132.アメリカとの取り引き
アメリカ勢はグラムの能力に唖然としている。
「そっ、そもそもあのスライムは何なのかね?」
大統領が質問してくる。
「グラム。あのスライムの名前なんですけど、俺の従魔ですよ。」
「「「「従魔???」」」」
「従魔とは何だね?」
「えっ?そこからですか?簡単に言うと、グラムとは主従の関係性で俺が主、グラムが従者って感じですね。俺はグラムに命令できるし、グラムは俺に危害を加えることが出来ない。そんな感じの関係性ですよ。ただ、俺はグラムの意思を尊重してるし、今では家族の一員って感じですかね。」
「家族?」
「そうですね。そこで1つ提案があるんですけどいいですか?」
「提案?………聞くだけ聞いてみよう。」
「流石、大統領。グラムの貸し出し料金としてグラムが回収した物の半分を貰いたい。」
「はっ、半分だとっ?それはいかにもぼったくり過ぎではないかね!」
「そんなに高い金額ではないと思うけど。だめなのか?」
「ダメに決まっている!」
「じゃあ、交渉は決裂だな。そっちはそっちで頑張ってくれ。」
「なっ、なんだと!アメリカを舐めるとどうなるか分かっているのか?」
「俺は政治家じゃないんでねそんなことは知らん。それに、あそこでコボルトとその上位種にたかが足場が悪いからと押されてる奴等なんて怖くもなんともないんだが。」
「黙って聞いていれば好きってなことを言いよって!」
っと、大統領は御冠のようである。そこに、日本の総理大臣が割り込んでくる。
「まぁまぁ、お二方ちょっと頭を冷やしましょう。」
「昴!そいつは一体何者なんだ?」
「おやっ?最初に言った筈ですよ。彼がランキング1位の探索者だと!」
「うっ、だが、彼には強さを感じることが出来ないとジョンが言っていた。ダンジョンに入ってレベルが上がれば少なからず相手の強さが分かるそうだが彼からは一切そんなことはないと言っていた。それに、彼も否定したぞ!」
「まっ、神月さんが何と言おうと、大統領の側近のジョンが何と言おうと真実は真実です。それを信じるか信じないかは大統領次第。あと、1つ私の口から言うなら今回の提案は受けた方が言いということです。」
「それは、どういう意味かな?」
「まず、現状としては刻一刻と状況は悪くなって行ってます。」
「くっ、確かに。倒せば倒すだけアイテムはドロップする。しかも、ダンジョンから出てくるモンスターの勢いは止まらない。」
「その通りです。最初から対処していれば問題はなかったのですが、今となっては後の祭り。それに、これはまだ第1波。今回は神月さん達だけでも大丈夫でしょうが、そうなるとアメリカの顔が丸潰れになるでしょう。出来るだけ無傷で第2波を迎えるためには是非とも必要かと思います。」
暫く大統領は考える。そして、
「わかった。その条件を飲もう。ただし、こちらからも条件をつけさせて貰う。」
「どうぞ!」
「そちらの取り分の半分はアメリカに売って貰う後の半分はそちらの好きにしたらいい。勿論、買取価格は正規の値段で買い取らせて貰う。これが条件だ。」
「了解です。交渉成立です。」
大統領が手を出して来るので握手をする。
「それで、1つ質問なのだが、今、活動しているスライムを、アメリカ軍に貸して貰っても日本のドロップ品と一緒にならないか?」
「その辺はご心配なく。」
俺は、「グラム!」っと声をかけると「わかったの!」と言いグラムは分裂を開始する。そして、6人のグラムが出来上がる。そして、俺は、
「あっちの人達の足元にあるドロップ品を根刮ぎ回収して来てくれ!」
「「「「「「わかったの!!」」」」」」
そう言うとグラムの分裂体達は飛び出していき。あっという間にアメリカ軍の足元を綺麗にしていくのである。そして、足元が自由になったアメリカ軍は、徐々に押し返して行くのである。
そこから30分位経過すると、ダンジョンから出てくるモンスターの勢いは徐々に少なくなっていき、15分後には1匹も出てこなくなった。モンスターが出てこなくなると、アメリカ軍の兵士達は、「「「うぉぉぉぉー!!!」」」と歓喜の声を上げる。対して、こちらは、「やっと終わった!」「やってやったぜ!」「疲れたぁー!」っと言った具合である。そして、アメリカ兵の話を聞いていると、「スタンピードなど対したことなかったな!」「これを対処出来ないなんて日本は、高々知れてるな!」などいっている。対して、チームライトニングを初めとする数チームのアメリカ兵達は疑心暗鬼にとらわれていた。こんなに簡単に終わっていいわけがないと。
そして、俺は、
「お~、3人ともお疲れ!良く頑張ったな!」
「まぁ、これも修行と思えば!」
「楽勝だな。」
「だよね!」
「そんな3人にプレゼントをやろう。」
「「「プ、プレゼント?」」」
「そうだ。まず、さっき倒したモンスターのドロップ品は全て3人の物だ。まぁ、これは当然の権利だな。それと、もう1つは、次の参加券だ。勿論、回復はさせる。万全とは行かないが次が来るまで休憩とお弁当付きだ。どうする?」
「次は爺さんや朔夜達も参戦するんですか?」
「勿論です!」
「当たり前っす!」
「当然じゃな!」
3人は当たり前のように言う。
「なら俺達も参加します。」
そう宣言した玉兎を、進とあかりがかっさらう。そして、3人で話を始める。
「おいっ、玉兎!やっと今、終わったところなのに何でまた地獄に行こうとする?」
「そうだよ。あとは皆に任せようよ!」
どうやら進とあかりの2人はやる気がないようである。っとここで玉兎が、
「スタンピードで出てくるモンスターは経験値が美味しいそうだ!」
「美味しい?つまりは、沢山持ってるってことか?」
「そうなるとレベルも簡単に上昇するね!」
「そうだ。だが、今そんな感覚はないよな!」
「「確かに!」」
「っと言うことは……!」
「次に出てくるモンスターが経験値を沢山持ってるってことになるな!」
「それに、神月さんが参加してもいいってことは私達でも倒せる位のモンスターってことじゃない!」
「そうだ。それで、2人の意見は?」
「「当然参加!!」」
「だよね!」
どうやら話し合いは終わったようで3人とも参加するらしく早速休憩をして、少しでも体力を回復させようとしている。あっ、そうそう今はテントは仕舞ってレジャーシートを敷いて色々な食べ物を出している。当然、体力を回復しようとしている玉兎達は一気に食べて仮眠をとるようである。
そんなことをしていると、アメリカ軍の兵士達はダンジョンに背を向けて帰ろうとしていた。1部のチームを除いて。この1部はライトニング含めトップに居る面々である。だが、大統領もすでにスタンピードは終わったと勘違いしたのか、
「はっはっはっはっは、スタンピードは、とても危険な物だと聞いていたが我がアメリカ軍にかかれば何のことはない。恐れる必要はなかったよ。」
っと、大笑いしており、帰ろうとしている。
「少々お待ちを大統領!それは、早計と言うものですよ!」
「早計?はははは、冗談だろ!」
「いえっ、本当のことですよ。私も実際に見るのは初めてですけど、経験者から詳細を聞いていましてね。最初に出てくるのは普通のモンスター。そして、次に出てくるのがそのモンスター達よりも強い個体が出てきて、最後にボスとなるモンスターが出てくると聞いているんですよ。」
「ボス??」
「ええ。報告によると、2体ともキングがという名がついていたそうですよ。それが、今回はまだ、出てきていない。なので、まだ終わってはいないんですよ。」
そう聞かされて大統領の顔は赤くなる。どうやら、終ったと言ったのが恥ずかしかったのである。
「そらなら、そのモンスター達はいつ現れるんだ?」
「さぁ?私には分かりかねます。」
そう言いながら俺の方を向く。仕方ないので答えるとする。
「さぁ?俺にも分かりませんが、暫くまてば出てくると思いますよ。」
「暫くとはどのくらいなんだ?」
「経験から言うと2時間待たなくてもいいんじゃないかと思いますよ。まっ、分からないですけどね。」
っと、俺達はレジャーシートの上でワイワイとやっている。
「次が来ると分かっているんならこちらから攻め行った方がいいんじゃないかね?」
っと、大統領が質問する。
「折角、向こうから来てくれるんです。その間に体力の回復をした方が効率が言いと思うんですけどね。」
「君は全く何もしてないじゃないか?」
「確かにそうですけど、玉兎達も参加するといっているのでやはり出てくるまで待ちですかね。」
「ふんっ、そんな悠長なことを言っていられるな。」
「じゃあ、そちらはダンジョンに突入するのか?」
「当然だ!」
っと、自信満々に言うが、周囲のアメリカ軍の兵士達はそう言う雰囲気ではない。そして、代表してジョンが大統領に進言する。
「大統領。」
「何だジョン?」
「大変申し上げにくいのですが、我々が突入する事は出来ません。」
「なっ、何を言ってるんだ?突入の一択だろ?」
「今、突入すれば、被害は甚大なものになると思います。」
「何故だ?」
「疲労です。私達は先程の戦闘で少なからず疲労しています。そして、ステータス。つまりはHPやMPも万全ではありません。そんな中突入すれば少なくない犠牲が出ると思われます。私もここは彼の意見に賛成で休息をとる方がいいと思われます。」
「くっ、仕方ない。では、次が来るまで万全の常態にするように。」
「わかりました。」
そう言うとアメリカ兵達も休息に入るようである。
俺達は和気藹々と休息をしていたが、じっと見ている人物がいた。それは、シルヴィアである。そして、今はライトニングのメンバーでミーティングをしていた。
「ねぇ、あのスライムの事なんだけど。」
「まさか魔物を手下に出きるなんて夢にも思わなかったな。しかも、最弱のスライムにあんな凄い能力があるなんてな。」
っと、言っているのは、剣聖を目指しているアレックスである。
「驚きの能力だけど、たかがスライムだよ。最弱なのは変わらないでしょ。」
そう言うのは、槍使いのアーサーである。
「私も同じ意見ですね。」
っと、ロバートもそう言う。
「私は、抱き締めたいです。あのプルンプルンな体がどんな感触なのか確かめて見たいです。」
っと1人だけ意見の違うキャサリンである。
皆の意見はやはり最弱のモンスター扱い。でも、あのスライムは私が、いえ、私達が束になっても敵わないと本能が言っている。まぁ、それも次のモンスターが来ればわかるかも知れない。