31.受験本番
本日、3月10日。ダンジョン探索者試験の当日である。とりあえず、朝食を買いに行く。ホテルの1階にコンビニがあるのでそこで朝食と今日の昼食を購入する。もちろん、グラム達の分も購入する。俺が、部屋を出るときは、みんなか寝ていたが俺が帰る頃にようやくお目覚めのようだ。
「みんな起きたか?」
『ご主人、おはようなのです。』
『ふぁぁ~~。主、おはようだぞ。』
「おはよう。起きたら飯にするぞ!そういえば、ウルは?」
『まだ、寝てるぞ。』
ウルは、『すぴ~~。すぴ~~。』と寝息をたててまだ寝ている。とりあえず、放置をして俺とグラムとスノウの3人で朝食を食べる。俺達が食べ終わる頃にようやくウルが目を覚ます。
『うーん。おはようなのです。』
目を擦りながらムクッと起き上がる。そして、俺達の手元に朝食の食べかすを見ると、ウルが
『あーー!ご主人達だけご飯食べてズルいのです!!』
『ウルが寝てるから悪いの!』
『そうだぞ!』
「そういじめてやるな。ウルの分もちゃんとあるから食べな。」
俺は、ウルの分を渡してやる。
『ご主人、ありがとうなのです!』
ウルは、渡した朝食を嬉しそうに食べている。
現在の時刻は、午前7時前である。試験開始は9時半からなので9時位には会場に着きたいところである。携帯のアプリで試験会場までの行き方を検索すると今居る広島駅から最寄り駅までは5駅程しか離れておらず、会場まではそこから少し歩くようだが30分もあれば余裕で着くことが出来るだろう。とりあえず、食べたものを片付けて、荷物も整理を済ましベッドにて朝のニュース番組を見て過ごす。
時刻は8時になったので部屋に忘れ物はないか確認し、身支度を整え、グラム達を指輪に入るように促し入ってもらう。そして、ホテルをチェックアウトをして、試験会場に行く。
試験会場は、広島市内にある大学である。ここの他にもう2ヶ所ほど試験会場が儲けられているようだ。俺は、時間に余裕があったのでゆっくりと試験会場に向かったので少し時間がかかってしまったが、試験開始には余裕で間に合った。
試験は、午前に筆記、午後から体力測定が行われる予定である。まずは、午前の試験を乗り越えなければならない。とはいっても、一般の常識問題が出るだけなのであまり難しくはないだろうと思うが、一応、一般常識問題の問題集は買って軽く目は通しておいた。
9時半になると試験官が前に出て今日のスケジュールを説明する。その後、受験者の確認を行い、10時から筆記試験が開始される。制限時間は2時間。問題は200問で全て4択のマークシート形式であった。問題200問というのは少し多すぎると思ったがどれも簡単な問題なので1問解くのに対しそんなに時間がかからないので妥当な問題数だと思う。あと、最後の50問は、一般常識問題というよりは、心理テストのようであった。要は、心理的に問題がある人は探索者に向いてないということだろう俺は心理的に問題が無いことを祈ろう。
そんなこんなで何とか午前中の試験を終える。今からは1時間休憩した後に体力測定がある。俺は、ホテルからジャージで来たので着替える必要はなかったが、着替えが必要な人たちは更衣室に行かなければならないのだがこれが大渋滞していたので俺はホテルで着替えてきて正解だったと胸を撫で下ろす。
体力測定は、握力、反復横飛び、持久走、上体起こしの種目に別れていた。俺の身体能力は、レベルが70を越えているためハッキリ言ってヤバイことになっているので、ここで本気を出して目立つわけにはいかないのである程度力を抜くつもりだ。俺の回る順番は、握力、反復横飛び、上体起こし、持久走の順番だった。
まずは、握力と反復横飛びは普通の人と同じレベルでクリアさせる。だごが、次の上体起こしは、いくらレベルが上がったとは言え体が柔らかくなるわけではないのでここは全力で取り組むことにする。
さて、何だかんだで最後の持久走である。距離は1500メートルである。スタートラインに集められスタートの時を待っていると、
「よう。やっぱりお前も来てたか!」
俺の後ろからそんな声が聞こえてくる。後ろを振り返ると俺が会いたくない男がそこに立っていた。そう、白川大樹である。
「白川、お前もこの会場だとは思わなかったぞ!」
「お前じゃ探索者になるのは無理だ。どうせ犬死にするだけだぞ。」
「余計なお世話だ。」
「俺は、親切心からお前に言ってやってるんだぜ!」
「お前の親切心が怪しいんだよ。」
「ひどいこと言うよな。サイガ。」
「白川、五月蝿いぞ。そろそろ始まる。」
「まぁ、落ちないように頑張れよ。俺は、先輩達と走るから、じゃあな。」
何かムカつく奴だなと思う。俺は、結局、中間より少し上位でゴールをした。全ての体力測定が終わると午前中に試験を受けた席に着いておくようアナウンスがあった。
時刻は16時。体力測定は全て終わり、受験生は全員席に着いていると入り口から試験官が入ってくる。試験官が教壇に立ちマイクをとると話が始まる。
「えー。皆さん、今日は1日お疲れさまでした。私は試験官の磯山と申します。今から、少し注意事項を説明しようと思います。まず、皆さんもご存じだと思いますが、この世の中に急にダンジョンというものが出現しました。日本政府は、ダンジョンをいち速く調べ、未知の、と言いますか、ファンタジー世界にしか存在しなかった物があると確認しました。まぁ、ダンジョン事態がファンタジー世界のものなのですが、それは置いといて………そして、今回、ダンジョンを民間にも解放しようと思いました。が、ダンジョンに勝手に入られると色々と支障を来す恐れがあるので、今回、ダンジョン探索者試験を実施し、免許制にさせて頂きました。
ここまでは、皆さんもご存じかと思います。それで、今日の本題はここからです。まず、日本の法律には銃刀法違反という法律がありますがこの法律はダンジョン内においては適用外とします。ただし、ダンジョン内で他者を傷つけた場合には傷害罪若しくはそれ以上になると覚悟してください。そして、ダンジョン外ですが、持ち運びは、ケースに入れて持ち運びをしていただきます。もし、ダンジョン外で武器の使用があれば即逮捕となり重い罪にとわれます。そして、ダンジョン内にて、皆さんはスキルというものを取得すると思いますが、これに関しては人に害を与えなければ使用することができます。色々と便利なスキルがあることは確認が取れていますし、使わないのは勿体ないですから。但し、スキルも武器同様、他者を傷つけた場合には罪に問われる可能性が高いです。また、ダンジョン内での死亡については国は一切責任を取れません。ダンジョンに入る際は全て自己責任になりますのでご注意ください。但し、殺人などの場合は、殺人罪になりますので、なさらないようお願い致します。最後に、ダンジョンからドロップした物は基本的に国が買い取りますが、例えば武器や防具、武器や防具を作るのに必要な素材などは使って頂いても構いません。不要になった装備などを買い取る業者やモンスターの素材を使った武器の作成、販売する業者を国が作りますのでよろしくお願いします。
すみません。もう1つありました。税金についてですが、必要ありません。と、言うのも、モンスターからドロップしたものを買い取る際に税金を頂くようにするからです。例えば、100円する魔石を売りに来たとします。実際には100円で売れるのですが、国はこれを70円で買い取りをします。つまり、30円を税金として国が頂きます。なので、探索者は、確定申告を出して頂くことはありません。そして、買い取りの支払いは現金かカードの振り込みになります。カードは探索者カードに振り込まれます。そのカードを利用して買い物や交通機関など利用できます。また、納めていただいた税金によりランクがつきます。ランクはS~Fまでで待遇も変わってきます。それは各自でお確かめください。」
税金やお金の話になると会場が妙にザワザワし始めた。
「皆さんの言いたいことは分かりますが、普通なら必要経費などを申告する必要がありますがそれは必要ありません。そして、いくら収入が多くなっても税金が取られることはありません。何せ、買い取り時にすでに税金を頂いているわけですから……つまり、稼げば稼ぐだけ得をするということです。」
そう聞くと会場内が「おおーー!」とテンションが上がる。
「これで、説明は以上となります。合格発表は3月22日です。ダンジョン庁のホームページと郵送にて結果を報告します。合格した人は、郵送した中に申請書が入っていますのでお近くの保健所にて手続きを行ってください。4月1日からダンジョンに入れますが探索者証を持っていないと入ることが出来ないので注意してください。それと、合格者にはダンジョン探索における注意事項やお徳な情報などを記した冊子が入っていますので必ず確認をお願い致します。以上でダンジョン探索者試験を終了したいと思います。みなさん、くれぐれも安全にルールを守ってダンジョンを探索してください。
お疲れさまでした。」
試験官が一礼して退席していく。漸く終わったので帰ることにする。家に帰るまでの道中は特に問題なかった。
家に帰ると玄関でグラム達を呼び出す。
『うーん!やっと帰ってきたの!!』
『やっぱり家が一番だぞ!!』
『癒されるのです!』
今、グラム達は玄関に入ったところでグタッーと寝そべっている。
「あら、おかえりなさい。ところでこの子達はどうしたの?」
「ただいま。こいつらはやっと家に帰ってきて寛いでいるところだから放っておいていいよ。」
「あら、これから晩御飯にしようと思うんだけど………」
ご飯という単語を聞くと3人はムクッと起き上がり『ご飯、ご飯っ』と喜んで食事を食べるところに移動を開始する。
「急にどうしたの?」
「母さんが「ご飯」って言ったら急に元気になったんだよ。」
「そうなのね。じゃあ、準備しようかしら。」
「お願いね。」
そう言うと母親は夕御飯の準備を始める。
15分後、夕食の準備が出来た。
「「「『『『いただきます。』』』」」」
食事を食べ始める。
『うーん!やっぱり家で食べるご飯が一番美味しいの!』
『確かに旨いぞ!』
『美味しいのです!』
何口か食べて3人は上を向いて家のご飯に舌鼓をうっている。
「ねぇ、この子達どうしたの?」
「何か家のご飯が美味しくて感動しているみたいだよ。」
「広島での食事は美味しくなかったの?」
『ご主人と行ったところで食べた物も美味しかったの!でも、家の方が美味しいの!』
スノウとウルもウンウンと頷いている。
「広島で食べた物も旨かったらしいけど家の方がいいらしいぞ!」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。じゃあ、これからも、美味しいご飯を作らなきゃね!」
そう言いながら母さんはグラムを撫でており、グラムも悪い気はしないみたいだった。