38.仔犬と猫
さて、俺はどのくらい眠ってただろう?気が付いて起きてみればもう日が暮れていた。えーっと、確か寝る前は12時前だったはずだけどもうすっかりと夜になっている。部屋の電気をつけて、時計を見るともう既に10時を回っていた。
「えっ、ってことは10時間以上も寝てるのか??」
とりあえず、1階に下りると母親がおり、
「まぁ、下りてこないから死んでるのかと思ったわよ。」
と、冗談を言ってくる。
「あっ、ごめん。俺達、みんな爆睡してたんだよ。」
「あら、そうなの。晩御飯はどうするの?」
「今から、食べるよ。」
「っと、いってももうなにもないのよね。どうしようか?」
「ああっ、いいよ。親父に捌いてもらってた魚があるからそれを今日は食べとくよ。」
「じゃあ、何か付け合わせを用意するわね。」
「母さん、ありがとう。」
そう言うと母さんはトマトやキュウリを冷蔵庫から出し始める。
「おう。サイガ。今日の分のやっといたぞ!」
「ありがとう。回収しとくよ。」
「それとな………。」
「何?」
「いや、今日は遅いから明日でいいぞ。」
何か急に言うのをやめるのはやめて欲しい。結構気になるじゃないか。まぁ、今はそれよりも飯の方が大事なんだけどね。
「親父、じゃあ、このカレイとヒラメ刺身にしといてよ。」
「ああっ、わかった。」
俺は、アイテムボックスから親父が捌いてくれていたカレイとヒラメを取り出して親父に手渡す。俺のアイテムボックスの中には捌いてブロックのまま入れていたのでどうやら、親父が刺身にしてくれるらしい。
俺はその間に自室に戻りグラム達を起こすことにする。
「おーい。お前ら、そろそろ飯食べるぞ!」
声をかけるも皆起きようとしないので1人づつ揺さぶって起こしていく。まずは、グラムの体を揺すりグラムを起こす。
「あっ、ご主人なの。」
と、また、眠り始める。なので、もう一度揺さぶってグラムを起こす。
「今度は何なの?」
「御飯食べるぞ!」
「うーん。もうそんな時間なの?」
「とっくに過ぎてるぞ。」
「わかったの。」
これと同じ様にスノウとウルも起こす。漸く目が覚めた3人を連れて1階に下りていくとちょうど親父が刺身を皿に盛り付けていた。
「おう。丁度いいところに来たな。出来てるぞ。」
「じゃあ、食べようか?」
「「「「いただきます(なの)(だそ)(なのです)!」」」」
俺達は夕飯を美味しくいただき、その後風呂に入ってまた朝まで4人で爆睡する。
次の日の3月18日は休みにした。昨日の疲れを癒すためだ。それに、明日も休みにして4連休と洒落込もうと思う。その事を3人に伝えると賛成してくれたので休みとする。
俺は、昼過ぎまでベットでゴロゴロしていたがグラム達は、相も変わらずゲームをやっている。みんなで昼飯を食べた後は特にすることもなかったので近所を散歩することにした。
今は春で寒くもなく暑くもなく丁度いい感じの日和である。もう1週間もすれば桜が咲き始めるのではないかとテレビで言っていた。そんな中を散歩していると「く~ん」という鳴き声が聞こえてきたので、聞こえた方へと進んでいくと、そこには段ボールの中に仔犬が4匹いた。段ボールの外側には【拾って下さい】と書かれていた。昔はそうでもなかったがこういうのを見るとどうにかしてあげたいと思ってしまう。俺は、段ボールを覗き込むと犬達は俺に「腹が減った」と言っているように聴こえ、ホーンカウの肉をアイテムボックスから出して犬に与える。すると、4匹とも腹をすかせていたのか勢いよく食べ始めあっという間になくなってしまった。仔犬達は俺の方をじっと見るがどうにもしてやれないと思っていたが、俺にはあるスキルがあったことを思い出した。それは、〈テイム〉というスキルである。これを使えばもしかして動物もテイムすることが出きるかもしれない。そうなれば、ダンジョンで一緒に強くなれるかもしれない。と、思いスキルを使ってみると上手くテイムすることが出来た。
俺は、仔犬の入った段ボールを抱えて家に戻る。玄関に入るとちょうど親父とはち合わせた。
「サイガ。その段ボールは何だ?」
「実はさ、さっきそこに仔犬が捨てられててさ、放って置けなくて連れて帰ってきた。」
「そうなのか。家で飼うのか?」
「そのつもりだけどダメかな?」
「俺はいいけど母さんがなんて言うかな。」
「それは、もちろん説得するよ。」
「だが、ちゃんと躾をしないとその辺で尿や糞をされたら敵わんぞ。」
「その辺は大丈夫。きちんと俺のスキルでテイムすることが出来たから。」
「テイムをするとどうなるんだ?」
「えっ、意志疎通が取れるようになって、俺が仔犬達の上になるんだけど。」
「そうなのか。」
「グラム達もテイムすることが出来たからあんなんだけど。」
「なるほどな。じゃあ、あの件を頼むことも出きるな」
親父は最後の方はボソボソと小声で言っているのでよく聞き取ることが出来なかった。
「サイガ。実はな、1つ困ったことがあるんだ。」
「それって、もしかして昨日、言おうとしてやめた奴?」
「そうだ。実はな、最近お前から魚を預かって捌いていたじゃないか。」
「うん。俺が頼んだ事だからね。」
「それでな、捌くのは順調なんだが、あの魚が旨そうなのか近所にいる野良猫が集まって大変なんだよ。」
「そんなに居るの?」
「ああ。日に日に増えていってる気がする。」
「じゃあ、皆テイムして飼っちゃおうか?」
「いや、それは、無理だろ?家にそんなにスペースは無いぞ!」
「実はさ、機能手に入れた便利なアイテムがあるんだよ。」
俺は機能手に入れたアイテムを使おうと考えている。その前にまずは猫のテイムが先決である。家の裏に行くとそこには猫が10数匹の猫がいたとりあえず、腹をすかせていそうなので、仔犬達と同じものを与えてみる。猫達の食いつきは半端なく与えた物をあっという間に平らげている。俺は、仔犬同様にテイムを試みると意外なほどすんなりテイムすることが出来た。
俺は、猫達に待つように指示して、一旦家に戻る。
「どうだった?」
「上手くテイム出来たよ。」
「じゃあ、連れていくから。」
「わかった。」
俺は、猫達の元に戻り、ついてくるように声をかける。俺は2階の自分の部屋に連れていこうと思うが、その前に、仔犬達のところに行き、仔犬達を抱き抱える。仔犬は、階段はまだキツイと思い仔犬達を抱き抱え2階に上がる。
仔犬達と猫達と一緒に俺の部屋に行く。部屋のドアを開けて部屋に入るとグラム達がゲームに夢中になっていた。俺が入ってきたことに最初に気が付いたのはスノウであった。
「主、そいつらはどうしたんだぞ!」
「ちょっと訳アリでな。テイムすることになってテイムした。」
「じゃあ、後輩なの!」
「嬉しいのです!」
「それで、どうするの?」
「昨日手に入れた従魔の家を使おうと思う。」
「なるほどだぞ!」
「いいと思うの!」
「賛成なのです!」
「じゃあ、そう言うことで。」
グラム達の賛同も得られた事だし、次は猫達と仔犬達に話をしようと思う。その前に、アイテムボックスから従魔の家を取り出し部屋の壁に貼ってみる。すると、光だし中に入れるようになった。
「すごいな。」
猫達と仔犬達は、キョトンとして見ている。俺は、猫達と仔犬達に話をしようと思う。
「よしっ、お前達、これからの事を話そうと思う。」
『よろしくにゃー!』
『はいワン!』
「これからお前達の家はそこを使っていいぞ。」
俺は、従魔の家を指差して言う。
『にゃー?』
『ワン?』
「ああっ、よく分からないよな。あの中は、とても広くて快適だぞ。あと、尿とか糞はあの家の中でして大丈夫だぞ。直ぐに綺麗になるらしいから。」
『わかったにゃん!』
『はいワン!』
「あと、飯についてだが…………あの肉美味しくなかったか?」
『美味しかったにゃん!』
『美味しかったワン!』
「実はな、ダンジョンと呼ばれるものがあるんだが、そこで取れたものだ。」
そう言うと、猫達も仔犬達も目を輝かさせる。
「だけど中には敵も居るぞ。魔物やモンスターって言われてる奴がいる。」
それを聞いて猫や仔犬達は、「しゅん」となる。
「確かに、中にいる魔物は強い。多分じゃなくて確実に今のお前達より強い。」
更に、意気消沈したようになる。
「だがっ、今、弱かったからってこれからもそうとは限らないぞ!」
『それは、どういう意味にゃ?』
「ダンジョンの中のモンスターを倒すと経験値が手に入る。それが貯まるとレベルがアップする。レベルが上がると少しずつだが強くなることが出来るぞ。」
みんな、少しずつ表情が明るくなっているように感じる。ここで、畳み掛けるとする。
「最初は俺達がサポートについて1階層で問題ないようにまではする。その後は、レベルをどんどん上げてダンジョンを攻略していけば6階層からあの肉がドロップするぞ!」
にゃーにゃー、わんわんと相談を始めている。まだ、話は終わってないんどけどな………?
「ハイハイ。静かにしてな。まだ、続きがあるぞ。」
俺が、そう言うとみんな静かになる。
「まず、ダンジョンでドロップしたアイテムはお前達が使っていいぞ。必要がないものは俺の所に持って来てくれればいいぞ。そしたら、今は出来ないけどそのうち出来るようになるからな。何か欲しいものがあれば買うからな。そうそう、ドロップした物の中にスキルの書って云うものがある。それを使うとスキルが使えるようになる。」
『よく分からないにゃ。』
『ワン!』
言うよりも見せた方が簡単だと思い俺は目に見えるように掌に雷を発生させてみる。
「こんなんが使えるようになるぞ!」
『ニャっ!』
『ワンっ!』
猫や犬達はビックリしているようである。
「これが、スキルだ。これ意外にも色々あるからな。」
『すごいニャ!』
『すごいワン!』
「あと、食事については俺が提供しようと思う。まぁ、6階層まで行けば美味しいものが食べれると思うけど、何か欲しいものがあればいってくれたらいいぞ。」
『わかったニャン。』
『ワン!』
「それと、怪我には気を付けろよ。もし、怪我したら遠慮無く言えよ。魔法で回復するからな。そういえば、アイテムボックスに回復魔法のスキルの書が1つあるんだが、お前達に提供するぞ!誰か覚えたい奴いるか?」
みんな、顔を見合わせていると1匹の白猫が声をあげた。
『じゃあ、私がやるニャン!』
「わかった。」
俺は、その猫にスキルの書を渡し、スキルを習得させる。
種族 猫
レベル 1
HP 10
MP 9
スキル ひっかく1 噛みつく1 俊敏1 回復魔法1
称号
神月サイガの従魔
鑑定の結果、見事スキルを取得することが出来ている。
「よしっ、きちんとスキルを得ることが出来ているぞ。」
『よかったニャ。』
「これから、レベルを上げて皆を回復出来るように頑張ってくれよ。」
『はいニャ!』
これで、スキルのレベルを上げてもらったらいいなと思う。
『ご主人。』
今度は、違う猫が話しかけてくる。
「どうした?」
『他にも仲間がいるニャ。連れてきてもいいかニャ?』
「ああ、いいぞ。他のグループや野良犬なんかがいたら声かけていいぞ。」
『わかっニャ!行ってくるニャ!』
猫達は部屋を飛び出していった。夕方には3、40匹位の猫と20匹位の犬がいた。とりあえず、食べ物を与え、テイムを行う。住み処に案内する。俺が、した説明は、最初に聞いていた奴らに任せる。とりあえず、明日にでも1階層でレベル上げを行おうと思う。その事を、グラム達に説明をする。
「面白そうなの!」
「いいぞ!」
「後輩のためなのです。」
「それで、拾った仔犬達は俺が担当する。後は、適当に振り分けをして、俺達4人がそれぞれ引率するようにするぞ。最初は弱らせてやって攻撃をさせてから倒せるようなら倒させてやってくれ。もし、無理なら止めをさしていいぞ。あと、出来るだけ怪我はない方向で頼むな。」
「わかったの。」
「了解だぞ。」
「楽しみなのです。」
「ウルはあんまり調子に乗らないようにな。」
「気をつけるの。」
「そうだぞ。」
「大丈夫なのです。」
「よしっ、じゃあ、明日は頼むな。」
「「「了解(だぞ)(なのです)」」」
よし、これで、今日は寝るとしよう。