119.同窓会11
「その前に1つ聞きたいことがある。」
「何だ?杉原。」
質問してきたのは東京都庁に勤めている所謂エリートと言われるものになっている奴だ。
「まず、東京に今現在住んでいるものにも与えられるのか?」
「勿論。何処に住んでても条件は同じにするつもりだ。」
「そうか。では、次の質問だ。もし、探索者をせず、1億円を持ち逃げした場合はどうするんだ?」
「んっ?別にどうでもいいぞ。基本的に幼馴染みって事で基本は信用はしているからな。まぁ、持ち逃げされても別に何かをするわけでもない。ただ、「あいつが持ち逃げした。」「信用できないな!」って酒の肴にするくらいだな。そんな程度だ。」
「お前な。人を信じ過ぎるのもどうかと思うぞ。」
「いいんだよ。裏切るよりも信じる裏切られる馬鹿で!」
「まっ、まぁ、、サイガがいいなら文句はないがな。」
「おうっ!……あっ、そうだ。俺の提案を受ける代わりに幾つかの条件を付けさせて貰うぞ。」
「「「「「「条件???」」」」」」
「はっ、まさか私達の体が目的じゃあ?」
っと、素頓狂な事を言っている奴も居た。
「それなら、風俗で働くってのを止めないで店に行くわ。誰が1億なんて出してからそんなこと求めるんだ?」
「「「「「確かに!」」」」」
っと、俺の言った条件を殆どの人間が勘違いをしていた。
「お前らな~!俺をなんだと思ってるんだか。………まぁ、いい。条件と言ってもそんなに難しいことじゃない。探索者の資格を取得した後、全員をある程度まで強くする予定だ。その時の事は、秘密で頼む。要は、俺に関することは他言無用でって事だな。あと、ダンジョン内では俺達の言うことを聞くこと。以上だ!」
「それだけか?」
「それだけだ。」
「もし、誰かがそれを破ったらどうなる?」
「そうだな。今後一切お前らの面倒は見ない。」
同級生全員が首をかしげる。すると、遙が
「それはきついっすね!ねぇ、朔夜。」
「そうですね。でも、余程口が軽くない限り大丈夫とは思いますけどね。」
「君達にはサイガの言っている意味が分かるのか?」
杉原は、遙と朔夜に問いかける。
「簡単なことっす。まず、第1にここまで強くしてくれたのは師匠っす。」
「そこはわかった。だが、そこまでの強さがあるならサイガから離れても問題はないんじゃないか?」
「これだから師匠を知らない人はダメっす!」
「ダメって!」
「まずですね。強さに関してですが、師匠達の方が圧倒的に強いです。モンスターの討伐数をみても私達よりも明らかに多くを倒してます。それに、私達は結構本気で相手をしてましたけど、師匠達はそこまで全力と言うわけじゃないですよ。」
「そうっす!」
それを聞いた杉原を始めとした同級生が、俺の方を向く。
「そうだな。場所もそこまで広くないし、屋内だからな。建物の耐久性なんかを考えればあそこで出せる全力なんてのはあんなものじゃないのかな。」
「っと言うことは、全力だとどうなるんだ?」
「さぁな?全力なんてあんまり出したことないし、常にレベルも上昇してるからな。例えば、あの時本気で放った攻撃も、今になれば簡単に出せちゃったりするから参考にはならないしな。」
俺の言葉を聞くと全員が固まる。
「それにっす。師匠には、こいつを貰った恩があるっす。それに、今さら返せって言われても無理っす!」
遙は小さくしていたトライデントを普通サイズにして見せる。
「確かに、私も無弓にはお世話になってますし。」
「そうだの。儂も愛刀を神月に作って貰ったが、残念ながら折れてしまった。だが、今度はそれ以上の刀を手に入れることが出来たからな。」
「それ以外にも色々あるっすけど、ここでは言わないっす!実感してみれば分かるっす!」
皆、真剣に朔夜や遙、玄羅の話を聞いている。
「1つだけ言ったおく。この提案は神月のためと言うよりもお前達のためだと思った方がいいぞ。」
この発言に、俺もそして同級生達も頭を傾げる。
「なんじゃ。誰も理解しとらんのか?」
玄羅が呆れたように言うので、暫く考えて、ある答えに行き着く。
「じいさんは、もしかして他国の事を言っているのか?」
「なんじゃ、分かっとるではないか。」
「他国がどうしたんだ?」
杉原が聞いてくる。他の面々も分かってないようである。
「儂が説明しよう。まず、ダンジョンに入りモンスターを倒すことにより、レベルが上昇する。レベルが上がれば肉体はより強靭なものになっていく。更に、様々なスキルがあることがわかり、しかも、スキルはスキルの書を使えば簡単に取得することができる。他に、最初から持っているスキルもある。例えば、儂なんかで言うと剣術のスキルが最初から存在した。恐らく、剣道をやっていたからではないかと思う。
少し話が脱線したが、スキルの中でも特筆すべきは
、成長すると言うことだ。スキルや自身のレベルを上げるとより強いスキルを使えるようなる。これらを知った国がやることは当然自国の戦力として組み込もうとするだろう。」
「それが、神月とどう言うか関係があるんですか?」
「ここまで言って分からんのか?まぁいい。まず、この国は他国からしたらスパイの天国と言われている。そんな中で、今回のスタンピード2連発だ。しかも1回目は世界初と来ている。その後、世界でも何件かスタンピードを確認しているが、解決するまでに相当数の死者が出ているらしいぞ。そんな中で日本はどうだ?1回目も2回目も被害は出たが世界程の被害は出ていない。恐らく、何故日本だけが被害を抑えてスタンピードを乗りきったか各国は調査をするだろう。その中で、神月の存在が出てくる。その情報を得ようとするだろう。だが、恐らくは、噂だけで確証を得ることは難しいだろうな。だが、同級生が、これから探索者となり、神月の世話になった時、神月の秘密を知るだろう。その時に、その事を不用意に広めれば神月は大丈夫だろうが、情報源となった者は付け狙われるだろうな。それに、同級生達は、神月のせいで急激に強くなるだろう。そうなると、その秘密を知ろうと善からぬ輩が出てくるだろうな。下手をすると拉致される可能性もある。あとは、例えば、近親者、つまり両親や配偶者、子供など人質をとられる可能性がある。この事を踏まえて神月の提案を受けるんだな。」
「でも、それは俺達が他者に話さなくても神月を調べていたら、俺達を強くしていることが分かるんじゃないのか?」
「それは分かるだろうな。」
「じゃあ、意味がないじゃないか!」
「いやっ、ある。スパイ連中も調べる事にある程度時間が必要のはずだ。その時間を利用して強くなれば問題はない。」
「でも、そんなに急に強くなることなんて出来るのか?」
「それは、神月がどんなカリキュラムを組むかによるんじゃないか?」
「俺か?そう言うことならある程度レベルを上げて、技術面は後からってことでいいなかな?」
「まっ、それが妥当じゃな。」
「さて、じいさんの今の話しは可能性の話であって実際に起こるとは限らないが、起こる可能性のあることだ。その事も含めて考えて貰いたい。………………そうだな、時間は今から1時間考える時間を設けるから決めてくれ。」
俺は、みんなに考える時間を提供する。理由は簡単。じいさんの話を聞いて、考える時間が必要かなと思ったから、それに、俺は全員の住所、連絡先を知っているわけではない事。そして、最大の理由としては、この場で結論を出して欲しいからである。俺の提案を受け入れてくれる人に対して1億円用意するためである。直接手渡すことにより税金をとられない対策である。
1時間の間、同級生達の話し合いが続く。初めは全員で、その後は仲の良かったもの同士、今現在も親交があるもの同士などに別れて話していた。そして、1時間後、皆の返答を聞くことになる。
「それで、1時間経過したけど返答を聞かせてもらってもいいか?」
現在、ここには42人の同級生がいる。女子とは特に確執もなく良好な関係を築けると思っている。それは、同級生の女子達には悪い印象を持っていないからである。ここで幾つか言っておくが、まず、別にハーレムを作りたいわけではない。こう言うとゲイなのかと勘違いされるが、基本的には女が好きである。ただ、性を通り越しての友人みたいな感じである。ここだけの話、数名はいいなと思う女子はいるけど、手を出そうと考えてはいない。逆に、男友達は3つのグループに別けられる。まず、陽キャと呼ばれる連中である。今で言うスクールカースト上位陣であり、俺はあまり入りたくはないグループである。変に喧嘩を吹っ掛けたり、不良の先輩と仲良くしていたりと面倒なのが玉に瑕である。そして、もう1つが陽キャ以外のメンバーである。このグループは、オタクの奴もいれば、成績が上位の奴もいる。そして、最後のグループというか個人で俺。まぁ、どちらかと言えば後者のグループにちかいのだが、何かの班やグループを決めるときに人数の制限がある時は大体俺が溢れてしまい、どちらかのグループに入るといった感じである。後者のグループに関しては何の悪感情を抱いていないが、前者のグループは違う。全員ではなく、数人だが嫌いな連中はいる。嫌いな理由だが、中学生時代に不良の先輩から何度か絡まれたことがある。勿論俺は何も悪くはなく、ただの悪巫山戯である。そんな不良の先輩に関わる奴が嫌いなのである。
結果としては、同窓会に参加していた女子28人中28人。男子の方は、14人で俺を除くから13人中6人であった。これには少し予想外でったが、理由を聞くと納得するところがあった。その理由としては、最近、家を建てたばかりであること。勤めている会社が一流の企業または公務員であること。等である。勿論、女子の中にもそう言った人は居たのであるが、美肌効果には叶わなかったようで、「いざとなったら旦那と別れてでも東京に行くわ。」っと言う猛者まで現れるくらいである。ちょっとサービスしすぎたかなと反省はしている。あっ、そうそう、参加者の中に白川大樹の名前があった。だが、正直言って俺は白川の事が好きではないし、信用に足る人物ではないと思っている。それに、既に探索者として活動しているため、他の人よりもアドバンテージがある事などを理由に辞退して貰った。白川は少し抗議をしてきたが、一緒のパーティーを組んでいる先輩達の事を言うと渋々ではあるが引いてくれた。白川にとっては先輩達は絶対なのであろう。
っと、言うことで、俺の提案に乗った34人にはそれぞれ1億円を手渡す。全員吃驚していた。半信半疑であったようである。そして、各々持ち帰るが、1億円は結構量があり、やはり持ち運ぶには他人に知られたくないだろう。アイテムボックスにしまってある適当な袋を出して持ち帰ってもらう。来月の探索者試験後に会うことを約束して皆帰っていった。俺も勿論帰ろうとしたが、御堂さんに引き留められ2日程滞在することになったが、ダンジョンはスタンピードの前のようになっており、俺も家に帰るのである。