儂も食べたことがないんたがら。だが、今まで誰も食べたことの無い美味になることは間違いないと思うぞ。」


「誰も食べたこと無い美味しいものなの!興味あるの!」


「楽しみだぞ!」


「頑張るしかないのです!」


「わんわん!」


「えっ?哮天犬は、食べ物食べないんじゃなかったのか?」


「クーン!わんわん!」


哮天犬は、首を横に振り吠える。どうやら、食べなくても平気なのだが美味しいものを食べたいみたいである。


「えー!羨ましいっす!」


「遙の言う通り羨ましいですね。」


「じゃあ、2人とも参加してもいいんだぞ?」


「いえ、それはいいです!」


「遠慮するっす。参加したら死ぬっす!」


「そうだよな。じゃあ、やろうか。」


「オッケーなの!」


「準備は万端だぞ!」


「勝つのです!」


「わんわん!」


「じゃあ、ルール説明な。丁度この場所はクレーターになっているから皆、等間隔に移動して一気に中心に向かう。そして、敵を蹴散らして宝箱に一番早くタッチした奴の勝ち。で、どうだ?」


「師匠。ちょっと質問っす!」


「何だ、遙。」


「等間隔ってどういうことっすか?」


「それな。それは、俺達がここから5人同時に行くとお互いの邪魔をしてしまう可能性が高い。だから、俺達が今居るところから、スノウはウルを乗せて左回りに、哮天犬はグラムを乗せて右周りに等間隔に移動して貰うってこと。」


「でも、そんなことしたら乗っている方はいいかもしれませんけど、乗せている方は不利になるんじゃないですか?」


「そのくらいで不利になることは無いよな?」


「当たり前だぞ。ウルを乗せて走るなんて朝飯前だぞ!」


「わんわん!」


どうやらスノウと哮天犬は問題ないようである。


「じゃあ、準備を開始しようか?」


「わかったの!じゃあ、哮天犬頼むの!」


「わん!」


グラムは哮天犬の背に乗って移動を開始する。


「じゃあ、こっちも行くぞ!」


「了解なのです!」


そして、スノウとウルも移動を開始する。


「なぁ、誰が勝つと思う?」


「お爺様。………そうですね。スピード勝負ですからスノウさんか哮天犬さんじゃないですか?4足の方が2足よりも速い気がしますけど………。」


「まぁ、2足でも4足でもないスライムのグラムさんが居るっすけどね!」


「そうですね。あとは、各々がどんなスキルを持っているかによるんじゃないですか?」


「そうっすね!でも、私は師匠だと思うっす!何せあの4人を纏めているんすよ。」


「そうだけど、私はスノウさんかな。やっぱり今回の勝負は素早さが必要だと思うから。………それで、お爺様は誰だと思うんですか?」


「そうだな。儂は哮天犬だと思うぞ。」


「その理由は何ですか?」


「朔夜が言っていた儂もスピードが必要だと思う。スノウよりも小型だからすり抜けてゴールするというのもアリだと思ってる。」


「そうなんですね。」


「因みに師匠は誰だと思うっすか?」


「俺か?俺はやっぱり自分だと言いたいけどグラムじゃないかと思ってる!」


「グラムさんすか?」


「そう。まぁ、俺も全力で行かせてもらうけどな。」


『主、位置についたぞ!』


『わんわん!』


スノウと哮天犬が念話で位置についたことを知らせてくれる。


「どうやら位置についたみたいだ。じゃあ、始めるとしようか。」


『わかったの!』


『了解だぞ!』


『準備万端なのです!』


『わん!』


「じゃあ、位置について、よーい、スタート!!!」

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