133.本番
さて、モンスターが途切れてから約2時間が経過した。段々と大統領が我慢出来なくなって来てあるのが手に取るように分かる。最初の方は普通だったが、少し時間が経つと腕を組み、そして、指をトントンとやっている。そして、極めつけは貧乏揺すりである。これも最初は小刻みだったが、徐々に大きくなってきており、そろそろ限界なのかなと思う。それは、大統領に限らず、アメリカ兵達も同じである。どうやらアメリカ人は待つのが嫌いなのかな?っと思ってしまうが、中には冷静な人物もいる。確かに、来るか来ないか分からない状況で、ひたすら待つのは、精神的に来るのかもしれない。その反面、こちらは来ると分かっているので、落ち着いている。そうそう、玉兎達も食事をして仮眠を取ったら嘘みたいに元気になっており、今ではアメリカに来たときのような元気さである。
っと、ここで俺のスキルがモンスターの気配を察知する。まぁ、まだ、ここまで来るのに時間がかかるが、俺はゆっくりと立ち上がる。それを、日本の全員が見ている。
「来るぞ!参加する者は準備しろよ!」
「やっとか!」「きたっす!」「やりますよ!」「やるぞ!」「やってやるぜ!」「気合い十分!」
っと、それぞれやる気満々である。そして、俺は、アメリカテームにも、
「そろそろ来ますよ!そちらはどうしますか?」
「待ってました~!勿論やるわ!」
っと、シルヴィアが先陣にアメリカテームもぞろぞろやる気の無さそうなのが結構居る。それは、プライドが高く実力も中途半端な中位から下位チームに多い。「けっ、本当に来るのかよ!」「何で日本の指示に従わなければいけないんだ!」「たかが黄色い猿こどきが!」等々言っている。それを聞いていたシルヴィアは、
「文句が言いたいんなら実力を示しな!」
シルヴィアがそう言うと、他の兵士達は黙り込む。
そして、各々準備を終えて、俺も準備をする。今回使うのは雷神の刀である。前回に玄羅に貸した時の借りを返さねばならないからだ。アイテム袋とは名ばかりの袋の中でアイテムボックスを起動させ取り出す。
『やっと暴れられるのかのぅ!楽しみじゃ!』
っと呑気なことを言っている雷神である。そして、そろそろモンスターが迫って来た時である。俺の指輪から従魔達が一斉に飛び出してくる。
「ご主人達だけズルいの!」
グラムのこの言葉に従魔全員が頷く。本当の事を言うとあまり他国に手の内は見せたくなかったのだが仕方ない。
「わかった!参戦していいぞ!」
そう言うと従魔達は大喜びする。そんな光景を見ていたアメリカ陣営からクレームが来る。
「何だ?ペットなんかをこんな場所に連れてきて。常識がないのか?そもそも、これだけのペットが何処に居たんだ?」
アメリカを代表してジョンがクレームを言いに来る。だが、俺は、そんなジョンを、
「それは、こちらの国家機密だ!」
っと、冗談でそう言ってみると、あっさりと引き下がっていく。それを聞いていた総理は、
「ちょっと神月さん。簡単に国家機密にしないで下さい。」
っと、懇願されてしまった。
「おーしっ、やってやるっすよ!」
っと、気合い十分な遙であるが、
「いやっ、最初はこちらは動かない。」
俺の意見に全員が「「「「「「えっ?」」」」」」っと、驚愕する。
「まずは、アメリカの連中がどの程度、第2波に対して対応出来るのか知りたい。」
「知ってどうするっすか?」
遙が聞いてくる。
「勿論、敵わないようなら撤退して貰う。邪魔だからな。」
「うわっ、酷いっす!」
遙の言葉に全員が頷く。
「でも、実際問題そうじゃないか?」
「そうだな。邪魔にしかならん。」
「お爺様も酷い言い方ですよ。」
「あっ、でも、玉兎達はアメリカ軍と一緒に戦って貰うから!」
「「「えっ?」」」
「だって当然じゃん。玉兎達も初めてだからアメリカ軍同様倒せるかわからないじゃん。」
「わかりました。やります!」
「腕がなるぜ!」
「倒しまくるよ!」
進もあかりもやる気満々である。
段々とモンスターがダンジョンの入り口に向かってきているのが分かる玉兎達は緊張はしているが固くなっていない。そして、ダンジョンから黒いコボルトが出てくる。
俺達が準備をしだしたのを見ていたアメリカ軍兵も半信半疑ではあるか準備を始める。そして、ダンジョンから黒いコボルトが出てきた時、「本当に出てきたぞ!」「しかも何だ?あの黒い色のモンスターは?」「不気味!」等々、言っているが、シルヴィアが、
「出てきたからには倒すのよ!行くよ!」
っと、先頭を駆け出して行く。それを見た他の兵士も気合いを入れ換えて突撃していく。そして、俺達サイドは、それを見ていた。なので、
「玉兎!何呆けてんだ?一番槍をアッチに持って行かれたら地獄が待ってるぞ!」
「それは、嫌だな!」
「ゼッテェ一番になってやる。」
「やるしかないね!」
そして、3人も駆けていくが先に出たアメリカ軍の方が早い。なので、玉兎は、一旦その場で立ち止まる。「おいっ、玉兎!」「どうしたの?」進とあかりも止まった玉兎に声をかけるが放って先に行く。
「要は一番最初に攻撃を当てたらいいんだろ?」
そう言うと、自分の武器である如意棒を構える。そして、先行する進とあかりに、
「2人とも車線には入るなよ!」
「わかってる!」
「ヤっちゃえ玉兎!」
そして、玉兎が、
「如意棒!伸びろ!」
すると、一瞬にして如意棒は、玉兎の言うとおりに伸び、ブラックコボルト達を吹き飛ばしている。それを見ていたアメリカ勢は全員が一瞬固まる。それに対して、
「よっしゃぁ!玉兎、良くやった!」
「ナイスだよ!玉兎!」
2人はアメリカ勢とは違い一切止まることはなかったので、全員をごぼう抜きにして、2番槍、3番槍となっている。最初の方こそ苦戦をしていたみたいだか、武器に通す魔力量を多くすれば倒すことが出来ている。
対する、アメリカ軍の兵士の方はと言うと、大半はブラックコボルトに掠り傷程度のダメージしか与えられていない。なので、倒すまでには相当数の攻撃をしなけらばならない。これが、大半であって、シルヴィア達は一撃っとまでは行かないが10手いくまでには倒すことが出来ている。まぁ、ハッキリと言えばシルヴィアわ含めて全員が御荷物である。このままでは、時期にアメリカ軍の方に負傷者が続出するだろう。なので、俺は、総理に、
「総理!アメリカの兵を下げて貰うことって出来ますか?」
俺の真剣な顔を見て、
「わかった!交渉してこよう。」
総理は、大統領の元に向かう。すると、すぐに大統領はこちらに来る。その表情は、確実に怒っているときの表示である。そして、大統領が、
「どう言うことかな?我が国の兵士を引かせろだなんて!」
「まず、1匹倒すのに手数がかかりすぎてる。そして、モンスターは、それ以上に増え続けている。それに、そちらは、ポーション類を用意していない。そちらの兵がモンスターに殺させるのは勝手だが、人が殺されると分かっていて、放置するのは流石に人間としてどうかと思ったので忠告させて貰いました。それでも、大統領は兵士に戦えと言うんなら、死んだ時の責任もキチンと取ってくださいね。ただし、今回のは避けられたものであり、死んだ人はただの無駄死にってことと、それを引き起こしたのが自分だと言う認識を持ってくださいね、俺から言うことは以上です。あとは、こっちで好き勝手やらせて貰います。そうそう、獲物は横取りしませんから対処しているモンスターについては倒して下さいね。後でクレームを入れられるのは面倒なので。」
と、言いたいことは言ったので俺は、戻るとする。すると、
「師匠っ、まだっすか?」
遙達が待ちきれない様子である。
「ああっ、行っていいぞ!」
そう言うと、朔夜、遙、玄羅は、飛び出していく。
「さて、俺もそろそろ行くかな!」
っと、思ってると指輪から従魔達が飛び出してくる。グラム達だけでなく今回付いてきた従魔全員である。要は、自分達もやりたと言うことらしい。仕方ないので許可を出すと、各々自分に合った装備を身につけ始めたではないか。鎧みたいなのを着ている物もいれば、魔法使いみたいな帽子を被っているやつも居る。そして、短剣を咥えていたりする。
「なぁ?お前らそれどうしたんだ?」
「ダンジョンで手に入れた武器や防具にゃ!」
「それで、要らないものは他に回して、自分達の装備にしたワン!」
「…なるほど!」
「じゃあ、ご主人!にゃー達は行くにゃ!」
っと、言いグラム達以外はさっさと言ってしまった。
「アイツら、いつの間に!」
「ご主人が知らない間なの!」
「その言い方だとグラム達は知ってのか?」
「俺は、知らないぞ!」
「ウルもなのです!」
「グラムは少しだけ知ってたの!前にも言ったけどみんなのアイテムボックスはそんなに大きくないの!だから、グラムのところにいっぱい持った来るから少しは知ってたの。でも、あそこまでやってるとは思わなかったの!」
「だよな!じゃあ、俺達も行くか!早くしないとみんなに取られちゃうからな。」
「了解なの!」
「行くぞ!」
「やるのです!」
こうして俺達も参戦する。
俺達が参戦する前、ブラックコボルトが出現したときに遡る。
「ちょ、何なのよ!あのモンスター!」
シルヴィアがそう呟き、ションが答える。
「あれが、モンスター今から戦うモンスターなのだろう。」
「それは、見れば分かる!」
「どうした?珍しく臆病だな?」
「私が?はっ、冗談は辞めてよ!」
「ははははっ、そうだな。…むっ、日本人もそろそろ動き出すようだ。」
「負けてられないわ!行くよ!」
シルヴィアは、そう言うとブラックコボルトに突っ込んでいく。シルヴィア達が攻撃をする前に玉兎の攻撃がブラックコボルトを蹂躙する。それに、伴いシルヴィア達の足が止まる。
「ちょ、ちょっと何なのよあの武器は?」
「如意棒って言ってたから、中国に出てくる西遊記の孫悟空って言うのが使っていた武器ですね。」
「よく知ってるな。」
「本は好きなので!」
っとロバートは答える。
「でも、それは、お伽噺の中での物でしょ?何で、現実に存在してるの?」
「恐らくダンジョンから出たものではないかと。」
「私達ですらまだ、ろくに手に入れられてないものをあんな上等な武器を持ってるなんて!」
ロバートの推理にシルヴィアが答える。
「それに、彼だけじゃなく、他の2人もそれなりに良い武器を使用してるみたいですね。」
「ふんっ!そんなことどうでも良いよ!それよりも、私達の方が沢山倒すよ!」
「「「「「「「おおぉおぉぉーーーー!」」」」」」」
シルヴィアの激励にアメリカの兵の士気が上がり、こちらもブラックコボルトに対して突撃していく。っが、
「どうなってんの?私でも10数手倒すのにかかっているのに、あっちは一撃で仕留めてる。確かにコイツらは固いけど、あんなことったある?」
シルヴィアが疑問を呈する。
「そうだな。っと言うよりも、俺達とそのすぐ下のチームだけが倒せていて、下位の方のチームでは傷つけるのがやっとみたいだ。まぁ、下位のチームと言っても、ランキング以下のハズなんだが、何故、ランキング6000番台のヤツに出来てこっちには出来ないんだ?」
ジョンも疑問だったが、ロバートが口を挟む。
「恐らくは武器の性能の差だね。まぁ、それだけだと説明出来ないこともあるけどね。」
「説明できないこと?」
「そう。彼らの魔法の使い方がおかしいんだよ!」
「魔法の使い方?」
「そうです!まず、魔法の威力が違います。僕なんかよりも全然強いでふよ。それに、多種多様ですね。魔法を武器に宿すと言うんですかね?あんなのはみたことないですよ!それよりもこちらの方です。モンスターを倒せない隊員は下げるべきです。それじゃないと怪我じゃ済まなくなる。」
ロバートの意見にライトニング全員が頷く。
「だがな。今奴らを下げるとアイツらが、相手してた連中までこちらが引き受けることになるんだぞ。それこそ、こちらが全滅しかねないぞ。」
っと、ジョンが言うが、
「恐らく大丈夫でしょう。さっき参加していなかった3人が出るようですから!」
ロバートの言葉に全員が俺達の居る方向を見るのである。