128.玉兎の覚悟
俺は天上院玉兎。今回も俺の思ったことを書いていこうと思う。
最近、俺達はダンジョンに行く事が多くなっている。それに、今、楽しいのだ。何が楽しいかというと神月さんからもらった武器である。正直、ここまでだとは思ってなかった。あかりは双剣で炎や氷を出して楽しんで戦っている。進も刀の特性を理解してきたみたいである。ただ、元々切れ味は最高であり、低階層のモンスターだと斬ったかどうか分からないっと言っていたが、それでもモンスターを倒すと切れ味は上昇していく事に悪戦苦闘しているところである。俺は、棒術特訓中である。そして、時々伸ばしたりしてモンスターを倒している。そもそも、炎と氷の中や元々切れ味が最高なのにモンスターを倒すと更に攻撃力が上昇していく戦場に生身で入るのは自殺行為である。なので、俺にとってと言うか、俺達のパーティーには最適な武器だと思う。
そんなこんなで、ダンジョン探索をしていた。そして、明日は休日だったので、少し夜更かししていたら、日付を跨いだら、いきなり声が聞こえて、ランキング制度の導入が始まった。どうやら俺達のランキングは1200番台であった。それでも、この短期間でよくこの順位まで来たものだと思う。これもあの地獄特訓をしてきたお陰だと思う。そんな中今日も3人でダンジョンに行こうとしていたら、急に神月さんから電話がかかってくる。俺はその電話に出る。
「もしもし、神月さん?」
『そうだよ。』
「どうしたんですか?」
『ちょっと今から指定するところにあかりと進を連れて来れないかな?』
「ええ、いいですよ。丁度、今、2人と一緒にいますから、神月さんの誘いだと言えば2人とも拒否はしないと思いますよ。それで、何があるんですか?」
『それは来てからのお楽しみと言うことで!』
神月さんはそう言い、場所を指定して直ぐに電話を切ってしまった。だが、その場所と言うのが問題である。なんとそこは自衛隊の駐屯地である。絶対に言い話ではないと思う。
俺達が自衛隊の駐屯地に到着すると、神月さんは達も到着したようである。だが、その面子を見て更に厄介事なんだろうなと言う思いが駆け巡る。何せ、テレビで良く見る人達がいるのだから。しかも、黒いスーツにインカムを付けている。俺達は、そのSP達に止められたが、神月さんの進言でスルーされた。そして、これから何が起こるのかの大まかな話を聞いて、自衛隊員達に黙祷を捧げる。神月さんは、
「殺すなよ!それに、殺したりしないよ!」
何て言っていたが、神月さんの従魔、もとい神月さんを含めて手加減を間違えれば簡単にあの世に送ることが出来る。ってことを、この人は自覚しているのかなと思う。
そして、俺達と神月さん、大臣達は大きな倉庫に案内される。そこにいああは30人位の自衛隊員達がいた。そして、どいつもこいつも自分が強いと信じて疑っていない顔をしている。俺は改めて心の中で黙祷する。それから、試合のルールについて話をしているが、このとき程、こんなに馬鹿な奴等がいるとは夢にも思わなかった。何しろ提案してきたのは、まず、自衛隊員達の勝利条件である。それは、神月さんの従魔の戦闘不能、もしくは死。そして、ここからが面白い。自衛隊員全員から負けの宣言を1人でもしないこと。つまり、神月さんの勝利条件は全員が負けを認める事である。俺は、いや、俺達は馬鹿な判断をしたと思う。恐らくと言うより確実に神月さんの従魔が圧勝する。普通の試合なら戦闘不能になれば、それで終わりのはずだが、今回は条件がある。それは、全員が負けを認めると言うことである。気絶していれば楽になれるものを勝利条件のために叩き起こされて敗北宣言をさせられる。しかも、どう考えても精神的にダメージはあるのだも思う。本当に、御愁傷様と言いたい。
それから、神月さんが出してきた従魔は、キジ三毛の猫である。この猫は、特に神月さんに甘えているイメージが強い。キジ三毛の猫を見た瞬間、俺達以外は、キョトンしていた。そして、その後の空気はふざけてるのかコイツはって空気になった。それもそのはず、ただの猫が出てきたらそう言う感覚になるだろう。だが、俺達は知っている。ダンジョン内でどれだけ暴れまわっていたのかを。どんだけ理不尽な強さを持っているのかを。だが、ここにいる面々は知らない。情報を知らないと言うことは恐ろしいことである。
それから直ぐに試合は開始なった。結果は、火を見るよりも明らかである。つまり、一瞬にして自衛隊員は吹き飛んで行った。しかも、全員が気絶している。思った通りの展開である。ここからは、阿鼻叫喚の連続であるが、それは放っておこう。それよりも重要なのが、もし、これが俺達だったらと言うことだ。もし、俺達が同じような事になれば神月さんの従魔ではなく神月さんやグラムさん達が直接俺達の所に乗り込んで来ることを考えたら、どんな悲惨なことになるのか背筋が凍る思いである。
その後、やっと解放された俺達は3人で絶対に道を踏み外さないように頑張ろうとお互いに言い聞かせたのである。