129.ランキング発表……そして、
っと言うことで、俺は今、天上院家にいる。理由は、折角東京に来たのだから何処かに行きたいと言う思いがあった。だが、正直何処に行けばいいのか検討がつかないので、結局、玉兎に誘われるがままここに来てしまったのである。とりあえず、天上院家の玄関を通り抜けるつとそこには思わぬ人物が立っていた。
「やっと来たな。待っておったぞ!」
「そうですよ。首を長くして待ってました。」
居たのは玄羅と朔夜である。
「えっ~と、朔夜は分かるけど何でじいさんまでいるんだ?」
「それはな、神月が総理に連れていかれたと言う情報が入ってな。なら儂も行ってみようと思っての。それに、お主に確かめねばならんこともあるしな。」
そこで、朔夜が乱入してくる。
「おじいさまのことはどうでもいいです。」
「いやいや、朔夜。どうでもいいって!」
「いいのです。それよりも何故私の連絡に返信が無いのですか?」
「えっ?返信?」
「もしかして気がついてなかったんですか?」
「そうだね。何せ御堂さんからの連絡の数が多すぎて途中で見るのを止めちゃった位だからね。」
「そうですか。でも、見てほしかったです。」
残念がる朔夜だが、玄羅が、
「まぁ、いいではないか?こうして出会えているんだから!それに、儂もあの事について聞いてみたいしの。」
「ランキングの事か?」
「そうだ!!」
「わかった。問い会えず飯喰いたい!」
「おぉ、気がきかんかったな。直ぐに用意させよう。」
それからの行動は早かった。俺達(連れてきた従魔込み)は、まず、風呂に案内される。玄羅に、猫や犬等を風呂に入れていいのか確認をすると、速攻で、「構わん!」っと帰ってきた。なので、連れてきた従魔達と風呂を味わっている。勿論、風呂のマナーを教えて入らせる。やはり、天上院家の風呂はでかい。ちょっとした銭湯以上の大きさがある。俺達が全員入っても問題なしである。そうそう、今回、付いてきたいと言ったメンバーは、猫が5匹、犬が5匹、俺の従魔の中でも一番多いのがこの2種類である。それに、行きたいと言ったメンバーが多く制限をかけさてもらった。因みに、決定の方法はクジである。あとは、狐、狸、蛇がそれぞれ1匹ずつ付いて来ていた。そんな風呂場に玄羅が乱入してくる。すると、一斉に俺達は玄羅の方を見ると玄羅は、少し萎縮しているように見える。そのまま、入浴は何事もなく終わり、いざ食事である。食事にはめっちゃ広い広間に通される。食事は勿論俺達と従魔は同じものを用意してもらった。元々は動物であったが、まぁ、今でも動物なんだが進化してイロイロと別物になっており、食べ物も特に気を付ける必要がなくなったようである。そうなると、皆、同じものを食べるようになった。そして、皆、器用に食べている。あるものは爪を1本だけ長くしてみたり、気にせずガッツリいってみたりしていた。1番ビックリしたのは、蛇の奴である。蛇は手がない。これは常識である。だが、家の蛇は食べたいものを超能力の様に空中に浮かせて食べたいた。しかも、刺身なんかは刺身が独りでに醤油を付け自身の口に運んでいた。どうやら、スキル欄に念動力っと言うスキルを持っていたのでこの影響なのだと思う。
「さて、神月。さっきの風呂場では朔夜が居なかったから聞かなかったが、ランキングはどうなってる?」
「想像に任せる。じゃダメか?」
「もったい付けるな!儂とお主の仲じゃないか?」
「はぁ~、仕方ない。」
俺は人差し指を1本だけ上げた。
「んっ?100位か?」
「違う!もうちょっと上だ!」
「そうか!神月でも10位か!」
「じいさん!わざとやってないか?」
「お主が素直にならん方が悪い。」
「ほっとけ!それじゃあ2位は?」
「グラム。3位がスノウ、4位がウルだ。あとはそこにいる俺の従魔が、まぁ一部だけど上位を占めてるな。」
「ほ~う、そうか。」
っと、獰猛な目を従魔達に向けるが従魔達は何処吹く風っといったように無視して食事を食べている。
「止めとけよ。じいさんじゃまだ無理だからな!」
「…オークキングの時は止めなかったのに今回は止めるのか?」
「オークキングの時には万が一ってのがあったけど、今回のは無理だって分かってるからな。」
「そんなにか?」
「そんなに!」
「ふむ!仕方ないの。」
っと、玄羅があきらめてくれた?と思う。すると、朔夜が
「おじいさま。あまり無茶はしないでくださいね。」
「分かっておる。」
2人の会話を聞いていると思い出した事がある。
「そう言えば、2人の順位を聞いてなかった気がするんだけど。」
「おぉ~、そうだな。儂が485位。」
「そして、私が461位。遙が449位ですよ。」
「そうなんだ。」
「それで、遙は、日本ではトップなんですよ!」
「日本では?っか、俺は?」
「勿論、師匠達を除いてですよ!」
「そっ、そうか!」
遙が日本トップとは少しやりすぎたのかもしれない。まぁ、今更後悔してもどうにもならなんだけどね。すると、玉兎が、
「実は俺達も神月さんのお陰で3人とも6400番台にランクインしました。ありがとうございます。」
「いやいや、そんなに気にしなくてもいいよ。」
そうして和やかな食事をしていたら、天上院家の電話が鳴り響く。現在は午後9時である。普通ならあまり電話はかかってこない時間帯である。特に、固定電話には、そして、誰かが電話に出たのかコール音が消える。俺はその電話に何か嫌な予感を持つ。
少しすると、執事の藤川さんが電話の子機を持ってやってくる。そして、迷わず玄羅の元に電話を持っていく。
「何だ?言って儂の家はここではないぞ。ここの電話ならここの当主に繋ぐのが筋だぞ!」
すると、藤川さんは、涼しい顔をして答える。
「いえ、電話の主が、前の主をとのご所望ですので。」
と、玄羅に電話を差し出す。その電話に玄羅も嫌な顔をする。当然、ここにいることは殆どの人物は知らない。そして、玄羅がここ居ると予想出来る人物もそう多くはないのだ。渋々、玄羅は電話をとりながら、部屋の外に出ていく。
そして、かれこれ10数分が過ぎた頃に玄羅が戻ってきた。
「神月、いい知らせと悪い知らせだが、どっちから聞きたい?」
「どっちも聞きたくない。俺はここには居ないと伝えてくれ。……お前ら、帰るぞ!」
「ちょっと待て!まぁ、儂は困らんが、この国が困ることになる!」
「この国だと?だとしても、俺の問題ではない気がする。」
「そう言うな。それに、いい知らせは儂や朔夜にとってもいい話だからな。それに、玉兎にも」
「おじいさま。それはどういったことですか?」
「はぁ~、観念して聞くよ。」
俺は、観念して聞くことにした。
「まず、いい知らせだが、スタンピードの可能性のあるダンジョンが見つかった。」
「それっていいことなのか?」
俺は疑問に思う。スタンピードは、ダンジョンからモンスターが出て、暴れまわると言うことだ。これをいいことと言える神経が知れない。
「儂にとっては良いことだぞ。早く倶利伽羅を全力で振るってみたいし、何より獲物がたくさんおってレベルもうなぎ登りと来ている。これを、いい知らせと言う他無いではないか!」
「あっ、そう。それで、悪い方の知らせは?」
俺は、冷たくあしらう。
「悪い方の知らせは、そこが日本ではないと言うことだ。」
「はいっ、パス!俺は外国に行く気はない。それに、パスポートも持ってないしな!」
「それがそうもいかんのだ。」
「何で?」
「今日の昼間にテレビ電話で直接アメリカの大統領から頭を下げられたそうなんだ!」
「「「「「「えっ?」」」」」」
「あのプライドが高いと有名なアメリカの大統領が頭を下げるなんて余程ので、日本政府としては要請を受けなければならないと思っているそうなんだが、スタンピードに対する対抗手段を持っていないのが現状だ。そんな中、ランキング1位の神月の事を知っているので、どうしても断りきれなかったらしい。それで、どうする?」
「面倒くさいから行かない。それに、アメリカには、有名な軍とか部隊かが有るんじゃないのか?それに、アメリカの探索者だって黙ってないだろ?」
「確かにの。だが、儂等と言うか神月の力を知っているから無駄な犠牲を払わずに済めばいいと思ったのではないか?」
「おじいさま。スタンピードを自分が終息させたかのような言い回しはよくありませんよ。」
「だがのブラックオークキングを倒したのは儂じゃささぞ!」
「それも師匠とグラムさんに助けられてなんとかでしょう?あのままだったら今、この世に居ませんよ!」
「うっ、それはそうだがな。」
俺は考え込む。1番面倒事が少ない方法を取ることにする。
「条件次第ならいいと伝えてくれ。」
「うむ。して、その条件は?」
「まず、旅費と交通手段に関してはどちらかの国が保障する事。次に、モンスターを倒して得たドロップ品については倒した人に権利があると言うこと。そのドロップ品は、自分が使用するにしろ、どちらかの国に売るにしろ、権利者に委ねられ、両国は口を出さない事。それは、宝箱が出現した場合も同様だ。宝箱の場合は、当事者同士の話し合いでいいと思うがどうだ?」
「ふむ。いい案だと思うぞ!」
「あとは、現地の美味しいものを沢山用意してくれる位か?」
「分かった。では、その旨交渉してこよう。」
そう言うと玄羅は部屋を出ていき電話をかけ始まる。かれこれ10分位話をすると戻ってくる。
「日本側は神月の要求を飲むそうだ。そして、それを今からアメリカに提示し交渉する予定だ。」
「そうか!どうなると思う?」
「さぁの?聞くところによるとアメリカも相当追い詰められとるようだから大丈夫だと思うがな。」
そうして、かれこれ30分が経過しよう頃に天上院家に電話がかかる。そうそう、この間に、玉兎があかりと進を呼んでいる。玉兎が2人に話をすると大きな鞄を持って天上院家に現れた。そして、それは、朔夜も同様で、遙に連絡を取り遙もこの場に居る。まだ、誰も行くと決定したわけではないのに……。玄羅が電話に出ると、「分かった。」とだけいい電話を切る。
「それで、おじいさま。どうだったのですか?」
「神月の要望はほぼ通った。」
「「よっしゃー!」」
「やったー!」
これを喜ぶのは玉兎と進、あかりである。
「それで、なんて言ってきたんだ?」
「スタンピードを対応するのに、アメリカのチームも入れて欲しいそうだが、どうする。」
「俺は別に構わない。」
「それは、ダメですよ!」
進が意見を言う。
「何でだ?」
「条件に、ドロップ品は倒した人の物なんでしょ?だったら奴ら俺達が倒して後で回収しようとしたドロップ品を自分達が倒したと言い張るに違いありません。」
その言葉を聞いて、スタンピードを経験していない者ならそう考えるかも知れないなと思っていると遙が吹き出す。
「フフフフ、大丈夫っすよ朔夜のお兄さんのお友達さん。」
「進だ。……それで、何が大丈夫なんだ?」
「それはですね。師匠が私たち一人一人にグラムさんの分隊を付けてくれるからっす!」
「「「グラムさんの分隊っ?」」」
「そうっす!知っての通り、グラムさんはハイパーでスーパーなスライムっす!分裂なんてわけないっす!それに、グラムさんにはスライムボックスがあるからどれだけの量でも入っちゃうっす。」
「「「スライムボックス??」」」
「そうっす!だから、倒した端からグラムさんの分裂体がドロップ品を回収してくれるっす!」
「そっか、それなら別に向こうが横取りしようと思っても出来ないってことか!」
「進、そう言うことだ。後は、向こうの出てくる奴等がどの程度やれる奴等かって事だと思う。足手まといになるようなら即刻見学に移ってもらう。特に後半は邪魔だからな。じいさん。その辺も伝えておいたくれ。」
「分かった。待っていろ。」
直ぐに電話をかけに行く。そして、直ぐ戻ってくる。
「今回は早かったな!」
「要求を伝えるだけだからな。」
「それで?」
「その程度は当然だと判断し、そこは強気でいくらしい。……では、アメリカ行き確定でいいな?」
「…………仕方ない!」
俺の言葉に朔夜、遙、玉兎、進、あかり、玄羅までもが喜んでいる。




