122.玉兎のパーティー
さて、俺達は今、爺さんの家に到着したところである。
「おいっ、玉兎。ちょっと遠すぎやしないか?こんな場所に会いたい人なんて居るのか?」
「まぁね。」
現在、夜の9時を回って10時になろうかと言う時間である。漸く、爺さんの家にたどり着いた所である。玄関を潜ると、爺さんと婆ちゃんが出迎えてくれた。
「あらあら、玉兎だけじゃなくてお友達も一緒なの?」
「婆ちゃん。ごめん。言ってなかった!」
「まぁ、それは、良いわよ。部屋なんて何部屋も空いてるんだから。」
「ありがと!」
俺は婆ちゃんに礼を言う。進とあかりの2人はボーッとしている。
「おいっ、どうした?大丈夫か?」
俺は2人の目の前で意識があるか手を振って確認をする。すると、2人とも「「ハッ!」」となって意識を取り戻した。
「ちょっと玉兎!あの人誰よ?」
「えっ~と、婆ちゃんかな?」
「お婆さん?そんなわけないじゃない!あんなに肌がピチピチなお婆さんがいるわけないじゃない!」
っと、興奮気味に食い付いついてくる。
「あらあら、冗談じゃないのよ。私は正真正銘玉兎の祖母ですよ!」
飛鳥が頬を擦りながら話す。
「本当ですか?」
「本当よ!」
「それじゃあ、一体どんなケアをしてるんですか?それとも高級な化粧品でも使ってるんですか?」
「そんなことはないわよ。だって、今では殆んど化粧はしてないのよ。やっているのは洗顔と化粧水位しかしてないのよ。」
「玉兎のお婆さんは、超美魔女なんですね!」
「あら、そんなことないのよ。実は1つだけ秘密があるの。」
「それは、女としては是非に聞いときたです。」
あかりと飛鳥の2人が肌の事で盛り上がっているのを放っておいて、俺と進は家の奥に進んでいく。
「それで、玉兎。急にどうしてここに来ようと思ったんだ?しかも、友達を連れて!」
玄羅が玉兎に質問する。なので、俺は玄羅に探索者試験合格通知証を開いて見せる。
「この通り探索者になることが出来た。だから、神月さんに約束を果たしてもらいに来た。」
「そう言うことか。それで、幼馴染み2人と一緒に鍛えて貰うつもりか?」
「ああ、成り行きだけど俺が探索者になると言ったら2人が心配だからと付き合ってくれたんだ。それに、1人でダンジョンに行くのもどうかと思っていたしな。」
「そうか。」
「それで、神月さんに会いたいんだけど、どこに行けば会えるんだ、爺さん?」
「んっ?そう言えば、奴の家は知らなかったな。」
「じゃあ、ダンジョンに行けば会えるのか?」
「いや、明日は休みだと言っておったからダンジョンには来ないはずだ。」
「そんな………折角ここまで来て会えないなんて。」
「そんなに落ち込むな。今から聞いてみてやるから。」
「んっ?どういう事?」
「家は知らんと言ったが携帯の番号くらいは知っておる。今聞いてやるから少し待ってろ。」
そう言うと玄羅はスマホを取り出し電話をかける。
玄羅が電話をかけて来る直前、俺はベッドの上でゴロゴロしながらテレビを見ていた。すると、スマホの鳴動する。
「もしもし。爺さんか?どうしたんだ?」
『すまないなこんな時間に!』
「いやっ、まだ、寝るに早い時間だったから問題はないぞ。それで、用件は?」
『実はな、さっき玉兎がこっちに来た。』
「へぇ~、玉兎さんがね。」
『そうだ。それで、玉兎の方から話があるそうなんだ。じゃあ、玉兎に代わるぞ。』
「わかった。」
そして、玄羅は玉兎に電話を代わる。
『もしもし、神月さんお久しぶりです。』
「玉兎さん、お久しぶりです。それで、何でまたこの時期にこっちに来たんだ?」
『それは、勿論探索者になることが出来たからです。』
俺はその言葉を聞いて思い出す。
「そうか。じゃあ、明日の夕方に家に来てくれるかな?」
『朝でも昼でもなく夕方ですか?』
「うん!そうだね。」
『分かりました。それで、1つお願いしたいことがあるんですけどいいですか?』
「何でもいいよ!」
『実は、俺が探索者になることを幼馴染みが聞いて、パーティー組めないとやっていけないだろうと一緒に探索者になってくれたんです。それで、その2人ともこっちに来てるんですが一緒に鍛えて貰うことって可能ですか?』
「う~ん。まず、その2人って口は固いかな?」
『多分、大丈夫だと思います。俺が徹底させます。』
「了解。なら問題ないよ。じゃあ、明日の夕方にその2人も一緒に連れてきてよ。あと、持ってきた荷物は可能な限り全部持って来てね。」
『分かりました。あと、何か必要なものはありますか?』
「特にないですね。ただ、1つだけ宿題です。」
『何ですか?』
「自分がどう言った武器を使ってどういう風な戦い方をしたいのか各々考えておいて欲しいんですよ。」
『分かりました。2人には伝えておきます。』
「じゃあ、明日の夕方待ってます。住所の方は後で爺さんのスマホに送っておくからよろしく言っといて。」
『分かりました。では明日。』
「は~い!」
そして、俺は電話を切る。明日の夕方に来るように言ったので日中は夕方のためにご馳走を用意しようと思う。
俺は神月さんとの電話を切る。すると、爺さんが、
「どうだった?」
「大丈夫だった!幼馴染み2人も連れて来いって言われた。」
「なんだ!よかったじゃないか!」
「それで、行くのは明日の夕方に来てくれってことだ。住所は爺さんのスマホに送ってくれるそうだ。」
「わかった。おっ、送られてきたな。明日のことは藤川に伝えておく。それで、夕方との事だが、時間の指定はあったのか?」
藤川とは執事さんの事である。
「なかった。」
「では、普通に適当に行ってやれ!」
「わかった。」
「玉兎。さっきから言ってる神月って言う人が玉兎が会いたい人なのか?」
「そうだね。」
「どういう人なんだ?」
「どういうって、会えば分かるよ。明日のお楽しみだ。」
「ケチだな。」
とりあえず遅い夕食を食べてそれぞれ就寝につく。あかりと婆ちゃんは美肌効果の話で大盛り上がりであった。
翌日は、各々好きに過ごし、午後4時になると俺達は車に乗り込み神月さんの家に向かう。
車に揺られら事、数十分。東京と比べると空がとても広い。高いビルは全くなく緑というか山が多い。それに、海まである。そして、車が止まる。運転手が、
「着きました。」
俺達は、その言葉を聞いて自分達から外に出る。普通なら運転手がドアを開けてくれるのだが、今回は待ちきれないので自分から開ける。そして、トランクに入れていた俺達の荷物を運転手が取り出してくれて、それを受け取る。
「それで、どの家なんだ?」
「そうですね。あそこのはずです。」
運転手が指を指す。そこは、そんなに大きくない普通の2階建ての家である。
「わかった。ありがとう。じゃあ、また帰りの時は連絡を入れてください。直ぐに参ります。」
「分かりました。多分、今日は大丈夫なので、その時はよろしくお願いします。」
「かしこまりました。」
一礼すると運転手は運転席に戻り戻っていく。俺達は運転手に言われた家に向かって歩き出す。家には、神月の表札が掛かっているので間違いはないだろうが、インターフォンはないので玄関を開け、
「お邪魔しま~す。」
俺が声をかけると、家の中から神月さんが出てくる。
「いらっしゃい。どうぞあがって。」
「神月さん。実は、今日は友人も一緒に連れてきたんですがいいですか?」
「いいですよ。お友達の方も一緒にどうぞ。」
神月さんは、俺達をを居間に通す。そして、各々自己紹介をする。その後、夕食の準備をすると言うので暫く自由に過ごす。そして、夕食を振る舞われる。夕食は今まで食べたことがないような物で、神月さんに話をしようと思ったが、あまりにも美味しすぎて話をするのを忘れてしまった。そして、食後お茶を出して貰い漸く落ち着く。そして、神月さんは、
「どうでした?口に合いましたか?」
「なっ、何だったんですか?さっきの料理は?もしかして、あれが噂のダンジョン産の食べ物ですか?」
「そうだけど、知っているのか?」
「いえっ、知っていると言うよりも昨日教えて貰いました。」
神月さんの質問にあかりが答える。
「そうか。もしかして飛鳥さんにでも教えて貰ったんだろう?」
「あっ、正解です。これで、明日には私の肌もピチピチになりますか?」
「なると思うぞ!」
神月さんの言葉にあかりがガッツポーズを決める。
「ところで、2人は付き合ってるんですか?」
「そうです。何か問題でも?」
「いやっ、聞いてみただけですよ。それで、玉兎さん。2人は口は固いですか?」
「俺達は絶対に他人の秘密は守りますよ。なぁ、あかり。」
「勿論!」
進とあかりが答える。
「そうですか。分かりました。じゃあ、俺の部屋に行ってから話の続きをしましょうか?」
「「「分かりました。」」」
俺は席を立ち2階にある自分の部屋に案内をする。俺の部屋は本当に狭いが俺がベッドの上に座り、3人が床に座って貰う。勿論、座布団を用意してある。この時点でこの部屋に居るのは俺達だけである。
「さて、2人はここに連れてこられた理由を聞いてる?」
神月さんが進とあかりに質問をする。
「いえっ、全く聞いてないです。失礼な言い方をして申し訳ないんですが、何故こんなところまで連れてこられたのか理由がわからない状態です。」
「私も!」
「そうか。それで、もしかして、2人もいいところの出だったりするの?」
神月さんの質問に俺が答える。
「進の方は藤堂建設の息子。そして、あかりは、新妻ホールディングスの娘です。」
「…………凄いね。俺でも聞いたことのある企業で、日本でもトップクラスの会社じゃん。やっぱり凄いな。」
神月さんが感心している。
「まぁ、いいや。それで、本題に戻るけど、これから3人には強くなって貰うからよろしくね。それと、これからのことは一切を秘密にして貰います。いいですね?」
「「「分かりました。」」」
俺達は、秘密にすることを約束する。
「あと、幾つか守ってもらうことがあるけど、1番大事なのは初心を忘れず傲慢にならないこと。あとは、他者に対して力を使用しないこと。だけど、自分や他者が危険なときはそれには当たらない。取り敢えずこれが守れるかな?」
「「「守れます。」」」
そして、守れなかった時の事は俺が後から説明するように言われる。
「了解だ。さて、まず、昨日出した宿題を発表して貰おうかと思うんですが、誰からいきます。」
「はいっ!」
まず、真っ先なって手を上げたのはあかりである。
「どうぞ!」
「私は、考えた結果、接近戦がしたいです。」
「あかり、お前っ!」
進が口を出そうとするがそれを制止する。
「その理由を聞いても?」
「勿論。初めは遠距離の魔法使いとか遠距離の武器を使えばいいなと思ったんですけど、そじゃあ退屈なんですよ。遠距離からの攻撃は私の趣味じゃない。中距離の武器も考えたんですけど、それもしっくり来なくて、それで、近距離にしようと思ったらしっくり来たんですよ。」
「成る程。それで、どんな武器を使ってみたいとかあるんですか?」
「そうですね。笑わないですか?」
「あかりさんが考えたことでしょ?笑わないよ!」
「分かりました。あと、私の事はあかりでいいですよはるほ。」
「了解です。」
「それで、どんな武器か?でしたね。武器は双剣がいいなと。」
「その理由は?」
「まず、思いので、盾を持つのは嫌です。それに、両手で握る武器も私にはちょっと荷が重い。そうなると片手で握れる武器になりますが、1本だと片手が寂しいです。そうなると双剣だと思いました。」
「そうか。多分、あかりが思っている以上に扱いは難しいと思うけど。」
「それは、何とかするっす。」
「わかった。じゃあ次は誰ですか?」
「じゃあ、次は俺ですね。」
「玉兎さんですね。それで、玉兎さんのスタイルは?」
「俺は中距離の戦闘をしたいと思います。爺さんみたいに刀を振るうよりもどちらかと言うと槍とかの方がしっくり来るんですよ。」
「了解です。丁度言い感じの武器があるんですが、どうします?中距離戦闘に向いてるけど、槍ではないんですけどどうですか?」
「是非、神月さんの言った武器でお願いします。」
「分かりました。だけど、その武器は直ぐに渡す訳じゃないですからね。」
「それで、一体どんな武器なんですか?」
「棍と言えば分かりますか?」
「簡単に言うと長い棒みたいな物ですよね。」
「そんな感じに取ってもらって構わないですよ。」
すると、ここで、進が口を出してくる。
「ちょっと待った。」
「「んっ?」」
「何で棒なんだよ?そんなんじゃモンスターなんて倒せないだろう?」
「そんなことはないと思うよ。それに、刃物と違って研ぐ必要性はないし、パーティーを組むんだから別に1人で倒す訳じゃないよ。まぁ、1人で倒せたらその方がいいけど、棒術でも充分に殺傷能力はあると思うよ。」
「そんなものか?」
「まぁ、それは、やっていくうちに変えたら言いと思うよ。」
「その前に神月さん。1ついいですか?」
「何ですか玉兎さん?」
「前から思ってたんですけど俺に「さん」をつけるのやめてもらっていいですか?」
「了解。じゃあ、玉兎でよろしく。」
「はい。あと、進にもっと言うか俺達には必要ないです。」
「了解。じゃあ、次は進だね。」
神月さんが最後の進に質問するのである。