70.戦闘狂
さて、昼休憩を終えた俺達は探索を開始する。探索を開始するとすぐにサンドリザードマンが3匹会敵する。
「ワン!」
哮天犬が、一吠えし、サンドリザードマンに走って行く。
「1匹だけ残しとけよ!」
「ワン!」
哮天犬は、サンドリザードマンを1匹だけ無傷で残してくれる。
「じゃあ、爺さん頑張れよ!怪我しても回復薬とかあるから思う存分やって来ていいけど、爺さんが負けそうになったら、即介入するからな。」
「わかっておる。それと、犬っころすまぬな!」
「ワン!」
「気にするなってさ!」
「じゃあ、楽しんでくるとしよう。」
玄羅は、哮天犬に礼を言うが哮天犬は、大したことしてないと吠え、玄羅は哮天犬の頭を撫でてサンドリザードマンの前に立ち塞がる。これが、玄羅の死亡フラグにならないで、きちんと回収してきて欲しいものである。
玄羅がサンドリザードマンの前に立ち塞がると、サンドリザードマンも警戒した様子で接近を中止する。玄羅は、ミスリルの刀を抜き、正眼の構えを取る。少しの膠着状態が続き、サンドリザードマンがジャンプをして全体重を乗せて玄羅に上段から斬りかかる。だが、サンドリザードマンの攻撃は思いのほか重かったようで地面に片膝をついた状態で、受け止め、拮抗している。
「グルっ!」
「ぐぐぬぬっ!」
すると、サンドリザードマンの方が、一旦後退のため後ろに飛び退いた瞬間に、玄羅は立ち上がりサンドリザードマンに接近し、突きを放つ。サンドリザードマンも玄羅に向けて刀を振り下ろそうとしているが、玄羅の突きの方が早くサンドリザードマンを突きで貫いていた。
「はぁはぁはぁ!」
「お疲れ!最後は、ちょっと手を出そうかと思ったけど無事に倒せてよかったよ。」
「お爺様、お疲れ様です。今の凄かったですよ!」
「格好よかったっす!」
「殺るか殺られるかという緊張感を一度味わってみたいと思っておったが、ここまでとはな………。」
「それは、もういいってことか?」
「違う!逆だ逆!今、生きているって事が感じられてとてもいい気分だ。」
「そうか。やっぱり爺さんは戦闘狂だな。でも、モンスターはいいけど、人間に向かってはするなよ!」
「お前な。儂はそこまで狂ってはおらんぞ。」
「お爺様、お願いしますね。」
「頼むっすよ!」
「お前達まで、儂を何だと思っておる。儂にだってそのくらいの分別はあるわい!」
玄羅に、ちょっと釘をした所で、探索を開始しようと思っていると、俺はあるものを見つけてしまった。それは、青々と繁るものがそこにはあった。よく見るとサツマイモの葉っぱであった。
「よしっ!いいものを見つけたぞ!」
俺の声に玄羅と朔夜、遙が近寄ってくる。
「神月よ。これが一体どうしたというんだ?」
「ただの雑草っす!」
「雑草なんですか?」
俺は、この3人が知らないことにビックリするが、この3人はいわば上流階級の人間だから知らないのには納得がいく。
「これは、サツマイモの葉っぱだよ!」
「「「サツマイモ???」」」
3人が見事にハモって声をあげる。
「そう!」
「じゃあ、その証拠を見せますよ。」
俺はサツマイモの弦を引っ張ると弦に引かれて大きなサツマイモが顔を出す。
「さて、収穫しますよ!」
そう言い3人にはスコップや鍬などを手渡し収穫を手伝ってもらう。グラムにはサツマイモを魔法を使い水で綺麗にしてもらう係を任せ、哮天犬は、前足を使い上手くサツマイモを掘っている。取りあえず収穫は終了したが俺のリュックにも朔夜と遙のリュックにも入りきらなそうである。因みに玄羅はそういった回収出来そうな物を一切持って来ていなかった。どれだけ戦闘がしたいんだよ。本当に。まぁ、取りあえずみんなのリュックに入れるだけ入れる。
「あとは、俺のアイテムボックスにいれとくけどいいか?」
「いいですよ!」
「いいっす!」
「けど、暫くは換金できないぞ?」
「儂は金には困ってないからいいぞ!」
「別にいいですよ!」
「特に問題ないっすけど、是非食べてみたいっす!」
「あっ、それなら私も!」
「わかった。取りあえずサツマイモを収穫し終わったし、行こうかな!」
そして、俺達は再び探索を開始する。そうそう、サンドリザードマンのドロップ品は、朔夜と遙に譲っている。玄羅に関しては初めから要らないようである。だが、既に朔夜と遙のリュックの容量は一杯なので俺のアイテムボックスに仕舞ってある。あと、俺のリュックだが、サンドリザードマンのドロップ品は全てアイテムボックスに仕舞い、現在はサツマイモが約8割を占めている。まぁ、これでも収穫できたサツマイモの一部であり残りは全てアイテムボックスに仕舞ってある。
さて、昼からの探索は一応順調には進んでいる。朔夜の命中率は上昇しており矢を5本射てば3匹にそれぞれ命中するようになっており、遙の方もサンドリザードマンを倒すのが上手くなっている。そして、玄羅の方だが、最初ほどハラハラしなくなって来ており、段々と安定して倒せるようになっていた。そんなこんなで、8階層のボスの目の前までやって来ていた。グラムの本体とスノウ、ウルはまだ来ていないようであった。因みに、サツマイモはあれから発見することが出来ておらず、トマトも見つからなかったので、俺の中では少しテンションが下がり気味である。まぁ、それよりも今はダンジョンのボスである。今回のボスは、
種族 スパイラルガゼル
レベル 20
HP 1900
MP 1700
スキル 突進6 貫通7 蹴撃5 再生3
見た感じは鹿によく似ているが頭に生えている角が2本とも見事にグルグル巻きになっており、スパイラルの名前に恥じないと思う。そんなことを思っていると、グラムの本体達が合流してきた。
「お待たせなの!」
「到着だぞ!」
「さあ、ボスはどんな奴なのです?」
ウルだけはヤル気満々のようである。
「さて、何時ものごとくボスと戦いたいやつはいるか?」
俺を含め全員が手を上げる。まぁ、哮天犬はわかるが玄羅まで手を上げる始末である。
「爺さんは却下!爺さんはあの角に殺られるか、蹴り飛ばされるかの未来しか見えない気がする。」
「お前な、ちょっとはオブラートに包むってこと知らないのか?」
「俺がそんなことを知ってるように見えるか?」
「ふっ、知らんだろうな。だが、確かに、今の儂では荷が重いな。」
「っと、言うことで、また、公平をきすためにあみだくじにしたいと思います。」
朔夜と遙にあみだくじを作ってもらい、それぞれ選ぶ。その結果、スノウが当たりを引き当てた。
「やったぞ!」
「くやしいの!!」
「ウルがやりたかったのです!」
「クーん!」
「スノウが当てたか。まぁ、しゃーないかな!」
俺達が、一喜一憂しているのを見て
「朔夜。コイツらはいつもこんなのなのか?」
「そうですね!まぁ、1回しかまだ見たことありませんがこの調子なんだと思いますよ。」
「そうか!」
玄羅は、何か思うところがあったのだろう。そんな質問を朔夜にするのであった。
「じゃあ、やるぞ!」
「あっ、スノウ。出来たら動きを少し止めてやってくれるか?朔夜達が攻撃を当てることが出来たら、経験値を得られてレベルが上がりやすくなるだろし!」
「わかったぞ!じゃあ、言ってくるぞ!」
スノウは、駆け出して行き、スパイラルガゼルの前に姿を現す。すると、スパイラルガゼルは
「ガァアアアアアーーー!」
と、威嚇をするがスノウは何の事はなく涼しい顔をしている。そして、スノウが走り出すと、スパイラルガゼルはスノウの姿を見失う。左右を見てもスノウの姿は見えない。すると、スノウは、スパイラルガゼルの上から急降下して来ており、上から斬爪撃を繰り出している。スパイラルガゼルの背中には痛々しいスノウの爪痕があった。そして、スノウは氷王魔法を使い前足と後ろ足を凍らせる。
「今のうちに攻撃を!」
俺がそう言うとまず、朔夜が弓を放つ。見事に矢は命中するがそこまで深いダメージは負ってないようだ。その後に、遙と玄羅が攻撃を加えるが、こちらは朔夜よりダメージを与えられたかな、という感じである。
「もう、いいかだぞ?」
「後は、好きにしていいぞ!」
「了解だぞ!」
スノウは、スパイラルガゼルを氷漬けにするとその氷を斬爪撃で砕き、氷をバラバラにする。それと、同時にスパイラルガゼルの体も氷と一緒にバラバラになってしまう。
「やったぞ!」
「お疲れ!」
俺は、スノウを労ってやる。
「相変わらず師匠の従魔は出鱈目っす!」
「従魔だけじゃなくて、主人もでしょ?」
「朔夜の言う通りだな。」
「人の事、化け物みたいに言うのは止めてもらえます!」
「化け物みたいにではないぞ。正真正銘の化け物だと言っておるんだ!」
「ちょっとお爺様。それは、酷いと思いますよ。でも、その意見には真正面から否定できないことも事実ですけど………………。」
「私もそれは、否定できないっす!」
「お前ら酷いな。まぁ、いいけど………………。」
そんな話をしているとスパイラルガゼルのドロップ品と宝箱が出現した。ドロップ品は、魔石とスパイラルガゼルの角、スキルの書が1つ落ちていた。
スパイラルガゼルの角
スパイラルガゼルの螺旋状に伸びた角。強靭で貫通力抜群である。
そして、スキルの書は、火魔法であった。俺はそれらを回収し、お待ちかねの宝箱である。
「ドロップ品は、回収したから次は宝箱にいくぞ!」
毎度の事ながら宝箱にはテンションが上がる。さて、宝箱を俺が開けると中身は、大きな袋が1つとスキルの書が2つ入っていた。因みにスキルの書は、テイムと回復魔法であった。大きな袋の正体はアイテム袋中である。
アイテム袋(中)
東京ドーム1個分収納することが出来る。
「何か今回のはショボいっすね!」
「いやっ、意外といいかも………。」
「そうなんですか?」
「もしかしたらだよ。」
本当は分かってるんだけどね。
「さて、じゃあ、9階層に行ってから今日は引き上げようか!」
9階層に行ってから今日の探索を終了しようと思ったが、突然、グラムが
「ご主人!」
「どうしたグラム?」
「実は、ダンジョンの探索をしてたらこんなもの拾ったの!」
グラムは俺に丸い黄色い物体を1つ取り出して渡してくる。
「うん?これってもしかして!」
鑑定をしてみる。まぁ、しなくても何かは直ぐに分かったけど、やはりここはキチンと見ておかねばならないだろう。
ダンジョン産大豆
ダンジョン産の大豆
やっぱり大豆であった。
「やはり大豆だな。」
「マジっすか?」
「すごい!」
「ほう、そんなにすごいのか?」
「お爺様。お昼にトマト食べましたよね。あれ物凄く美味しくなかったですか?」
「そういえばそうだな。」
「と、言うことは、あの大豆で、作った物も凄く美味しいと言うことですよ。」
「なるほどな。」
玄羅は、納得したように何かを考えている。
「なぁ、グラム。これってどのくらいあるんだ?」
「えっーと?分からないの?でも一杯あるの!」
そう言えば、さっき宝箱からアイテム袋が出ていたから、それに入れちゃえば良くない!
「そうか。じゃあ、さっき宝箱から出てきたこの袋のかなに頼むよ!」
「分かったの!」
グラムは、自分の持っている大豆を全てアイテム袋に入れることが出来ているみたいだ。
「師匠、あの謎の袋に入れてもいいんですか?」
「多分な。それに、結構入った割には袋があんまり膨れてないと思わないか?」
あくまでも、予想の範囲で話をする。まぁ、本当はこの袋がアイテム袋で、相当な量が入ることは知っているがあえて知らない振りをしておこう。他人に手の内を全て見せるわけなはいかないしな。
「そうですね。………ダンジョンの宝箱に入っていた袋だから只の袋のわけないし、もしかして!」
「何だ。朔夜、知っているのか?」
「はい、お爺様。恐らく、あの袋の中は異空間になっていて見た目以上に物が入るようになっているんだと思いますよ。」
「そんなものがあるのか?っと、言うことは、あのスライムもアイテム袋のようなスキルを持っているということか?」
「あっ、そう言うことになりますね。」
3人は俺の方を見る。
「バレたか。正解!スライムボックスってスキルを持ってる。まぁ、アイテムボックスの下位互換だけどかなり使えるスキルだ。」
「かなりじゃないっす!羨ましいっす!」
「まぁ、それは、後で聞くから取りあえず階層を移動するぞ。」
「分かった!」
「わかりました。」
「わかったっす!」
ということで、9階層に移動してから転移の指輪を使い1階層に移動する。