131.アメリカナンバーワン
突然乱入してきたのは、とりあえず白人で、金髪巨乳でしかも身長も180センチ位ありそうな大柄な、だが、滅茶苦茶美人の女の人だった。
「静かに入ってこれないのかシルヴィア!」
「そんなこと言ったって仕方ないじゃない!今からスタンピードにお目にかかれるし、ランキングナンバーワンにも俄然興味があるわ。それに、あの訳のわからない日本の上位陣を除いたら、次に来るのは私なんですからね!」
その言葉に、日本人全員驚いた。そして、大統領はこめかみを押さえて左右に頭を振る。そして、大統領の後ろに控えていた黒人マッチョも片手で頭を抱えている。
「それで、ワールドランキングナンバーワンは誰だ?」
総理が答えようとすると、すかさずジョンという男が、
「この中にはいない。」
っと、一言だけ言った。
「なんだ!つまんないな。……じゃあ、スタンピードには私達アメリカ勢だけでやるの?」
「最初はその予定だったが、日本が被害を出さずに納めることが出来るというので今回はお手並み拝見だ。無論、我々アメリカも戦闘には参加する予定だ。」
そう話をすると後ろから何人かの軍服を着た男女がやってくる。
「すまないリーダー。シルヴィアを止めることが出来なかった。」
「ごめんね。リーダー!」
すると、金髪黒人マッチョのジョンはまた手て頭を支える。
「お前達まで来たのか?」
「だってシルヴィアを止めなきゃと思ったんだもん!」
っと、女の子が可愛く言い。3人の男が頷く。
「はぁ~、仕方ない。紹介しよう。彼等は、我がアメリカの最強パーティーだよ。」
そう大統領が説明すると、1人1人自己紹介を始めた。
「まずはリーダーをやっているジョンだ。ジョン・ステイシーだ。役割としてはタンクをやらせてもらっている。」
「次は私ね。私はシルヴィア・マイスター。一応アタッカーかな。遊撃ってのをやってるわ。そして、私がアメリカの最強よ!」
「次はあたしね。私はキャサリン・ローナ。魔法使い兼回復魔法師ね。」
キャサリンと名乗った女の子はブロンドで少しだけ華奢な体型をしていた。だが、それはシルヴィアに対してあり、普通なら目を引くこと間違いなしである。そして、次に、
「俺は、アレックス・フィールズ。いずれは剣聖になる予定の男だ!」
アレックスは、金髪で短髪なイケメン野郎である。だが、そんな言葉を聞いて、1人の男に火をつけてしまった。それは、玄羅である。
「ひよっこが抜かしよるは!」
「なんだと?」
「なんじゃ?」
「はーい!ストップ。お爺様、まだ自己紹介の途中ですから邪魔しないでください。スタンピードの時に実力の違いを見せつけたらいいだけですから!」
「それもそうだな!」
「はっ、俺よりもランキングが低い奴が何言ってやがる!」
「それは実践の中で教えてやる。」
「その言葉忘れるなよ!楽しみにしてるぜ!」
「すまんな。時間をとってしまった。」
「いえいえ大丈夫ですよ。それでは続きといきましょう。私ですが、ロバート・ベーカーといいます。私は純粋な攻撃魔法師です。よろしくお願いします。」
シルヴィアとキャサリン、アレックスは同年代でリーダーのジョンとロバートが一回り位上に見える。そして、最後が明らかに年下であり朔夜達と同年代に見える。
「僕は、アルベルト・ペンドラゴン。武器は槍を使う。そして、いつか最強になる男だ。」
身長は150センチ位なのに体に似合わないくらいとても大きな槍を装備していた。
「これが、アメリカの最強パーティーのライトニングだ。」
っと、自信満々にジョンが言った瞬間、ドーンという音がしてダンジョンからモンスターが飛び出してきた。俺は、直ぐ様迎撃に参加しようとしたが出てきたモンスターを見てやる気を失ってしまう。出てきたモンスターはコボルトだからである。
「爺さんはどうする?」
俺のやる気が無くなったのを感じたのか、
「儂も最初は遠慮しよう。」
「じゃあ、私達もいいっす!ねぇ、朔夜!」
「そうですね。ランキングは私達の方が高いのに私達よりも低いお爺様がやらないのですから私達もパスですね。なので、お兄様よろしくお願いしますね。」
「はぁ~仕方ない。やるぞ!あかり、進!」
「おう!」
「本気でやっちゃうよ!」
3人は以外と余裕を持っているが、アメリカ勢は、そんなことはなかった。
「大統領を守れー!」「銃を持ってこい!」「ランカーを呼んでこい!」等、てんてこ舞いである。アメリカの最強パーティーは、ロバートさんとキャサリンさんが大統領の側に控え、ジョンさんが大楯を持って大統領の前に立っている。そして、シルビア、アレックス、アルベルトはコボルトの対応に当たっているようである。流石に、玉兎達3人では無理なようであったが、倒している数は、玉兎達の方が圧倒的に多い。
「おらおらっ、どうしたぁ~!こんなんじゃ全然たのしくねぇ~ぞぉ!」
っと、進が豹変したようにコボルトを倒していく。そして、コボルトを斬るに連れて妖刀村正は刀身が赤くなっていっている。赤くなるにつれ、最初はコボルト1匹を斬っていたが、段々と2匹同時に倒せるようになっており、今では3匹同時にしとめている。あかりはと言うと、2つの刀を使い双剣、もとい二刀流で戦っていた。しかもあかりは周囲が全員敵といった状況で戦っているが、状況は最悪に見えるかも知れないが、いつも一緒にいる玉兎と進が焦っていない。つまりはいつもの事なのだろう。そこは、氷と炎の地獄である。だが、不思議と見いられる不思議な輪舞曲を見ているようである。アメリカ軍の兵士達も何人もぼっーと見とれていた。そして、最後の玉兎は、如意棒に炎を纏わせて戦っていた。そして、他者には分かりづらいかも知らないが、絶妙な感じで如意棒を伸ばしたり縮めたりして戦っている。確かに、極端に長い間合いだとかわされて懐に入られるのが落ち、しかも元に戻すにも多生なりとも時間は必要である。なので、最小剣の伸縮で攻撃している。しかも、棒術のスキルを取得し、レベルが上がっていることが、分かるくらい様になっている。そんな3人を見ていたアメリカの軍人達は、「あれが俺よりもランクが下のわけない。」「日本、詐欺を行っている。」「何を隠している。」等々の言葉が聞こえてくる。勿論、ライトニングだけでなく、他のアメリカ軍人にも戦ってもらう。だが、群を抜いて討伐数を稼いでいるのは玉兎達とライトニング、他の数グループだけであり、それ以外の面子は、何とか相手が出来ているといった感じである。それを見ていた総理が、
「玄羅。本当にいいのか?」
「何がだ?」
「お前の孫の玉兎君だよ。」
「心配は要らん。最近は、少し表情も変わって修羅場を潜り抜けて来た目をするようになったからな。ここで、もう一段階上にいってもらいたいものだ。それに今回は打ってつけだと思ったんだよ。神月もそう思うだろ?」
「いやっ、俺は、自分が楽できればそれていいかなと思ってるだけだぞ。」
俺のその意見を聞いていた大統領が、呆れる。たがそれが真実である。
「随分と上から目線だが、君はただの一般人なのだろう!だが聞いた話だと、彼等はランキングが6000番台と言うのに、あんなにスタンピードに貢献している。そんな者は世の中にいないぞ。そう言いたければ彼等は以上の働きを見せてから言うことだな!」
その大統領の言葉に俺、玄羅、朔夜、遙が微笑みを向ける。この俺達の反応に大統領はあまりいい顔をしなかった。それを見ていた総理は
「まぁまぁ、落ち着きましょう。それに、そろそろ戦況も変わり始める頃ですしね。」
「それはどういう意味かな?」
アメリカ大統領が聞いてくる。
「理由は2つありますけど、まっ、見てればわかりますよ。」
そう俺が言った2つの理由、いやっ、正確に言うと3つの理由で戦況は変わろうとしていた。まず始めの変化は、ダンジョンから出てくるモンスターの上位種の出現である。やはり通常種と違い色々な武器や防具、スキル等を使ってくるので厄介である。それに加え、統率され連携をし始めるのだから厄介極まりないのである。だが、この辺は玉兎達もライトニングは対応することが出来ていたし、他のアメリカのパーティーも何とか対応することが出来ていた。そして、もう一つの要因がアメリカのパーティーがガタガタになっていく要因である。
玉兎達は戦いの当初から気になっていなかったが、
シルヴィアは気になる事があったのだ。明らかに強者の気配がする事を。だが、それが神月と言う男ではないと言うこと。そして、それは戦いの最中でも感じとることが出来ていた。そして、段々と私は、いや私達アメリカのアタッカーは徐々に戦いにくくなっている。1番の原因は足元である。足元には数えきれない程の魔石が転がっていた。っと言うか、魔石だけではなく、他にも武器や防具等の様々なアイテムがドロップしていた。対して、玉兎達の方にはそんな物は1つも落ちてはいない。それもそのはず、家のグラムの分裂体が素早く拾い上げているからである。
「何で俺達はこんなに戦いにくいのに日本人の動きは変わらないんだ?」
「見てみろ!奴等の足元には何もないぞ!」
「そんなバカな!」
「何故だ?」
「まさか、日本だけ魔石とかがドロップしないんじゃ無いだろうな?」
「だが、それこそおかしい。ダンジョンの1番の恩恵である魔石がドロップしないなんてアタッカーをやる意味がない。」
そこで、じっとこっちを見ていたアメリカ軍兵士は、何かに気がついたようである。
「いやっ、違うぞ。あれをよく見ろ!」
1人のアメリカ軍人がそう言うとそこにはコボルトの死体があった。そして、そのコボルトの死体が消えて行くとそこには魔石が残ったが、あっという間に消えてしまう。いくら目を凝らしても見えない。それもそのはず、グラムが気配を消して尚且つ素早く動いているのだから見えないのは当たり前なのである。
大統領も自分の国の軍人が苦戦しているのは分かっている。その理由も分かっている。
「何故、日本のアタッカーだけが苦戦らしい苦戦もせずに戦っていられるんだ?」
少しだけ焦った様に大統領が総理に問う。
「さぁ、私に聞かれましても…。」
っと、俺の方を向きSOSを出しているがあえて無視してみる。すると、総理は今度は玄羅の方に助けを求める。
「はぁ~仕方ないの。理由は簡単明白。玉兎達の足元には何もなく、アメリカ軍人の方はモンスターのドロップしたもので足場が埋め尽くされそうになっている。これの違いだな。」
「それは、私も見ればわかる。だが、何故、日本のアタッカーの足元だけ何もない説明になってないぞ。」
「そう言われましても、実際に無いものはないんですよ。」
そう言われて、大統領はヒートアップしそうになる。そろそろ頃合いだと思い声をかけることにした。
「グラム!姿を見せてやれ!」
俺がそう言うと、グラムは玉兎、あかり、進のそラぞれの頭の上に登っていた。
「あっ、あれは何だ?モンスターが人の頭に登っているぞ。」
「えっ?あれって、スライムか?」
「何であんなところにスライムが?」
アメリカの人達の頭の中には?が一杯である。そんな中、玉兎の頭の上に乗っていた分裂体が、魔石に向かっていく。そして、魔石をスライムボックスの中に収納する。それを見た俺達以外の全員が1つの決断を下す。それは、
「あれじゃあただの無駄遣いじゃないか?スライムに吸収させるなんて勿体ない。」
っと、大統領の言葉に、大半のアメリカ人はそう思った。中には若干数名は吸収したのではないと疑っていた。その理由は、戦闘が始まって今の今まで1度も姿を見たものがいなかったからである。
「違いますよ。あれは吸収ではなくて収納ですよ。」
っと、俺が答えると、大統領は、
「そんなスライムがいてたまるか!」
っと、言うので、
「グラム。収納したものを取り出してみてくれ!」
「了解なの!」
すると、グラムは先程収納したものを取り出す。それと、同時に、グラムが言葉を発する事が出来るということにアメリカ人達は驚愕するのである。