109.同窓会
さて、今日はもう既に5月に突入し、1日である。明日は、ついに同窓会である。その前にここ2週間近くの話をする。まぁ、特に変わりがあったわけではないが1つだけ変化があった。それは、放置していた自宅のダンジョンの25階層の攻略を始めたことだ。言わずと知れた5階層毎のボス部屋がある。25階層のボスは、サイクロプスである。
種族 レッドサイクロプス
レベル 40
HP 9000
MP 5000
スキル 怪力8 身体強化8 棍棒術8 火王魔法2 魔眼(麻痺)6 自己回復4
魔眼(麻痺) 見た相手を麻痺させる。
鑑定では、レッドサイクロプスという名前になっていた。見た感じ、全身が真っ赤だから納得である。もしかしたらブルーやイエロー何てのも居るのかもしれない。それに、火系の魔法を使うから赤い色なのかもしれない。そして、手には金属製の棍棒を持っている。体長は8メール位の大きさがある。まずは、魔眼があるのでグラムに酸弾を使い眼を攻撃して貰い、まずは眼を潰す。眼が開いていなければ魔眼の効果はなくなる。そして、眼が回復する前に攻撃を加える。今回は、5階層毎のボスなので万一の事を考えて全員で攻撃をする。結果、魔眼さえ使わさなければ簡単に倒すことができた。レッドサイクロプスのドロップ品は、ポーションとハイポーションが大量にドロップした。俺は、ドロップ品をアイテムボックスに仕舞う。そして、俺達は26階層に降りて行く。26階層は、森の中であった。ただ、只の森の中ではなくて木の葉が赤い、所謂、紅葉である。落ち葉も堆積しているフィールドである。そして、探索するとモンスターが現れる。モンスターは、2メートル近い蜥蜴である。しかも、色が独特で地面に落ちている落ち葉と同じ色をしている。
種族 リーフリザード
HP 3500
MP 1500
スキル 迷彩8 咬撃3 水魔法8 硬化4
鑑定の結果はこんな感じで
あった。敵としてはそんなに強くはないが、景色に紛れられるのは少し面倒ではある。だが、気配は分かるのでそこまで苦労はしない。俺の場合は。グラム達は少し苦労しそうである。そんな感じで少し探索をしていたらある木の根本にキノコが生えているのを発見する。その木というのが何と赤松である。赤松の下にキノコというと松茸である。俺は、それを発見した時、少し固まってしまった。すると、
「ご主人、どうしたの?」
「固まってるぞ!」
「おーい!大丈夫なのです?」
「あっ、ああ大丈夫だ。いやっ、ちょっと面白い発見をしてな。」
「面白い発見なの?」
「木の下にキノコが生えているんだが、あれが恐らく高級食材だ。」
俺は、キノコを採取して鑑定を行ってみる。
ダンジョン産松茸
ダンジョン産の松茸。とても美味しい。
やはり松茸であった。
「ご主人、それがそんなに美味しいの?」
「変な臭いがするぞ。」
「本当に美味しいのです?」
「う~ん。俺も人生の内でそんなに食べた経験があるわけじゃないからな。それに、スノウ、これは変な臭いじゃなくていい臭いって言うんだぞ。」
「そうなんだぞ。」
「キノコって独特の臭いがあるやつがあるから、もし嗅いだことの臭いがあれば教えてくれよ。どうみてもこの階層の季節感は秋だから他にもいろんな美味いものが見つかるかもしれないからな。」
「了解だぞ!」
そんな感じで、週2日自宅のダンジョンの26階層で松茸狩りをした。そして、松茸探していると柿も見つけたので柿の収穫も行った。松茸は、シンプルに焼いて塩とレモンで堪能したり、松茸をたっぷりと入れた松茸ご飯も絶品だった。柿もシンプルに剥いて食べた。あとは、親父に干し柿を作成して貰う。流石にこの5月の時期に柿が軒下に並んでいるのは不自然なので外からは見えないところに干して貰う。残りの週3日は玄羅とダンジョンに行く。その内の1日は玄羅だけだが、残りの2日は朔夜と遙、玄羅を連れてダンジョンに行っていた。そんな2週間であった。
さて、冒頭にも話した通り今日は同窓会当日である。本来ならばあまり気が進まないのであるが半ば強制的に参加をさせられる形である。開始時間は18時からとなっている。現在の時間が13時なのでそろそろ出掛けようと思う。グラム達も明日のダンジョンの探索のために付いてくるそうで、今は従魔の指輪の中でのんびりとしている。哮天犬もアイテムボックスに入ってくれている。15時過ぎには予約したホテルに到着したので駐車場に車を停めチェックインする。会場はここから徒歩で2~3分のところにあるのでギリギリまで一眠りすることにする。
17時30分に目を覚まし、着替えを行う。一応、ドレスコードが必要と言うことだったが、そんな服を俺は持ってはいなかった。唯一あったのが数年前に友人の結婚式のために買ったスーツである。元々、スーツを着る機会が全くなかったので成人式の時に買ったスーツを結婚式の度に使用していたのだが、段々と草臥れてきたので数年前に新調したのである。なのでそのスーツを着て同窓会に出席しようと思う。ただ、ネクタイを付けるのは好きではない。どうも首回りに物があると違和感が半端ないのである。あとは、靴は、黒いスニーカーを履いていこうと思う。最後に、寝ていたので髪に櫛を通して歯磨きをして身だしなみを整えて同窓会の会場に出発する。
現時刻17時55分。俺は会場に到着する。既に会場は開場されており、皆、中に入ってそれぞれ旧交を温めている。俺も会場に入るが人とあまり関わりたくはないが、せめて幹事である高森には来たことをアピールしとかなければならないと思う。
「おっ、神月来たな。」
声の方を振り向くと高森が居た。
「ああ、高森が強制したからな。」
「そうだけど、神月はそうしないと来なかっただろ?」
「まぁ、そうだけど…………。ところで、まだ、料理は出ないのか?」
「今から乾杯するからそれが終わったら直ぐに出てくるようになってるから少し我慢しろ!」
「そうか。それで、乾杯は誰がやるんだ?」
「そんなの俺しか居ないだろ?幹事なんだから!」
「じゃあ、さっさとやってこい!」
俺は、高森の背中を軽く叩き早く乾杯をしてくるように促す。
「おうっ、行ってくるわ!」
と、前の方に出ていく。俺は、乾杯するとの事でソフトドリンクを手にして待つ。すると、高森がマイクを持ち話し始める。
『え~、本日は皆さん御忙しいなかお集まりいただいてありがとうございます。』
少し堅苦しい挨拶を高森が始めると、周囲からは、
「そんなに畏まらなくていいぞ!」
「俺達、皆同級なんだから普通に話せ!」
等の野次が飛んでくる。それを聞いた高森は、
『そうだな。今さら畏まっても仕方ないな。じゃあ、普通に話させて貰う。今日は皆忙しい中集まってもらってありがとう。まさか、こんなに沢山集まるなんて想像してなかったからすごく吃驚してる。皆、積もる話しもあるだろうから今日は語り合おう。それじゃあ始めるぞ!乾杯!』
「「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」」
高森が音頭をとって全員で乾杯する。乾杯と同時に料理が続々と運ばれてくる。俺は、料理を物色しながら皿に取っていく。一枚目の皿が一杯になったので、誰も座っていないテーブルを見つけ、そこに持っている皿を置いて次の皿を取りに行く。その行動を三度繰り返し俺の座った目の前のテーブルには3つの皿に和洋中と色々な料理が盛られている。俺がそれらを黙々と食べていると一際大きな声で話をする奴がいた。声のする方をみると、そこには白川大樹が居た。どうやら自分が探索者となったことを自慢しているようである。それを聞いた女子や昔は少しヤンチャをしていた男子が興味を持ったのか白川の話を興味津々で聞いている。俺はどうでもよかったので耳にワイヤレスイヤホンをして携帯の音楽を聴きながら呑気に食事を楽しんでいた。
同窓会が始まって3、40分が経過した頃、急に全員が同じ方向に向かって走り出した。方向的には、入り口と真逆の方向である。俺は、何かのゲームでも始まったのかなと思い、取り敢えず放置していた。同級生達を見ると俺に何か言っている人がいるかと思えば、何か震えている人までいる。すると、
どーーーーん!!!!!
「「「「キャーーーーーー!!!!」」」」
と、女性の悲鳴が轟く。それと同時に、俺の体に何かが当たり俺の体は壁に叩きつけられる。俺が叩きつけられた壁には亀裂が走っている。
「痛って!!!」
俺は何が何だか全く分からなかったが、自分が何かに殴られて吹き飛び壁にぶつかったのだけはわかった。普通なら重傷若しくは死んでいてもおかしくはないだろうが、レベルが上がって体も鍛えられているから殆どダメージを受けることはなかった。俺は直ぐに立ち上がるとそこにはオークが居たのである。
「サッ、サイガ!大丈夫なのか?」
同級生だけでなくオークも俺が攻撃を受けて直ぐに起き上がったことに驚愕しているようである。
「ああ、特に問題ない。」
「問題ないって、あんなの普通死んでるぞ!」
「普通はな!」
俺は、そう言うとオークに向かってゆっくりと歩き出す。俺が無傷で立ち上がったのが初めは信じられない顔をしていたが、次第にその事に苛立ちを覚えたのかオークは、「ブモォォォォー!!」と、雄叫びを上げる。同級生達は、その雄叫びに腰を抜かしたり、抱き合ったりしている。俺は、
「五月蝿い!!」
オークの直ぐ近くに移動し、腹に正拳突きをお見舞いする。正拳突きを喰らったオークは「ブフッ!!」と口から唾液を垂らし、頭が下がったので、空かさず回し蹴りを顔面(唾液のついてない所)に喰らわせる。オークは、俺が吹き飛ばされた逆方向の壁にぶつかり魔石とドロップ品の肉を落として消えていった。
「何でこんなところにオークなんているんだ?…………まぁ、考えられることは1つしかないんだけどな。」
と、独り言をブツブツ言っていると、俺のテーブルにあった携帯電話が鳴っている。宛名を見ると、電話の相手はダンジョン庁長官の御堂さんである。俺はその電話に出る。
「はい。もしもし、神月です。」
『あっ、よかった。神月さん。御堂です。』
「はい。それで、どうしました?」
『緊急事態です。…………ダンジョンのスタンピードが発生しました。』
「それって、下関のダンジョンですか?」
『ええっ、もうご存じでしたか?でも、早いですね。我々でもついさっき知った情報なんですが?』
「えーっと、偶々その近くに居て今しがたモンスターに教われましたからね。」
『えっ?大丈夫なんですか?』
「不意打ちを喰らいましたが、あの程度は何ともありませんよ!」
『流石です。それで、お願いしたいんですが、モンスターの討伐をお願いします。』
「わかりました。そういう約束ですからね。」
『ありがとうございます。』
「でも、スタンピードが起こる前兆は無かったんですか?」
『…………それは、あったようです。この前のスタンピードの際の利益が相当な物だと知って、現場の責任者が上手く甘い汁を啜ろうと思って私利私欲に走った結果なんですよ。』
「そうなんですか。…………とりあえずスタンピードは何とかしますよ。あと、ダンジョンに出たモンスターもどうにかしますよ。」
『ありがとうございます。』
「それと、多分負傷者がいるでしょうからポーションを使って治療をしておきますよ。」
『ありがたいです。使った物に関してはこちらで現物若しくはそれ相応の代金をお支払します。』
「おっ、それはありがたいですね。」
『ありがたいのは此方の方ですよ。では、後程。』
「後程??」
『ええ、事が事ですからね。私がそちらに行って処理します。』
何か御堂さんから怒りのオーラを感じる。
「わっ、わかりました。お待ちしています。」
俺は、電話を切る。どうやら、相当お怒りみたいである。