125.天上院玄羅
儂の名は天上院玄羅。元天上院グループの会長で今では息子に地位を譲り、グループの顧問という立場にいる。だが、最近は暇で暇で仕方がない。仕事は当の昔に息子に任せてあるので儂は一切の口出しをしていない。たまに相談とういか雑談する程度である。そして、儂の趣味はと言えば武道、主に剣道というか剣術が主である。だが、最近では誰も相手をしてくれない。いやっ、相手をしてくれる者はいるのだがやはり、儂の地位や年齢を考えて本気で倒しに来る者はいない。そんな退屈な中に世界中にダンジョンが出現したと話題なった。儂は、そんなもの眉唾だと思っていたが、孫娘の朔夜があろうことか探索者と言うものになりたいと言い出したのである。勿論、家族皆で説得はしていたが、当の本人はヤル気満々であるため、儂は朔夜の援護に回ることにした。それにより、朔夜が探索者となることは認められた。そこで、儂もついでに朔夜と一緒に探索者試験を受けてみることにした。これは、本当にただの気まぐれである。
そんなこんなで、探索者の試験を受けたが、あんなもの100人いれば98人は合格するであろう簡単な試験であり、儂は、拍子抜けした。勿論、朔夜も儂も合格しておった。だが、儂の熱意はダンジョンには向かなかった。
そして、朔夜と朔夜の友達の遙がダンジョンの行った日に事件は起こった。ダンジョンに入る際、誘われたグループに強姦されそうになったそうだ。儂の大切な孫娘をっと思っていたが、どうやら未遂で終わったと聞かされた。未遂であるろうとも許すまじである。そんなことを思っていると、朔夜から妙な男の話を聞いた。何でも、ソイツは白い犬を連れている変わった探索者のようである。だが、目茶苦茶強いとのことだ。是非とも会ってみたいので朔夜に連れてくるように言う。朔夜も元々そのつもりだったらしく1つ返事で了承してくれた。
次の日、ついに儂は、運命の出会いをすることになる。儂は、演技で怒った振りをして室内に突入し、勝負を挑む。すると、その男はすんなりと了承してくれた。そして、全員で道場に移動する。まずは、腕試しのために、ボディーガードの連中で様子を見ようとした時、道場に白い塊が乱入してくる。
「あっ、あれは何だ?」
儂は、小さく独り言を言う。見た目は確かに犬だが、迫力が違う。ライオンいやそれ以上の獣と相対しているような感覚まるでに包まれる。これ程の者をペットして飼っているこやつの実力は相当なもののはず。儂は、心から興奮したそれと同時に恐怖した。だが、それは、まだ自分が強くなれると言う確信でもあったので、嬉しさがあった。結果としては、あっさりと負けてしまった。だが、儂には希望が見えた。それは、朔夜達と一緒に神月に鍛えてもらうと言うことだ。
初め、儂は、朔夜や遙にすら敵わないと思ってしまった。こんなことなら早くからダンジョンに行けば良かったと後悔してもしたりない。総理を脅してでも入るべきだった。それは、後の祭りだが、ダンジョンがここまで血湧き胸踊る場所であるとは思わなかった。それに、神月が2人に与えた武器だ。あんなものが存在するとは夢にも思わなかった。欲しく無いとは言わないが、儂が得意なのはあくまでも刀だ。そう思っていると、神月が、儂用の刀を用意してくれたではないか。性能は朔夜達の武器に遠く及ばないが、それでも見事な業物であることには違いがなかった。使うのが惜しいくらいである。だが、折角用意してもらったのだから使わないわけにはいかない。そして、使った感想は圧巻だった。刀は軽く、斬った感覚すら無いとは……。儂はこの刀を生涯の相棒とすることを心に誓う。
それからは楽しかった。途中、朔夜と遙は学校のため東京に戻ってしまった。今のうちに2人との差を埋めようと考えていたが、ある事件が起きてしまった。それは、東京駅ダンジョンのスタンピードだ。神月に聞いたときもスタンピードの意味が今一良く理解できなかったが、神月が慌てている以上、緊急事態なのだと言うことはわかる。しかも、その騒動に孫娘の朔夜も巻き込まれているらしく一刻の猶予もない状態であるという。最速で東京に行くために儂を頼るとは賢い選択であると思う。儂は、最速で東京に行ける手段を用意し、東京へと神月と共に行く。何故、儂も行くかと言うと、そこに面白い物がある予感がしてならないからである。
そして、東京に辿り着いたが、避難してきた人や野次馬、通りすがりの人、警察や消防、自衛隊等様々な人でごった返しており、とてもヘリコプターを着陸させることなんて無理である。そう悟った神月は、ヘリコプターの高度を出来るだけ下げさせ、そこから飛び降りてしまった。儂も一瞬目が点になったが、レベルが上がれば、そう言うことも出きるのだろうと思い、儂も飛び降りる。はじめはドキドキしていたが、着地を決めるとどうと言うことはなかった。東京駅に入ると、神月はホッとしたような顔をする。それを見て、朔夜達は無事なのだと理解した。ここは一気に行くのかと思いきや、神月の隣にいた白い犬、哮天犬が駆け出していった。どうやら、この広い東京駅の中から朔夜達の匂いを掻き分け、一目散に走って行ったようである。これで、朔夜達の安全は保証されたようなものである。
そして、儂が着いた頃、黒いゴブリンと戦っていた。どうやら、このゴブリンは多少強いようである。儂も、参戦しようとするが、止められてしまい、朔夜に援護されながら戦う羽目になってしまった。だが、それでも、中々の強者であった。そんな強敵を神月やその従魔はなんでもないように倒していく。この差が異様に悔しい。それだけならいざ知らず、遙も意外と楽々と仕留めている。どうやらこの黒いゴブリンは経験値を他よりも多く持っているのでレベルアップしやすいのだそうだ。
そうそう、その後に出てきたボスも難なく倒していたのは嫉妬しかなかったな。
そして、儂もずっと神月に頼りきりも良くないと思いダンジョンに行こうとするが、身辺警護の者達からは止めてくれと言われる始末である。そこで、妙案を思い付く。要は、身辺警護の者達をダンジョンで強くすれば問題はないのではないかと。勿論、強制するつもりは毛頭ない。希望者は全員で、神月とダンジョンに行かない日、身辺警護の者共を鍛えている。勿論、内緒でダンジョンにも行っている。
5月のゴールデンウィークに入ったある夜。家の電話が鳴り響く。仕方なしに出てみると、どうやらまたスタンピードとやらが起きたらしい。その情報を儂に伝えるとは神月の奴はやっぱり理解している。もし、儂にこの事を伝えなかったら、後で大文句を言っていたであろう。それと、どうやらこちらにあるダンジョン支部の支部長と副支部長わ連れてきてくれと妙な依頼をされた。だが、そんなことは些細なこと。直ぐに支部に連絡を取り、ヘリコプターを用意したのち、支部にて支部長と副支部長を拾い現場に急行する。
現状は悲惨なものではあったが、モンスターの姿は一向に見当たらない。そして、気配もほとんどないのである。恐らく神月が何かしたのではないかと考える。だが、油断は大敵である。ヘリコプターのパイロットには、儂達を下ろした後は直ぐに帰るように指示を出している。そして、儂等も現場であるダンジョン支部に直行する。ダンジョン支部に着いた時、まだ戦闘は終わっていなかったのを見てホッと胸を撫で下ろす。そして、儂も参戦するが、直ぐに打ち止めとなってしまう。ムカつく限りである。折角、ここまで来てこれでは完全に消化不良だ。だが、前回と同じならここから新たなモンスターが現れるはずた。儂は、闘志を押さえられずにいると、神月が突然休憩だと言い始めた。この勢いで殲滅すべきだと思ったが、「休める時に休めと!」っと言う。確かに一理ある。だが、儂は焦っていた。何故なら、追い付いたと思っていた朔夜や遙にまた差をつけられてしまったからだ。やはりここからは名誉挽回ではないが、強者でいたいと言う気持ちがある。休憩後も儂は参戦する。オークは厄介だが、スピードがないのでむしろ格好の的である。儂はミスリルの刀に火魔法を流し、斬れ味を上昇させて斬りかかる。確かに敵は強いが儂が心の底から熱くなれるような相手ではない。そして、オーク共の殲滅が終わると何時ものように神月達が誰が最後のボスモンスターを倒すのか決めるようであるが、今回は神月が辞退した。理由は、スーツ姿なためこれ以上動きたくないんだそうだ。何だその理由はと思うが儂にも一筋の光りが見えてきたように思える。儂が神月の代わりにクジに参加すると言ったら、反対されると思ったが、朔夜と遙以外反対はしなかった。ここで、儂は見事に当たりを引き当てた。この時こそ喜びはなかった。
そして、いざ、ボスモンスターであるブラックオークキングと相対すると、まさに強者といった風格である。たが、それが良い。それに、こらから、自分が望んだ生死がわからないっと言うか、格上に挑む事が出きるのだからと思うと、全身が奮える。これが、俗にいう武者震いと言うやつなのだろう。
そして、儂とブラックオークキングの戦いは始まった。相手の攻撃力からして儂は一撃でももらえば戦闘不能に陥ってしまうだろう。儂は、敵の攻撃を見ながらとりあえず一撃をいれてみる。すると、殆んどダメージは入っておらず、少し刃零れがみられる。儂としたことが、嬉しさのあまり短絡的な攻撃をしてしまったと後悔する。だが、そんなことは言ってられない。動きながらの攻撃だと軽すぎて相手にダメージを与えることすら出来ない。ならばやることは1つだ。それは、足を止め奴の攻撃を最小限で躱しつつ、渾身の一撃を与え続けなければ勝ち目はない。そして、戦いの末、儂の刀が真っ二つになってしまう。ここで、終わりかと思っていると、どうやら神月に救われたようである。だが、同時に怒りが込み上げてくる。神月は儂とブラックオークキングの決闘に水を差したのである。だが、その自覚は十分にあるようであるが、朔夜の顔を見たらそうも言ってられないと思ってしまう。どうやら神月は自分の持つ刀の雷神の刀を使えと言っている。だが、その刀は刀が認めた主しか使用出来ないはずであるが、今回は神月がゴリ押しをして何とか使用出来るようにしたようである。本当に不本意だが、ここは孫娘の為に生きて帰らねばならぬ所である。どんな手段を使っても。儂は、神月から刀を受けとる。頭の中に声が聞こえてくる。どうやらこの声が雷神なのであろう。雷神は1分で決着を着けるといったがそんなことは不可能だと思っていた。だがいざ、使用してみると途轍もない力が儂の中を駆け巡る。そして、儂の体ではないくらいの力が漲る。後は一方的な展開だった。
儂は、ある意味でブラックオークキングと殺れて満足していた。だが、まだ更に上の世界があることを知った。こんなところでは終われないと思ってしまった。
だが、1つだけ後悔がある。それは、一生を共にすると誓った愛刀が折れてしまったことだ。だが、こればかりは仕方のないこと。形あるものはいずれ崩れる。儂が意気消沈していると、神月が、ドロップ品はどうするのかと聞いてくる。儂の目的は戦いであって、その後に残ったもの等興味がない。だが、どうやらとんでもないものが出てきたらしいが興味がないので聞いていない。すると、神月が、1本の刀を渡してくる。その刀はどうやら倶利伽羅と言う刀らしい。どうやらとんでもない刀を儂に渡そうとしている。だが、全員が当然の報酬だと言わんばかりの目で見てくるので仕方なく報酬をもらう。儂としては、願ったり叶ったりである。丁度、武器をなくし意気消沈していたところに、儂の魔法にあった刀、しかも破壊は不可能だと言うではないか。しかも、儂はまだ、この刀の炎神に認められてはいないが、使用の許可を得ることが出来た。儂はもっと強くなってこの刀に相応しい所有者になって見せることを心に誓う。