130.アメリカ行き
何だかんだでアメリカ行きが確定してしまった。
「じゃあ、今日はもう開きで早く寝るとするか。」
っと言うと、玄羅が、
「何を言っているんだ?これから行くに決まっているだろう?」
「えっ?はぁ?……これから?」
俺は玄羅の言葉に耳を疑う。それに反して行きたい派の人達は大喜びする。
「早く準備しろ!他の行くメンバーはすでに終えてるぞ!」
「他のメンバーって?」
「儂、玉兎、進、あかり、朔夜、遙の6人だ。」
「えっ?全員行くのか?」
「「「「「「当然!!!!」」」」」」
俺は頭を抱えるが、こうなっては仕方の無いことだと諦めていくことにする。
「でも、突然、アメリカに行くって言って、この人数の空きがあるのか?」
「何を言っているんだ?政府の要請なんだからどっち政府に用意させればいいだけだ。」
「そっ、そんなものか?」
「それに、早く羽田空港国際線ターミナルに来いと言っていたから早くしろ!」
「誰が?」
「言わなくても分かるだろ?」
これは絶対に誰が来るのか丸分かりである。そんなこんなで、羽田空港国際線ターミナルに到着する。俺達は普段入れないVIP専用の通路から通される。それだけでもドキドキだった。そして、進んだ先には案の定、総理大臣が待っていた。
「神月、待っていたぞ。それに、玄羅も行くらしいな。」
「待ってなくていいですよ!」
俺は心の底からそう思っている。
「何だ?儂が行くのが不服なのか?」
「歳を考えろって事だ!」
「人の事言える立場か?だがな、最近は調子が良すぎるくらい良いんだよ。体調だけなら全盛期と変わらんし、体の動きに関して全盛期以上だまぁ、この辺はレベルアップした影響もあるだろうかな。」
「そうか。それで、その後ろにぞろぞろと連れているのはどういう事なんだ?見学か?」
「いやっ、戦力だ。孫娘の朔夜と友人の遙だ。この2人は悔しいことに儂よりもランキングが上だ。そして、こっちが同じ孫の玉兎だ。それと、玉兎のパーティーのメンバーだ。朔夜達の方はすでにスタンピードを経験しているが、玉兎達はまだだな。なので、今回は経験を積ませようと同行している。っと言っても、本人達はヤル気満々なんだがな!」
「ほ~う。それで、ランキングは何位なんだ?」
「確か、3人とも6000番台だと言っていたな。」
「おいおい、それで大丈夫なのか?」
「さぁな?だが、神月が居るんだから問題ないだろ?それに、玉兎達も神月に鍛えられてるし、神月からいい武器を貰ったと喜んでいたぞ!」
「そうなのか!」
「役に立たなかったらその辺で見学でもさせるさ!」
「それはじいさんにも言えることだけどな。」
すると、皆が笑い始める。すると、玄羅は、「儂は死んでも戦うぞ!」と言っていた。そして、俺達は結局、政府の専用機に乗ってアメリカに行く事になったようだ。しかも、何故か、総理まで一緒に乗り込んで来ていると聞いた。そして、スタンピードを視察すると言い聞かないそうだ。
そして、俺達は無事にアメリカの大地に足を踏み入れたのだが、
「そういえば、ここってアメリカのどこだ?」
アメリカにスタンピードの前兆があると聞いてはいたが、そう言えば、何処なのか全く聞いていなかった。
「何言ってるっすかね!ここは、…………?」
遙も頭を捻る。
「ここはワシントンアメリカの首都よ!」
っと、朔夜が答えてくれる。そんなボケた事を飛行機を降りた直ぐの所の滑走路でしている。別に遊んでいる訳じゃない。迎えを待っているのだ。そうしていると、デカイリムジンとその全方位を装甲車が囲ってやって来る。どんなお偉いさんが乗っているのか?それとも日本の総理大臣を迎えに来たのかは謎だが、その謎は直ぐに解けることになる。
なんと、リムジンから降りてきたのは、アメリカ大統領その人ではないか。横には筋骨隆々でスーツがはち切れんばかりの体格をしている金髪グラサンの黒人が立っていた。明らかな強者である。日本の総理大臣も見習ってあの位の護衛を付けて欲しいものである。そして、柔和な笑みを浮かべ総理に握手を求めている。勿論、総理もそれに応じるが、2人の顔の下が何を考えているのか全く分からないのが怖いところである。
2人の政治的駆け引き?が終わると何故か俺の方に歩みを進めるのである。
「君がランキングナンバーワンかな?」
「ランキング?ナンバーワン?何の事でしょうか?」
「知らないと?」
「何の事かさっぱり分かりませんけど?」
「そうかい?人違いだったかな!失礼したね。」
「いえいえ。」
そう言うと、アメリカ大統領は総理の元にもどって行った。
「それで、ジョン。どうだった?」
「あれはダメだ。ただの一般人だよ。その中で1番強いのは2人組でいる女の子達とその隣にいる、紳士ですかね。あとは、男2人と女1人のチームが随分と劣りますね。」
「そうか。分かった。ありがとうジョン。」
話が終わると厳しい顔をして総理大臣の元に戻っていく。
「スバル。どういう事か説明して貰えるかな?」
スペード大統領は、不機嫌そうな顔をして、そう言った。
「何がです?」
「君はランキングナンバーワンを連れて来ると約束したのに実際に連れてきたのは、我がアメリカチームにも劣るもの達じゃないか!このままでは、アメリカに被害が及ぶ危険性が出てきた。この責任、どうやって取ってくれるんだ?」
「簡単ですよ。被害が出る前に、スタンピードを終息させてしまえば何の問題もないでしょう?それに、スタンピードのボスでしたら、単独であれば、私の友人の天上院玄羅が倒している。それに、露払いなら朔夜と遙で十分足りるらしい。そららの手を煩わせる事はないと思いますよ。」
「それは無責任というものだよ。君達はこの国に生きていないから失敗しても何の責任を感じる必要がない。だがね、私達はこの国に住んでいて、私はこのくにのトップだ。そうなれば国民に申し訳が立たなくなる。」
「それはそうでしょう。大統領と同じ立場ならそう思うでしょう。ですが、今回はその心配はないと言えます。」
「だが、我が国にとって何の保証も無い。」
「そうですか。ですが、このままでは災害級の被害が出かねませんよ。」
「そっ、それはそうだが……」
「ああ、それともう1つ。実は今回は私も同席することになってます。それでも、保証にはなりませんか?」
「………同席?ダンジョンのスタンピードに?」
「そう言いましたよ。これでも日本の総理大臣が日本の探索者と同行すると言っているのですよ。」
少しだけ強い口調になる総理である。
「分かった。君がそこまで言うなら私も同席しよう。」
「ボスっ!!!」
っと、側に控えていた筋肉マッチョの金髪黒人が驚きの声を上げるが大統領が片手を上げて制止させる。
「日本の総理が命をかけると言っているんだ。私もかけなければいけないだろ?」
決意を滲ませた目で話しかける。
「分かった。だが、ボスは必ず俺達が守ると誓う。」
「ジョン。ありがとう。」
少しだけ感動のシーンではあったが、
「すみません。悪いんですけど、私は命をかけるなんて一言も言ってないですよ。」
「WHAT?どういう事だね?」
「ですから、日本的に言うとただの物見遊山ですよ。」
そう言うと、2人とキョトンとしていた。
そして、俺達は観光をする暇もなくダンジョンに連れていかれる。観光は終わった後でも幾らでも出来るしね。そして、ダンジョンに連れてこられた。
ここは、アメリカ軍の基地である。俺と玄羅はそうでもないが、後の面々は、緊張しまくっている。その理由は、俺達を見る軍人達の視線である。侮蔑というかコイツら本当に強いのかならいいが、差別的視線が痛いのは確かである。中には、「っち、ジャップが!」
「イエローモンキーが何しに来やがった!」等々聞こえてくるのだ。まぁ、俺は、無視だが進やあかりは切れかけていた。この2人は渡している武器がヤバイものだけに暴れだしたら面倒である。特に進は、斬れ味が上がるだけでなく、自制は出来るみたいだが、どうやら性格も変わってしまうみたいである。やはりスキルの妖化が関係しているようである。そして、玉兎も少しだけ切れ気味である。玉兎の場合は俺に対して差別的な発言や視線にムカついているようである。この3人を宥めながら俺達はダンジョンに案内される。幸いにしてまだスタンピードは起こっていない状態であったのが不幸中の幸いであった。最初のスタンピードも2回目のスタンピードも赤い目のモンスターが見つかり報告があってから約1週間である。そして、今回もそろそろ1週間を経過しようとしていた。その説明をしたのは大統領である。
「なので、いつスタンピードが起こってもおかしくない状況なのですよ。」
「そなんですか。この待つのは時間の無駄だが、モンスターが溢れだしてから来たのでは既に手遅れですしね。どうしたもんか?」
「なら、この場で待てばいいじゃん!」
「それもそうだな。」
俺達は納得する。
「いやっ、だがな神月。ここは米軍の基地なんだぞ。そこで待機してスタンピードが起こってから対処しても充分だと思うぞ。」
「確かに、だけど、それだと俺達が対応するまでに出てきたモンスターを探しだして倒すなんて面倒な事したくないんだよね!」
「だけど、ここで、いつ起こるか分からないスタンピードを待つのも効率が悪いと思うけどね。」
っと、俺と総理の間にアメリカ大統領が口を挟む。
「そう言うときの為に、いいアイテムがある。」
俺は、持っていた袋に手を突っ込みそこでアイテムボックスを使い、魔法のテントを取り出す。
「「「「「「……………………?」」」」」」
大統領を初めとしてアメリカ勢は目が点になっている。
「な~んだ。それ使うんすか!早く言って欲しいっす!」
「確かに、そうですね。何もないところでただ待つのかと思ってました。」
「何だ?2人ともそんなことじゃこれから始まる祭りを楽しめないぞ。」
「そう思ってるのはお爺様だけです!」
「強ちそうとは言えないぞ。ほれっ!」
っと、玉兎達の方を玄羅が指指すと自分の力を試したくてウズウズしている様子である。
「ところで神月。これはなんだ?」
「見ての通りテントですけど?」
「まさか、このテントに全員入れってことじゃないよな?」
「そう言うことです。ところで、あちらのアメリカの方達はどうしたんですか?」
「さぁな?私としても気になっているところだ。」
「………今、明らかに袋の容量よりも大きなものが出てきた気がするんだが気のせいかな?」
大統領が震える声で言う。それを、総理が答える。
「間違いではないですよ。どうやら、アイテム袋と言うドロップ品ですよ。見た目以上の物が入って重さも感じないそうですよ。それに、良いものになってくると時間も遅延してけれるみたいですね。」
「「「遅延?」」」
「そうですね。例えば、朝に温かい飲み物を入れたとして、夕方もある程度その温かさをキープ出来ているらしいですよ。」
「そんなものがダンジョンから出てくるなんて聞いたことないぞ!」
「そう言われましてもね。実際問題この世に存在するわけですからね。」
「まぁ、ダンジョンだ。1つ位出てきたとしても致し方無いだろう。」
「えっ?私はあれが1つだとは言ってませんが?」
「あんなものが1つではなく複数あると?」
「そう言いましたが?」
っと、総理と大統領が話をしていると、突然、
「ここか~?私よりも強い奴がいるというのは~!」
っ、アメリカの軍服を着た女性が乱入してくる。