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113.同窓会5

少し、駄々を捏ねてみたが2人は頑なに俺にこの場をとうにかして欲しいと言う。つまり、2人とも俺と同じ考えだと言うことだ。つまり、面倒臭い、やりたくないだと思う。まぁ、こんなに露骨に出すのは俺だけかもしれないが、御手洗さんと四宮さんは本来ならここに来なくてもいい人達である。ましてや、自分達の職場があるのだから他の人の職場で仕事をするのは嫌だと思う。なので、2人は俺に面倒事を押し付けたいのである。ちょうどダンジョン長官と防衛大臣の連盟で俺を指名しているという大義名分がある。なので、今だけ覚悟を決めてやることにする。もちろん、御手洗さんと四宮さん(この2人)を最大限巻き込んでやろうと思う。


「はぁ~、仕方ないですね。じゃあ、少しだけ引き受けますけど文句は任命した御堂さんと三枝さんに文句を言ってくださいね。」


「わかってます。」


っと、御手洗さんは答える。


「じゃあ、まずはここの支部の職員さんにして貰い事があります。この支部にあるポーション類を今すぐ、全て持ってきてください。」


「「「「……すっ、全て??」」」」


何かこの支部の職員だけでなくいろんな所から疑問符が付いた声が聞こえる。


「全てです!早くしてくださいね。」


っと、言うも支部の職員は誰も動こうとはしない。恐らく、俺の事を疑っているのだと思う。普通に考えたらそう思うのも無理はないと思う。なので、支部の方は俺は、放っておくことにした。


「じゃあ、御手洗さん。支部の方は、よろしくお願いしますね。」


俺がお願いすると御手洗さんは明らかに嫌な顔をする。


「面倒な事を丸投げしますね。」


「今は何よりも時間が必要なんで動いてくれない人員は邪魔でしかないんですよね。」


「それは、確かに!」


「じゃ、よろしくです。…………それで、次に自衛隊の皆さんにお願いしたいことがあるんですけど…………。」


「その前に1つだけ確認したいことがあります。」


「何ですか?」


「貴方の指示に従えば多くの市民を救う事が出来るんですか?」


「自衛隊が取れる選択肢は3つだと考えます。まず1つ目は、このまま何もしない。これは、人々を救いたい貴方達には論外だと思います。次に2つ目の選択肢は、自衛隊が独自で動くと言うこと。自衛隊の上に連絡をとり、方針を決める。最後、3つ目は、俺の指示に従うことです。」


俺は3つの選択肢を提示する。


「いやっ、しかし!」


どうやら迷っているようである。


「即決して貰えると助かります。ただし、俺の指示に従っていただけるなら多くの市民を救う事が出来るのは保証しますよ。」


少し悩むが


「…………わかりました。では、自衛隊(私たち)は神月さんの指示に従います。」


「わかりました。じゃあ、グラム、ちょっと来てくれるか?」


「はーいなの!」


グラムは、戦闘を中断して俺のところに来てくれる。


「グラム、ポーション類ってどのくらい在庫があったっけ?」


グラムは少し考え、


「う~ん!わからないの!」


「…………えっ?数えられないほどあったっけ?」


「なかったの!でも、グラムがスライムボックスに沢山の物が入ること皆知ってるの。だから、皆がグラムに渡してくるの。お陰でわからないくらい沢山のポーションを持ってるの。」


「なっ、成る程!」


「皆、ポーションとかは最小限にして何か色々なドロップ品を溜め込んでるみたいなの。その辺りはグラムもよくわからないの。」


「…………そっ、そうなのか。」


従魔達(アイツら)一体どんなものを溜め込んでいるのか考えるだけでも恐ろしい。これは、触れてはいけないものだと思い忘れることにする。俺は気を取り直して、


「じゃあ、グラム。あるだけポーションを出してくれるか。ハイポーションは、半分くらいでとりあえずいいかな。」


「わかったの!」


グラムは、大量のポーションを出すと再びモンスターを倒しに行く。


「…………そっ、それで、自衛隊(私達は)何をしたらいいですか?」


「そうですね。自衛隊にはこのポーション類を運んで貰います。」


「運ぶですか?」


「そうですね。まず、優先すべきは病院です。負傷者が多数いるでしょうからね。重症の人にはハイポーションを使用してください。軽傷の人はポーションでお願いします。あとは、避難所、それと多分まだ病院に搬送されてない負傷者がいると思うので見つけたら片っ端からポーションを使ってください。」


「わ、わかりました。で、いいんですか?」


「いいんですよ。持ってても仕方ないですから。あと、無くなったら言ってください。まだ、あるみたいなので。」


「わかりました。…………ですが、外にはダンジョンから溢れ出したモンスターがいるんじゃないですか?」


「それなら大丈夫ですよ。家の従魔達が倒しているはずですから。なので、白い犬と大きい虎、あとはスライムには攻撃しないでくださいね。」


「わかりました。」


自衛隊員は、敬礼する。


「それじゃあ、自衛隊の指揮は四宮さんよろしくお願いしますね。」


「私か?」


「お願いします。」


「仕方ない。やってやろう。あっちよりは楽そうでいい。」


四宮さんは引き受けてくれた。あっちとは、御手洗さんの方である。俺は、モンスターを掃討するために戻る。

30分後、モンスターがダンジョンから出てくることはなくなった。


「あっ、終わったっす。」


「遙、おそらくまだですよ。」


「そうっすね。前の時もゴブリン達を倒してたら一旦出てくるのが止まったっすね。その後、本命が出てきたっすね。」


「そうなのか。今のところモンスターの気配はないから一旦休憩にしよう。」


遙、朔夜、玄羅、グラム、ウルが同意する。若干、玄羅は物足りなそうな感じだったが、敵がいない以上どうしようもない。俺は、レジャーシートを敷いて腰を掛ける。そう言えば、同級生全員は立ったままである。なので、同級生用のレジャーシートも用意し、菓子と飲み物を用意する。


「なぁ、神月。菓子とかレジャーシートとかどこから出してるんだよ?それよりも俺たちこんなにのんびりしててもいいのかよ?」


ついついアイテムボックスを使っていたらしい。なので、解禁することにした。


「ああ、これはアイテムボックスってやつだよ。よくファンタジー系の小説に出てくるやつ。あれと同じと思ってもらって構わない。それと、皆に出来る事って今のところないから、大人しくしといてもらえると助かる。オークを倒せるって言うんなら手伝って貰いたいけどな。」


俺のその答えに皆は黙り込む。少し気まずい空気が流れたところで、どうしようか考えていると、入り口からスノウと哮天犬が飛び込んできた。


「おっ、お前ら、終わったのか?」


「終わったぞ。外には一匹もいないぞ。全部、倒したぞ!」


「わんっ!」


「それにしては時間がかかったんじゃない?」


「それは当然だぞ。隠れていないやつがいないか念入りに探し回った結果だぞ。」


「そうか。悪かったな。ご苦労!」


「それに、途中で拾い物をしちゃたぞ。」


「拾い物??」


「多分、もう来るぞ。」


入り口の方から複数人の走る足音が聞こえてくる。一番最初に入ってきたのは防衛大臣の三枝である。その後にSPの人達が入ってきて、最後にダンジョン庁長官の御堂が少し遅れてSPの人と一緒に入ってくる。三枝大臣の方は、いい運動をしたと言う感じだが、御堂長官の方は「ハァハァ」と息が切れている。三枝大臣が俺を見つけると、俺の所まで来て、


「あら、寛いでいるわね。っと言うことは、もう全て終わったのかしら?」


「まだだと思いますよ。」


俺が答える。


「じゃあ、そんなにまったりしてていいのかしら。」


「いいんですよ。今は、モンスターがダンジョンから出てきていないし、気配もありませんからね。」


「でも、まだ終わってはいないのでしょう?」


「そうですね。」


「だったら、モンスターが出てくるのを待っていないでこちらから攻めて行くべきじゃないのかしら?」


その言葉を聞いたとき確かにと思ってしまった。それに、玄羅も気がついたのであろう立ち上がろうとしている。


「じいさん。ストップ!」


俺は、玄羅を制止する。


「確かに、三枝大臣の言うことにも一理ありますが、休めるときに休んでおかないと、ずっと戦い続けるのは体力的にキツい。それに、MPの使うから回復しておかないといざというときに使えないのは困りますからね。それに、疲労は判断能力を鈍らせる。その状態で戦うと命取りになりかねませんからね。」


「そう。あなたの言う通りね。それで、現状を教えてくれるかしら?」


「わかりました。」


まず、街に出て行ったモンスターは、スノウと哮天犬が全て掃討したこと。玄羅の事(御手洗さんと四宮さんを含め)。この支部と自衛隊の事。あと、ポーション類を配っていること。を報告する。


「あっ、ポーションは、後できちんと使った文の料金を請求するので支払ってくださいね。因みに、緊急時なんで5割増しで請求しますね。数の方は四宮さんが集計してると思うので。」


「ああっ、きっちりやってるよ。あと、長官。私と支部長の臨時ボーナスもよろしく頼むよ。慈善事業でやってるんじゃないからね!」


「そっ、そんな~!」


俺と四宮さんに責められて少し可哀想に思うが、ここは心を鬼にする。



時間は少し遡る。宇部空港に着いた御堂と三枝は現在、ヘリコプターに乗り込み現場に直行していた。勿論、SPも一緒である。

現場に到着した2人が見たものは陥没した道路、折れ曲がった信号機や電柱。壊れた車等が置き去りにされており、人は全くいない状態であった。報告にあったモンスターの姿も全くと言っていいほど気配がない。ダンジョンからは少し離れているが丁度いい着陸できそうな所があったので着陸をする。すると、ヘリコプターの音を聞きつけた人々が建物の中からゾロゾロと出てくる。そして、着陸したヘリコプターを囲む。どうやら救援が来たと思われたらしい。まず、SP達がヘリコプターから降り、そして、御堂、三枝と続いて降りる。まずは、現状の把握をしようと思ったが、「政府は何をやっているんだ?」「早くどうにかして!」など、とても話を聞ける状態になかった。そう思った三枝は大きく息を吸い込み、お腹に力を入れ大声で、


「落ち着きなさーい!」


と、声を張る。すると、騒いでいた人達は静になり、続いて三枝が話を始める。


「今、皆さんを助けるために支援の準備をしています。ですので、今暫く辛抱してください。」


と、頭を下げる。


「そして、今はどういう状況なのか我々に教えて頂けないでしょうか?」


すると、小さい女の子が前に出てきて、


「突然、豚さん見たいな顔をした化け物が街を荒らしはじめたんです。私はお母さんと一緒に隠れてました。でも、化け物に見つかっちゃって、私を守るためにお母さんが殴られちゃったんです。そいつは、私に向かってこん棒を振り下ろそうとしたんです。その時、白いワンちゃんがその化け物にぶつかって私を助けてくれました。それで、お母さんの所に行くとスライムって言うんですか?青いプニプニしたモンスターがお母さんに液体を飲ませてたんです。そしたら、動けなかったお母さんが普通に動きだしたんです。それからは、白いワンちゃんと大きい白い虎さんが化け物達をあっという間に倒していったんです。」


そう、女の子が話をしていると、人混みの中から女の子の母親が出てくる。三枝が、


「今の話は本当の事なの?」


「化け物がいたことは間違いないんですけど、殴られた後の記憶がなくって!」


「私、嘘は言ってないもん。」


「お嬢ちゃん、御免なさいね。お嬢ちゃんの事、信じてないわけじゃないんだけど、確認は取らないといけないから。」


三枝は、女の子を諭すように言う。すると、他の人からも「白い犬に助けられた。」「俺は、大きな虎だったな。」「私なんか、無理矢理得体の知れない液体を飲まされたわ。そのお掛げで負傷したのが嘘みたいに治っちゃったけど。」と話す。


「話をまとめると、モンスターが襲ってきたけど白い犬と白い大きな虎が倒してくれたってことね。」


「うん。そうなの!」


女の子が答えてくれる。


「それで、負傷した人にはスライムが有無を言わせず瓶に入った液体を飲まされたら、体に負った傷は回復していたということで良いかしら?」


三枝の確認に聞いていた人々は頷く。


「三枝さん。これって、やっぱり?」


御堂が三枝に質問する。


「ええ、恐らく十中八九、神月さんの仕業でしょうね!」


そう話していると、取り巻きの向こう側に白い犬が現れる。それに、気が付いた御堂は三枝に


「さっ、三枝さん。あれっ!」


御堂は指を指し、


「ちょっと、そこのワンちゃんいい?」


と、よく通る声で哮天犬を呼ぶ。呼ばれた哮天犬は、初めよくわからない感じだったが、一度会っていることを思い出し、三枝と御堂の元にやってくる。三枝は、哮天犬を撫でながら、


「ねぇ?あなた、神月さんのところのこでしょ?」


すると、いつの間にか哮天犬の頭の上に乗っていたスライムが答え始める。


「正解なの!」


スライムが話し始めたことにより民衆が吃驚したような声を出す。「スライムがしゃべった。」「何あれ?」「かわいい!」等々、


「えっと、あなたは確かグラムと言ったわね!」


「そうなの!それで、何のようなの?」


「あなた達は今、何をしているのか教えてもらって良いかしら?」


「いいの!グラム達は、ご主人が、ダンジョンから出たモンスターを全部倒して来いって言われてるの。あと、その際に、居た怪我人にはポーションとかを使って回復するように言われてるの。ご主人には、説明してから飲ませろって言われてるけど、説明しても使ってもらえなかったら無理矢理飲ませるように言われてるの。それで、考えたの。グラムはスライムだからスライムに言われたから簡単に飲んではくれないと思ったの。だから、最初から強行手段で飲ませるようにしたの。しかも、そっちの方が時間効率がいいの!」


「そうなのね。わかったわ。それで、外に出たモンスターの掃討はどのくらい進んでるの?」


「えっーとなの?…………もうすぐ終わるの!」


すると、続いて白い虎が現れる。


「おい、2人とも、もう全部倒し終えたぞ!早く行かないと美味しいところ全部取られちゃうぞ!」


「スノウちゃんで、よかったわよね?ダンジョン外に出たモンスターは、もう一匹もいないの?」


「そうだぞ!念のために確認したけどもう一匹もいないぞ!」


それを聞いた民衆は大喜びする。そして、三枝はスノウに、


「じゃあ、私達をあなたのご主人様の元に案内をお願いできるかしら?」


「わかったぞ!でも、少しだけ急ぐぞ!」


「わかったわ!でも、ちょっとだけ待ってもらえるかしら!」


「いいぞ!だけど、早く頼むぞ!」


三枝は、民衆に向かって、


「皆さん。ダンジョンから出てきたモンスターはもう地上にはいません。なので、安心してください。私達はこれから事態の収集に向かいます。皆さんは、最寄りの災害拠点などを利用してください。それと、もし、負傷している方がいるときは手を貸してあげてください。自衛隊にも出動を命じています。今暫くの我慢をお願いします。」


と、頭を下げる。そして、スノウ達の方を向き


「では、行きましょう!」


まるで、今から戦場に行くような感じである。そして、スノウ達の後を追って三枝は走り出した。勿論、SPもそれに、追従する。1人付いていけないのが御堂である。


「えっ?走るんですか?聞いてないですよ!」


「たまには運動も必要よ!あなたも走りなさい!」


渋々だが御堂も走ることなる。三枝は、元々運動が好きで、毎日のジョギングは欠かさない。なので、走ることは大の得意であった。変わって、御堂は、最近は運動が出来ておらず運動不足の状態であり、到着の頃には酸素マスクが必要なほど酸欠の状態であった。

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