114.同窓会6
さて、俺は今は絶賛昼寝という名の夜寝?をしている。だって、次が来ないんだもの。
「なぁ、神月。本当に次が来るんだろうな?」
と、高森がぼやく。
「多分来るはずなんだけどな。」
俺は少しだけ焦る。皆の視線が痛い。そうそう、俺は、三枝さんと御堂さんが来たので、指揮権を返却しており、今は、御堂さんが支部の膿を出そうと必死である。また、三枝さんは、自衛隊員に指示を飛ばし県内全ての自衛隊基地と、福岡県内にある自衛隊を総動員するように指示を出していた。御手洗さんは御堂さんの助手を、四宮さんは三枝さんの助手をするように指示をされていた。上には逆らえないのが縦社会の嫌なところだな。まぁ、今の俺には関係のないことだな。
すると、段々足音が聞こえてくる。
「ほっ、本当に来た!」
高森が呟く。そして、俺達は、迎え撃つ体勢を整えている。そこで、俺はある提案をする。
「じゃあ、今から誰が一番多く倒せるのか勝負な!」
「ちょっと待つっす!それは私達も入ってるんすか?」
「当たり前じゃん!」
「それはないっす!私達じゃあ師匠達にかなわないっす!」
「そうだの。ちょっと不利だと儂もそう思うぞ。」
遙だけでなく、玄羅も同意する。
「わかった。じゃあ、朔夜、遙、じいさんは倒したモンスター×5でどうだ?」
「×5じゃあ少ないっす。せめて10は欲しいっす!」
「10は欲張りすぎだと思うぞ?じゃあ、6でどうだ?」
「9っす!」
「7!」
「もう一声の8っす!」
「俺も7以上は譲歩できないぞ。」
「遙、7倍でも十分でしょ!私達が頑張ればいいことじゃない!」
遙を朔夜がなだめる。
「わかったっす!じゃあ、7でいいっす!」
「よしっ!決定だ。」
遙は渋々と言った感じであったが、朔夜と頑張ろうと言い合っている。玄羅は少しだけ不服そうな感じではあるが納得はしているようである。
「その代わり、容赦はしないけどな。」
俺とグラム達は今、悪い顔をしていると思う。そんなことを、話しているとモンスターの足音はすぐ近くまで迫っている。
「グラムは、分裂してそれぞれに付いて、ドロップ品の回収を頼むぞ。」
「任せるの!」
グラムは俺の言ったとおりに分裂し、それぞれに配置する。ダンジョンの入り口からはのそのそとモンスターが出てくる。見た感じは、オークだが色は全身真っ黒である。一応鑑定もしておく。
種族 ブラックオーク
レベル 15
HP 2500
MP 1000
スキル 絶倫8 剣術9or槍術9
ブラックゴブリンよりも少しだけ強いのかな。っという感じである。ブラックオークは、1匹が姿を現すと続々とダンジョンから出てくる。
「えーっと、神月さん?大丈夫なんですよね?」
「多分ね!」
俺は、心配している御堂さんに返答する。
「よーし。じゃあ、やるぞ!位置について、よーい、スタート!」
俺の合図と共に、俺は縮地を使い一瞬でブラックオークの目の前に移動する。スノウと哮天犬は、自慢の脚力で姿が見えないような速度で突っ込んでいく。グラムもスライムとは思えないスピードでブラックオークに向かっていく。そして、次にウルが飛び込んでいく。ウルのスピードも速いが俺やスノウ、グラムに比べたら遅い。だが、これを見て不平を言う人物がいた。
「師匠、私達そんなに速く突っ込めないっす!」
「確かに少し、卑怯ではあるな!」
っと、遙と玄羅が文句を言う。俺が、反論しようとするが、朔夜が、
「文句を言ってる暇があるんだったら早く戦いに参加した方がいいですよ。じゃないと、全部持ってかれちゃいますよ。」
朔夜は、弓を放ちながらそう言う。それに、少しだけ不味いと思っている。それは、ブラックオークが思ったよりも強いからである。前のブラックゴブリン達は、朔夜の弓で簡単に倒すことが可能であった。だが、今回のブラックオークはブラックゴブリンよりも体格が大きく、体に当たっただけでは致命傷には至っていない。恐らく、防御力もブラックゴブリンよりも上なのであろう。なので、朔夜は、ブラックオークの頭部を狙っていく。頭部ならほぼ一撃で仕留めることが出来ていた。あとは、人間で言う心臓の部分である。たが、ここに当てる際は、少し多めのMPを使って矢を作る必要があった。だが、それを除くと比較的安全な位置からブラックオークを仕留めることが出来ている。ただし、MPを大量に消費するので、朔夜はマジックポーションを大量に飲むことになる。
次に、遙である。遙の持っているトライデントの貫通力は途轍もなくブラックオークと言えども簡単に串刺しにしてしまう。だが、ブラックオークの耐久力と言うか生命力が強く、トライデントを刺しても絶命せず、逆に突き刺さったトライデントをブラックオークに握られ、攻撃をされそうになったりしていた。だが、遙はその攻撃を上手く回避し何とかブラックオークを倒していた。
さて、玄羅であるが、玄羅は余裕を持って、相手をしていた。恐らく、この中では一番レベルが低いと思われる。ブラックオークの攻撃をいなし、的確に相手の急所を攻めていた。これは、今までの鍛練があってこその技だと言える。ただ、玄羅の持っている武器は俺が作ったミスリルの刀である。朔夜と遙のダンジョン産の武器からしたら一段品質は下がる。たが、ミスリルは魔力を通しやすい。玄羅は、ミスリルの刀に魔力を通すことにより切れ味を向上させていた。まぁ、これは俺も同じ事をやっているのだが。あとは、玄羅のMPがどこまで持つのかと言うことである。事前にポーションやマジックポーションを準備していると言っておいたが、使うか使わないかは自己判断に任せている。俺の予想では、朔夜や遙は間違いなく使うと思われる。玄羅に関しては、回復薬を使用してまで戦いたくないというプライドが邪魔をしなけれ使うであろうと思っている。
そして、俺、グラム、スノウ、ウル、哮天犬に関しては、ブラックゴブリンよりも少しだけ強いかなと言った感じあり、特に問題なく倒せている。
俺達を見ている同級生は、
「おいっ、白川。探索者って全員があんなに強くなれるものなのか?」
「馬鹿言うな!アイツ等が異常なんだよ。あと、武器もな。あんなに武器、売られてるの見たことない。それに、さっきのオークだって、先輩達と一緒にだって精々2、3匹がやっとだ。しかも、オーク1匹に対して先輩達と協力してだ。3匹一片に相手するのは無理だ。もう一度言うが、アイツ達が異常なだけだ。」
「そっ、そうなのか!」
「そりゃそうだ!神月達の持っている武器は特別製だからな。」
「何か知っているのか?」
白川が質問する。質問した相手は、昔、オタクだった奴等である。今のスクールカーストで言う下位の連中である。まぁ、俺達の学生時代はそんな言葉はなかったが…………そんな中の1人である朝比奈連が話し始める。朝比奈連は、イケメン眼鏡であるが、重度のオタクであった。今でこそ親交はないが、とても仲が良かった友人の1人である。
「まず、神月が使っていた鞭だ!」
「ああっ、あれは凄かったな。」
「いやっ、ポテンシャルはあんなものじゃないはずだ。」
「何故、そんなことが連には分かるんだ?」
「1つに神月は確かに上手く使っているように見えたが、鞭に振り回されていたように見えた。次に、神月があの鞭の名前を聞いた瞬間、オタクの血が騒ぎだした。何て名前か覚えているか?」
「確か、『金鞭』と言っていたような気がするが……。」
そう、白川が言うと朝比奈は白川の両肩を掴み、そして、片手で眼鏡のブリッジを人差し指で上げる。
「そうだ。金鞭だ。まさか、実在する世界になるとは思わなかった。こんなことなら、俺も探索者になるべきか……。」
最後の方は自分の世界に入って行ってしまう。なので、白川が、
「おいっ、自分の世界に浸ってないできちんと説明しろっ!」
「あっ、そうだった。すまん。神月の使っていたのは金鞭。これは、ある物語に出てくる武器だ。」
「「「「ある物語。」」」」
「ああっ、中国の昔話だ。三大演技と呼ばれている物語の1つで、知っている奴もいるかもしれないが、その中の1つの封神演義という物語に出てくる宝貝の1つだ。しかも、金鞭は、宝貝の中でもかなりの力を有しているはずだ。それに、あの白い犬だ!」
「んっ?あれは犬型のモンスターじゃないのか?」
「いやっ、恐らく違うと思う。神月の奴、あの犬の事を『哮天犬』って呼んでた。」
「そう言う名前じゃないのか?」
「ああ、その可能性もあるが、まず、哮天犬なんて名前つけるか?100歩譲って哮天までなら分かるがわざわざ犬なんて入れるか?」
「まっ、まぁ言いたいことは分かるが、それは個人の感性の問題じゃないのか?」
「確かにそうなんだが、神月の事はよく知ってるつもりなんだが、そんなことする奴じゃないと思うんだよ。中学卒業してからはあまり会ったことないからその間に感性が変わっている可能性もあるんだがな。」
「それで、もし、あの犬がモンスターじゃなければなんなんだよ?」
「恐らく、文字通り『哮天犬』自立型の犬型って変だな、自立犬型の宝貝だ。」
俺はその話を戦いながら聞いているが、確かに次々に当てていく朝比奈に感心する。そして、朝比奈は続ける。
「そして、あの女の子が使っている三ツ又に別れた槍だ。」
「確かに、あの武器も相当な攻撃力を持っているが、あれも宝貝なのか?」
「いや、あれは宝貝ではないと思う。」
「じゃあ、何なんだよ?」
「こっちの方はかなり有名なんだがな。あれは恐らく、北欧神話に出てくるオリュンポス12神の1柱の海神ポセイドンが持っていたと言われるトライデントだ!」
「そんなまさか?」
「いや、恐らく間違いはないと思うぞ。まず、あの女の子は、水を操っているように見えないか?」
「確かに見えるが、それは、スキルかも知れないだろ?」
「確かにな。だが、さっきあの女の子が『トライデント』と言っていたのを聞いたんだから間違いないと思うぞ。」
「そっ、そうなのか?じゃあ、もう一人の女の子と爺さんが使っている武器も特別なものなのか?」
「さぁな?あの弓は、弦がない状態で射っている時点で普通の武器ではないんじゃないか?刀に関しては専門じゃないんでよくわからん!」
っと、朝比奈は白旗を上げるが、
「刀に関しては僕な任せて貰おうかな?」
立候補してきたのは、安川忠である。そんな、安川に朝比奈が質問する。
「なんだ?安川って刀に詳しかったのか?」
「そうだな。昔、刀の展覧会に行ったことがあるんだが、そこで、刀の美しさに魅了されちゃったんだよね。それから、色々な刀を見てきたんだけど、あんな刀の色は知らないな。それに、切れ味もおかしいんだよ。」
「おかしい?」
「そうだ。刀って言うのは確かに物凄くよく切れる事で有名だ。切れ味に関しては世界一と言っても過言ではないと思う。だけど、そんな刀でも人を切っていると多少なりとも刃こぼれしていくものなんだよ。刀の扱いに慣れてない奴だと、大体、2、3人斬れば刃は、ボロボロなる。上手い奴でも4、5人。達人であれば、多少の刃こぼれが在ったとしても人を斬ることは可能だが、あの爺さんは、既に何匹ものモンスターーを倒している。しかも、刀は全く刃こぼれしていない。そう考えるとあの刀も普通の品じゃ無いことがよくわかる一品だ。芸術性があってしかも使用しても全く問題ない刀なんて……はぁ~、信じられない。」
どうやら、最後、安川は、自分の世界にはいっていってし待ったようである。すると、朝比奈が、
「とりあえず、安川は置いといて、」
「いやっ、連がいえないから。」
朝比奈は無視して話を続ける。
「ふんっ!そっ、そんなことはないぞ!」
「動揺するな。だが、っと言うことは神月もおかしなことをしているな。」
「そうだろうね。見た目はただの刀の形をした木刀だけどスパスパ斬れちゃってるし、なんなら一番攻撃力があるんじゃない?」
「やっぱり、そう見えるよな。」
「見えるね。あれは何なんだろうね?」
俺の武器について話しているが、元々はただの木刀だとは誰も気が付かないのである。




