59.師匠と弟子誕生
さて、買い取りも終わったことだし待ち合わせの場所に戻るとする。受付の場所に戻るとする既に女の子達は既に待っていた。だが、案の定、男達にナンパされていた。本当にナンパなんてする奴いるんだなと思う。俺はしようと思わないししたいとも思わない。しかも、ナンパをしている奴を見るのも初めてなので面白半分で見物する。だが、俺が見物をしているとそんな俺にショートカットの女の子の方が気が付いた。
「すみません。待ち合わせの相手が来たのでこれで失礼しますね。」
「失礼します。」
2人は頭を下げて俺の方にやって来る。
「「お待たせしました!」」
「こちらこそ待たせたみたいで悪かったね。」
「あっ、さっきのはいつもの事なので!」
ショートカットの女の子がそう話す。
「そうなんだ。大変だね。」
「もう、慣れちゃいました。」
今度はセミロングの女の子が話してくれる。
「そうなんだ。」
「そんなことよりお茶しませんか?助けてもらったお礼に私たちに奢らせて下さい!」
「ホントにいいの?」
「「勿論です!」」
「分かった。じゃあ、ご馳走になろうかな!」
「「はいっ!」」
俺達は、フードコートにてお茶をすることにする。俺達は、ミスドーナツでそれぞれ好みのドーナツと飲み物をチョイスして席に着く。
「まず、今回はありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
2人は席を立ち俺に頭を下げてくる。
「俺は当たり前の事をしただけだから気にしなくていいよ。」
「その、当たり前の事が難しいんですよ。」
「うんうん!」
「あっ、そういえば、まだ、お互いに名前知りませんでしたね。私の名前は、桜庭遙。年齢は16才で、今年の春から高2よ。」
「私は、天上院朔夜。遙とは学校の同級生です。」
どうやらショートカットの女の子が で、セミロングの女の子が天上院朔夜
「俺の名前は神月サイガ。年齢は35才だ。よろしくな。」
「「えっ?」」
「ごめんな。こんなオッサンで!」
「いえいえ、そんなことないです。」
「もうちょっと若いのかと思ってました。」
「ちょっと、遙、言いすぎよ。」
「ごめんなさい。つい本音が!」
「遙っ!!」
ガタッと音を立てて立ち上がった。また、桜庭遙の方が再び口を滑らせたようである。まぁ、当の本人は全く気にしていないのだがな。
「別にいいよ。気にしてないし、本当の事だから気にしてないよ!」
「本当ですか?ありがとうございます。ほら、遙も!」
「ありがとうございます!」
本当に気にしなくても良いのにな。
「それで、実は神月さんにお願いしたいことがあるんですが………。」
「ちょっと朔夜。さっき言ってた事を頼むつもりなの?」
「そうよ。だって他に方法ないじゃない?」
「そうだけど…………。」
「じゃあ、良いわね?」
「仕方ないわね。」
何やら俺に話?があるみたいだ。
「それで、何か話があるのかな?」
「そうなんです。私達、相談して決めたんですけど、是非神月さんに師匠になってもらいたいんです!」
「はい?師匠??」
「はい。私達を助けてくれた時に言ったじゃないですか!パーティーを組むなら女の人が居るパーティーか信頼できる人と組めって。」
「確かに言ったと思うけど、何で俺?」
「当たり前じゃないっすか!まず、私らの事、助けてくれて、尚且つあんなに強いんっすから!!」
「えっーと、桜庭さんって元々そう言う喋りなの?」
「そうっすよ!さっきまでは余所行きを出してたっす。本当はこったの方が喋りやすいっす。それに、神月さんなら特に気にしないかなと思って喋り方を元に戻したっす。」
「まぁ、確かに気にはしないな。」
「じゃあ、これでよろしくっす!ところで、さっきの返事なんすけど!」
「理由は理解したけど本当に俺で良いの?」
「はい。お願いします!」
「よろしくっす!」
「もし、俺が悪い奴でダンジョンの奥に連れていって如何わしい事をするかもしれないよ?」
「それはないです!」
「そうっす!」
「もし、そうなったら自分の目が節穴だったとして諦めます。」
「それに、神月さんならそんなことしないっす!」
「はぁ~!参ったよ。」
「なら、引き受けてくれるんですか?」
「いいよ。但し、幾つか条件があるんだけど良いかな?」
「はい。」
「まず、探索中に俺が行うことは秘密にしてもらう。あとは、ダンジョン内では指示には従ってもらう。それが守れるならいいぞ!」
「「やったー!!」」
2人は立ち上がりハイタッチをしている。
「それで、何時から始める?」
「師匠の都合に合わせるっす!」
「俺は別にそれでもいいけど、君達、仮にも高校生で、しかも今は春休みでしょ?何か他にすることがあるんじゃないの?俺は、今は仕事もしないし、別にどっかに行きたいとか友達と遊ぶとかって言う年齢じゃないから、暇を持て余してるから、その辺は君達に合わせるよ。」
「師匠、自分で言ってて寂しくないっすか?」
「そうだな。改めて、考えてみると寂しいかも知れないな。まぁ、それは、置いといて、都合は俺じゃなくて君達に合わせるよ。」
「私達は特に用はないので何時からでもいいです。」
「分かった。ちょっと考えさせてくれ。」
「はい!」
「了解っす!」
一応明日と明後日は土日になるから普通なら休みなんだけど、明日だけ一緒にダンジョンに行って朔夜達のレベルをある程度上げれば明後日は取りあえず休めるかな。その後、学校が始まるのが恐らく7日か8日だからそれまで鍛えれば俺の時間が出来るかな。取りあえずこの作戦で行こうと思う。
「よしっ!じゃあ、明日の朝、9時に受付に集合にする。そして、日曜日は休みとして、後は学校が始まるまでお前達の都合がいい日は一緒に探索に行くって言うのはどうだ?学校が始まってからまた、話をすればいいと思う。」
「それでいいです!」
「いいっすよ!」
「あと、両親には師匠のこと話しても良いですか?」
「まぁ、今日、あんなことかあったから仕方ないんじゃないか!それと、今日の事件のとこはきちんと保護者に話すんだぞ。」
「わかりました。わぁー。ありがとうございます!」
「さて、じゃあ、そろそろ御開きにしようか!また、明日な。」
「わかりました。明日からよろしくお願いしますね。」
「よろしくっす!」
俺は2人よりも先に席を立ち自分のゴミを処理してから車に乗り込み自宅に帰る。
家に戻ると既に7時になっていた。玄関を潜るとグラム達が出迎えてくれた。
「ご主人、お帰りなの!」
「お帰りだぞ!」
「お帰りなさいなのです!」
「ただいま!」
その後家族皆で夕食を食べ風呂などを済まし寝る準備をする。やっと、一息つける状態になった。
「明日は、ご主人と一緒にいられるの!」
と、従魔の3人は凄く嬉しそうにしている。
「その事でちょっと話があるんだけどいいか?」
俺は、今日あった出来事を皆に話す。初めはきちんと聞いてくれてはいたが明日も支部のダンジョンに行くと聞いてから皆の機嫌が悪くなっており、空気が重くなったように感じる。なので、打開策として皆も明日のダンジョン探索に連れていくことを話すと機嫌が治りなんとかなった。まだ、俺が探索した階層までは誰も到達していないからグラム達を連れていっても何の問題もないだろうと判断した。グラム達を連れていくのに、ダンジョンの中に入ってからしか出てこないように念を押すと、きちんと了解してくれた。
次の日、朝、8時50分に昨日言っていた場所にに行くと既に2人は待っていた。
「おはよう。まだ、集合の10分前なのに、まさか、居るなんてビックリだよ。」
「いえ、私達が早く来すぎただけです。ねぇ、遙。」
「そうっすよ。師匠は気にしなくてもいいっすよ!」
「そうか。ところで、昨日聞き忘れてたんだが2人の戦闘スタイルってどんなのなんだ?」
「まだ、正式には決まってないっすけど性格的に言ったら私が前衛で朔夜が後衛って感じっすかね!」
「えっ、そうなの?」
「そうっす!」
「分かった。取りあえず保留にしとくけど、自分がどんなスタイルが1番いいのか考えておくように。」
「はい!」
「了解っす…………。でも、今回はどうするっすか?」
「今回は2人ともに同じことをしてもらう予定だから心配しなくても大丈夫だ。それは、現地に着いてから説明する。じゃあ、行くぞ!」
「「はい!」」
俺は、彼女達を連れてダンジョンに入る。
「じゃあ、昨日の場所まで戦闘は任せていいか?」
俺は、哮天犬を撫でながら話しかける。
「わんっ!」
嬉しそうにひと吠えすると俺達の前に立ち進み始める。まぁ、哮天犬にとっては雑魚なのだが。
「あのー、私達は戦わなくていいんですか?」
「君達が活躍するところはここじゃないから……………。」
「そうですか。」
「何かヤな予感がするっす!」
少し歩くと昨日、俺が転移した場所に辿り着く。
「よしっ、着いたか!」
「あの、何もありませんけど………。」
「ここが目的地っすか?何もないっすよ。…………………はっ、もしかして私達の体が目的っすか??」
そう言い遙は自分の体を抱き締める。
「違うわっ!」
「なーんだ!違うんすか!」
「今からやることは他言無用で頼むぞ!」
「「はい!」」
「じゃあ、少しだけ俺に近づいてくれ!」
彼女達は俺に近づく。そして、俺は7階層に向けて転移を行う。
「よしっ、着いたぞ。」
2人とも辺りをキョロキョロと見回し
「ここは何処スッかーーーー?」
と、遙が大声を出しており、朔夜は未だに何が起きたのか理解出来ずにいた。
「ここか?ここは、ダンジョンの7階層だ。」
「なっ、7階層ってマジっすか?」
「マジだ!」
遙もビックリして、理解が追い付いていないようであった。暫く放置し様子を見る。
漸く落ち着いたのか朔夜が話し始める。
「師匠!ここが、7階層であることは理解しましたが、何故、いきなり7階層に来られたのか?ここで、私達に何をさせるのか全て答えて貰ってもいいですか?」
朔夜は笑顔でそう言うが、表情が何故か途轍もなく怖い気がする。
「説明する。だが、これは内緒で頼むな。まず、俺が持っている物のなかに転移の指輪というものがある。この指輪は、行ったことのある階層なら一瞬で行くことの出来る便利な道具で今回はこれを使用した。そして、2人をここに連れてきた理由は、パワーレベリングって奴を行うために連れてきた。」
「「パワーレベリング??」」
「簡単に言うと弱い奴が強い奴に付いていって強いモンスターを倒して手っ取り早くレベルを上げてしまおうってこと。」
「そんなこと本当に出来るっすか?」
「まぁ、俺と哮天犬だけでは不安が残るので助っ人を用意した。」
「「助っ人??」」
「じゃあ、出てきていいぞ!」
すると、指輪から3人が飛び出して来る。それを見て2人とも、
「モンスター!」
と、身構える。
「グラムはモンスターじゃないの!グラムなの!」
そうグラムが主張すると2人ともがフリーズした。
「ご主人、2人とも動かなくなったの。」
「こいつら、大丈夫か?だぞ」
「まだまだなのです!」
「多分、処理能力が追い付いてないだけだから、勝手に再起動すると思うから放って置いていいぞ。それよりも、今日の予定だけど、この2人のレベルを上げようと思う。適当に弱らせたら止めは2人に任せて欲しい。頼めるか?」
「仕方ないの。」
「やるぞ!」
「わかったのです!」
俺が打ち合わせをしていると2人とも再起動したのか俺に色々と質問してきた。答えられる質問には答えて、答えにくい質問には適当に誤魔化しておいた。
「私は、天上院朔夜と言います。よろしくお願いしますね。」
「私は、桜庭遙っす。よろしくお願いするっす!」
「グラムなの!」
「スノウだぞ!」
「ウルなのです!」
どうやら自己紹介も終わったので探索を開始する。